チャプター8『降魔人間』
帝劇地下・格納庫………
謎の白マントを伴い、帝劇へと帰還した初穂達。
さくらは直ぐ様医務室へ運ばれたが、幸いにも命に別状は無かった。
「お前が居ながら、何やってたんだっ!?」
「………すまない」
怒鳴りながら詰め寄る初穂に、誠十郎は只々頭を下げるしか無い。
あの後、重い身体を引き摺りながら、如何にか初穂達よりも先に帝劇へと帰還した誠十郎。
当然ながら、クラーラを攫われてしまうと言う失態を犯した誠十郎には厳しい視線が向けられた。
だが、ゼロである事を言えない誠十郎は、只管其れを受け止めるしか無い。
「彼を責めないでくれ。私にも責任は有る」
しかし其処で、白マントがフォローに入る。
「………其れで、貴女は一体何者なのかしら?」
今度は、アナスタシアが白マントを厳しい視線で見据える。
「私は………」
すると、白マントはその白いマントと仮面を脱ぎ捨て………
「村雨 白秋さ」
その正体………『村雨 白秋』の姿を晒した!
「!? は、白秋さん!?」
「「「「!?」」」」
『やっぱりか………』
誠十郎と初穂達は驚くが、ゼロは予想通りと言った様子を見せる。
「村雨さん………」
と其処へ、すみれが格納庫に姿を見せた。
「神崎支配人。待っていたよ」
「“全て”を聞かせて頂けますね?」
「勿論だ」
すみれの問いに、白秋は微笑みながらそう返すのだった。
帝劇地下・作戦司令室………
「さて。先ずは、何から話せば良いかな?」
さくらを除く花組メンバーとすみれ、そしてサコミズを前に白秋がそう切り出す。
「白秋さん………貴女は“何者”なんですか?」
すると、一同を代表する様に誠十郎がそう尋ねた。
「私は………“君達が『降魔』と呼ぶ存在に近い者”だ」
「「「「!!」」」」
白秋のその言葉に、初穂達が身構える。
「落ち着きなさい」
しかし、すみれが其れを制する。
「! 支配人! けどコイツ、今“自分で”『降魔だ』って………」
「彼女がその気なら、とっくに襲い掛かって来ているわよ」
警戒心をマックスにしている初穂を、すみれがそう諭す。
「其れに、彼女は『降魔と呼ぶ存在に
更に、サコミズもそう言葉を添える。
「なら………貴女は一体“何”なの?」
アナスタシアが視線を鋭くしたまま、白秋に再度問い質す。
「その前に、此方からも質問させて貰うよ………君達は、『降魔』についてどれぐらい“知っている”んだい?」
しかし白秋は、逆に誠十郎達にそう問い掛けた。
「米田さんによれば、『1521年、北条 氏綱によって行われた降魔実験の失敗に
すみれが、嘗て米田から聞いた話を思い出しながらそう答える。
「その認識は“全てでは無い”な………」
「? 如何言う事ですか?」
「“江戸湾に沈められた『大和』の地で亡くなった住民の怨念”で生み出された………其れは正しい。では、
「其れは………」
すみれは答えに窮する。
「白秋さんはご存知なのですか? 『大和の地』とは何なのか」
「『大和の地』とは………」
誠十郎が尋ねると、白秋は一瞬間を置くと“驚くべき答え”を返した。
「嘗て、銀河の遥か彼方に存在した星………『
「なっ!?」
「「「「!?」」」」
「大和の地が………宇宙船!?」
白秋のその言葉に、誠十郎達は疎か、すみれも驚愕を隠せなかった。
「そう。そして“大和の地の民”とは………その宇宙船に乗っていた惑星ヤマトの住人………『ヤマト星人』さ」
「! 宇宙人!」
「惑星ヤマトは、この地球と同じく美しい星だった………しかし運悪く、ブラックホールと衝突してしまい、滅亡した。生き残ったヤマト星人達の中に、辛うじて残った惑星ヤマトの一部を宇宙船に改造し、この地球へと流れ着いた者達が居た………」
「…………」
其れを聞いたあざみが、祖父・
「だが、当時の地球の人々に“宇宙人”と言う概念を理解する能力は無かった………ヤマト星人達は
「そして、北条 氏綱によって降魔実験に掛けられ、宇宙船ヤマト………大和の地ごと江戸湾に沈められた、と?」
先程のすみれの話を、サコミズが反芻する。
「そして、その邪念によって生まれた亜生物を『降魔』と名付けた………正に、
そう呟く白秋の表情は、何処か悲し気に見える。
「では村雨さんは、その降魔実験に掛けられた大和の地の民と同じ………“ヤマト星人”なのですか?」
「その通りだ」
「ちょっと待てよ! て事は………アンタ一体幾つなんだ!?」
クラリスの言葉を白秋が肯定すると、初穂がそう疑問を呈した。
「さてな。もう気の遠くなる月日を過ごして来たからな。少なく共、1000や2000では収まらないな」
「そんなに!?」
「驚く事では無いさ。この広い宇宙では、ヤマト星人は寧ろ
「宇宙は、私達が想像している以上に広大な世界みたいね………」
話のスケールが大きくなって来て、アナスタシアが圧倒された様子を見せる。
(まさか白秋さんが宇宙人………しかも、そんなに長生きしていたなんて………)
『けどアイツの言う通り、宇宙人にしては割と“短命”な方だぜ。俺だって5900歳だしよ』
(!? 何ぃっ!? お、お前、そんな歳だったのか!?)
『地球人に換算すると“学生ぐらい”だそうだぜ。因みに、
(………ウルトラマンってのは、ホント“規格外”だな)
そして、誠十郎はゼロとウルトラマンの年齢についての話に圧倒されていた。
「この星に流れ着いた同胞達が虐げられていると言う話を聞いた私は、放浪の末に漸く辿り着いたが………その時には既に“全てが終わった後”で、ヤマト星人の邪念から生まれた『降魔』が猛威を振るっていた」
と其処で、白秋が話を続ける。
「だが、長い月日を経て………“ヤマト星人の記憶と性質を
「“先祖返り”………ですわね」
すみれがそう呟く。
「私は、その子達を見付けては保護している」
「! じゃあ、さくらが言っていた、貴女が“孤児院で面倒を見ている子供達”は………?」
「そう、ヤマト星人の記憶と性質を取り戻した降魔………いや、“ヤマト星人の子供”さ」
「そうだったんですか………」
合点が行った様子を見せる誠十郎。
「するとクラーラさんも………?」
「「「「「!!」」」」」
其処ですみれがそう呟くと、誠十郎達はハッとした様子を見せる。
つまり、彼女も先祖返りをして“ヤマト星人の記憶と性質を取り戻した
「そうだ………と言いたいが、彼女には少し“複雑な
「複雑な経緯?」
誠十郎がそう問うと、白秋の口から再び驚くべき言葉が飛び出した!
「彼女は………
「!? なっ!?」
「「「「「「!?」」」」」」
トンでもない話に誠十郎達は疎か、すみれとサコミズも絶句する。
「降魔人間………」
「“人工的に創り上げられた”って………」
「そんな事………」
「正に“神をも恐れぬ行為”ね………」
初穂達が言葉を失う。
「…………」
すみれも険しい表情を浮かべている。
嘗て『黒鬼会』の首領であり、陸軍大臣でもあった『京極 慶吾』が降魔の死体を使った降魔兵器を作り………
“降魔の力を
「勘違いしないで欲しい。確かに、彼女は“降魔人間として創り出された”が、性質は確かに
「「「「「…………」」」」」
しかし、白秋がそう断言したのを聞いて、一同の顔には安堵の色が浮かぶ。
「! ちょっと待て! じゃああの時、“さくらを助けた
「アレは………レイラだ」
「やはりね………」
初穂の問いに白秋がそう返すと、アナスタシアが納得が行った様な表情を見せる。
「彼女は先に創られた
「其れで、あんな上級降魔みたいな姿に………」
“翼が有る”以外は人間と変わらない白秋やクラーラと比べて、レイラの姿が際立っていたのを思い出しながら呟く誠十郎。
「私が、彼女達と知り合ったのは数年前の事だ。“露西亜で『降魔人間』なる存在の研究が行われている”………そんな話を聞いた私は露西亜へ飛び、『或る2人』と共に彼女達………レイラとクラーラの姉妹を発見した」
其処で白秋が語り出す。
「降魔人間の研究目的………其れは言うまでも無く“軍事利用”だった。だが、その研究の中心人物だった者………『ナターリャ・ルシュコヴァ』が疑問を抱いた」
「ルシュコヴァ?」
「クラーラさんにレイラさんと
「と言う事は………?」
「ああ、“彼女達の母親”だ」
「「「「「!?」」」」」
クラーラとレイラの母親が、“降魔人間研究の中心人物”で在った事に何度目とも知れぬ驚きを示す誠十郎達。
「彼女は、生み出されたレイラとクラーラに何時しか愛情を覚える様になり、研究目的に疑問を抱いた。其処で私は『或る2人』と協力し、研究データを全て破壊した上で彼女達を脱走させた」
「脱走………」
「そして人知れず暮らせる地へと誘い、其処で普通の人間としての暮らしを始めさせた。人目を憚る必要は有ったが、紛れも無く平穏な時を過ごしていたよ………だが、最近になって“思わぬ不幸”が彼女達を襲った」
「思わぬ不幸?」
「ナターリャの身体が………不治の病に蝕まれていたんだ」
「!? じゃあ………?」
「彼女は、程無く亡くなってしまった。最後までレイラとクラーラの身を案じて、な」
白秋の表情に、一筋の悲しみの色が浮かぶ。
「そして、時を同じくして『奴』が現れた」
「『奴』?」
「ヴァレリー・カミンスキー………」
「!?
「いや。奴は、“莫斯科華撃団の隊長”等では無い」
「えっ?」
白秋がそう返して来て、誠十郎は首を傾げる。
「正体は不明だが………奴は、“レイラとクラーラが
「! 何ですって!?」
「その理由も分からんが、少なく共“
「「「「「…………」」」」」
“帝劇を訪問して来た際のカミンスキーの胡散臭い態度”を思い出し、苦い表情をする誠十郎達。
「クラーラを逃がす為に、レイラは奴に恭順した様な態度を取った。試みは成功し、クラーラはカミンスキーの手から
「! 莫斯科華撃団もクラーラを!?」
「其れが、例の“極秘任務”だったワケですわね」
緊急の任務で帰還したと言う、“本物の莫斯科華撃団”を思い出してそう言うすみれ。
「しかし、本物の莫斯科華撃団は怪獣に襲われ、空中戦艦ごと全滅した」
「!? 莫斯科華撃団が全滅!?」
「クラーラもあわやと言うところだったが、絶体絶命の危機に陥った事で、本能的に降魔人間………“ヤマト星人の力”を発揮し、莫斯科華撃団の空中戦艦ごと怪獣を消滅させた」
「では、彼女が記憶喪失になったのは………?」
「恐らく、襲撃のショックと身体への負担も考えずに
すみれにそう推測を述べる白秋。
「その彼女を
「何故
「君達なら“彼女を
「救う………?」
「彼女は降魔で在り、人間で在り、ヤマト星人で在り………“そのどれでも無い”と言う、非常に
其処で白秋は、一瞬誠十郎を見遣った。
「!」
「“ウルトラマンと共に戦い………
誠十郎が反応するも、其れに気付いていない振りをして、白秋は言葉を続けた。
「「「「…………」」」」
そして、初穂達は少し考え込む様子を見せたかと思うと………
「あざみは、もうクラーラを友達だと思ってる。例え、“彼女が何者でも”関係無い」
最初に声を挙げたのは、バルタンバトラー・ゲカホを祖父に持つあざみだった。
「例え相手が何者でも、心が有れば………きっと分かり合えます」
クラリスが魔導書を開き、ゼットンのページを撫でながらそう言う。
「アタシは難しい事は良く分からねえ………けど、さくらは“クラーラは友達だ”って言ってた。だったらアタシは、“そう思えるさくらの気持ち”を信じる!」
クラーラと笑い合っていたさくらの事を思い出しながら、初穂は掌に拳を打ち付ける。
「…………」
そんな中、アナスタシアは1人目を閉じ、腕組みをして考え込んでいる様子を見せた。
「アナスタシア………」
だが、誠十郎が心配そうに声を掛けると………
「フッ………ココで反対したら“空気の読めない奴”みたいね。良いわ、私も乗ってあげる」
不意に笑みを浮かべ、そう言って来た。
「ふふ、其れでこそね」
その様子を見たすみれも、笑みを浮かべる。
「取り敢えず、今日はココまでとしよう。クラーラくんの事は、相手側の出方を見ないといけない。皆、連日の出動で疲れているだろうから、一先ず身体を休めるんだ」
其処で、サコミズが場を纏める様にそう言った。
「「「「了解」」」」
サコミズの指摘通り、疲労がピークに達していた初穂達は、重い身体を引き摺りながら、自室へと引き上げて行った。
「「…………」」
と、最後に出て行く誠十郎が白秋とアイコンタクトを交わす。
数10分後………
帝劇の屋根の上にて………
「待たせてしまったかな?」
「いや、丁度良かったぜ」
待ち構える様にしていた誠十郎(ゼロ)に、白秋がそう声を掛ける。
「其れじゃあ、ココからは
白秋にそう問い質す誠十郎(ゼロ)
『…………』
今は内に引っ込んでいる誠十郎も、白秋を注視する。
「“君の事は良く聞いていた”からね………
「!? キングの爺さんにだと!?」
しかし、白秋のその答えに、誠十郎(ゼロ)は驚きを露わにするのだった。
つづく
新話、投稿させて頂きました。
白マント………白秋さんの正体が明らかに。
そして、その白秋さんから語られた衝撃の事実!
降魔が元は宇宙人であり、更にクラーラ達が降魔人間!?
ウルトラシリーズあるある。
『伝説の生物や妖怪の正体が実は怪獣や宇宙人』
この辺の解釈・改変は正直かなり難産でした。
降魔人間の存在で、降魔との共存が呈されたアニメ版新サクラ大戦ですが、となると旧作で大神さん達が絶対正義を掲げて戦っていたのは何だったんだってなってしまいますし、そもそも降魔の設定自体が結構あやふやなところがあるので色々と難しかったです。
そこで考えたのが、降魔は元は宇宙人で、共存出来る降魔はその宇宙人として性質を取り戻したからってのは如何かと?
ウルトラシリーズとクロスしている本作だから出来る展開かと。
で、降魔人間の設定も弄ってます。
そもそも降魔人間を創る事が降魔との共存に繋がるって発想が理解出来なかったので、当初から軍事目的で作られたとし、良心の呵責に耐え切れなかった研究者が脱走させたと。
或る2人と言うのは、恐らく皆さんの想像通りです。
さて、次回は白秋とウルトラマンキングとの関係についてと、カミンスキーとジェネラルAの動きです。
いよいよ偽莫斯科華撃団との華撃団大戦です。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。