新サクラ大戦・光   作:宇宙刑事ブルーノア

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チャプター9『卑劣なる余興』

チャプター9『卑劣なる余興』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夜の帝劇の屋根の上にて………

 

「お前、キングの爺さんの事を知ってるのか?」

 

「ああ。嘗て宇宙を放浪していた頃に、偶然知り合ってね。この地球の事もキング殿が教えてくれたんだ」

 

やや驚いていた誠十郎(ゼロ)に、白秋はそう説明する。

 

『ゼロ。キングと言うのは?』

 

(ああ、『ウルトラマンキング』………俺達ウルトラマンの間でも“神のような存在”とされている、()()()()()さ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ウルトラマンキング』

 

光の国のプラズマスパーク建設に尽力した、ウルトラ長老の1人である。

 

M78星雲・光の国、レオとアストラの故郷・獅子座L77星、そして『ウルトラマンジョーニアス』のU40でもその存在が認知されている。

 

万年単位を生きるウルトラ一族の中でも“30万年以上”と言う桁違いな年月を生きており、全宇宙の平和を見守っている。

 

その能力は、ゼロの言葉通りに神懸っており、他のウルトラマンとキングを比べた場合、『ウルトラマンと地球人程の差が有る』とまで言われる。

 

嘗て、ベリアルが破壊した宇宙と()()()()()修復した事も有る。

 

その絶大な力故に、基本的には自ら事態に介入して来る事は無く、前述した様な“余程の事態”でないと動かない。

 

しかし、レオやアストラ、ジード等と言った“自らの力ではどうしようもない境遇”に陥っている、または“孤軍奮闘せねばならない者”に対しては慈悲深く力を貸している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『そんな凄い人だったのか………其れを“爺さん”呼ばわりって、お前………』

 

(別に良いだろ?爺さんなのはホントなんだしよ)

 

キングの偉大さに圧倒されると同時に、そんな“偉人”を爺さん呼ばわりしているゼロに呆れる誠十郎。

 

「本当の事を言うと、同胞達の救出に失敗した後、私はこの星を去る積りだったのだが、“何れこの星に『ゼロ』と言うウルトラマンが訪れる。その時に()()()()()()()()()()が有る。其れ迄は留まっていてくれ”と頼まれてね」

 

「キングの爺さん………俺が何れこの星に来る事を分かってたのかよ。相変わらずの慧眼だな」

 

「ウルトラマンゼロ………改めて頼みたい。クラーラとレイラを頼む。“生まれ方の違い”こそ有るが、彼女達も“私の()()”………ヤマト星人なのだよ」

 

其処で白秋は、誠十郎(ゼロ)に向かって頭を下げて頼み込む。

 

「分かってるって。クラーラもレイラも、きっと俺が………いや、()()()助け出してやらぁ!」

 

『勿論だ!』

 

ゼロと誠十郎は、クラーラとレイラの救出に改めて決意を固めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

そのクラーラは………

 

 

 

 

 

帝都・WLOFの滞在拠点………

 

ジェネラルAの執務室………

 

「ぶるあああああぁぁぁぁぁぁ」

 

「…………」

 

唸り声を漏らしているジェネラルAの前に、クラーラがおっかなびっくりと言った様子で佇んでおり、その後ろにはレイラが控えている。

 

「貴様がクラーラかぁ………フフフ、愛らしい奴めぇ」

 

「!」

 

渋さと鋭さを併せ持つ独特の低音から生まれる声質と語調で、そんな事を言われたクラーラがビクリと震える。

 

「この小娘が完全なる『降魔人間』か。よもやこの様な形で本物を見る事になろうとはな」

 

と其処で、ミスターGがクラーラを見下ろしながらそう言い放つ。

 

「アレだけの資金を()()()()()()研究機関が何者かに壊滅させられ、データも全て失われたと聞いた時には憤ったものだが、まさか“完成品”が存在していたとはな………」

 

眼鏡のレンズを光らせるミスターG。

 

そう………

 

何を隠そう、露西亜(ロシア)に降魔人間の研究を始めさせたのはミスターGだったのだ。

 

未だプレジデントGだった頃、“戦力強化と露西亜をWLOFに取り込む”一環として、『戦闘の際に採取した』と偽り、降魔の細胞を露西亜に提供したのである。

 

更には、研究機関への資金援助も秘密裏に行っていた。

 

しかし、研究所は何者かに襲撃され、データも全て破壊された為に計画は失敗。

 

表には知られていないものの、“プレジデントG時代の汚点”となっていた。

 

「この研究が上手く行けば、“人間共を降魔にしてやる方法”も見い出せる筈。さあ、クラーラよ! 偉大なる降魔皇様の為に、その身を捧げて貰うぞ!」

 

そう言ってクラーラに迫ろうとするミスターG。

 

「ヒッ!」

 

「待って下さいっ!!」

 

と、クラーラが怯えた声を挙げた瞬間、彼女を守る様にレイラが間に割って入った。

 

「私が代わりになります! だからこの娘に手を出さないで!!」

 

「! 姉、さん………」

 

そう叫ぶレイラを見て、クラーラが初めて彼女を姉と呼ぶ。

 

「黙れ! この()()()()()()()()()め! 貴様とクラーラでは力が違い過ぎる! 役立たずは引っ込んで居ろっ!!」

 

「!!」

 

ミスターGがそう言い放つと、レイラが思わず顔を伏せる。

 

と………

 

「ぶるあああああああっ!!」

 

ジェネラルAがミスターGの後頭部を右手で鷲摑みにしたかと思うと、顔面をそのまま床に叩き付けた!!

 

「ブブッ!?」

 

「貴様ぁ………何を()()()話を進めておるぅ? プレジデントGだった頃の癖が未だ抜けんのかぁ? この愚か者めがぁっ!!」

 

そう罵倒すると、ジェネラルAはミスターGの顔を床で擦り下ろし始める。

 

「ギャアアアアアアァァァァァァァッ!?」

 

床がドンドン真っ赤に染まって行き、悲鳴を挙げるミスターG。

 

「ヒッ!?」

 

「クラーラ! 見ては駄目!!」

 

クラーラが更に怯えると、レイラがその光景が見えない様に彼女を抱き締める。

 

「失礼、遅くなってしまいました。おや? お取込み中でしたか?」

 

「構わぁん、今済んだところだぁ」

 

其処へカミンスキーが現れてそう問うと、ジェネラルAは漸くミスターGを解放する。

 

「…………」

 

すっかり顔を擦り下ろされたミスターGは、ピクピクと痙攣して動く気配が無い。

 

「フフフ、クラーラ………“その力”を存分に振るって頂きますよ?」

 

今度は、カミンスキーがクラーラに近付く。

 

「!!」

 

「カミンスキー様!」

 

クラーラがビクリと震え、レイラが何か言おうとしたが………

 

「待てぇい、カミンスキー」

 

其れを遮り、ジェネラルAがカミンスキーを制する。

 

「“この娘の力が欲しい”のならば()()()()が有る」

 

「ほう? 其れは何ですか?」

 

「フフフフ」

 

カミンスキーの問い掛けに、ジェネラルAは邪悪な笑みを返すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

程無くして………

 

帝国華撃団に、2回戦の日程が決まったとの通知が届けられた。

 

其処には、更に“驚くべき内容”が書かれており………

 

花組メンバーは憤りを覚えつつも、世界華撃団大戦の会場を訪れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

帝国華撃団の控え場所………

 

「『クラーラさんを“この試合の()()”にする』だなんて………」

 

「チキショウッ! 何考えてやがんだ!?ジェネラルAの野郎は!?」

 

トンでもない試合内容に、クラリスが信じられないと言う様に呟き、初穂は怒りを露わに壁を殴る。

 

「でも裏を返せば、これで“クラーラを()()()奪還出来る”って事ね」

 

其処でアナスタシアが言う。

 

「多分、ううん、きっと“罠”………でも、あざみ達は負けない」

 

あざみもそう言い、表情を引き締める。

 

「そうだな。俺達は勝つ。“勝ってクラーラを()()()()”んだ!」

 

『その意気だぜ、誠十郎』

 

誠十郎も改めてそう決意を固め、ゼロも檄を飛ばす。

 

「皆さん。天宮さんの分も頑張って下さい」

 

すみれがそう言うと、誠十郎達は頷く。

 

さくらは未だ怪我が治っておらず、機体の修理も終わっていない為、“今回は無理だ”と思い、帝劇に残して来たのだ。

 

「其れで、神山さん。今回の出撃メンバーは如何しますか?」

 

其処で、カオルが誠十郎に尋ねる。

 

「今回は………」

 

誠十郎が出撃メンバーを告げようとした、その時!!

 

「待って下さいっ!!」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

そう言う声が響き、一同が視線を向けると其処には………

 

「ハア………ハア………」

 

白秋に肩を借りて如何にか立っている、さくらの姿が在った。

 

頭に巻かれたままの包帯からは血が滲んでいる。

 

「!? さくらっ!?」

 

「おまっ!? 何しに来たんだよ!? そんな身体で!!」

 

誠十郎と初穂が仰天の声を挙げる。

 

「ハア………ハア………」

 

さくらは、其れには答えず白秋から離れると、ふらつきながらも誠十郎の許に近付く。

 

「神山隊長………私を出場させて下さい!」

 

「なっ!?」

 

「無茶ですよ、さくらさんっ!!」

 

有り得ない筈のさくらの申し出に、誠十郎は再度仰天し、クラリスも慌てて止めて来る。

 

「さくら! 無茶はいけないっ!!」

 

「其れに、貴女の無限はこの前の戦いで大破しているじゃないの」

 

あざみもさくらを止め、アナスタシアもそう指摘する。

 

「無限なら大丈夫です。イデさんと司馬さんに無理を言って何とかして貰いました。其れに痛み止め(鎮痛剤)も打って貰ってますから」

 

しかし、さくらは弱々しいながらも笑みを浮かべてそう返す。

 

「! 白秋さん!」

 

「すまない。“如何しても連れて行って欲しい”と聞かなくてね」

 

其処で、誠十郎は白秋を咎めようと声を掛けたが、当の彼女はシレッとそう返す。

 

「………さくら、気持ちは分かるが、駄目だ。君を出撃させるワケには行かない。()()()()だ。君は、帝劇へ戻って治療に専念するんだ」

 

「嫌ですっ!!」

 

「! さくら………」

 

試合には出せないと言う誠十郎だったが、さくらは声を荒げて拒否した!

 

「クラーラの事は聞いてます………けど、“其れが何だ?”って言うんですか! クラーラは“私の友達”です! だから………“絶対に()()助ける”んです!!」

 

毅然とした表情で、キッパリとそう言い放つさくら。

 

如何やら、1歩たりとも引き下がる積りは無い様だ。

 

「………貴方の負けよ、神山くん」

 

「! 神崎司令!」

 

と其処で、すみれがそう言って来て、誠十郎は思わず声を挙げる。

 

「天宮さん」

 

「ハイ」

 

「『帝国華撃団司令』として、貴女の出場を許可します。但し………決して“無茶はしない事”を約束して貰います」

 

「! ありがとうございます!」

 

すみれに向かって頭を下げるさくら。

 

「………隊長さん。もう1人はアタシにしてくれ」

 

すると、今度は初穂がそう名乗り出た。

 

「! 初穂?」

 

「さくらがこんなんじゃフォローしねえといけねえだろ? ならアタシの出番だ。この中じゃ、アタシが“1番長い付き合い”なんだかんな」

 

ジッと誠十郎の目を見据え、そう言う初穂。

 

「………分かった。もう1人は初穂にしよう」

 

「あんがとな」

 

「初穂………」

 

「お前のフォローが出来んのはアタシだけだろ。任せておけって」

 

さくらに向かって、ドンッと胸を叩きながら初穂は言う。

 

「では、出撃メンバーは神山隊長、天宮さん、東雲さんですね」

 

「皆さん、気を付けて下さいね」

 

「クラーラをお願い」

 

「頼んだわよ」

 

カオルが確認の為にそう言うと、クラリス・あざみ・アナスタシアは誠十郎達にそう檄を飛ばす。

 

「よし! 帝国華撃団・花組! 出撃せよっ!!」

 

「「「「「了解っ!!」」」」」

 

そして誠十郎の号令に、全員で敬礼するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界華撃団大戦の試合会場………

 

スタジアム………

 

『さあ、長らくお待たせ致しました。いよいよ世界華撃団大戦、2回戦の開始です!』

 

実況者の声がスタジアム内に響き渡る。

 

しかしその観客席に、観客の姿は全く見当たら無い………

 

開幕式に続き、1回戦である帝国華撃団と上海華撃団の戦いに於いても怪獣が出現し、人々は“スタジアムに行くと怪獣に遭遇する”と思い込んでおり、客足がすっかり遠退いてしまったのだ。

 

だが、試合内容()()は気になる様で、人々は街頭に設置されたテレビで、試合の様子に注目している。

 

『あ! 今、帝国華撃団が入場して来ました!!』

 

と其処で、帝国華撃団がスタジアム内に姿を見せた。

 

「! コレは!?」

 

入場した誠十郎が驚きの声を挙げる。

 

試合会場が、上海華撃団と戦った時の様なスポーツのコートの様なものでは無く、“市街地の様な姿”となっていたからだ。

 

その中心部には、高い塔の様な構造物が聳え立っている。

 

「! アレはっ!?」

 

その塔の天辺を見たさくらが驚愕の声を挙げる。

 

何故なら其処には………

 

「…………」

 

十字架に磔にされたクラーラの姿が在ったからだ。

 

意識が無いのか、その目は閉じられたままである。

 

「クラーラッ!!」

 

「何て事だ………」

 

「野郎! 悪趣味な真似しやがってっ!!」

 

非道なる所業に、憤りを隠せないさくら・誠十郎・初穂。

 

と其処で、誠十郎達を見下ろす様に、試合会場内のビルの上に3つの影が現れる。

 

「「「!!」」」

 

莫斯科(モスクワ)華撃団のエカテリーナだ。

 

「ご機嫌よう、帝国華撃団の皆さん。今日は良い試合を致しましょう」

 

装飾が青色をしているエカテリーナから、カミンスキーの芝居掛かった声が響く。

 

「「…………」」

 

一方、装飾が金色のレイラ機とノーマル機は無言で佇んでいる。

 

「! カミンスキー!」

 

「テメェッ! クラーラはお前んとこの隊員なんだろう!? 何で“あんな真似”しやがる!?」

 

誠十郎が声を挙げ、初穂がクラーラをまるで見世物の様に扱っている事へ怒りをぶつける。

 

「そう怒らないで下さい。コレは演出………まあ、言ってしまえば()()()()()()()()()()と言うモノですよ」

 

しかし、カミンスキーはそんな怒り(など)何処吹く風と言う様に、シレッとした態度でそう返す。

 

巫山戯(ふざけ)ないで下さいっ!!」

 

と其処で、今度はさくらが怒りの声を響かせた。

 

「貴方なんかにクラーラは渡さない………私が………必ず助け出して見せます!!」

 

刀の切っ先をカミンスキー機に突き付け、さくらはそう宣言する。

 

「さて、そう上手く行きますかね?」

 

カミンスキーは、其れでも不遜な態度を崩さない。

 

『さくらちゃん! 無理はするんじゃないぞ! 君の身体もだが、無限だって何とか動かせる様にした状態なんだからな!』

 

「…………」

 

令士がそう通信を送って来たが、さくらは険しい表情のままでモニター越しにカミンスキー機を睨み付けたままだった。

 

『さあ………皆様、準備はよろしいでしょうか? 『莫斯科(モスクワ)華撃団』対『帝国華撃団』………いよいよ試合開始です! 其れでは! 華撃団大戦! レディィィ・ゴゥッ!!』

 

そんな中、実況者の試合開始の合図と共にゴングの音が響き渡り、試合が開始される………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

白秋とキングの関係が明らかに。
何れゼロが太正世界の地球を訪れると読んでいたキング。
やはりお見通しの様です。

一方、偽莫斯科華撃団に連れ去られたクラーラは、ジェネラルAの策略で試合に景品に。
機体と身体に無茶をさせて出撃したさくらですが、果たしてクラーラを助けられるのか?
次回、カミンスキーの恐るべき正体が明らかになります。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。
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