新サクラ大戦・光   作:宇宙刑事ブルーノア

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第5.5話『東雲神社の伝説』
チャプター1『不穏な予感』


第5.5話『東雲神社の伝説』

 

チャプター1『不穏な予感』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・格納庫………

 

「う~~ん………コレは駄目だな………」

 

「やはり無茶が祟った様だね………」

 

令士とイデが、格納庫に運び込まれたさくらの無限の残骸を見てそう言う。

 

スタジアム跡から奇跡的に回収出来たが、元々突貫修理だった上に、試合中にカミンスキーによって大破させられていた機体は、最早とっくに限界を超えていた。

 

「そう………ですか」

 

それを聞いて落ち込んだ様子を見せるさくら。

 

無茶をした自覚は有るが、やはり結果を聞くと気分が沈んでしまう。

 

「取り合えず、もし出撃が掛かった時は予備機として保管している三式光武を使うしかないな」

 

「すまない、さくらちゃん。出来る限り、新しい無限を手配出来る様に僕達も頑張るよ」

 

「い、いえ! そんな! 私が悪いんですから、そんな事言わないで下さい!」

 

申し訳無さそうにするイデに、さくらがやや慌ててそう返す。

 

「さくら」

 

「此処にいらっしゃったんですか」

 

とそこで、格納庫にあざみとクラリスが姿を見せた。

 

「あ、あざみ、クラリス。如何したの?」

 

「むう、今日は東雲神社の縁日の日」

 

「皆さんで行きましょうって仰ってたじゃないですか」

 

さくらが訪ねると、あざみが頬を膨らませてそう言い、クラリスが補足する。

 

「! あ! そうだった!! ゴメンね、あざみ! それじゃあ、司馬さん、イデさん。これで」

 

「ああ、気を付けてな」

 

「楽しんで来るんだよ~」

 

慌てて令士とイデに挨拶をすると、さくらはあざみ、クラリスと共に格納庫を後にした。

 

「………しかし、先生。コレは実際、厄介な事態ですよ」

 

「うむ………」

 

それを見届けると、令士とイデは難しい顔になる。

 

霊子戦闘機の手配事態はすぐに済む。

 

問題はそれをさくらに合わせて調整するという事である。

 

一口に霊力と言っても、その性質は1人1人違っており、その為、霊子甲冑も霊子戦闘機も、搭乗する隊員に合わせて調整やカスタマイズを行う必要が有るのだ。

 

「さくらちゃんは元々潜在的な霊力が高い上に、この所は実戦経験の賜物か、それが更に伸びている………」

 

「喜ばしい事だけど、その分霊子戦闘機の調整も難しくなって来ている………」

 

「下手をしたら、無限じゃさくらちゃんの霊力を受け止め切れない可能性が有ります」

 

そう懸念する令士とイデ。

 

実際に彼女の霊力の上昇は凄まじく、偽莫斯科華撃団との件が無くとも、何れ彼女の無限は限界を迎えていた可能性が有る。

 

「如何したものかな………?」

 

考え込むイデは珍しく、困った様な表情を見せるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・WLOFの滞在拠点………

 

幻庵の執務室………

 

「クソッ! クソッ! クソッ!」

 

悪態を吐きながら書類の束を引っ繰り返しているミスターG。

 

「何故私がこの様な事を………」

 

その顔は怒りと屈辱に歪んでいる。

 

世界華撃団大戦の2回戦、帝国華撃団と(偽)莫斯科華撃団の対戦の後………

 

ジェネラルAの工作により、偽莫斯科華撃団の正体や降魔人間の事が世間に知られる事は無かったが、当然ながら多くの情報が秘匿された事と、試合会場にまたも怪獣の出現を許した事で、WLOFの支持は更に低下。

 

預かり知らぬ間に偽物を自国の華撃団扱いされていた露西亜も、遂にWLOFから脱退。

 

現在はウルティメイト華撃団入りの審査を受けている状況である。

 

即ウルティメイト華撃団入りとならなかったのは、降魔人間の研究をしていた事がウルティメイト華撃団側に知られていた為、流石にすんなりにとは行かなかったのだ。

 

それでも、華撃団不在という状況を1日でも早く改善したい露西亜は、各国に低身低頭な姿勢を取り、信頼回復に必死となっている。

 

最早WLOFの権威は地に落ちたも同然。

 

にも拘わらず、ジェネラルAはそれに対し何ら手を打とうとしていない。

 

「ふざけおって………私が今までどんな思いで今の地位を築き上げたと思っているんだ………」

 

降魔皇の為と心底嫌な人間の振りをし続けていた自分の努力を無に帰す様なジェネラルAに恨みを募らせながら、尚も書類を引っ繰り返し続けミスターG。

 

以前、夜叉から受けた報告の内容を探しているのだ。

 

あの開幕式以来(実際はそれよりも更に前からなのだが)、夜叉とは連絡が取れていない。

 

更にミスターIを始めとした直轄の黒服部隊は、以前あざみと八丹斎との騒動で全滅。

 

朧はジェネラルAに付いている為、ミスターGは使える手駒を全て失っていた。

 

なので全ての事を自分でやらなけらばならないと言う、彼からしてみればかなり屈辱極まりない状態だった。

 

「! 有った! コレだ!!」

 

漸くミスターGは目当ての資料を見つける。

 

それは夜叉が消息不明になる直前に送って来た『帝鍵』らしき物が在る可能性が高い場所のデータだった。

 

「『帝鍵』さえ有れば降魔皇様は復活出来る………そうすれば私こそが真の腹心だと認められる筈だ! 見ていろ、アゴナ!!」

 

邪悪な笑みを浮かべてそう言い放つミスターG。

 

その資料の上部には、『東雲神社』と言う文字が刻まれていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

何かの工場を思わせる場所にて………

 

「漸く完成か………」

 

青い衣装に身を包んだ男が、カプセルの様な物の前でそう呟く。

 

そのカプセルには所々赤いランプが付いており、それが点滅していて、時折蒸気を噴き出している。

 

徐々に点滅と蒸気を噴き出す感覚が短くなって行ったかと思うと、やがてピタリと停止する。

 

そしてカプセルが、まるで卵の殻が割れたかの様に2つに別れたかと思うと、中から人影が現れ、ゆっくりと青い衣装の男の前に歩み出て来た。

 

「…………」

 

それは、サロメ星人に拉致された夜叉だった。

 

そう………

 

青い衣装の男の正体は、サロメ星人なのだ。

 

「…………」

 

サロメ星人の前でジッと佇む夜叉。

 

その姿は、以前の黒いマントに灰色の衣裳ではなく………

 

初代帝国華撃団が使用していた桜色の霊子甲冑用戦闘服姿となっている。

 

しかし、手足と腰部に、銀色のプロテクターの様な物が取り付けられているという差異がある。

 

「仮面を取って構わんぞ、夜叉………いや、『真宮寺 さくら』」

 

「了解しました………」

 

サロメ星人にそう言われると、夜叉は特徴であったその仮面を外す。

 

「…………」

 

仮面の下から現れたのは、『真宮寺 さくら』の顔であった。

 

しかし、その目から光は消えており、表情は全く無く、一切の感情を感じさせない。

 

「気分は如何かな?」

 

「スキャン開始………スキャン完了。異常箇所無し。システム、オールグリーン」

 

サロメ星人の問いに、真宮寺 さくら(?)はまるで機械かロボットを思わせる返答を返す。

 

「宜しい………では、お前に初任務を与える」

 

「任務、了解………任務内容をインプットします」

 

「帝国華撃団の基地である大帝国劇場を襲撃せよ。目的は『お前達』の性能テストだ。可能な限り、データを収集した後に帰還せよ」

 

「インプット完了………大帝国劇場を襲撃、戦闘データを収集します」

 

と、真宮寺 さくら………

 

否、『にせ真宮寺 さくら』がそう言ったかと思うと………

 

その背後に、にせ真宮寺 さくらが出て来た物と同一のカプセルが多数出現!

 

次々と開いたかと思うと、何と!!

 

多数の夜叉が、ぞろぞろと湧き出る様に現れた!!

 

「「「「「「「「「「…………」」」」」」」」」」

 

仮面のスリットの部分を怪しげに発光させながら無言で佇む、にせ真宮寺 さくらと同様に手足と胴体に銀色のプロテクターを付けた夜叉(SR)軍団。

 

かなり不気味な光景だ。

 

「行け! 真宮寺 さくら! 夜叉(SR)軍団よ!!」

 

「「「「「「「「「「サロメ星に栄光を!!」」」」」」」」」」

 

サロメ星人の号令が掛かると、にせ真宮寺 さくらと夜叉(SR)軍団は、右手を掲げる様なポーズを執り、そう声を挙げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そんな事が起きているとが露知らず………

 

帝国華撃団のメンバーは………

 

 

 

 

 

東雲神社・境内………

 

「わあ~~!」

 

「賑やかですね」

 

屋台が立ち並ぶ境内の様子を見て、あざみとクラリスが感嘆の声を漏らす。

 

「コレが日本のお祭り………縁日なのね………」

 

初めて縁日を見たアナスタシアは、興味深げな様子を見せている。

 

「正直、意外だったな。アナスタシアも参加したのは。縁日に興味が有ったのかい?」

 

そんなアナスタシアの姿を見ながら、誠十郎がそう尋ねる。

 

「縁日にと言うより、初穂が披露する神楽の方に興味が有ってね」

 

「皆~! コッチコッチ~!」

 

と、アナスタシアがそう返していると、神楽殿の方に進んでいたさくらから皆に呼び声が掛かる。

 

幼馴染の実家という事で、色々と分かっている様だ。

 

「ふふ、お呼びみたいね」

 

「ああ、先ずは初穂に挨拶しないとな」

 

アナスタシアと誠十郎はそう言い合うと、あざみとクラリスを連れて、神楽殿へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神楽殿へと向かう途中の道にて………

 

その路肩に、小さな祠の様な物が在った。

 

「ん? この祠は………?」

 

気になった誠十郎が近づいて中を覗き込むと、仏像と共に刀の様な物が奉られていた。

 

「あ! 神山隊長! 駄目ですよ、あんまり近づいちゃ! それは封印の祠なんですから!」

 

それに気づいたさくらが注意を飛ばして来る。

 

「封印の祠………?」

 

注意を受けた誠十郎が下がりながら首を傾げる。

 

「ハイ。前に初穂から聞いたんですけど………この辺りでは嘗て、9つの尻尾を持つ巨大な狐の妖怪が暴れ回っていたそうなんです」

 

「9つの尻尾………ひょっとして、『九尾の狐』?」

 

さくらの説明に、あざみは9本の尻尾を持つ狐の妖怪と聞いて、有名な『九尾の狐』を思い起こす。

 

「そうとも言われてます。姿を自在に消す事が出来、狐火を使って村々を焼き払っては家畜や人を食べ回っていたそうです」

 

「人食い妖怪………」

 

人をも食べると言う話に、クラリスがやや顔を青くする。

 

「人々は困り果てていたそうですけど、そんなある日………『錦田小十郎景竜』と言う旅の剣豪が現れたんです」

 

「『錦田小十郎景竜』?」

 

「『物の怪を見極める力』を持っていて、全国を放浪して妖怪を退治してきた侍なんです。その人とこの地の居た巫女が協力し、巫女が封印の神楽で九尾の狐を弱らせ、景竜が斬り捨てたと」

 

「凄い話だな………」

 

感心した様に誠十郎が呟く。

 

「そして景竜さんは、再び九尾の狐が蘇る事が無い様に、この祠を立て、自らの刀を奉納して封印の楔にしたそうです」

 

「すると、今日初穂が舞う神楽と言うのが、その封印の神楽ってワケね」

 

「ハイ、そうなんです。その巫女さんが東雲神社の初代神主で、代々そう言い伝えられてるそうなんです」

 

アナスタシアの推察を肯定するさくら。

 

「成程。この地の平和が保たれているのはその錦田小十郎景竜と初穂さんのご先祖様のお陰なんですね」

 

「良いお話」

 

クラリスとあざみもそう感想を告げる。

 

(錦田小十郎景竜か………まるでウルトラマンみたいな人だったんだろうな)

 

『この地球にも昔、俺達みたいな奴が居たって事か』

 

誠十郎も、ゼロとこっそりそんな会話を交わす。

 

「さ、道草を食っちゃいましたね。急ぎましょう」

 

と、すっかり道草を食ってしまったとさくらが言い、一同は改めて神楽殿へと向かう。

 

「…………」

 

しかし、アナスタシアだけが立ち止まり、祠の方を振り返った。

 

(封印の楔として使われている刀………ひょっとすると………)

 

その脳裏に、ある可能性を過らせながら………

 

「アナスタシアー! 如何したーっ!?」

 

と、足が止まっていた事に気付いた誠十郎が、やや遠方からアナスタシアに呼び掛ける。

 

「ああ、ゴメンなさい、キャプテン。何でも無いわ」

 

その声でアナスタシアは考えを一旦振り払って、再度足を踏み出す。

 

と、誠十郎達が居なくなった後………

 

奉納されている景竜の刀が、カタカタと音を立てていた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

前回での無茶が祟り、さくらの無限が廃棄に。
三式光武を再利用しますが、更に代替機もすぐ用意出来ない状況に。

一方、手駒を全て失ったミスターGは自ら動く事に。

そして、1話で行方不明となっていた夜叉の所在が明らかに………
何と、にせ真宮寺 さくらに改造されていた上に、量産されていました!!
夜叉ってロボットみたいな感じだったから、サロメ星人なら解析して量産出来るんじゃないかと思いまして。
それが帝劇を襲撃に来る………
恐ろしい光景です。

そして東雲神社を訪れた花組メンバーは、神社の伝説を聞きます。
さて、分かる人は分かるでしょうが、話に登場した『錦田小十郎景竜』………
そう、ウルトラマンティガで出て来た、あの侍です。
実はガイア(小説)やコスモスでもその存在が匂わされていたりします。
なので、ちょっと出したいなと思って、初穂のエピソードに絡めてみました。
今回彼が封印した妖怪とは、果たして?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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