新サクラ大戦・光   作:宇宙刑事ブルーノア

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チャプター3『小さな英雄』

チャプター3『小さな英雄』

 

友好珍獣 ピグモン

 

怪獣酋長 ジェロニモン

 

暴君怪獣 タイラント 登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都郊外・さくらの実家付近………

 

キュイキュイキュイ~

 

「この近くなのか? ジェロニモンが居るのは………」

 

ピグモンに案内されて、誠十郎とさくらがやって来たのは、岩肌が剝き出しになっている岩石地帯だった。

 

「…………」

 

一方で、さくらはまだ暗い表情で、俯き加減のままだった。

 

「さくら………」

 

『大丈夫なのかよ………?』

 

その様子に、ゼロも不安を隠せない。

 

本来ならば置いて行きたかったところだが、事が事だけに少しでも戦力が欲しかった。

 

また、戦いの場に引っ張り出せば戦わざるを得ないだろうと言うショック療法の意味も有った。

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!

 

とそこで、唸り声の様な咆哮が聞こえて来た。

 

「!!」

 

「! アッチか!!」

 

すぐにその咆哮が聞こえて来た方角を特定する誠十郎。

 

キュイキュイキュイ~

 

ピグモンが真っ先に進もうとしたが………

 

「待て、ピグモン。君は此処で待っていてくれ」

 

誠十郎はそう言って押し止める。

 

キュイキュイキュイ~

 

「此処から先は危険だ。コレは俺達、帝国華撃団の仕事なんだ。分かってくれ」

 

抗議の様に鳴くピグモンを、誠十郎はそう言って説き伏せる。

 

「さくら、行くぞ」

 

「あ………」

 

そして、落ち込んだままのさくらの手を取り、半ば強引に連れて行く。

 

キュイキュイキュイ~………

 

そんな2人を、ピグモンは何処か納得行かない様子で見送ったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

岩石地帯の奥地………

 

「! 居た!」

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!

 

誠十郎の視界に、黒い身体に白い髭を持ち、頭部から背中に掛けてカラフルな羽毛が生えている怪獣………『怪獣酋長 ジェロニモン』の姿が飛び込んで来た。

 

ジェロニモンは何やら怪しげな動きを繰り返しており、その動きをする度に眼前で赤紫色の怪しい光が走る。

 

「アレは………?」

 

『多分、怪獣達を復活させる為の儀式だろう』

 

(だとしたら、早く止めないと。さて、如何する?………)

 

ゼロの推測に、誠十郎は思案顔となる。

 

「…………」

 

一方でさくらは、暗い表情のまま、今度は空を見渡していた。

 

「? さくら? 何をやってるんだ?」

 

「………ゼロさんが、今に来ますよ」

 

この期に及んでそんな事を言い放つさくら。

 

「! いい加減にしろ、さくら! 棚から牡丹餅の精神で勝利が得られると思っているのか!? ゼロは俺達が精一杯努力して戦って、初めて力を貸してくれるんだ!!」

 

そんなさくらの態度に、誠十郎は思わず怒鳴り声を挙げてしまう。

 

すると………

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!?

 

その怒鳴り声が聞こえたのか、ジェロニモンがギョロリと誠十郎とさくらに視線を向けた!

 

「!? しまった!? 気付かれたっ!?」

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!!

 

誠十郎が焦った瞬間、ジェロニモンが大きく咆哮。

 

すると、上空から7つの青い火の玉の様な物が降りて来る。

 

「!? アレはっ!?」

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!!

 

その7つの青い火の玉を、念力で1つに合わせて行くジェロニモン。

 

そして巨大な1つの青い火の玉が出来上がったかと思うと………

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

『暴君怪獣 タイラント』が出現した!!

 

『タイラントッ! よりによってコイツかよ!!』

 

(ゼロ! あの怪獣はっ!?)

 

『暴君怪獣 タイラント………7体の怪獣・超獣・星人が合わさって出来た合体怪獣だ。嘗て親父を含めた5人のウルトラマンを倒した事も有る奴だ』

 

(なっ!? ウルトラマンを5人も!?)

 

嘗て、ゾフィー・初代ウルトラマン・ウルトラセブン・ウルトラマンジャック・ウルトラマンAを1度は倒した事もあるタイラントの強さに戦慄する誠十郎。

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!!

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

とそこで、ジェロニモンが指示を出す様に右手を突き出したかと思うと、タイラントが誠十郎とさくらに向かって迫って来た!

 

「! マズイッ! さくらっ!!」

 

「あっ!?」

 

さくらの手を取り、タイラントから逃げる様に走り出す誠十郎。

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

そんな2人を、タイラントは地響きを立てながら追い掛ける。

 

そして、2人に向かって『異次元宇宙人 イカルス星人』の耳から、アロー光線を放つ。

 

逃げる2人の周りで、次々に爆発と共に火柱が上がる!

 

「うおっ!?」

 

「!!」

 

それでも必死に逃げる誠十郎とさくら。

 

「ゼロさーん! 何をやってるんですかーっ!! 早く来て下さーいっ!!」

 

そんな中で、さくらは情けなくゼロに助けを求める。

 

「さくら………」

 

『…………』

 

そんなさくらの姿に、誠十郎もゼロも何も言えなくなる。

 

「ゼロさーんっ!!」

 

尚もゼロに助けを求めるさくら。

 

と、そこで!

 

タイラントの頭に砲弾が命中!

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!?

 

爆発と共に、タイラントの動きが一瞬止まる。

 

「!!」

 

「アレはっ!?」

 

さくらが驚き、誠十郎が空を見上げると、そこには………

 

主砲の砲口から硝煙が立ち昇らせている翔鯨丸の姿が在った!

 

「何ちゅう奴や! スペシウム弾頭弾が大して効いてへんで!?」

 

「今までの怪獣とは一味違う様ですわね」

 

バルタン星人・アシサを倒したスペシウム弾頭弾を食らってもピンピンとしているタイラントの姿を見て、ブリッジのこまちとすみれがそう声を挙げる。

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

とそこで、タイラントがお返しとばかりに、翔鯨丸を見上げながら口を開いたかと思うと、火炎放射『デスファイヤー』を放つ!

 

「! 回避っ!!」

 

「クウッ!!」

 

すみれの声で、操舵を担当したカオルが舵輪を目一杯切る。

 

直撃は避けたものの、左翼に命中し、炎上する。

 

「左翼炎上! 緊急消火装置作動!!」

 

「不時着よ! 花組を射出して!!」

 

カオルの報告が挙がる中、すみれの声が響き、翔鯨丸から初穂機・あざみ機・クラリス機・アナスタシア機が射出される。

 

「ゼットンッ!!」

 

クラリスが機体が着地すると同時にゼットンを召喚する。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

タイラントとゼットンが対峙する。

 

「神山! さくら! 無事か!?」

 

「初穂! 助かった! ありがとう!!」

 

誠十郎とさくらの安否を確認する初穂に、誠十郎がそう返す。

 

「2人供、早く翔鯨丸に!」

 

「隊長の無限が用意して有る」

 

「それと、さくらの新しい機体もね」

 

クラリス・あざみ・アナスタシアもそう言って来る。

 

「!? 新しい機体!?」

 

新しい機体と言う言葉を聞いたさくらが僅かに反応する。

 

「さくら! 行くぞっ!!」

 

誠十郎は再度さくらの手を取り、不時着した翔鯨丸に向かって走り出す。

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

その直後、タイラントとゼットンが激突する。

 

「良し! ゼットンを援護するぞ!!」

 

「「「了解っ!!」」」

 

そして初穂達はゼットンの援護に動くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、不時着した翔鯨丸へと向かった誠十郎とさくらは………

 

「もう少しだ!」

 

翔鯨丸まであと少しの場所まで辿り着いていた。

 

しかし、そこで………

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!

 

岩山の陰からヌッとジェロニモンが姿を見せた。

 

「!? ジェロニモン!? 何時の間に!?」

 

誠十郎が驚愕した瞬間………

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!

 

ジェロニモンは口から白いガス………『反重力ガス』を放って来た!!

 

「! さくらっ!!」

 

「キャッ!?」

 

咄嗟にさくらを突き飛ばした誠十郎だったが、自身は反重力ガスを真面に浴びてしまう。

 

「!? うわあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!?」

 

途端に、誠十郎の身体は大空高くへと舞い上がった。

 

その手から持ちっ放しだった天宮國定が零れ、さくらの傍に落ちる。

 

「! 誠兄さああああぁぁぁぁぁーーーーーーんっ!!」

 

さくらの悲鳴の様な声が響く中、誠十郎の姿が空の青の中に吸い込まれて行く。

 

「お、落ちるっ!?」

 

上空高くへ舞い上げられた誠十郎は、やがて反重力ガスの効き目が切れ、真逆様に落下する。

 

『チイッ! 代わるぜ、誠十郎っ!!』

 

するとそこで、ゼロの意識が誠十郎と入れ替わる。

 

「よっ! ほっ! ハアッ!!」

 

そして、一緒に舞い上げられて落下していた岩々を足場に、徐々に落下スピードを落とす。

 

やがて、地面が見えて来たかと思うと………

 

「セヤッ!!」

 

落下地点に大きくクレーターを作りながらも、難なく着地して見せた!!

 

『た、助かったぁ………』

 

「安心してる暇はねえ、誠十郎! さくらが危ねえっ!!」

 

誠十郎が安堵に息を吐くが、誠十郎(ゼロ)はすぐさま、ウルティメイトブレスレットからウルトラゼロアイを取り出す。

 

やや離れた場所で、ジェロニモンが今度はさくらに迫っていた。

 

「デュ………」

 

そしてそれを右手で掴むと、目に装着しようとしたが………

 

「ゼロさーんっ!! ゼロさーんっ!!」

 

そこへ、さくらの情けない悲鳴が聞こえて来る。

 

「『!!』」

 

それを聞いた誠十郎とゼロの手が止まる。

 

果たして今変身して助けに入って良いのか?………

 

このままでは、さくらは一生ゼロに頼りっきりになってしまうのではないか?………

 

そんな思いが、2人の手を押し止めたのだ。

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!

 

「キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

遂にジェロニモンは、さくらを踏み潰しに掛かる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、その時!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キュイキュイキュイ~ッ!!

 

「「『!?』」」

 

響き渡った鳴き声に、誠十郎達が驚愕する。

 

キュイキュイキュイ~ッ!!

 

現れたのは、置いて来た筈のピグモンの姿だった。

 

「!? ピグモンッ!!」

 

キュイキュイキュイ~ッ!!

 

誠十郎の驚愕の声が響く中、ピグモンは大きく鳴き声を挙げながら、ピョコピョコと激しく跳び回る。

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!?

 

そんなピグモンの姿に気付くジェロニモン。

 

キュイキュイキュイ~ッ!!

 

するとピグモンは、更に大きく鳴き声を挙げ、激しく跳び撥ねる。

 

まるでジェロニモンを挑発してるかの様に………

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!!

 

その挑発に乗り、ジェロニモンは標的をピグモンに変えた!

 

キュイキュイキュイ~ッ!!

 

ピグモンは挑発を続けながら、ジェロニモンをさくらから引き離して行く。

 

「! ピグモンッ!!」

 

「駄目! 逃げてっ! 逃げて、ピグモンッ!!」

 

キュイキュイキュイ~ッ!!

 

誠十郎とさくらの悲鳴が響き渡るが、ピグモンはジェロニモンへの挑発を止めない。

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!!

 

と、そこでジェロニモンは、近くに在った岩山を右腕で払った!!

 

巨大な岩々が宙に舞い、ピグモンへと向かう!

 

キュイキュイキュイ~ッ!!

 

逃げるピグモンの周囲に岩の雨が降り注ぐ。

 

そして遂に!!

 

キュイキュイキュイ~ッ!?

 

1発の岩が、ピグモンへと直撃した!!

 

「! ピグモンッ!!」

 

「クウッ!!」

 

慌ててピグモンの元へと走るさくらと誠十郎。

 

ゼットーン………ピポポポポポポポ………

 

キュリラアアアアアアアーーーーーーーーッ!!

 

とそこで、ゼットンとタイラントの声が響いて来たかと思うと、ジェロニモンはゼットンに苦戦するタイラントの姿を目撃する。

 

グロロロロロォォォォォォーーーーーーーッ!

 

ジェロニモンは、ピグモンを始末して満足したのか、タイラントの方へと向かうのだった。

 

「ピグモンッ!!」

 

「ピグモンッ! しっかりしろっ!!」

 

その間にピグモンの元へと辿り着いたさくらと誠十郎。

 

誠十郎が倒れていたピグモンの身体を抱き起すが………

 

キュイキュイキュイ~………

 

ピグモンは最後に弱弱しく鳴いたかと思うと、ゆっくりとその瞳を閉じ、動かなくなった………

 

「! ピグモンッ!! ピグモオオオオォォォォォォーーーーーーーンッ!!」

 

「そ、そんな………」

 

「!!」

 

さくらが動揺を露わにしていると、誠十郎が掴み掛った!!

 

「!? 誠兄さん!?」

 

「さくら! ピグモンだって俺達の為に命を投げ出して戦ってくれたんだぞ! 帝国華撃団の隊員として、お前は恥ずかしいと思わないのか!!」

 

そしてそのまま、さくらの頬にビンタを見舞った!!

 

「!!」

 

さくらは地面に倒れたかと思うと、赤くなった頬を押さえながら立ち上がる。

 

「………私が………私が間違ってた………ピグモン………ゴメンね………」

 

涙を流しながらピグモンへと詫びたかと思うと、今までとは打って変わり、覚悟を決めた表情となった。

 

「神山隊長………ピグモンを、お願いします」

 

天宮國定を手に、さくらは翔鯨丸の方へと駆け出した。

 

「…………」

 

それを見送ると、誠十郎はピグモンの亡骸を抱き上げ、岩山の陰へと退避する。

 

「………ゼロ、行くぞ!」

 

『ああ、コレ以上の犠牲は………出させやしねぇっ!!』

 

「デュワッ!!」

 

そして、改めてウルトラゼロアイを装着した。

 

「セエエヤァッ!!」

 

溢れた光の中からゼロが飛び出し、ジェロニモンとタイラントの元へと向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

ジェロニモンの怪獣軍団結成阻止に動く誠十郎とさくらだったが、ジェロニモンの呼び出したタイラントによって窮地に陥る。
自信を喪失していたさくらは只管にゼロに助けを求めるばかりで、戦おうとすらしなかった。
しかし………
ジェロニモンに狙われた彼女を助ける為に、ピグモンが犠牲に………
それを見た誠十郎の叱咤により、さくらは自分が間違っていた事に気付いたのだった。

ピグモンに関してですが、生存の方向も考えてはいたのですが、それではさくらが立ち直る理由が弱くなってしまうのと、今後の展開を考え、やはりこの形となりました。
ご了承ください。
無論、只死んだワケではありません。
ピグモンの死は後々へ大きく影響を与えます。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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