チャプター1『誇り無き騎士』
第6.5話『黒騎士と青い海の光』
チャプター1『誇り無き騎士』
帝都・浅草………
帝劇・花やしき支部………
翔鯨丸用の予備ドッグに、1隻の宇宙船が鎮座していた。
その宇宙船の名は、『ネオブリタニア号』
リクの生活拠点である『星雲荘』だ。
「スゲェ~ッ! コレが外宇宙技術で作られた宇宙船かぁ~っ!! うお~~っ!! 見た事もねえトンでもないテクノロジーの塊じゃねえかっ!!」
ネオブリタニア号を見上げた後、手元の調査資料を見て興奮した様子で歓喜の声を挙げる令士。
技術屋として、異星のテクノロジーに触れられる事がとても嬉しいらしい。
「オイオイ、司馬くん。燥ぐのは構わないけど、ちゃんとデータを収集するんだぞ。初めて真面に解析出来る代物なんだから」
そんな令士に向かってイデが諫める様にそう言う。
コレまでにも帝都の襲来した異星人の物と思われる様々なオーバーテクノロジーを回収していたが、その多くは戦闘等の影響で破損した物ばかりであった。
その為に、テクノロジーの解析は遅々として進んでいなかったが、ネオブリタニア号の存在により、初めて真面に異星のオーバーテクノロジーを解析出来るのだ。
「それにこの宇宙船は『彼』の厚意で解析させて貰えてるんだからね」
「分かってますよ! さあ~、忙しくなるぞぉっ!!」
まだワクワクを隠し切れない様子で、ネオブリタニア号の方へと向かう令士。
「やれやれ………」
そんな令士の姿を見て、イデは困った様に笑った後、ネオブリタニア号を見上げる。
(コレのデータがあれば『アレ』の開発は一気に進みそうだな………)
そう考えながら、イデは令士と共に解析へと向かうのだった。
◇
一方、その頃………
銀座の帝劇・地下指令室では………
「えっと………改めて初めまして。朝倉 リク、ウルトラマンジードです。これからよろしくお願いします」
「ペガッサ星人のペガです。僕もよろしくお願いします」
リクとペガが、すみれと花組一同に向かって挨拶をしていた。
「俺は帝国華撃団・花組の隊長、神山 誠十郎。そして、彼女達が花組の隊員達だ」
「私は天宮 さくらです」
「東雲 初穂だ」
「望月 あざみ」
「クラリッサ・スノーフレークです。クラリスって呼んで下さい」
「アナスタシア・パルマよ。よろしく」
それに返礼する様に、花組一同が自己紹介する。
「帝国華撃団総司令の神崎 すみれですわ。昨日の戦いでは助かりました。改めて感謝を申し上げますわ」
最後にすみれが自己紹介をしながら、倫敦華撃団戦での事で改めて感謝を伝える。
「いえ、そんな。気にしないで下さい。ウルトラマンとして当然の事をしたまでですから」
「流石ですね、ジードさん。ゼロさんから聞いてた通り、立派な後輩さんですね」
そう返すリクに、ゼロから話を聞いていたクラリスが、輝く目で尊敬の眼差しを送る。
「あ、リクって呼んで下さい。いや~、それ程でも………」
そんなクラリスの様子を見て、リクが気恥ずかしそうに頭を掻く。
「ねえ、朝倉くん。ちょっと聞きたい事が有るのだけど………」
するとそこで、アナスタシアがリクに質問して来る。
「ハイ、えっと………アナスタシアさんでしたね。何ですか?」
「貴方は普段はそう言う姿をしているの?」
「え? 如何言う事ですか?」
質問の意味が良く分からず首を傾げるリク。
「貴方が普段は人間と同じ姿をしているのだとしたら………ウルトラマンゼロも普段は人と同じ姿をしているのかしら?」
アナスタシアはやや目付きを鋭くしてそう質問を続ける。
如何やら、以前レオがやって来た時の疑惑を検めようとしている様だ。
「えっ!? ゼロも普段はって………今、そこに………」
「! わああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ!!」
それを聞いたリクが、誠十郎の方に視線を向けようとした瞬間、当の誠十郎が大声を挙げる。
「おわっ!? な、何だよっ!?」
「ど、如何したんですか? 『誠十郎』さん!?」
驚く初穂と、怪訝な顔を向けるさくら。
………さり気無く誠十郎の事を名前呼びしながら。
「あ! いや、その!………け、今朝のゴミ出しを忘れてたのを思い出して!!」
誠十郎はやや動揺を隠し切れないまま、そう誤魔化しを掛ける。
「もう~、驚かせないで下さい」
「人騒がせ………」
クラリスとあざみが呆れた表情を向けて来る。
「まあ、何はともあれ、心強い味方が増えた事を歓迎致しましょう。ですが、皆さん。余り彼を頼りにし過ぎるのはいけませんよ。我々は帝国華撃団………人々を守る事が仕事なのですから」
そこで誠十郎をフォローしつつ、リクを歓迎しながらも戒める様にしてすみれが話を纏めた。
「「「「「了解!」」」」」
それを聞いたさくら達は、すみれに敬礼を返す。
(ゼロ、ひょっとして正体を隠しているの?)
とそこで、状況を察したリクが、テレパシーでそう尋ねて来た。
『ああ、コイツ等も防衛組織だからな。余り俺に頼り過ぎない様にしねえとな』
(そうだったんだ………ゴメン)
『いや、俺も説明し忘れてたからな。兎に角、アイツ等が自分で気付くか、俺達が明かさなきゃならなくなるまでは黙っといてくれ』
(うん、分かった)
リクは誠十郎の方を見ながら無言で頷いた。
「ねえ、貴方………」
「えっ? 僕?」
とそこで、あざみがペガの方に声を掛けた。
「会場で倫敦華撃団の隊長を助けた時のアレ………紛れも無く『忍法影潜り』。ひょっとして貴方も宇宙忍者なの?」
「え、ええ!?」
あざみの言葉に戸惑うペガ。
「あ~、あざみはバルタン星人の祖父に育てられた忍者でな」
「えっ!? あのバルタン星人に!?」
誠十郎がそう説明すると、ペガは今度は驚きの声を挙げる。
「えっと、あざみちゃん。アレは『ダーク・ゾーン』って言ってね。僕達ペガッサ星人が持っている科学技術で、忍術じゃないんだ。ゴメンね」
「そう………」
それを聞いたあざみが、ちょっと残念そうな様子を見せる。
「でも、凄いね! あのバルタン星人に育てられたなんて………正に現代に生きる忍者なんだ!」
「! あざみの事、忍者に見える!?」
「勿論! 何処から如何見て忍者だよ!」
「! そう………」
ペガの言葉に嬉しそうにするあざみ。
と、その時………
誠十郎のスマァトロンが鳴った。
「ん? こまちさんから?」
連絡を寄こして来たのはこまちだった。
『神山さん! 花組も連れて急いで売店に来てくれやっ!!』
『緊急連絡』と銘打たれた命題の内容は、文面からも慌てている様子が伝わって来た。
「こまちさん? 如何したんだ?」
「誠十郎さん? 如何したんですか?」
「こまちが如何かしたのか?」
思わず声を挙げてしまった誠十郎に、さくらと初穂が訪ねて来る。
「こまちさんが皆を連れてすぐ来て欲しいそうだ」
「こまちさんが?」
「何かあったの?」
誠十郎がそう説明すると、今度はあざみとクラリスが訪ねて来る。
「分からない。しかし、かなり慌ててるみたいだ」
「兎に角、行ってみましょう」
「あ、僕も行きます!」
「ペガも!」
アナスタシアがそう言うと、一同はこまちの待つ売店へと向かった(ペガはダークゾーンでリクの影に隠れて)
帝劇・売店前………
「お願いします! 神山くん達に取り次いで下さい!!」
「だからちょっと落ち着きやってっ!!」
誠十郎達が売店の近くまで来ると、何やら揉めている様子の声が聞こえて来る。
「こまちさん! 如何したんですか!?」
「ああ、神山さん! 来てくれはったか!」
誠十郎を先頭に花組一同が姿を見せると、こまちから安堵の声が漏れる。
「神山くん!」
するとそこで、こまちと揉めていた人物………
『アーサー』が声を挙げる。
「!? アーサーさんっ!?」
「「「「「!?」」」」」
アーサーの姿を見た誠十郎と花組一同は驚きを露わにする。
「あの人は………」
『ペガが助けた人だ』
「重傷の筈じゃ」
一方でリクはペガに言われて思い出す。
世界華撃団大戦・準決勝に於いて、ランスロットが変貌したアーマードダークネスに機体ごと踏み潰されたアーサー。
幸いにも一命は取り留めたが、当然ながら重傷であり、倫敦華撃団の空中戦艦の病室に入院中の筈である。
それを表すかの様に、頭には包帯が巻かれ、病院着姿の上に戦闘服の上着を羽織っている状態だった。
如何やら、病室を抜け出して来た様子だ。
更に、如何いうワケか、自分の剣では無く、ランスロットの二振りの剣を携えている。
「良かった………来て………くれたか………」
誠十郎達の方へ歩み寄ろうとして、そのままバタリと倒れるアーサー。
「! アーサーさんっ!」
「「「「「「「「!!」」」」」」」」
誠十郎が慌てて駆け寄って助け起こし、花組一同も傍に集まる。
「何をやってるんですか! 貴方は入院中の筈でしょう! すぐに倫敦華撃団の空中戦艦に戻らないと!!」
「そ、それよりも………君達に………頼みが………有るんだ………! グウッ!!」
すぐに倫敦華撃団の元へ帰そうとする誠十郎だったが、それを遮る様に、アーサーは身体中に走る痛みに顔を歪めながらもそう言う。
「頼みって、一体?………」
「ランスロットを………! ウウッ!………探してくれ! グッ!」
「!? ランスロットさんが如何かしたんですか!?」
アーサーの口からランスロットの名が出た事で、さくらが反応する。
「彼女は………今………行方不明なんだ………」
「「「「「「「「!?」」」」」」」」
その言葉に、花組一同は再度驚きを露わにする。
「! ガハッ!!」
とそこで、とうとう内臓にダメージが来たのか、アーサーが吐血する。
「! アーサーさんっ!!」
「こらアカン! 兎に角、先ずは医務室や!!」
「ハイッ!」
「手伝いますっ!!」
一先ずは、アーサーを医務室へと連れて行く事にした一同だった………
◇
一方、その頃………
帝都の一角にて………
「…………」
1人の少女が、フラついた足取りで通りを歩いていた。
行方不明となっていたランスロットだ。
「やだ、何アレ?………」
「気味悪いな………」
「危ねえぞ、近づくな」
道行く人々は、ランスロットの姿を見ると、そんな事を呟きながら道を開けるか、遠巻きに見ている。
それもその筈………
今の彼女は普段はポニーテールに纏めていた髪をボサボサの状態で垂らしており、纏っている隊員服もボロボロ………
全体的に薄汚れており、顔と目に生気は無い………
そして、彼女が何より自慢しており、騎士の誇りである筈の剣を携えていない………
そんな状態でフラつきながら歩く姿は、浮浪者か或いは幽鬼を思わせる。
幸か不幸か、そんな姿により、彼女が倫敦華撃団のランスロットであると気付いている者はいなかった。
「………私には………もう………何も無い………華撃団の隊員の資格も………騎士の誇りも………強さも………剣も………」
ブツブツとそう呟きながら、フラフラと歩き続けるランスロット。
「………ハ………ハハハ………何も………何も無くなっちゃった………」
ランスロットは乾いた自嘲の笑いと共に涙を零す。
そんな彼女が向かっていた先は………
つづく
新話、投稿させて頂きました。
帝劇で厄介になる事になったリクとペガ。
ゼロの正体を探られるも、何とか誤魔化します。
そこへ、入院中の筈のアーサーが重傷を押して参上。
ランスロットの捜索を願い出ます。
そして、街を浮浪者の様な姿で彷徨うランスロット。
果たして彼女に何があったのか?
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