新サクラ大戦・光   作:宇宙刑事ブルーノア

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チャプター2『嘗て過ちを犯した男』

チャプター2『嘗て過ちを犯した男』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・医務室………

 

「う、うう………」

 

「全く、無茶する人やな。動けるレベルの怪我や無いのに」

 

ベッドに寝かしつけられ呻き声を漏らしていたアーサーを診察・治療していたこまちがそう呟く。

 

「よっぽど焦ってたんだな」

 

「ランスロットさんが行方不明って言ってましたけど………」

 

「一体如何言う事でしょう?」

 

その様子を見守っていた花組一同の中で、初穂・さくら・クラリスがそう言い合う。

 

「彼女の事は気になっていたところだが………」

 

誠十郎が顎に手を当ててそう呟く。

 

上海華撃団の時と同様、アーマードダークネスと化し、破壊活動を行ったランスロットには批判の声が挙がっていた。

 

更に、上海華撃団の時とは違い、アーマードダークネスとなっていた際の彼女は、ある程度自意識を残していた。

 

つまり、正気では無かったとは言え、自分の意思で破壊活動を行っていたという事になる。

 

英吉利政府が真面ならば、彼女には相応の処分が下されなければならないし、何より彼女自身の罪悪感も半端ではない筈だ。

 

「やはり何らかの処分が下されたのかしら?」

 

「その通りだよ………」

 

「「「「「「「!?」」」」」」」

 

とそこで、アーサーが声を挙げたので、誠十郎達は驚きながら視線を向ける。

 

「ちょちょい! 喋ったらアカンって!!」

 

会話するのも辛い筈なのに喋り出そうとしているアーサーの姿を見て、こまちが焦る。

 

「今ランスロットは………倫敦華撃団を追放されようとしている」

 

しかし、アーサーは構わずに話しを続けた。

 

「!? 追放っ!?」

 

「やっぱり処分が………」

 

さくらが驚きの声を挙げ、クラリスも目を見開く。

 

「まだ確定では無いのだけど………如何やら彼女はそれを知ってしまい、それで姿を消してしまった様なんだ」

 

「けど、それは当然じゃない。アレだけの事を仕出かしたのよ。追放処分も妥当だと思うわ」

 

「オイ! アナスタシア!」

 

追放処分は当然と言うアナスタシアに、初穂が諫める様に言う。

 

「………ランスロットには………倫敦華撃団以外………もう居場所が無いんだ」

 

「? 如何言う事?」

 

「「「「「「「??」」」」」」」

 

しかし、続くアーサーの言葉を聞いて、あざみがそう言い、他の一同も首を傾げる。

 

「………彼女は」

 

そしてアーサーは、ランスロットの身の上について話し始めた………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

曰く………

 

ランスロットは実はかなり高い爵位の貴族の家の生まれ。

 

しかし、超が付くおてんば娘だった彼女は貴族………淑女としての暮らしと言うモノが根本から肌に合わず、家族と度々衝突。

 

やがて彼女が騎士道物語にハマり始め、剣を修行し始めると亀裂は決定的なモノとなった。

 

とうとう家を追い出されてしまったのだ。

 

その後は、武者修行の様な放浪の旅を続けて、やがてその腕前と霊力に高さに目を付けたWLOFに発見され、倫敦華撃団へと配属された。

 

度々自分を否定され、家からも追い出されてランスロットにとって、倫敦華撃団は唯一の居場所なのである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ランスロットさんにそんな事が………」

 

ランスロットの思わぬ過去を聞いて、さくらが思う所がある様な様子を見せる。

 

「それに………彼女は今、剣を握れなくなってしまったんだ」

 

「!? 剣を握れなくなった!?」

 

と、そう言葉を続けたアーサーに、初穂が驚きの声を挙げる。

 

「スタジアムでの事がトラウマになってしまったらしい………剣を手にしようとすると、身体が本能的に拒否してしまうんだ………」

 

「重傷………」

 

剣が全てだったランスロットが剣を手にする事さえ出来なくなってしまった事へ、あざみは信じられないと言った様子を見せる。

 

「頼む! 彼女には他に行く当てが無いんだ! 処分については僕が上と交渉してみせる! だから、ランスロットを………!? ガハッ!!」

 

とそこで、アーサーは再び吐血した。

 

「!? アーサーさん!!」

 

「ああ、無茶し過ぎやって! そんなじゃ治るモノも治らへんって!!」

 

誠十郎が慌てると、こまちは業を煮やした様に鎮静剤入りの注射器を取り出し、素早くアーサーへと打ち込んだ。

 

「うっ!………」

 

短く呻き声を漏らしたかと思うと、そのまま眠る様に意識を失うアーサー。

 

「ふうう~~~~、漸く大人しくなったわ」

 

額の汗を拭いながらやれやれと言った具合にこまちは呟く。

 

「アイツにも色々と有ったんだな………」

 

アーサーから聞いたランスロットの話を思い出しながら、初穂が複雑そうな表情を見せる。

 

「それで?………如何するの、キャプテン?」

 

そこで、アナスタシアが誠十郎を見ながら訪ねる。

 

「探しましょう! ランスロットさんをっ!!」

 

と、一も二も無くもそう言ったのはリクだった。

 

「ランスロットさんだって心の底から暴れたいと思ってたワケじゃないよ! このままじゃ可哀そうだよ!!」

 

ペガもそう言って来る。

 

「勿論だ。彼女は国は違えど、同じ華撃団の仲間だ。俺達はコレからより強大な敵と戦わなければならない。過去の蟠りは捨て、共に未来を守らなければならないんだ」

 

「「「「…………」」」」

 

「フッ、仕方ないわね………」

 

誠十郎の言葉にさくら・初穂・あざみ・クラリスは無言で頷き、アナスタシアもしょうがないと言う。

 

「良し! 手分けしてランスロットさんを探すんだ!!」

 

「「「「「「「了解っ!!」」」」」」

 

花組一同とリクとペガは、ランスロットを捜索しに、帝都の街へ繰り出すのだった(ペガはリクの影の中に隠れて)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、その頃………

 

当のランスロットは………

 

「…………」

 

波しぶきが激しく打ち付けている岸の上に居た。

 

「…………」

 

しぶきでずぶ濡れになりながらも、光の無い目で荒れている海を見やっているランスロット。

 

「…………」

 

やがて、ゆっくりと足を進め始めた。

 

ドンドン崖に近づいて行くランスロット。

 

そして遂には崖から足を踏み外す………

 

 

 

 

 

………かに思われた瞬間!!

 

ランスロットの腕を掴み、引き留めた人物が居た!

 

 

 

 

 

「…………」

 

光の消えた目のまま振り返るランスロット。

 

「…………」

 

ランスロットの腕を掴んでいたのは、黒い服を来た長髪の男だった。

 

良く見ると、ランスロットの腕を掴んでいる右腕に、奇妙なブレスレットが付いていた。

 

「………何で止めるんだよ?」

 

恨みがましい様子で男に向かってそう言うランスロット。

 

「………お前が何故死のうとしているかは知らん。だが、海を死に場所にしようとしているのは許せないな」

 

男はランスロットを睨む様に見据えながらそう言う。

 

「………放っておいてよ………そんなの私の勝手じゃないか………」

 

そこで、力尽きたかの様にへたり込むランスロット。

 

「海は地球で初めて生命が生まれた場所………言わば全ての生命の母たる存在だ。そこで死のうとするなど、最大の親不孝だ」

 

「何だよソレ………大体、君は誰なんだよ?………」

 

「………『藤宮 博也』」

 

相変わらず光の無い目のまま見上げて来るランスロットに向かって、男………『藤宮 博也』は名乗りを挙げた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・銀座の街中………

 

「神山さん!」

 

「リクくん! 如何だった!?」

 

「駄目です! 何処にも見当たりません!」

 

『一体何処へ行っちゃったんだろう?』

 

ランスロットを探して街中に散っていた一同に中で、誠十郎とリク+ペガが路地裏で合流。

 

お互いにまだランスロットは見つけられていないと報告する。

 

『早く見つけねえとマズイかも知れねえぞ。思い詰めてる奴がやる事っつったら………』

 

「! まさかっ!?」

 

最悪な事態を想像するゼロに、誠十郎も焦る。

 

『リク。緊急事態が発生しました』

 

するとそこで、青雲荘ことネオブリタニア号に搭載されている報告管理システム………『レム』からリクに連絡が入る。

 

「レム? 何が有ったんだ?」

 

『中国の上海に怪獣が出現しました』

 

「!? 上海に怪獣が!?」

 

「!? 何っ!?」

 

レムの報告にリクが思わず声を挙げると、誠十郎も驚きを示す。

 

『現在、緊急帰国した上海華撃団とウルティメイト華撃団のガンクルセイダー部隊が応戦中ですが、苦戦しています』

 

「こんな時に!!………」

 

まだランスロットは見つかっていないが、止むを得ず、花組を招集して帝劇へ戻ろうとする誠十郎だったが………

 

「神山さん! 僕が行きます!!」

 

その誠十郎に向かって、リクがそう言い放つ。

 

「! リクくん!!」

 

「神山さん達はランスロットさんを探すのを続けて下さい!」

 

「上海の方は僕達に任せて!」

 

誠十郎が驚いていると、リクはそう言葉を続け、影から出て来たペガもそう言い放つ。

 

『大丈夫だ、誠十郎。コイツ等の腕は俺が保証するぜ』

 

更にゼロもそう太鼓判を押して来る。

 

「………分かった。上海の方は頼む、リクくん」

 

「了解っ!」

 

誠十郎の言葉に、リクは敬礼しながらそう返す。

 

「レム! すぐに迎えに来てくれないか」

 

『既に到着しています』

 

と、リクが続いてレムへと呼び掛けたかと思うと、3人の居る場所に急に影が掛かる。

 

「「「!?」」」

 

3人が見上げると、そこには宙に浮かぶネオブリタニア号の姿が在った。

 

『すぐに上海へ向かいます』

 

「流石レム。仕事が早いね」

 

レムの言葉にリクがお道化てそう返していると、ネオブリタニア号から光の柱が降りて来て、リクとペガを包む。

 

「神山さん! ランスロットさんの方はお願いします!」

 

「お願いします!」

 

リクとペガがそう言うと、その姿は光の柱の中をエレベーターの様に昇って行き、ネオブリタニア号へと吸い込まれた。

 

そしてネオブリタニア号はゆっくりと旋回したかと思うと、上海に向かって全速力で飛んだのだった。

 

「頼んだぞ………」

 

『心配すんな、ジードの奴に任せておけば大丈夫だ』

 

それを見送る誠十郎に、ゼロがそう言った瞬間、誠十郎のスマァトロンの着信音が鳴った。

 

「ん? さくらか………」

 

連絡をしてきたのがさくらであるのを確認した誠十郎は、続いて文面を確認する。

 

『ランスロットさんらしき人が海の方へと向かったそうです! すぐに向かいます! 他の皆にはもう知らせてありますので、誠十郎さんも早く!』

 

『ランスロットさんを見つけました』と題打たれた電文には、そう言伝られていた。

 

「! ランスロットさんが居たのか!?」

 

『すぐに行くぞ、誠十郎! 行先が海ってのが如何にも気になる!!』

 

「ああっ!!」

 

一抹の不安を感じつつも、誠十郎(+ゼロ)は、すぐさま海の方へと向かって走り出したのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

倫敦華撃団を追放されるかも知れないランスロット。
しかし、彼女には華撃団以外に居場所が無い。
取り柄の剣さえ握れなくなり、全てを失った彼女は海へ身を………
しかしそこへ現れたのは………『藤宮 博也』

一方で、上海に出現した怪獣の対応へ向かうジード。
いよいよ帝都以外にも怪獣が出現する様になりました。
これは新たな危機でしょうか?

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。
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