チャプター1『F計画』
第7話『鉄の星と無限の光』
チャプター1『F計画』
帝都・WLOFの滞在拠点………
幻庵の執務室………
「イカンイカンイカンイカン、イカン!」
執務机に突っ伏し、髪を掻き毟りながらそう繰り返しているミスターG。
「とうとう残るは伯林華撃団だけになってしまったではないか!?」
倫敦華撃団が帝国華撃団に敗れ、英吉利はWLOFより離脱。
ウルティメイト華撃団に参加した事により、WLOF側に付いている華撃団は伯林華撃団だけとなった。
「もし伯林華撃団が敗れれば、WLOFは………」
世界華撃団大戦の決勝戦にて、伯林華撃団が敗れれば、WLOFはトドメを刺される。
仮に伯林華撃団が勝ったとしても、今や完全に信用を失ったWLOFが支持を受けるのは難しい。
そうなれば降魔王の復活どころか、我が身の明日も無い………
ミスターGは非常に焦っていた。
「何か………何か手は無いのか!?」
「………幻庵様」
「!?」
とそこで、背後から声が聞こえて、ミスターGが驚きながら立ち上がり、振り返ると………
「只今戻りました………」
そこには何時の間にか佇んでいた夜叉の姿が在った。
「! 夜叉っ! 貴様! 一体今まで何をしていたっ!?」
音信不通だった部下が突然現れ、ミスターGは怒声と共に詰め寄る。
「申し訳ございません………お詫びに此方の手土産をお持ちしました」
そう言って夜叉は、ジェネラルAから受け取った『電脳巨艦プロメテウス』と『F計画』の計画書を差し出す。
さり気無く、今まで如何していたと言う問いかけを誤魔化しながら。
「手土産だと? 何だコレは?………」
乱暴に計画書を受け取ると、パラパラと捲り始めるミスターG。
「!? コ、コレは!?」
しかし、読み進めている内に顔色が変わり始める。
「素晴らしい………この力が有れば、WLOFと私の復権も夢では無い!」
やがて歓喜の笑みを浮かべてそう叫ぶ。
「出化したぞ、夜叉! コレまでの事は不問にしてやる!!」
「ありがとうございます………」
すっかり好い気になったミスターGに向かって機械的に畏まった態度を執る夜叉。
「早速取り掛からねば………フフフ、見ていろ、アゴナ………貴様の天下はもう終わりだ!!」
野心に燃えた顔で下剋上を宣言するミスターG。
それが全て、キリエル人・アゴナことジェネラルAの掌の上だとは夢にも思っていない………
◇
帝劇地下・地下司令室………
「遂に決勝戦か………」
「相手は華撃団大戦2連覇の伯林華撃団………」
いよいよ数日後に迫った世界華撃団の決勝戦………伯林華撃団との戦いに思いを馳せる誠十郎とさくら。
「へっ、伯林華撃団が何だってんだ!?」
「今の私達なら、絶対負けません!」
「もっと過酷な戦いを潜り抜けて来た………」
初穂・クラリス・あざみがそう声を挙げる。
ココまで全ての戦いに勝利し、死線を潜り抜けて来た花組にとって、例え相手が華撃団大戦連覇の強豪だろうと、恐れるモノはなかった。
「…………」
只1人、アナスタシアが何かを考えているかの様に上の空で黙り込んでいる。
「? アナスタシア? 如何かしたのか?」
「!? えっ!? な、何かしら?」
気付いた誠十郎が声を掛けると、アナスタシアは我に返った様に問い返す。
「如何したんですか、アナスタシアさん?」
「最近ボーッとしてる事が多い………」
「らしくねえぜ、オイ」
そんなアナスタシアの様子に、さくら・あざみ・初穂が心配の声を挙げる。
「ゴメンなさい。ここのところ、色々あったから、ちょっと疲れてて………」
「確かに、色々ありましたからねえ………」
アナスタシアがそう言うと、クラリスがコレまでの怪獣・宇宙人との戦闘や他国華撃団との戦いを思い出してそう呟く。
「無理はしないでくれ。アナスタシアは花組の大事な仲間なんだからな」
労わる様に誠十郎が言う。
「………仲間、ね」
それを受けたアナスタシアは思わずそう呟いたが、小声だった為、誰にも聞こえなかった………
「兎も角、その決勝戦まで、もう間も無くですわ。いよいよこの下らない戦いに終止符を打つ時が来ましたわ」
「君達の実力は良く分かっている。けど、仮にも相手は2度の華撃団大戦を制している強豪だ。決して油断はせず、心して臨んで欲しい」
とそこで、すみれとサコミズが話を纏めに掛かる。
「「「「「「了解っ!」」」」」」
それを聞いた花組メンバーは全員立ち上がり、2人に向かって一斉に敬礼するのだった。
帝劇・売店………
「いよいよ決勝戦やな~。稼ぎ時やでぇ。こらぁ商売にも気合が入るちゅうもんや」
「確か、伯林華撃団って人達が相手でしたっけ? どんな人達なんですか?」
帝国華撃団の快進撃を受け、繁盛している売店の様子に満足げにこまちが言い、その手伝いをしていたリクがそう尋ねる。
「ああ、前回と前々回の華撃団大戦を連破しとる強豪や。その中心人物がこの隊長のエリスさんとその相棒であるマルガレーテさんや」
そこでこまちは、リクにエリスとマルガレーテのブロマイドを見せる。
「この人達が………」
「マルガレーテって人、まだ子供みたいだけど………」
とそこで、リクの影の中に居たペガが、コッソリと顔だけ出して、マルガレーテのブロマイドを見ながらそう言う。
「見た目で判断したらアカンで。マルガレーテさんは伯林華撃団の作戦参謀も務めとるんや」
「作戦参謀!? 凄~い!」
こまちの言葉に感心した様子を見せるペガ。
「すみませ~ん! ポスター下さい!」
「! はわわっ!?」
とそこで、客のやって来たので、ペガは慌ててリクの影の中へ引っ込む。
「ハイ~、毎度~!」
「コッチにはブロマイドを下さ~い!」
「私にも~!」
こまちが対応すると、更に続々と客がやって来る。
「ハイ~、毎度~! ホラ、リクくん! ボヤボヤしとらんで、在庫持って来てや! じゃんじゃん稼いだるで!」
「あ、ハイッ!」
すぐさま在庫を取りに向かうリクだった。
◇
一方、その頃………
そのエリスとマルガレーテは、帝都の街中を歩いていた。
WLOFのミスターGから呼び出しを受け、向かっているところだ。
「オイ、見ろよ、伯林華撃団だぜ」
「おお、アレが………」
世界華撃団大戦2連覇の猛者だけあり、人々からは注目を浴びている。
「なあ、何で伯林華撃団はウルティメイト華撃団に参加しねえんだ?」
「もうWLOFに付いてる理由なんざねえだろうに」
「ホント、何考えてるんだか?………」
しかし、少し前ならば称賛や羨望のみを浴びていただろうが、今伯林華撃団には厳しい視線も向けられている。
「! アイツ等!………」
「止せ! マルガレーテ!!」
そんな帝都市民達に何か言おうとしたマルガレーテを、エリスが止める。
「エリス! でも………」
「彼等の言っている事は事実だ」
「!!………」
エリスにそう言われ、マルガレーテは悔しそうな表情を浮かべて俯く。
「…………」
そんなマルガレーテの姿を見て、エリスも居たたまれない様子を見せる。
彼女とて、今のWLOFに義が無い事は分かり切っていた。
しかし、伯林華撃団は元は紐育華撃団に続く賢人機関所属の第4の華撃団として設立が進められていた。
だが、漸く形になって来たところで降魔大戦が勃発。
嘗ての帝都・巴里・紐育華撃団が消滅し、まだ設立間もなく、降魔大戦に参加出来なかった伯林華撃団だけが残された。
その後、賢人機関が解散され、WLOFが設立されると、伯林華撃団は真っ先に参加となった。
降魔大戦後、降魔は世界中に出現する様になり、一刻も早く伯林華撃団を戦闘が出来る様に仕上げなければならないと言う事情が有ったからだ。
故に、独逸とWLOFの関係は深く、政府の中には単純な利益だけでなく、恩義を感じている政治家や閣僚も居り、現状への意見が真っ二つに割れているのが現状だ。
独逸政府の結論が出なければ、伯林華撃団は動く事が出来ない………
何より、エリス自身も厳格な軍人家系の生まれであり、勤勉・生真面目・ルールに従うと言う生粋な独逸人気質の持ち主であった。
他国の華撃団と比べ、軍属としての気風が強い伯林華撃団故の葛藤だ。
「………行くぞ」
暫しの苦悩の後、改めてWLOFの拠点へと向かい始めるエリス。
「…………」
マルガレーテは不満顔のままその後に続く。
と………
「あうっ!?」
「キャッ!?………! 何処に目を付けてるの!!」
そのマルガレーテに誰かがぶつかり、先程までの憤りから、思わず怒鳴りつけてしまうマルガレーテ。
「あ………」
しかし、マルガレーテにぶつかったのは、手に赤い風船を持った、彼女よりも遥かに幼い少女だった。
「!………」
「! マルガレーテッ!」
ハッとするマルガレーテと、そんな彼女の姿に気付いて諫めようとしたエリスだったが、その瞬間………
怒鳴られた事に驚いた少女が、持っていた風船を手放してしまう。
「あ………風船………」
「! ああっ!?」
エリスが驚いていた間に、風船は空高く舞い上がって行ってしまう………
「………う………ううう………」
途端に少女の目に涙が浮かび始める。
「!? イカンッ!!」
「うわああああああ~~~~~んっ!!」
エリスが慌てた瞬間、少女は堰を切った様に泣き出した!!
「ああ、済まない! 申し訳ない事をした、許してくれ!」
「うわああああああ~~~~~んっ!!」
慌てて少女に向かって謝罪するエリスだが、生真面目な彼女の固い謝罪は少女に届かない。
「本当に済まない! この通りだ!!」
(ど、如何しよう?………)
必死に頭を下げるエリスと、この様な状況など体験した事が無い為、如何して良いか分からず戸惑うしかないマルガレーテ。
「オイ、伯林華撃団が子供泣かしてるぞ?」
「とうとうそこまで堕ちたか………」
一方、伯林華撃団の前で泣きじゃくる子供の様子を見た帝都市民の間には、誤解による更なる不審が広がって行く。
(こ、このままでは!?………)
「うわああああああ~~~~~んっ!!」
焦るエリスだが、打開策は見出せず、只アタフタとするしかない。
「うわああああああ~~~~~~………?」
すると突然、少女が泣き止んで、後ろを振り返った。
「「??」」
その様子に釣られる様に、エリスとマルガレーテも少女と同じ方向に視線を向けると、そこには………
「…………」
優しく微笑みながら佇む、何かの制服を着た青年の姿が在った。
その右手には、先程飛んで行ってしまった筈の少女の赤い風船が握られている。
「あ~、私の風船!」
「…………」
少女がそう言うと、青年は少女の元に近づき、目線を合わせる様にしゃがみ込むと、風船を差し出す。
「ハイ」
「ありがとう!」
青年が差し出した風船を受け取ると、花が咲いた様な笑顔を浮かべてお礼を言い、少女は立ち去って行った。
「………ありがとう」
それを見送りながら立ち上がった青年は、噛み締める様に呟く。
「済まない。君のお陰で助かった」
とそこで、エリスも青年に向かってそうお礼を言う。
「…………」
だが、マルガレーテは疑惑の目を向ける。
(コイツ………如何やって風船を取ったの?)
青年が如何やって空の彼方へ飛んで行ってしまった筈の風船を取ったのかが気に掛かるマルガレーテ。
(………CREW………GUYS?)
マルガレーテは、青年が来ている制服の左胸部分に付けられた翼を象ったワッペンにそんな文字が有るのを見つける。
「…………」
するとそこで、青年がマルガレーテの方を見やった。
(!? 気付かれた!?)
疑いの目を向けている事に気付かれたのかと身構えるマルガレーテだったが………
「…………」
そんなマルガレーテに向かって、青年はニッコリと笑って見せた。
(!? な、何なの!? コイツ!?)
青年の思わぬ態度に、マルガレーテは困惑を隠し切れない。
「と、申し遅れた。私は伯林華撃団のエリス。コッチはマルガレーテだ。良ければ、君の名を教えてくれないか?」
とそこで、エリスが青年に向かって自己紹介をし、青年の名を尋ねる。
「僕は………」
それに答え、青年が名乗る………
「僕は『ミライ』………『ヒビノ・ミライ』です」
つづく
新話、投稿させて頂きました。
いよいよ華撃団大戦の決勝戦。
最強の伯林華撃団との戦いです。
追い詰められたミスターGは、帰還した夜叉が持って来たF計画と電脳巨艦プロメテウスに手を付けます。
それがジェネラルAの掌の上とも知らず………
一方、唯一のWLOF所属の華撃団となり、帝都市民から厳しい視線を向けられる伯林華撃団。
しかし、命令を尊寿する軍人気質なエリスは自ら行動を起こす事が出来ずにいた。
そこでマルガレーテが少女とトラブルを起こしてしまう。
困り果てていた2人の前に現れた不思議な青年………
その名は………『ヒビノ・ミライ』
お分かりだと思いますが、原作1話での初登場シーンのオマージュです。
リアルタイムで見ていたので、あの登場の仕方がとても印象的でした。
これからも、よろしくお願いします。