新サクラ大戦・光   作:宇宙刑事ブルーノア

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チャプター8『宇宙人、現る!』

チャプター8『宇宙人、現る!』

 

上海華撃団

 

極悪宇宙人 テンペラー星人・ヘラク登場

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝都・銀座………

 

帝劇の近くにて………

 

「ハアアッ!!」

 

気合の一閃で、傀儡機兵・侍を斬り捨てるさくらの三式光武。

 

斬り捨てられた傀儡機兵・侍は火花を上げた後、爆発四散する。

 

「フウ~………コレで最後………」

 

その傀儡機兵・侍が最後の敵であり、レーダーにも周辺に敵影が無い事を確認したさくらが大きく息を吐く。

 

「やるじゃねえか、さくら!」

 

「撃破数1番はさくらさんですね」

 

と其処へ、同じく敵を掃討し終えた初穂機とクラリス機が合流する。

 

2人の言う通り、現れた降魔と傀儡機兵を最も倒したのはさくらだった。

 

「えへへ、何だか光武の調子が良くって………」

 

笑みを浮かべて2人にそう返すさくら。

 

如何やらクレッセントとの戦いの時に、ルナミラクルゼロのミラクル・リアライズで街と共に修復された事が、思わぬ作用を齎していた様である。

 

『皆、良くやってくれた』

 

と其処で、作戦司令室の誠十郎から通信が入る。

 

「隊長! ハイ! わたし………やりました!」

 

「帝都の皆にも被害は無しだ!」

 

「私達も、やれば出来るんですね! 一寸自信が付いちゃいました!!」

 

其れに対し、さくら達は元気な返事を返す。

 

初めての勝利で、コレまで下がりっ放しだった士気が上がった様である。

 

『皆、本当にお疲れ様。神山くんも、初めてとは思えない良い指揮でしたわ』

 

今度はすみれが誠十郎を含めた全員を労う。

 

『さあ、戦いは終わりよ。天宮さん達も、帝劇に戻って来てちょうだい』

 

すみれがそう言っていた時………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………」

 

帝劇の前に佇む人影があった。

 

その人物は黒い衣装に身を包み、一振りの日本刀の様な刀を携え………

 

奇妙な仮面を着け、長い黒髪をポニーテールに束ねている女性だった。

 

「………魔幻空間、展開」

 

と、女性がそう言い放ったかと思うと………

 

帝劇の頭上を中心に、不気味な紫色の光が辺り一帯に広がり、周辺を包み込んだのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・作戦司令室………

 

突如として振動が走り、緊急事態を知らせる警報が鳴り響いた!

 

「!? 何だっ!?」

 

『神山隊長! こ、コレは………!?』

 

誠十郎が声を挙げると、さくらからも戸惑い声で通信が送られてきた。

 

『うわああああっ!?』

 

『初穂さん!?………!? キャアアアアアアァッ!!』

 

続けて、初穂とクラリスの悲鳴が響き渡る。

 

「初穂!? クラリス!? 如何した!? 何が有った!?」

 

『光武の霊子水晶が反応しねえ! 駄目だ………動かねえよ!!』

 

『此処は、何処なんですか? 私達、如何なっちゃうんですか!?』

 

誠十郎が問い質すと、初穂が光武が動かなくなったと報告し、クラリスからは戸惑いの声が挙がって来る。

 

未だ生きているクラリス機のカメラ映像には、先程まで居た筈の銀座ではなく、巨大な歯車等の機械が蠢く空間が広がっていた。

 

「落ち着いてくれ! 今、此方でも分析している!」

 

「銀座大通りのカメラと接続回復しました。映像、出ます」

 

誠十郎が2人を落ち着かせていると、カオルがそう言い、モニターの映像を切り替えた。

 

「!? こ、コレは!?」

 

其処には、一部が黒紫の光に包まれた銀座の光景が広がっている。

 

「銀座・大帝国劇場周辺に、強い妖力で出来た空間が発生している様です。そして私達は………その中に取り込まれました」

 

『要するに、異空間に隔離されたって事か……』

 

カオルの報告に、ゼロがそう言う。

 

「妖力で出来た空間だって? 降魔に、こんな事が出来るなんて………」

 

「!? アカン! 新手が出現やっ!!」

 

誠十郎が戸惑っていると、小町が新手の敵が出現した事を告げる。

 

『神山隊長! 私の光武が何とか動きます! 敵は、私に任せて下さい!!』

 

と、未だ三式光武が稼働していたさくらから、そう通信が入る。

 

「! さくら! 無理はするな! 時間を稼げば上海華撃団が来てくれる! 悔しいが、今は其れに頼るしかない!」

 

『待ってるだけじゃ出来ません! 私が皆を………帝都を守らなきゃ!!』

 

無理をするなと言う誠十郎だったが、さくらはそう返し、新たに出現した傀儡機兵達に向かって行った!

 

「! さくらぁっ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔幻空間内………

 

「ハアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!!」

 

次々に現れる傀儡機兵を相手に、孤軍奮闘するさくらの三式光武。

 

「…………」

 

その三式光武を、高所から見下ろしている仮面の女………

 

『上級降魔・夜叉』

 

人間に似た姿を持つ、高度な知能と人語を解する降魔である。

 

「…………」

 

仮面で窺え無いが、何処か冷めている様な様子で、三式光武の様子を窺っている。

 

「………ほう。“この世界”の人間はあの()()で戦っているのか?」

 

「!?」

 

と、突然横から聞こえて来た声に、夜叉は驚きを露わに視線を向けたかと思うと………

 

「しかし、未熟………余りに未熟。儂の相手では無いな」

 

其処には、全身青色で両手が鋏状となっており、金色のマントの様な物を羽織った異形の姿が在った。

 

「貴様、何時の間に!? 何者だっ!?」

 

問い質しながらも、夜叉は腰に下げていた刀を抜き放とうとしたが………

 

「フンッ!!」

 

其れよりも早く、異形が向けて来た右手から怪光線が放たれた!!

 

「!? グアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーーッ!?」

 

避ける間も無く夜叉は直撃を喰らい、怪光線に押される様に背中から壁に叩き付けられた!!

 

「が………あ………」

 

全身が焼け焦げ、立っている事も出来ずにそのままその場にへたり込む夜叉。

 

「名を訊ねて於いて斬り捨てようとするとは、武人の風上にも置けぬ奴だな………儂は『テンペラー星人・ヘラク』よ」

 

そう言って異形………

 

嘗てウルトラ6兄弟やメビウス、その他にも様々なウルトラ戦士と相見(あいま)えた事が有る強豪宇宙人………

 

『極悪宇宙人 テンペラー星人』の『ヘラク』はそう名乗る。

 

「…………」

 

「何だ? もう動けなくなってしまったのか? 情け無い………ん?」

 

と、既に瀕死となっている夜叉を見て興味を無くした瞬間、テンペラー星人・ヘラクはさくらの方に再度注目した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

初穂とクラリスが動けなくなってしまった中、孤軍奮闘を続けているさくら。

 

しかし、やはり多勢に無勢………

 

徐々に三式光武の損傷が酷くなって行く………

 

「未だです………未だやれます!」

 

だが、さくらの心は微塵も諦める積りは無い。

 

「この帝都に住む、皆の為、栄光有る花組の名を汚さない為………そして、何より………()()()()………()の為に」

 

損傷個所から蒸気を漏らし、動く度に関節部から火花を散らしている三式光武。

 

けれど、その姿はとても勇ましかった。

 

「指1本でも動いている限り………私は絶対に諦めない!」

 

そう決意を獅子吼するさくら。

 

しかし、無情にも背後から2体の傀儡機兵・侍が飛び掛かって来る!

 

「!!」

 

振り向こうとするさくらだったが、損傷の嵩んだ三式光武の動きは鈍い。

 

「オラアアッ!!」

 

「ハアアアアアッ!!」

 

だが、突如炎の塊の様な物が割り込んで来たかと思うと、さくらの三式光武に飛び掛かろうとしていた傀儡機兵・侍が砕け散る!

 

「!?」

 

「「上海華撃団、参上!」」

 

驚くさくらの前に現れたのは上海華撃団の王龍、シャオロン機とユイ機だった。

 

「あ、ありがとうございます………」

 

戸惑いながらも、上海華撃団の2人に礼を言うさくら。

 

しかし………

 

「ハッ! やっぱこんな程度か。帝国華撃団………とっとと解散しちまえよ!」

 

シャオロンから返って来たのは嘲りの言葉だった。

 

「何だと、この野郎!」

 

その言葉に、初穂が怒りを露わにする。

 

「解散なんてしません!! 絶対しません!!」

 

「口だけは達者だが………そんな無様ななりで、何が出来るんだよ?」

 

さくらも反論するが、シャオロンは止まらない。

 

「………さくら、私はアンタが嫌いじゃない。アンタの平和を愛する気持ち、分かるよ」

 

「えっ?」

 

すると其処で、ユイがそう口を挟んできて、さくらは軽く驚きを見せる。

 

「アンタは………頑張り屋さんの本当に良い奴。でも、()()()()()()()()()()()()()()()()()。上海華撃団においでよ」

 

「!!」

 

何と!

 

ユイは、さくらを上海華撃団へとスカウトし始めた。

 

「上海………華撃団に?」

 

「そう。()()()()()()、一緒に………帝都の平和、守ろう?」

 

「…………」

 

思わぬ提案にさくらは………

 

「私の夢は………“真宮寺 さくらさんの居た帝国華撃団”で、悪に立ち向かい、正義を貫く事………あの時………さくらさんに助けられたあの日から、夢を忘れた事は1日たりとも無かった………」

 

「さくら………」

 

「その夢が有ったから、私は歩いて来られた………その夢が有ったから、何時だって前を向けた………その夢に支えられて、私は今まで生きて来た!」

 

「…………」

 

「だから、行けません!!」

 

毅然とした態度で、キッパリと断った。

 

「………そうか。残念だよ」

 

本当に残念そうな表情でそう言うユイ。

 

さくらを仲間に迎え入れたかったのは事実の様だ。

 

だが………

 

「もう良い! 退け、ユイッ!!」

 

其処でシャオロン機が、ユイ機を押し退ける様にしてさくらの三式光武の前に立った。

 

「!? シャオロンッ!?」

 

「諦められないって言うんなら………()()()()()()()()!!」

 

ユイが戸惑いの声を挙げた瞬間、シャオロン機が三式光武を殴り付けた!

 

「ぐうっ!!」

 

「オラ! オラ!」

 

更に2度、3度と三式光武を殴り付けるシャオロン機。

 

「ぐううっ! ああぁっ!!」

 

殴られる度に機体内で揺さぶられ、さくらは悲鳴を挙げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・作戦司令室………

 

「天宮さん!」

 

「アカン! あのままやと、光武が保たらへんっ!!」

 

「シャオロン隊長! 今直ぐ止めなさいっ!!」

 

嬲られる三式光武の姿を見て、カオル、こまち、すみれが声を挙げる。

 

「アイツ!!」

 

誠十郎も怒りを露わにする。

 

『誠十郎! 行くぞっ!!』

 

「! ああっ!!」

 

と其処でゼロから声を掛けられ、誠十郎は直ぐ様作戦司令室を後にする。

 

「!? 神山隊長!?」

 

「ちょっ!? 何処行くねんっ!?」

 

突然作戦司令室から飛び出して行った誠十郎の姿に、カオルとこまちは仰天する。

 

「………此方すみれ。“隊長機の届け先”を変更して下さるかしら?」

 

しかし、すみれだけは慌てず、隊長の機体を輸送している部隊に連絡し、移送先の変更を命令する。

 

「!? すみれ様!?」

 

「大丈夫ですわ………『彼等』に任せておけば」

 

(? 『彼等』………?)

 

戸惑うカオルにすみれがそう言い、その言葉に引っ掛かりを覚えるこまちだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇地下・通路………

 

一方、飛び出した誠十郎は………

 

「行くぜっ!!」

 

主導権がゼロへと移ると、左手のウルティメイトブレスレットを構える。

 

すると、ウルティメイトブレスレットが光を放ち、誠十郎(ゼロ)の身体に鎧の様な物………

 

『ウルティメイトイージス』が装着される!

 

「セイヤッ!!」

 

そして右腕に装備されたウルティメイトゼロソードで、時空の壁を斬り裂いて穴を開ける。

 

「ハアッ!!」

 

気合の声と共に、ウルティメイト誠十郎(ゼロ)はその穴へと飛び込むのだった。

 

ウルティメイト誠十郎(ゼロ)が飛び込むと、穴は元通りに塞がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔幻空間内………

 

「何が夢だよ!? お前等の夢は、とっくに潰れてるだろうが!?」

 

罵声を浴びせながら、三式光武を殴り続けるシャオロン機。

 

遂に耐え切れなくなった三式光武が、仰向けに倒れる。

 

「私は、絶対に………絶対に、その夢を諦めない!」

 

だが、さくらの心は今だに折れていない。

 

「辛くたって、痛くたって、悲しくたって、悔しくたって、泣きたくなったって! 絶対、絶対、絶対諦めない!」

 

そして、限界を迎えている()の三式光武が、ゆっくりとだが起き上がる。

 

「何度でも………何度でも、立ち上がってやるっ!!」

 

彼女のその思いが、三式光武を支えていた。

 

「フンッ!」

 

「! キャアッ!!」

 

と、そんな三式光武をシャオロン機が蹴り飛ばしたかと思うと、跳躍してその上に馬乗りなった!

 

「フザけんなぁっ! 夢を叶える力なんざ無えくせっ! 死ねぇっ! テメェなんか死んじまぇっ!!」

 

既に殺気に満ち溢れた声を挙げると、碌に抵抗も出来無い三式光武をボコボコにして行くシャオロン機。

 

「死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇっ!!」

 

只管“死ね”と口にするシャオロン。

 

その姿は、既に狂気の沙汰である。

 

「や、止めてシャオロン! さくらが本当に死んじゃうっ!!」

 

見ていられなくなったユイ機が、シャオロン機の腕を摑んで止める。

 

若しココで、シャオロンが()()()さくらを殺してしまえば、上海華撃団が解散させられかねない。

 

其れが分からないシャオロンでは無い筈だ。

 

「邪魔するなあああああぁぁぁぁぁぁーーーーーーーっ!!」

 

「!? キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!?」

 

だがシャオロン機は、弾き飛ばす様にユイ機を振り払った。

 

「コレでトドメだああああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」

 

そして右手に炎を纏わせると、その拳を三式光武に叩き込もうとする。

 

 

 

 

 

と、その時!!

 

 

 

 

 

シャオロン機の背中に、怪光線が命中した!!

 

「!? グアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!?」

 

装甲の破片を撒き散らしながらブッ飛ばされるシャオロン機。

 

「!?」

 

「シャオロンッ!?」

 

突然の事態に驚くさくらとユイ。

 

「な、何が………!?」

 

機体から蒸気と火花を上げながら、シャオロンが起き上がると………

 

「“敵地のド真ん中で仲間割れ”とは………随分と余裕が有るな」

 

そう言う台詞と共に、テンペラー星人・ヘラクが降り立つ。

 

「!?」

 

「何、アイツッ!?」

 

「テメェッ! 上級降魔かっ!?」

 

突然現れた異形の怪人、テンペラー星人・ヘラクに驚きを露わにするさくら達。

 

「降魔?………儂はテンペラー星人・ヘラク。テンペラー星からやって来た“戦士”だ」

 

其処でテンペラー星人・ヘラクは、そう名乗りを挙げる。

 

「テンペラー星………?」

 

「ま、まさか………宇宙人っ!?」

 

首を傾げるさくらと、相手が宇宙人と知って驚愕するユイ。

 

“この地球”で初めての、ウルトラマン()()の異星人とのファーストコンタクトだった。

 

「そのテンペラー星人が、何でいきなり攻撃して来やがった!? 地球侵略でも企んでるのかっ!?」

 

「フン、儂はこんな星の侵略になぞ興味は無い。この星に来れば“強い奴と戦える”と思って来た。しかし、()()()()だった様だな………」

 

シャオロンの台詞に、テンペラー星人・ヘラクは、何処か失望したかの様な返事を返す。

 

「! んだとぉっ!?」

 

「貴様の様に、力に溺れ“戦士の誇り”も持たぬ様な奴が守り手に就いている星なぞ、高が知れる」

 

シャオロンを名指しし、そう言い放つテンペラー星人・ヘラク。

 

「フザけんなぁっ!!」

 

途端にシャオロンは激昂し、テンペラー星人・ヘラクに殴り掛かって行った!

 

しかし………

 

「フッ………」

 

「!? なっ!?」

 

繰り出した炎を纏った右拳は、テンペラー星人・ヘラクの左手で、アッサリと受け止められる。

 

「お、俺の拳を片手で………!?」

 

「言った筈だ………()()()()()()()となっ!!」

 

シャオロンが驚愕していた瞬間!

 

テンペラー星人・ヘラクは、受け止めていたシャオロン機の右腕をまるで小枝の様に圧し折った!!

 

「!?」

 

「この馬鹿者がぁっ!!」

 

そしてすかさず、電磁ムチをシャオロン機に巻き付ける!

 

「!? グアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーッ!?」

 

高圧電流が流れ、機体ごと感電するシャオロン。

 

「だからお前は阿呆なのだああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」

 

だが、テンペラー星人・ヘラクは攻め手を緩めず、電磁ムチで拘束したままのシャオロン機を振り回したかと思うと、頭から地面に叩き付けた!!

 

「ガバッ!?」

 

「ヌウウンッ!!」

 

コックピット内でシャオロンが吐血すると、テンペラー星人・ヘラクは再度電磁ムチを振り、またもシャオロン機を頭から地面に叩き付ける!!

 

「ゴボッ!?」

 

「ムウンッ!! トウウアッ!!」

 

そのまま、何度も何度もシャオロン機を振り回しては頭から地面に叩き付けるテンペラー星人・ヘラク。

 

シャオロン機の頭部がドンドン潰れて行き、左足が千切れ飛び、装甲もバラバラと破片になって飛び散る。

 

やがて散々振り回したかと思うと、テンペラー星人・ヘラクは電磁ムチの拘束を解きながら、シャオロン機を壁に向かって投げ付けた!

 

壁に叩き付けられたシャオロン機は、既にスクラップ同然の姿となっていた。

 

コックピット内は、シャオロンが流し吐血した血で、真っ赤に染まっている。

 

「…………」

 

大量出血したシャオロンはグッタリとして、もう声を出す事さえ出来ない。

 

「シャ、シャオロンッ!! くうっ!!」

 

ユイが仇を取ろうと、テンペラー星人・ヘラクに向き直るが………

 

「…………」

 

そんなユイを、不気味な赤い目で睨み付けるテンペラー星人・ヘラク。

 

「!? ヒイッ!?」

 

途端にユイは恐怖で動けなくなり、機体ごと尻餅を付いてしまう。

 

「情け無い………引っ込んでいろ」

 

そんなユイの姿に、テンペラー星人・ヘラクは侮蔑の感情を向け、瀕死のシャオロン機に向かう。

 

「………貴様の様な奴は見ているだけで不愉快だ。この場で消してくれる」

 

シャオロン機に右手を向け、怪光線を放とうとするテンペラー星人・ヘラク。

 

………その瞬間!!

 

「ハアアアアアアァァァァァァァッ!!」

 

さくらの三式光武が、刀でテンペラー星人・ヘラクの右腕を斬り付けた!

 

「………何の積りだ?小娘」

 

しかし、その刃はテンペラー星人・ヘラクの皮膚の表面に僅かに食い込んだだけだった。

 

「クッ!」

 

「貴様、此奴(こやつ)に殺され掛けた身では無いか。なのに、その此奴(こやつ)を守ると言うのか?」

 

「関係有りません! 私は帝国華撃団・花組の隊員です! その使命は………()()()()()()()()です!!」

 

一片の迷いも無く、テンペラー星人・ヘラクに向かってそう言い放つさくら。

 

「むんっ!!」

 

「!? キャアアアアアアァァァァァァァーーーーーーーっ!!」

 

だが次の瞬間には、弾き飛ばされてしまう。

 

「気に入ったぞ小娘! 未熟だが、貴様には戦士の気概が有る!」

 

何処か嬉しそうにそう言うテンペラー星人・ヘラク。

 

「その気概に敬意を表し………貴様から葬ってくれるわぁっ!!」

 

弾き飛ばされた三式光武に向かって、マントを広げて飛翔し、一気に距離を詰める!

 

「!!」

 

「「さくら(さん)っ!!」」

 

動けないさくらの耳に、初穂とクラリスの悲鳴の様な声が響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

と、その瞬間!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭上から“何か”が降って来て、三式光武とテンペラー星人・ヘラクの間に突き刺さった!!

 

「!?」

 

「ぬうっ!?」

 

驚くさくらと、直ぐ様距離を取るテンペラー星人・ヘラク。

 

突き刺さっていたのは、一振りの刀だった。

 

「! あの刀は!?」

 

さくらがそう声を挙げた瞬間!!

 

「セエエヤァッ!!」

 

気合の叫びと共に、誠十郎(ゼロ)が上空から現れ、地面を爆ぜさせながら着地を決めた!!

 

「………待たせたな!」

 

「神山隊長!?」

 

「隊長さんっ!?」

 

「隊長っ!?」

 

予想外の登場を見せた誠十郎(ゼロ)に、さくら達の目が点になる。

 

「貴様、何者だっ!?」

 

誠十郎(ゼロ)に向かってそう問い質すテンペラー星人・ヘラク。

 

「へっ」

 

地面に突き刺さっていた刀を右手で逆手に持つ様に抜いたかと思うと、左腰に残っていたもう一刀を左手の逆手に抜き、誠十郎(ゼロ)は不敵に笑うと………

 

「俺は誠十郎! 帝国華撃団・花組の隊長! 神山 誠十郎だっ!!」

 

構えを執りながら、そう高らかに名乗りを挙げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

降魔を難なく撃破した帝国華撃団ですが、魔幻空間で宇宙人と遭遇。
怪獣が登場しましたので、今回は星人が登場です。
しかも、あの強豪のテンペラー星人。
STORY 0を参考に、武人肌な性格をしています。
台詞から分かった方も居るでしょうが、イメージCVはGガンの師匠です。

そして原作より殺意の高い上海華撃団………と言うよりシャオロン。
アンチと言うワケではありませんが、コレも後々へと繋がる伏線でして………
そして、テンペラー星人・ヘラクの言う通り、敵地の真っ只中で事実上の仲間割れなんかしてて、その隙を敵が突かない筈が無いと思い、あんな事になってしまいました。
どうかご了承ください。

さて、現場へと駆けつけた誠十郎(ゼロ)ですが、次回は怒涛の3連戦となり、いよいよ1話が完結します。
お楽しみに。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。

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