チャプター7『動き出した闇』
帝都市街地の入り口付近………
「お~い! 皆~!」
「あ、誠十郎さん! 無事だったんですね!」
戦闘を終えた花組の元へ手を振りながら現れた誠十郎に、さくらが安堵の声を挙げる。
「ああ、ゼロが助けてくれたんだ」
「ったく、無事だったのは良いけどよぉ………もうちょっとしっかりしてくれよな」
「ココのところ、神山さんの被撃墜率が高い気がします」
「隊長が真っ先にやられるなんてあってはならない………」
そう言う誠十郎に、初穂・クラリス・あざみが総ツッコミを入れる。
「うっ、済まない………」
その言葉を甘んじて受けるしかない誠十郎は首を垂れる。
「まあまあ、無事だったから良いじゃないですか」
そんな誠十郎をフォローするリク。
「…………」
一方アナスタシアは、何かを疑っている様な目を誠十郎に向けていたのだった。
「話は終わったかい?」
とそこへ、そう言う台詞と共に再度ミライの姿となったメビウスが、まだ気を失っているエリスをお姫様抱っこで抱き抱えたまま、マルガレーテとラウラを伴って現れた。
「! メビウスさん!」
「この姿の時はヒビノ・ミライだよ、朝倉 リクくん」
リクが声を挙げると、ミライは笑みを浮かべてそう返す。
「貴方も………ウルトラマンさんなんですね」
「そうだよ。ゼロと同郷のね」
「初めまして、ウルトラマンメビウスさん、基ヒビノ・ミライさん。お話はゼロさんから伺っています」
さくらに言葉にミライがそう返すと、唯一メビウスの事を知っていたクラリスがそう挨拶する。
「う………ううん?………」
とそこで、ミライに抱き抱えられていたエリスが意識を取り戻す。
「あ、気が付いた? エリスちゃん」
「………ミライ………!??!」
ミライが声を掛けると、完全に意識が覚醒したエリスは、自分が今、ミライにお姫様抱っこされている状態な事に気付き、一瞬で顔を真っ赤に染める。
「~~~~~っ!」
混乱したエリスは、降ろしてくれという事も出来ず、只々顔を真っ赤にしたまま、ミライの腕の中で縮こまるのだった。
「エリスさん! 無事で良かったです!」
と、そのエリスへ声を掛ける誠十郎。
「あ、ああ、神山………迷惑を掛けたな。済まない………そしてありがとう」
腐っても伯林華撃団の隊長であるエリス。
ミライにお姫様抱っこされたままながらも表情を引き締め、誠十郎にそう言う。
「お礼ならリクくんとゼロに言って下さい。恥ずかしながら、俺は役に立ってなかったですから」
エリスの言葉に、誠十郎はやや自虐気味に返す。
「………神山、そして花組の皆も聞いて欲しい」
「? ハイ?」
「「「「「??」」」」」
何だと?と思い、花組の視線がエリスに集まると………
「我々伯林華撃団は………華撃団大戦決勝戦の試合を放棄する」
「「「「「「!?」」」」」」
「!? エリス!?」
「隊長っ!? 何をっ!?」
エリスの思わぬ言葉に、花組は勿論、マルガレーテとラウラも驚愕を示す。
「私達はもう君達に負けていた。強さだけではない………正しいと思った事を貫き通そうとする信念と、その身を犠牲にしてでも人々を守ろうとする精神でもな」
だが、エリスは吹っ切れた様な顔でそう続ける。
「それに今回の事でハッキリと分かった。WLOFに………ミスターGに最早理は一片たりと無い事がな」
「「…………」」
そこはエリスと如何意見なのか、目を逸らして口を紡ぐマルガレーテとラウラ。
「私は本国にその事を訴え、WLOFからの離脱………そしてウルティメイト華撃団への参加を要請する積りだ」
「エリスさん………」
「今度は共に戦おう………平和を守るものとして」
そう言って、誠十郎に向かって右手を差し出すエリス。
「! ハイ!」
誠十郎はその手を握り返し、両者はガッチリと握手を交わしたのだった。
「それじゃあ、僕は彼女を送って行くよ。詳しい話は後でね、リクくん(ゼロもね)」
(ったく、後でちゃんと説明しろよな)
リクにそう言い、ゼロにもテレパシーを送ると、ゼロが愚痴る様にそう返す。
「あ、ミ、ミライ………もし良ければ………伯林華撃団に逗留して言ってくれ。助けて貰ったお礼もしたい」
「うん、そちらの帝国華撃団さんの方ではもうリクくんがお世話になってるみたいだし、そうさせて貰おうかな」
そこでエリスがそう言うと、ミライは朗らかな笑みを浮かべてエリスの厚意を受け取る。
「!?」
そのミライの朗らかな笑みを見た瞬間!
エリスの胸が一層高鳴った!!
「それじゃあ、案内してくれるかな」
そう言って踵を返すと、伯林華撃団の拠点へ向かおうとするミライ。
「ミ、ミライ………その………つかぬ事を…………本当につかぬ事を聞くが………故郷に恋人が居たりするか?」
「「………えっ?」」
そこでそんな質問をミライにしたエリスに、マルガレーテとラウラが信じられないものを見る様な目を向ける。
「恋人? う~ん、そう言う関係の人は居ないかな?」
「! そ、そうか! 居ないか! 居ないのか! そうかそうか!」
ミライが居ないと返すと、途端に嬉しそうな様子を見せるエリス。
「ミライ! 我が伯林華撃団に心行くまで逗留してくれ! そうだ! 今日の夕食は君の好きな物にしよう!」
「良いのかい? それじゃあ、僕はカレーが良いなぁ」
「「…………」」
エリスとミライの遣り取りを傍から見ていたマルガレーテとラウラは完全に言葉を失っていた。
何故なら、今エリスが浮かべている表情は………
完全に『恋する乙女』のソレだったからだ。
「エ、エリスさんって、あんな人だっけ?」
「きっとミライさんが彼女を変えたんですよ、うふふ………」
一同を見送り、誠十郎もそんなエリスの様子に戸惑いを隠せず、只1人、ゼロに恋心にも似た好意を抱いているクラリスが、優しい笑みを浮かべていた。
「!! ああっ!!」
「!? うわっ!? 何だよ、さくら!?」
とそこで、さくらが突然大声を挙げ、初穂が驚く。
「伯林華撃団が決勝戦を放棄したって事は………私達、帝国華撃団が今回の世界華撃団大戦の『優勝』って事じゃないですか!!」
「今気づいたの?………」
さくらがそう言うと、あざみが呆れた様な言葉を漏らす。
「でも確かにその通りです。私達………華撃団大戦で優勝したんですね」
静かだが喜びを浮かべているクラリス。
「今回の華撃団大戦は色々とワケが違っていたけど………」
「でも、優勝は優勝………」
ややネガティブ気味な事を言うアナスタシアに、あざみがそう返す。
「だな。けど、嬉しいっちゃ、嬉しいけど………あんまし喜ぶ気にはなれねえぁ………」
今までの事を思い出し、やや遠い目をする初穂。
「そう言うな、初穂。俺達が優勝した事に意味は在る。WLOFではなく、ウルティメイト華撃団の名の元に、今度こそ本当の華撃団………平和の守り手が復活するんだ」
「そうだよ! 帝国華撃団も再興出来て、世界の華撃団も在るべき姿に戻るんだよ!!」
しかし、誠十郎がそう言い、唯一を喜びを見せていたさくらも同意する。
「そうですね………それは喜ぶべき事ですね」
「新しい世界華撃団構想で、きっと世界は良くなる」
クラリスとあざみもそう声を挙げる。
「…………」
しかし、アナスタシアだけは複雑そうな表情を浮かべていた。
「? アナスタシアさん? 如何かしたんですか?」
「えっ!? う、ううん………何でも無いわ」
それに気づいたリクが問い掛けると、アナスタシアは誤魔化す様な様子を見せる。
だが、その顔には一抹の憂いが在った。
「…………」
リクは何と言って良いか分からず、沈黙するしかなかった。
「あ、そうだ、神山隊長! 久しぶりに『アレ』、やりましょう!」
「おっ! 良いねぇ!!」
「そうだな。ココの所、ドタバタとした戦いが続いて、やる暇が無かったからな」
そこで、さくら・初穂・誠十郎がそう声を挙げた。
「リクさんも一緒にやりましょう」
「えっ? やるって、何をですか?」
「戦いを終えた花組の伝統………」
クラリスがリクを誘い、戸惑うリクにあざみがそう説明する。
「じゃあ、行くぞ! せーの………」
「「「「「「「勝利のポーズ、決めっ!」」」」」」」
ポーズを決める花組に混じり、ドンシャインのポーズを決めているリクの姿が在った。
その後………
翌日に記者会見に臨んだエリスは、集まった報道陣を前に、世界華撃団大戦の決勝戦を放棄する事と、伯林華撃団もWLOFから離脱する事、そしてウルティメイト華撃団への参加を宣言。
独逸本国では、エリスの独断専行の行為に驚愕が走ったものの………
テラノイドの一件は独逸本国でも知れ渡っており、独逸国民の世論は、完全に反WLOFへと傾いていた。
それにより、遂に独逸政府もWLOFへの愛想を尽かし、これ幸いとばかりにエリスを支持し、WLOFからの離脱と、ウルティメイト華撃団への参加を決定。
帝国華撃団に優勝が決まり………
何より所属華撃団を全て失ったWLOFは、その存在意義を失い………
当初の宣言通りにウルティメイト華撃団へと下る事となったのだった………
◇
帝都・WLOFの滞在拠点………
ジェネラルAの執務室………
「ぶるあああああぁぁぁぁぁぁ………やはりこうなったか。幻庵めぇ、詰めの甘い奴よぉ」
またもしくじった幻庵ことミスターGを詰るジェネラルA。
「まあ、良い。全ては戯れよぉ………」
だが、すぐさまそう切って捨てる。
「だが、余興もコレまでよぉ………夜叉ぁ」
「此処に………」
ジェネラルAが呼ぶと、その背後に夜叉が音も無く現れる。
「幻庵に教えてやれ………『帝鍵』の在り処をなぁ」
「畏まりました………」
夜叉はジェネラルAに向かって頭を垂れたかと思うと、闇に包まれて姿を消す。
「いよいよ始まる………この世の全てを闇へと包む時がぁ」
そう言って邪悪に笑うジェネラルAだった………
ミスターGの執務室………
「終わりだ………全てお終いだ………」
執務机に突っ伏し、只管に嘆いているミスターG。
伯林華撃団が決勝戦を放棄した上、WLOFからの離脱を宣言した事で、遂にミスターGはコレまで築き上げて来た全てを失った………
最早その心は絶望一色だった………
「幻庵様………」
とそこへ、先程までジェネラルAの元に居た夜叉が現れる。
「! 夜叉ぁっ! 貴様ぁっ!! あの計画書は何だぁっ!? お陰で全てが台無しだぞっ!!」
途端に掌返しで夜叉を怒鳴りつけるミスターG。
見苦しい事この上ない。
「………『帝鍵』の在り処が分かりました」
「!? 何だとぉっ!?」
しかし、気にせずに放たれた夜叉の続く言葉で、ミスターGの顔に一気に生気が戻る。
「ほ、本当かっ!?」
「ハイ………帝国華撃団の天宮 さくら………彼女の持つ刀こそが『帝鍵』であると確認しました」
驚くべき情報をサラリと告げる夜叉。
何と!!
さくらの愛刀である母の形見………『天宮國定』こそがミスターG、そして米田達が探し求めていた『帝鍵』だと言うのだ。
「帝国華撃団のだと!? オノレェ、神崎 すみれめぇ! 知らぬなどと惚けおって!!」
プレジデントGだった頃、すみれに幾度と無く『帝鍵』について問い質し、知らぬ存ぜぬで返された事を思い出し、怒りを露わにするミスターG。
「………いや、待て………そもそも奴自身でさえも知らなかったのか? もし知っていれば、嘗ての仲間である旧華撃団メンバーの救出に動いている筈………」
しかしそこで、その可能性を思い至り、思案顔となる。
「兎も角、探し求めていた『帝鍵』がまさか帝国華撃団の手に在ろうとは………!? 待てよ!? 帝国華撃団と言えば………」
ミスターGは、今度は何かを思い出したかの様な表情となる。
「フ、フフフ………フハハハハハハハッ!! 漸く私にも運が向いて来たぞぉっ!!」
狂ったかの様に歓喜の笑い声を挙げるのだった………
「すっかり忘れていたが、お前に役に立ってもらう時が来た様だな………『アイスドール』」
次回予告
アナスタシア「遂に帝国華撃団は世界華撃団大戦を制した………
もう落ち零れ華撃団などと言う者は誰も無い………
花組は立派な華撃団だわ………
けどそこは………
私の居る場所では無いみたい………
次回『新サクラ大戦』
第8話『宿命を塗り替えることが使命』
太正桜にブラックホールが吹き荒れるぜっ!!
星の導きには逆らえない………導かれるままに輝くしかないのよ」
リク「僕はそんなの信じない! 運命なんて! 変えてやれば良い!!」
第7話・完
新話、投稿させて頂きました。
無事エリスを救出した花組とゼロ達。
エリスがミライ(メビウス)に惚れてしまうと言う珍事があったりしたものの(笑)………
伯林華撃団は決勝戦の放棄を決め、帝国華撃団が華撃団大戦の優勝者となった!
しかし………
既にジェネラルAの新たな陰謀は動き始めていた。
何と!
奴は既に帝鍵の在り処と正体を知っていたのです!
一体如何やって知ったのか?
コレは後々の重要なポイントです。
そして次回はいよいよアナスタシア回。
彼女の持つ事情を考慮し、後回しとなっていましたが、漸くとなりました。
予告からも分かる通り、彼女のストーリーでは、リクが重要なキャラになります。
一体如何絡むのか?
お楽しみに。
これからも、よろしくお願いします。