チャプター1『優勝記念公演』
第8話『宿命を塗り替えることが使命』
チャプター1『優勝記念公演』
第三回世界華撃団大戦は帝国華撃団の優勝………
即ち、ウルティメイト華撃団の勝利で終わった。
所属華撃団を全て失ったWLOFは、その存在意義を失い、ウルティメイト華撃団の傘下と言う名の、事実上解体となった。
今、世界の華撃団は、ウルティメイト華撃団の下………
真の平和の守り手としての道を歩み始めた。
だが、それと同時に………
強大な闇の力が、遂に動き出すのだった………
帝劇・中庭………
立食パーティーの用意がされていた中庭に、クラッカーの炸裂音が鳴り響く。
「「「「「「「「「「優勝おめでとうぉーっ!!」」」」」」」」」」
帝劇のスタッフ一同が、パーティーの主役である花組に向かって、お祝いの言葉を掛けながら更にクラッカーを鳴らす。
「ア、アハハ………」
「あ、ありがとうございます! ありがとうございます!」
帝劇を挙げての祝宴に、誠十郎は若干萎縮し、さくらはペコペコと頭を下げている。
「何かむず痒くなるぜ………」
「ココまでお祝いされてると、逆に委縮してしまいますね」
初穂も身体をボリボリと掻いており、クラリスも若干苦笑いを浮かべていた。
「…………」
「? アナスタシア、如何かした?」
そんな中で、1人何処か沈んだ表情をしていたアナスタシアに気付いたあざみが声を掛ける。
「………ううん、何でも無いわ」
しかし、アナスタシアは若干影が在る笑みを浮かべれそう返す。
「…………」
気になったものの、深くは追及出来ないあざみだった。
「ホラホラ、皆。今日の主役は君達なんだから、もっと大いに盛り上がってくれ」
「イデさん………ハイ! ありがとうございます!」
とそこで、普段から陽気なイデがそう言い、誠十郎がそう返した事で、さくら達の緊張も解れ始め、優勝記念パーティーを楽しみ始めるのだった。
「神山くん」
「あ、神崎支配人」
パーティーを楽しんでいた誠十郎に、すみれが声を掛けて来た。
「先ずは改めて、優勝おめでとう。貴方のお陰で、帝国華撃団は遂にココまで来れたわ」
「自分だけの力ではありません。花組や帝劇の皆、そして神崎支配人が居てくれたからこそです」
『オイオイ、俺も忘れんなよ』
すみれの労いの言葉に、誠十郎がそう返していると、ゼロが割り込んで来る。
「分かってるって………ゼロ、本当にありがとう」
『へっ、良いって事よ』
誠十郎は心からゼロに感謝を伝え、ゼロは何時も通りに返す。
「けど、まだ油断は出来ませんわ」
とそこで、すみれは表情を険しくした。
「? 支配人? それは如何言う事ですか?」
「ジェネラルA………そしてミスターGの事が気掛かりですわ」
『確かにな。向こうから言い出した条件とは言え、随分アッサリと引き下がったからな』
誠十郎が訪ねると、すみれはジェネラルAとミスターGの事を言い、ゼロも同意する。
元々華撃団の解散云々は向こうが先に言い出した事ではあるが、あれ程に傍若無人な態度を見せていたジェネラルAだったが、帝国華撃団の優勝をアッサリと認めた。
そのアッサリさが却って不気味であり、何か裏が有るのではないかと思わせた。
「言われてみれば………」
『それに、この地球に怪獣や宇宙人達を呼び込んでる奴の正体もまだ謎のままだしな』
「まだ戦いは終わっていない………そんな予感がしてなりませんの」
そこですみれは、懐からエボルトラスターを取り出してそう呟く。
そんなすみれの予感を肯定するかの様に、エボルトラスターのクリスタルが淡く発光した。
「支配人………」
「神山くん。油断しないでね………『治に居て乱を忘れず』、嘗て米田司令は大尉にそう言っていたそうよ」
「ハイ。気を付けます」
すみれのその言葉を受け、誠十郎も表情を引き締めるのだった。
「頼むわね………それと、もう1つ大事な事が有るわね」
「ハイ、それは………」
「『優勝記念公演』ですね!」
とそこで、そう言う言葉と共にさくらが姿を見せ、初穂・クラリス・あざみ・アナスタシアもやって来た。
「皆………」
「ええ、帝国華撃団の世界華撃団大戦優勝を記念した公演………上海華撃団と倫敦華撃団、それに伯林華撃団を交えての合同大規模公演になりますわ」
集まった花組を前にそう語るすみれ。
参加する華撃団が、壊滅し再建中である莫斯科華撃団を除いた、帝国華撃団と対戦した面子なのには勿論理由が有る。
嘗ては敵対した者達が共同で公演を開く事で、過去の蟠りを捨て、強大な脅威に立ち向かう為に手を取り合っているという事をアピールする為だ。
「この公演で、ウルティメイト華撃団による真の世界華撃団構想が本格的にスタートするワケになる」
「ああ………その通り!」
「皆! 気合入れて行きましょう!」
「「「「おーっ!!」」」
誠十郎の言葉に初穂が同意し、さくらが呼び掛けると、初穂・クラリス・あざみが拳を握った右手を突き上げる。
「ふふっ………」
その光景に、アナスタシアも微笑ましそうに笑いを零す。
「あざみ、頑張る!」
「戦うだけがわたし達じゃありません! この日の為に、皆練習を頑張って来たんです。やりましょう! ね、アナスタシアさん!」
あざみの後に、さくらがそう言いながら、アナスタシアに声を掛ける。
「………ええ、そうね。頑張りましょう」
一瞬間を置きながらも、アナスタシアがそう返す。
「?………」
その間が妙に気になり、首を傾げるさくら。
「そう言えば、優勝記念公演の配役はもう決まってるんですか?」
「やっぱ主役はアナスタシアだよな」
とそこで、クラリスがそう尋ね、初穂がアナスタシアを見やる。
「今回の主役にふさわしいのは『私』じゃない………『さくら』だと思うわ」
しかしそこで、何と!
アナスタシアが主役を辞し、さくらを主役に推して来た!
「「「「!? えええええっ!?」」」」
アナスタシアからの思わぬ返しに、当のさくらを含め驚きの声を挙げる初穂達。
「わ、わたしが主役って………如何してですか、アナスタシアさん!」
「貴方はゼロを初めてとして、様々な出会いと別れ、そして戦いを得て………自分だけの強い心を見つけた。その心の力を見せるのが、ウルティメイト華撃団の旗上げである優勝記念公演に必要だと思うからよ」
戸惑うさくらに、アナスタシアはそう説明する。
「確かに………そうですわね」
すみれも同意して来る。
「で、でも………わたしに、出来るでしょうか………?」
「大丈夫よ。貴方ならきっと素晴らしい舞台に出来る」
「如何して、ですか………」
「だって、貴方は………私の一番弟子なんですもの」
「アナスタシアさん………」
『何だかんだ言って、アイツもすっかり師匠面が板について来やがったな』
そんな遣り取りを交わすさくらとアナスタシアを見て、ゼロは自身の師であるレオの事を思い出す。
「………はい! やります! やらせて下さいっ、わたしに!!」
そこで、さくらは覚悟と決意を決めた表情となり、そう宣言した。
「アナスタシアさんに教えて貰った全てを………この公演で、出して見せます!!」
「「「「「「「「「「おおぉ~~~っ!!」」」」」」」」」
途端に、周りで聞いていた帝劇スタッフから歓声と拍手が送られる。
「わわっ!? ど、どうも! どうもありがとうございます!」
さくらはあわあわしながら、スタッフ達に向かってペコペコと頭を下げる。
「良し、主役はさくらに任せよう」
「頼みましたわよ、天宮さん。私も期待しておりますわ」
「あ、ありがとうございます!」
誠十郎とすみれもそう言って来て、さくらはまたも深々と頭を下げる。
「…………」
と、そんなさくらを横目に、アナスタシアがその場から離れて行く。
「? アナスタシア? 何処行くに?」
「ちょっと風に当たって来るわ………」
あざみが訪ねるとそう返し、アナスタシアはパーティー会場を後にするのだった。
帝劇正面………
「ふう~~………」
玄関前に佇み、大きく息を吐きながら空を見上げるアナスタシア。
(………すっかり此処(帝劇)に馴染んでしまったわね)
空を見上げたままそう思い遣る。
(そしてそれを良いと思ってしまっている自分が居る………でも、私は………)
そう思った瞬間に、アナスタシアの表情には影が差す。
「あの………アナスタシアさん、ですよね?」
とそこで、1人の女性が、アナスタシアに声を掛けて来た。
「………?」
「は、初めまして! いつも、舞台、観てます!」
アナスタシアが怪訝な顔で女性を見やると、ファンである事を明かす女性。
「ありがとう。嬉しいわ」
「あ、あの、コレを………」
するとそこで、女性は1枚の封筒をアナスタシアに差し出した。
「それから………サインを頂けますか!」
続けて、アナスタシアのブロマイドを取り出し、そう強請る。
「ええ、お安い御用よ」
手慣れた手つきで、ブロマイドにサインを書くアナスタシア。
「わあ………ありがとうございます! それじゃあ!」
サイン入りになったブロマイドを大事に抱き抱え、女性はスキップしそうな勢いで去って行った。
「ふふふ………ファンレターかしら?」
アナスタシアはその姿に微笑ましさを覚えながら、封筒を開けて中の手紙を検める。
「!? コレはっ!?………」
しかし、その内容を読んだ瞬間、驚愕に目を見開いた。
「…………」
最後まで読み進めたかと思うと、力無く手紙ごと腕を垂れ下げ、俯くアナスタシア。
(………如何して今更)
手紙を握っている手に力が入り、皺が寄る。
「アナスタシアさん」
「!?」
と、そこで再び声を掛けられ、アナスタシアは慌てて手紙を両手で握り潰す。
「如何したんですか? 皆戻って来るのを待ってますよ?」
声を掛けて来たのはリクだった。
如何やら、中々戻って来ないアナスタシアを探しに来た様だ。
「リク………態々ありがとう」
「? それ、手紙ですか?」
アナスタシアは取り繕って返すが、リクはアナスタシアの手の中で握り潰されている手紙に気付く。
「!? ああ、コレは、その………な、何でも無いよの!」
途端に、彼女にしては珍しく慌てた様子を見せる。
「ゴメンなさい。すぐに戻るわ」
そして逃げる様にして、リクの脇を擦り抜けて、帝劇内へと戻って行った。
「…………」
そんなアナスタシアの様子を、リクは不審そうな目で見やる………
「…………」
更にその様子を盗み見る様にしていた謎の影があったのだった………
つづく
新話、投稿させて頂きました。
帝国華撃団の優勝を記念した他国華撃団との合同公演。
原作では、アナスタシア回はクリスマス公演の話だったのですが、クリスマスまで世界華撃団大戦が続いているのは幾ら何でも長過ぎると言う意見をチラホラ見かけて、確かにその通りだと思い、優勝記念公演と言う形を取りました。
クリスマス公演は、後日談に描写しようと思います。
クリスマスと言えば、ウルトラシリーズでも色々ありましたからね。
お祝いムードの中で、アナスタシアに不穏な影が………
果たして………
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。