新サクラ大戦・光   作:宇宙刑事ブルーノア

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追記

次回1月1日は通常通りに更新致します。


チャプター3『アナスタシアの憂鬱』

チャプター3『アナスタシアの憂鬱』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇2階・アナスタシアの部屋の前………

 

(アナスタシア………部屋に居るかな?)

 

調子が悪そうだったアナスタシアの様子を窺う為、部屋の前までやって来た誠十郎。

 

そこへ………

 

「アレ? 神山さん?」

 

リクが姿を現した。

 

「リクくん。如何したんだ?」

 

「アナスタシアさんの様子がおかしいってさくらさんから聞いたんで、ちょっと気になって」

 

リクも以前、帝劇の玄関前で、何者かの手紙を受け取り、明らかに様子がおかしかったアナスタシアの姿を目撃していた為、今回の事が気になって見に来た様だ。

 

「そうか………兎に角、本人と話してみよう」

 

そう言うと、誠十郎はアナスタシアの部屋の扉をノックした。

 

「………何方かしら?」

 

中からアナスタシアのやや覇気の無い声が返って来る。

 

「俺だ、アナスタシア。リクくんも居る。少し話をさせてくれないか?」

 

「キャプテン、リク………ごめんなさい。今は独りにしておいて欲しいの」

 

話がしたいと言う誠十郎だったが、アナスタシアは力無く拒否する。

 

「そんな! 放ってなんかおけませんよ!」

 

「何か………悩みが有るんじゃないか?」

 

しかし、リクが食い下がり、誠十郎もそう言葉を続けた。

 

「全く、いつも強引ね、キャプテンは。リクも………分かったわ。入って頂戴」

 

アナスタシアは少し呆れた様な様子を見せると、入室を許可する。

 

「失礼するよ」

 

「お邪魔します」

 

誠十郎とリクが入室すると、部屋の中心に佇んでいたアナスタシアが振り返る。

 

(アナスタシアさんの部屋………何だかちょっと殺風景だな)

 

初めてアナスタシアの部屋に入ったリクは、必要最低限な物しか置いてない様に見える部屋の様子にそんな感想を抱く。

 

(? アレは?………)

 

だからこそ、唯一の私物と思われる星図と天球儀に目が行った。

 

「部屋まで押しけてしまって、すまない」

 

そこで、アナスタシアの元へ近づきながら、押しかけた事を詫びる誠十郎。

 

「だけど、如何にも気になって。今日の君は、何処か様子がおかしい」

 

「…………」

 

続く誠十郎の言葉に、アナスタシアは表情を曇らせる。

 

「………隠し通せそうにないわね」

 

やがて、アナスタシアは腹を括った様に話し出した。

 

「ごめんなさい、キャプテン。私………帝国歌劇団を辞めるわ」

 

「!? な、何だって!?」

 

「ええっ!?」

 

アナスタシアの口から出た意外過ぎる言葉に、誠十郎とリクは揃って驚愕する。

 

「そんな!? 如何して突然!?」

 

「帝劇が嫌いになったのか?」

 

「………いいえ。そんな事、絶対に無い」

 

誠十郎のその言葉をすぐさま否定するアナスタシア。

 

「帝国歌劇団の事は、気に入ってる。でもね、仕方ない事もあるのよ」

 

「それじゃ納得出来ませんよ」

 

「………理由を教えてくれ」

 

そう言うアナスタシアだが、当然リクは納得出来ず、誠十郎も理由を問い質す。

 

「私を迎えたいと………必要だと。そう言ってくれているところがあるから」

 

「他の劇団から、スカウトされたんですか?」

 

「それは、俺達だって同じだ! 君だって、分かってる筈だろう!!」

 

「………ありがとう。でもね、私は1つの所に、居られない女。これは『運命』なのよ………星の導きに、人は逆らう事は出来ない」

 

アナスタシアは、机の上に置かれていた天球儀に視線を向けながらそう言う。

 

「!」

 

『運命』と言う言葉を聞いたリクが顔色を変える。

 

「アナスタシア………」

 

決意が固い様子のアナスタシアに、誠十郎は説得は無理かと思い始めたが………

 

「僕はそんなの信じない!」

 

「!? リク!?」

 

「!?」

 

突然リクが声を荒げ、誠十郎とアナスタシアは驚く。

 

「運命なんて! 変えてやれば良い!!」

 

(リク………)

 

そう叫ぶリクの姿に、ゼロはサイドスペースで彼と共に戦っていた日々を思い出す。

 

リクにとって、『運命』という言葉は様々な意味で因縁の有る言葉なのだ。

 

「リク………強いのね、貴方は。けど、誰もが貴方みたいに生きられるワケじゃないの」

 

何処か達観している様な笑みを浮かべて、アナスタシアはリクにそう返す。

 

「そんなの!………」

 

「止せ、リク」

 

尚も何かを言おうとしたリクの肩を、誠十郎が掴む。

 

「神山さん! でも………」

 

「彼女には彼女の事情がある」

 

「!………」

 

そう言われて、リクは納得が行かないまま黙り込む。

 

「アナスタシア………だけど、これだけは覚えておいて欲しい。帝国歌劇団は、君を何時までも待っている。だって、君はもう帝劇の仲間、家族なんだから」

 

「! キャプテン………」

 

「この帝劇を君の家だと思って、何時だって帰って来てくれて良い」

 

「…………」

 

アナスタシアは、誠十郎のその言葉に俯いて沈黙する。

 

「アナスタシア?………」

 

「………ありがとう。ありがとう………キャプテン」

 

しかし、すぐに顔を挙げて、誠十郎に向かって心から礼を言う。

 

だが、その時に浮かべていた笑みには………

 

何処か悲しみの色が有った………

 

「………何時まで、此処に居られるんだ?」

 

それが気になりつつも、誠十郎はアナスタシアにそう尋ねる。

 

「優勝記念公演までよ。それが、私の花組としての最後の公演になるわ」

 

「そうか。じゃあ、それまでは………」

 

『待て、誠十郎。お客さんだぜ』

 

「「「「アナスタシア(さん)!」」」」

 

とそこで、ゼロがそう言うと、さくら・初穂・あざみ・クラリスが、部屋の中へ飛び込んで来た。

 

「み、皆………また、盗み聞きしてたのか」

 

飛び込んで来たさくら達の姿を見て、誠十郎が呆れた様に言う。

 

「そんなこたあ、如何だって良い! 水くせえじゃねぇか、アナスタシア!」

 

「アナスタシアさんが、世界のスタァですから、帝劇が独り占め出来ないのは分かります」

 

初穂がそう切り出すと、クラリスが続けてそう言う。

 

「けどよ、何処にいてもアタシ達は仲間だからさ………そんな悲しい顔、するんじゃねえよ」

 

「里の掟、8条。仲間は家族。離れていても心は1つ」

 

今度はあざみが印を結ぶ様な仕草をしながらそう言う。

 

「そうです。私達はずっと………心で、繋がっているんです」

 

「貴方達………」

 

「優勝記念公演は、一緒に出来るんですよね? だったら………それまで、わたし達を鍛えて下さい!」

 

動揺を見せるアナスタシアに、さくらもそう言い放つ。

 

「アナスタシアさんが居たから、わたし達は、ここまで来られた。アナスタシアさんを見送る最高の舞台を………わたし達全員で、作りたいんです!!」

 

「…………馬鹿ね、貴方達………私なんかに、こんな………こんな………」

 

若干涙声になったアナスタシアは言葉に詰まる。

 

「アナスタシア………」

 

「こんな気持ちは初めてだわ。自分でなく、全員で成功させたいなんてね………良いわ! 全力でついて来なさい! 最高の舞台を………作り上げるわよ!!」

 

しかし、すぐに調子を戻し、さくら達に向かってそう言う。

 

「「「「ハイ!!」」」」

 

それに対し、さくら達は全員力強く返事を返し、頷いて見せる。

 

「…………」

 

だがリクだけは、最後まで何処か納得が行かない様子であった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アナスタシアが帝劇を去ると言う突然の話だったが………

 

さくら達は優勝記念公演をアナスタシアを見送る舞台にしようと一層稽古に熱を入れた。

 

そんな中………

 

上海、倫敦、それに伯林華撃団が帝劇へと集合。

 

いよいよ合同での稽古を始める事となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇2階・サロン………

 

顔合わせで各華撃団メンバーが集結し、サロンはやや手狭な状態となっていた。

 

「さくら、久しぶり! 元気だった?」

 

「ハイ! ユイさんも元気そうで何よりです!」

 

「お~い! 私も忘れないでくれよ」

 

「ランスロットさん! お久しぶりです」

 

久しく会うユイとランスロットの2人に挨拶を交わすさくら。

 

「まさかお前等が本当に優勝するとはなぁ………大したもんだぜ」

 

「へへっ、まあそれ程でもねえけどなぁ」

 

優勝を素直に賞賛するシャオロンに、初穂が照れ臭そうに頭を掻く。

 

「帝劇の舞台の脚本は君が書いているそうだね。舞台俳優をしながら脚本家まで務めるなんて、凄いじゃないか」

 

「きょ、恐縮です………」

 

アーサーも、舞台俳優と脚本家を務めているクラリスに賞賛を送る。

 

「神山隊長。その節は大変世話になった。改めて礼を言う………ありがとう」

 

「お礼ならさくら達やゼロ達に言って下さい。恥ずかしながら、俺はあんまり役に立ってなかったですから」

 

テラノイドの件で改めて礼を言うエリスにそう返す誠十郎。

 

「「…………」」

 

そんな和気藹々としている一同の中で、気まずそうに隅に位置取っているマルガレーテとラウラ。

 

まだ若干の蟠りが有る様だ。

 

「ニン!」

 

と、そんな2人の前に、あざみがスッと降り立つ。

 

「!?」

 

「ぬおおっ!? ヤーパンニンジャ!? 東洋の神秘!!」

 

突然現れたあざみに、驚くマルガレーテとラウラ。

 

「…………」

 

あざみはマルガレーテとラウラの事をジッと見つめる。

 

「な、何よ………何か文句でも有るの? ならハッキリと言いなさいよ」

 

ついそんな態度を執ってしまうマルガレーテ。

 

一連の事で、帝国華撃団に負い目は感じているものの、生来の性格ゆえに、素直になれないで居た。

 

「………聞きたい事が有る」

 

「何よ………?」

 

「独逸には………国旗の覆面をしたゲルマン忍者が居るって本当?」

 

「「何だソレ(は)!?」」

 

素っ頓狂なあざみの質問に、マルガレーテとラウラは思わず声を荒げる。

 

「そんなの聞いた事ないわよ!」

 

「そう………」

 

マルガレーテがそう返すと、落ち込んだ様子を見せるあざみ。

 

「あ、えっと、その………」

 

「………何ちゃって。忍者ジョーク」

 

「! バッカじゃないの!!」

 

そのままワイワイと盛り上がる始める3人。

 

如何やら先程の質問は、あざみなりの気遣いだった様だ。

 

「ホラ、2人供。あざみちゃんが仲良くしたいみたいだよ。握手握手」

 

「ちょっ!」

 

「ミ、ミライ!?」

 

そこで、ミライがマルガレーテとラウラの背を押し、握手を促す。

 

「ん………」

 

あざみは萌え袖から手を出し、それに応じようとする。

 

「「!………」」

 

それを見たマルガレーテとラウラは、そっぽを向きながらもしっかりと握手を交わす。

 

「…………」

 

そんな一同の様子を、少し離れた窓際から見渡す様に見ているアナスタシア。

 

「…………」

 

その顔に微笑を浮かべながら、ふと窓の外を見やる。

 

「!?」

 

するとそこで、何かに気付いた様に驚愕の表情を浮かべる。

 

「…………」

 

そして、話し込む一同に気付かれない様にコッソリとサロンを抜け出したかと思うと、そとへと向かったのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

帝劇傍の路地裏………

 

「………計画を早める」

 

そこに居た人物が、やって来たアナスタシアにそう告げる。

 

「!? そんな!? 優勝記念公演が終わるまでは待ってくれる筈じゃ!?」

 

「事情が変わった………」

 

戸惑うアナスタシアの様子など知った事では無いと、淡々と言葉を続けている人物。

 

「でも………」

 

「嫌だと言うならば、『あの話』は無しだ………」

 

「! 待って! それだけは………」

 

動揺を露わにするアナスタシア。

 

「………分かりました。今夜、実行します」

 

「それで良い………」

 

邪悪な笑みを浮かべる人物………

 

『夜叉』の前で、アナスタシアは俯いたままで居るのだった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

つづく




新話、投稿させて頂きました。

浮かない様子のアナスタシア。
誠十郎とリクが尋ねると、何と帝劇を去る積りだと。
運命だと言う彼女に、リクは反発する。
アナスタシアに絡むのがリクなのは、この辺が関わってますね。
彼女が良く、星の導き(運命)とか口にしていたので、運命を引っ繰り返したジードと絡ませたいと。

そして各国華撃団も集結し、公演が間近に迫った時………
遂にアナスタシアの秘密が明らかになります。

では、ご意見・ご感想をお待ちしております。
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