チャプター3『悪夢の誘惑』
キリエル人・アゴナ
炎魔戦士 キリエロイド
上級降魔 幻庵葬徹 登場
東京湾・幻庵の魔城………
「おかしい………何故幻都が現れない?」
帝剣を手にしたまま、空に出現している空間の亀裂を見上げながら、そう疑問を呈する幻庵。
本来ならば、空間の亀裂から幻都が現れ、降魔皇が復活する筈だった。
しかし、実際に出来たのは幻都へ繋がっていると思われる空間の亀裂だけであり、幻都は出現していない………
「セバストーポリのエネルギーだけでは不十分だったのか?………! まさか!? 封印されている華撃団共の仕業か!?」
そこで幻庵は、降魔皇と共に幻都に封印されている嘗ての帝国華撃団と巴里華撃団、紐育華撃団の仕業かと推察する。
「オノレェ! 忌々しい華撃団共めぇ!!」
「案ずるなぁ、幻庵ん~」
「!?」
とそこで、背後から聞こえた声に振り返ると、さくらを連れたキリエロイド・アゴナの姿が目に入る。
「アゴナ………様………! そいつは帝国華撃団の!?」
「幻庵よぉ、帝剣の力を発揮するにはこの娘の力が必要なのだぁ」
「!? なっ!? 如何言う事ですか!?」
驚く幻庵に対し、キリエロイド・アゴナは帝剣の事を説明する………
「何と!? 帝剣にその様な秘密が!?」
「ぶるあぁ、探し求めていた割に下調べが甘いなぁ、幻庵ん~」
「ぐうっ!………」
キリエロイド・アゴナの指摘に、幻庵は悔しそうに押し黙る。
「まあ、良いわぁ。この娘の力が有れば、幻都の封印は解かれるのだからなぁ………」
とそこで、キリエロイド・アゴナは捕まえていたさくらを乱暴に投げ捨てる。
「!? あうっ!?………ううう………此処は?………!?」
その衝撃で目を覚ましたさくらが、一瞬困惑しつつも、幻庵とキリエロイド・アゴナの姿を認めると、表情を強張らせながらも立ち上がる。
「ぶるあぁ、お目覚めかぁ? 天宮 さくらぁ」
「!!」
独特のイントネーションで話し掛けて来るキリエロイド・アゴナを、さくらは睨み付ける。
「フフフ、そう警戒するなぁ。貴様にはやって貰いたい事が有るのでなぁ」
「やった貰いたい事?………! 帝剣っ!!」
とそこで、幻庵の手に握られている帝剣………天宮國定に気付くさくら。
「返して! それはお母さんの!………」
「そうだぁ、貴様の母親の命で出来た剣よぉ」
「!!」
『今の『帝剣・天宮國定』は、お前の母の………命で出来てるのだ』
キリエロイド・アゴナの言葉を聞き、さくらの脳裏に鉄幹から聞いた話がフラッシュバックする。
「お母さん………」
「天宮 さくらぁ、幻都の封印を解き、降魔皇様の復活に協力してもらおうかぁ?」
すると、何と!
キリエロイド・アゴナは、さくらに対し、降魔皇の復活に協力しろと言って来た。
「! なっ!? ふざけないで下さい!! 誰がそんな事!!」
「何故拒否するぅ?」
当然さくらは拒否するが、それを見て不思議そうに首を傾げるキリエロイド・アゴナ。
「当たり前です! わたしは帝国華撃団の隊員です! 帝都を守る私が、降魔に協力なんか!!………」
「帝都に守る価値など有るのかぁ?」
「有るに決まってます! 帝都には沢山の人々の笑顔と幸せが有って………」
「その幸せが貴様の母親の犠牲の上に成り立っていてもかぁ?」
「!?」
キリエロイド・アゴナの言葉に、さくらは思わず目を見開く。
「貴様の母親は帝都を守る為に帝剣に命を捧げ、犠牲となったぁ………しかぁしっ! 帝都の者共はそんな事など露知らず、のうのうと生きて居るぅ」
「そ、それは………」
「いや、貴様の母親だけではないぃ。嘗ての帝国・巴里・紐育の華撃団の活躍すら忘れ去ろうとしておぉるぅ。寧ろ、そいつ等が犠牲になってくれたお陰で自分達は助かったぁなど思っているのではないかぁ?」
「! ち、違う! そんな事! そんな事!!………」
必死にキリエロイド・アゴナの言葉を否定しようとするさくらだったが、出来ない………
何故なら、キリエロイド・アゴナの言っている事は事実だから………
「何故ぇそんな帝都の人々の事を命を懸けて守ろうとするぅ? 貴様の母親や華撃団の犠牲など欠片も気にしていない連中をなぁ」
「わ、わたしは………わたしは………」
「しかも今度は貴様に犠牲になれと言って来たではないかぁ? これからも帝都は何かを犠牲にし続けて繫栄していくだろうなぁ………」
「!!………」
「天宮 さくらぁ………本当に帝都に………守る価値など有るのかぁ?」
「あ………あああっ!?」
とうとう何も言い返せなくなり、さくらは頭を抱えて沈黙する。
憧れの真宮寺 さくらの様に、帝都を守ろうと決意した思い………
それが今、足元から全て崩れ落ちて行った………
「天宮 さくらぁっ!!」
「!?」
と、突然キリエロイド・アゴナが叫びを挙げ、さくらは思わずキリエロイド・アゴナの姿を見やってしまう。
その瞬間に、キリエロイド・アゴナの目に、怪しげな炎の光が走った!!
「!!………」
その怪しげな炎の光を見てさくらの瞳から、光が消える………
そして………
???………
「!? 此処は!?………」
さくらが意識を取り戻したかと思うと、目の前の景色に驚く。
何故なら、今さくらが居るのは幻庵の魔城では無く………
実家の前だったからだ。
「わたしの家? 如何して?………」
「さくら」
困惑しているさくらに、背後から女性の声が掛ける。
「!?」
さくらは驚愕しながら即座に振り返る。
何故ならその女性の声はさくらが良く知っており………
『もう2度と聞く事が無い』筈の声だったからだ。
「さくら………」
そこに居たのは、巫女の様な服を来たさくらに良く似た女性………
そう、帝剣を作り出す為に命を捧げて死んだ筈のさくらの母親………
『天宮 ひなた』だった。
「お母………さん」
「やっと会えたわね………さくら」
目を見開くさくらに、ひなたは優しく微笑みながらそう言う。
「! お母さんっ!!」
途端に、さくらは涙を流しながらひなたに抱き着いた。
「お母さん! お母さん! お母さん!」
「ああ、さくら………私の愛しい娘………」
泣きじゃくるさくらを優しくあやすひなた。
「わたし! お父さんがお母さんを犠牲にして帝剣を作ったって聞いて! 帝都を守る為に、今度はわたしが犠牲にならなきゃいけないって言われて! もうわたし………何を信じれば良いのか分からないよぉっ!!」
泣きじゃくりながら胸の内を告白するさくら。
「大丈夫よ、さくら。もう何も心配しなくて良いわ。全て忘れてしまいなさい。そして此処でお母さんとずっと一緒に居ましょう………」
「お母さん………」
「そう………ずっとね」
とそこで、抱き着かれているさくらに見えない様に………
ひなたは邪悪な笑みを浮かべたのだった………
東京湾・幻庵の魔城………
「あははは………お母さん………ずっと一緒だよ………あははは」
そう呟くさくらに表情は無く、瞳から完全に光が無くなっており、人形の様な無表情のまま、涙を流していた。
「コレでこの娘は我々の意のままよぉ………」
「何と………」
さくらの心をアッと言う間に掌握したキリエロイド・アゴナに、幻庵は驚く。
「さて………幻都の封印を解く準備を始めようではないかぁ? 任せるぞぉ、幻庵ん」
「えっ?………」
「何を呆けておるぅ? 降魔皇様の復活は我等が悲願ん。それが目の前に迫っているのならばぁ、速やかに行うべきであろうがぁ」
「え、ええ、その通りです!」
幻庵はそう言うと、内心でガッツポーズを執っていた。
(やった! やったぞ!! アゴナめ! 遂に私の凄さに気が付いたか! これで降魔皇様が復活した暁には、私が降魔皇様の右腕だと証明される! 遂に私は栄光を取り戻したのだ!!)
自分勝手に都合良く解釈する幻庵。
「フフフフ………」
そんな幻庵の内心を見透かし、笑っているアゴナ。
と、その時………
幻庵は疎か、アゴナさえも気付かなかったが………
帝剣の刀身に埋め込まれている宝玉の1つが、一瞬だけ光を放ったのだった………
◇
一方、その頃………
帝劇・地下指令室………
「! き、君達は!?」
「「「「!?」」」」
地下指令室へと戻って来た誠十郎達を、意外な人物が出迎えた。
「神崎司令! お待ちしておりました!」
「何時でも行けますよ~」
それは、いつきとひろみだった。
しかも、2人とも普段の服装ではなく、黒い華撃団の隊員服を纏っていた。
「ご苦労様です、いつきさんにひろみさん」
「し、司令! コレは一体!?………」
「帝国華撃団・月組隊長………西城 いつき、ココに見参です!」
「じゃぱーん、同じく月組隊員、本郷 ひろみで~す」
驚いていた誠十郎に向かって、いつきとひろみはそう名乗りを挙げた。
「月組?………」
「そう………彼女達は帝国華撃団の隠密行動部隊・月組の隊員なのですわ」
「普段の姿は、世を忍ぶ仮の姿って事です!」
誠十郎に向かってそう説明するすみれといつき。
「黙っていてゴメンなさ~い、誠十郎さん。けど、月組は諜報活動を主としていますので、誰が何処に居るかは仲間にも極力秘密にしないといけなかったんです~」
ひろみもいつもの間延びした様子でだが、真剣な表情でそう言う。
「そう、だったんですか………いえ、隠していたと言うのは俺も一緒です。気にしないで下さい」
「そうそう、それ! まさか神山さんがウルトラマンゼロだったなんて! いつき、カンゲキ!!」
と、誠十郎がゼロであった事を知ったいつきが、いつもと同じ調子でそう声を挙げる。
「私達月組の情報収集能力を持ってしても分からなかったウルトラマンゼロが、まさか帝劇内に居たとはねえ」
「灯台下暗しですね~」
「あ、あはは………」
『普段のあの態度は演技じゃなくて素か』
先程までの雰囲気とは打って変わって和気藹々とするいつきとひろみを見て、ゼロはそうツッコミを入れる。
「そ、それよりも、司令。帝劇の切り札と言うのは?」
話を元に戻すべく、すみれにそう尋ねる誠十郎。
「それは実際に見た方が早いわね………総員! 配置に付きなさい!!」
するとすみれはそう号令を掛け、カオル達がそれに従って指令室に在ったコンパネの前に立つ。
そして更に………
すみれの目の前の床から、操舵輪らしき物が備え付けられた台座が競り上がって来た。
その次の瞬間!
帝劇全体に振動が走る。
「! な、何だっ!?」
「「「「!!」」」」
誠十郎と初穂達が驚いていると、モニターに銀座に設置されている監視カメラから撮っている帝劇の様子が映し出された。
「帝劇・霊子水晶、動力全開放!!」
そうすみれが叫んだかと思うと………
帝劇の中庭に設置されていた巨大な霊子水晶が輝き出し、光の柱を立ち上げた!!
「出力250%………300………行けるで!!」
「銀座四つ角からの切り離し承認、最終ロック解除!………すみれ様!!」
「帝劇………発進!!」
こまちとカオルの報告を聞いたすみれが、そう号令を掛けた瞬間………
何と!!
帝劇が丸ごと空へと飛び上がったではないか!!
「はあ!? な、何だそれ!!」
「し………信じられません」
「「…………」」
余りの出来事に、初穂とクラリスは仰天し、あざみとアナスタシアも言葉を失う。
しかし、驚くのはまだ早かった!
帝劇はドンドン上昇して行ったかと思うと、ある高度で停止しホバリング。
すると………
帝劇が無くなった銀座の区画から………
何かがロケットの様に垂直に飛び出して来た!!
「!? アレはっ!?」
『戦艦か!?』
それは、巨大な空中戦艦であった!!
垂直に発進して来た空中戦艦は、ホバリングしている帝劇の真下まで迫ったかと思うと停止。
その後スラスターを吹かして、水平に向きを変える。
するとホバリングしていた帝劇が下降を始め………
空中戦艦の中心部にドッキング!!
艦橋部を形成した!!
「ドッキング成功!」
「やったっ!」
「これぞ帝国華撃団の切り札………『弩級空中戦艦・ミカサ 三型』よ!」
カオルとこまちが歓声を挙げるのを聞きながら、すみれは帝国華撃団の切り札………『弩級空中戦艦・ミカサ 三型』の名を明らかにした。
「て、帝劇の地下にこんな空中戦艦が隠されていたなんて………」
「このミカサは嘗ての帝国華撃団の切り札だった『超弩級空中戦艦 ミカサ』の残骸を使って建造されているわ」
驚きっぱなしの誠十郎に、すみれは懐かしそうな表情をしながらそう言う。
とそこで………
ミカサの周りに、3隻のWLOF級空中戦艦が現れる。
上海・倫敦・伯林華撃団の空中戦艦だ!
『神崎司令、こちらは合流完了しました』
『スゲェ………コレがWLOF級空中戦艦の原型になったミカサかよ』
『嘗ての帝国華撃団が使っていた超弩級空中戦艦 ミカサから作られた物………素晴らしい』
アーサー・シャオロン・エリスからそう通信が入る。
「コレなら行ける!」
『私の事も忘れないで下さい』
誠十郎が希望を感じ始めたところで、そう割り込みで通信が入り、4隻の空中戦艦に、ネオブリタニア号が合流した。
「レム!」
『リク、遅くなりました。これよりネオブリタニア号は華撃団艦隊に合流します』
リクが声を挙げると、レムからそう返事が返って来る。
「さあ………行きますわよ!」
すみれがそう言い、華撃団艦隊はアゴナと幻庵が待ち構える魔城へと進路を執るのだった。
つづく
新話、投稿させて頂きました。
アゴナに連れ去れたさくら。
心を揺さぶられたさくらは、アゴナの洗脳をうけてしまいます。
ウルトラシリーズでも度々問われる『地球と人類に守る価値は有るのか?』ってパターンです。
多くのウルトラマン達がこの問題に苦悩しつつも、それでも守る価値が有ると信じてくれたから、地球は今まで無事でした。
恐らく、大神さん辺りなら即答で有ると返すでしょうが、さくらは帝都を守る為に母親が犠牲になったと聞かされたばかり………
この点を突き付けられるとやはり信念が砕けてしまうかと………
そんな事になってるとは思わない帝国華撃団では………
遂にいつきとひろみが正体を明かしました。
彼女達にはまた後程に少し出番があります。
その際には噂の『超隊長』も出るかも?
そして帝国華撃団の伝統の切り札………
『空中戦艦ミカサ』出撃です。
原作ではミカサ記念公園に隠されてましたが、この作品では帝劇が普通に立ち直っているので、展開の都合もあって、従来の様に帝劇の地下に隠されているという事にしました。
また、更に後程に凄い援軍も登場する予定です。
楽しみにしていて下さい。
では、ご意見・ご感想をお待ちしております。