あくる日、比企谷から呼び出される
「あーそのなんだ、週末雪ノ下と出かけることになってだな、普通に買い物して映画を見て飯を食うことになったのだが、すまんがその時に着ていく服のコーディネートをお願いしたい」
「なんで俺が・・・それと普通にデートって言えよ」
もう関わりたくないと思っていたのであしらうことにしたが比企谷は話を続ける
「俺に服のセンスがあるわけないだろ?いつも小町にお願いしてるんだがいい加減自分でやらんとな、でも俺はセンスがない、下手な格好をして雪ノ下に恥をかかせたくないんだ!すまん!この通り!土下座でも何でもする!」
と膝をつく比企谷、
普通の人ならこの辺りで狼狽してしまうだろうが葉山は違った。
「材木座君に聞いたが、君の土下座はただのポーズでヨガを披露してるのと変わらんそうじゃないか?」
呆れ顔の葉山に不敵な笑みを浮かべる比企谷
「ふっ、そうだな、確かに土下座は俺の十八番だ、頭を下げることに何の躊躇もない!だが周りで見ている人にとってはどうだろうな?」
そう言われて葉山があたりを見回すと
「葉山君が誰かを土下座させてるんだけど・・・」
「えー葉山君ってあんなことさせる人だったっけ?」
「うわー酷いな、いじめじゃないか?」
通りがかった生徒が皆ぼそぼそとしゃべっているのが聞こえる
「フフフ、どうだ葉山?俺が頭を下げることによってお前の評判は若干下がる!」
しかしこういった声も聞こえてきた
「土下座している奴の目あれやばいんじゃね?」
「あれ葉山君にすごく迷惑かけたんだよきっと」
「土下座してる奴は人生償うべきだな」
「・・・こ、こうやって俺の評判は地に落ちるがな!これぞ骨を断たせて肉を切る!大丈夫!八幡泣いていないから!これは汗!目から汗が出てるんだよ!勘違いしないでよね!」
あきれ顔になる葉山
「涙目になるぐらいなら初めからやるなよ、君が致命傷になってるじゃないか、それより君にプライドってのは無いのか?雪ノ下さんに今の姿見せられるのかよ・・・」
と涙目になっている比企谷へ手を差し伸べるが
「雪ノ下の為ならクソみたいなプライドなんぞ捨ててやる、そして雪ノ下も俺の得意技をきちんと理解してくれている、何も心配はない」
と比企谷はその手を無視して立ち上がる
葉山は深いため息をつくと
「まったく・・・そんなに理解し合ってるならどんな格好でもいいだろ・・・じゃあな」
踵を返そうとする葉山に比企谷は縋り付く
「ちょっちょっと!なあ頼む、お前ぐらいしか知らないんだよ、リア充気取ってて表面上は女子ウケが良い格好をナチュラルにできるやつなんて」
「・・・少しは言い方ってものがあると思うんだけどね・・・大体なんで俺が君にそんなことを教えないといけないんだ?嫌だね」
葉山はかかわりたくないとその場から離れようとするがまたも比企谷に呼びとめられる
「おい待てよ、お前がそのつもりなら仕方ない、こればっかりは言いたくなかったんだがな」
「何だよ?まだなにかあるのか?」
「ああ、お前修学旅行のこと忘れてないよな?『ずっと前から好きでした』か、修学旅行の時俺あんなこと言わないといけなかったんだっけ?おかげで雪ノ下と由比ヶ浜泣かせちゃったしなー、誰のせいだったかなー?」
「君という人は本当に・・・分かったよ、俺の負けだ、服買うの付き合うよ、だからもうやめてくれないか?」葉山は降参だとばかりに渋い顔をして両手を上げる
「すまんな、それと飯食うところもアドバイスをくれ、雪ノ下が行ったことなさそうなところ教えろ」
「教えろって、途端に調子にのるな君は、大体そんなのはどこでもいいだろ、得意のサイゼでいいじゃないか」
「流石にサイゼは行き過ぎてな、『あなたと一緒ならばどこにいても良いのだけれどたまにはには違うところにも行ってみたいわね』と言ってくるんだ、それにサイゼの味は再現できると言って実際に作ってもらったしな、もうサイゼに行く理由が無くなってしまった」
「マテ、作ってもらったって君は雪ノ下さんの所に一人でいったのか?」
「いや、家に来てもらった、無論小町もいたからお前が想像するようなことはやっていないぞ?料理作って食べた後はあいつずっとうちのカマクラをいじってたな、その姿がまたかわいいんだよ、なんというか美しいというかこのまま世界が止まってくれないかなと・・・危うく家に泊まってく?まで言いそうになったわ」
「十分だ、のろけはもういい」
なんだこののろけっぷり、比企谷はこんなキャラだっけ?
仕方ないので知ってる範囲でアドバイスをする
「彼女は君たちが行くようなファーストフードとかあまり行ったことがない、寿司も回る寿司なんて行ったことすらないんじゃないか?」
「マジか回転寿司ね、いい情報を教えてもらった悪いな」
そういう訳で放課後比企谷の服を選びに行くことになった。
めんどくさいから、ららぽーとの適当なアパレル系の店に行ってキレイめなカジュアルなコーデを数パターン選んでやった。
こいつは意外と手足長いから大体の物は似合うようだ。
選んでやったら
「これで雪ノ下に恥かかせず済むな、どうだ?似合うか?」
とドヤ顔、どんだけ好きなんだ。
でもドヤ顔が少しむかついたから高めの服で取り揃えてやった、金が無くなると涙目になってたが
「そういえば小耳にはさんだんだが、君は親から予備校代食拗ねているそうじゃないか?」
「貴様・・・どこでそれを!」
「結構ため込んでるんだろ?そのお金を使って例えばもう一工夫した服を買えば雪ノ下さんも惚れ直すと思うけどね」
そう言ってまたも高めの服を選んでやる
「うーんこれなんかもいいね、あとこのアウターを組み合わせると・・・ばっちりだな、雪ノ下さんきっと気に入ると思うよ?」
「マジか!おい!ATMはどこだ?」
ATMに連れて行ったら嬉々として諭吉先生を何枚も引き出してさっきの服をさっそく購入してた。
少し心が痛んだが、焼肉の時は散々人の金で食ってたからそのお返しだ。
次の日の放課後、部活に行こうとする葉山の元へまたもや雪ノ下よりメッセージが飛んでくる
『比企谷くんが回転寿司というところに連れて行ってくれるそうなのだけれど作法が分らないわ、カウンターでなら何度か経験があるのだけれど回転って何がどう回転しているのかしら?全くわからないわ、教えなさい』
もうなんなんだよ・・・知らなすぎるだろ・・・それに回転寿司に作法なんてあったのか?
頭を抱える葉山、面倒なので回転ずしの概要と作法とかそんなものはないと返すとまたすぐ返答が来る
『あなた、そんなこと言って私を陥れるつもりなのでしょう?比企谷くんの前で恥をかかせ呆れさせ別れさせるつもりね?残念ながらあなたの思い通りにはならないわ、だって私は比企谷くんの人生を貰ったんだもの』
いや今はそういうことを言っているのではなくてだな・・・
葉山は深いため息をつく、スマホの画面にはいかに自分が比企谷八幡を好きなのかや、彼との出会いがいかに運命的かののろけが次々と表示されている。
読めば読むほど赤面するような内容である。
いい加減止めないとと思いとりあえず返信する
『比企谷からすると雪ノ下さんの『初めて』の体験を見たいんだと思うよ、男からすると女性を驚かせたり喜ばせたりしたいものだからね、わからないところはその場で聞けばいい』
『あなた、私が失敗して笑いものになったらどうするの?比企谷くんに恥をかかせたいの?』
誰も笑わないから、比企谷も笑って許すから、むしろ雪ノ下さんが初めての経験で悪戦苦闘するとこを見たいんだと思うよと懸命になだめるメッセージを送ると
『わかったわ』
これを最後にメッセージの嵐は止まった。
葉山がふと時計を見ると
「勘弁してくれよ・・・」
すでにかなりの時間が経過しており部活はもう終わる時間である
「雪乃ちゃんと比企谷をブロックした方がよくないか?いやしたらしたで大変なことになりそうだな・・・
部活に行ってもいないのにものすごく疲れた葉山はそのまま自宅へと帰ろうと教室を出ると、比企谷がものすごい勢いで走ってくる。
「よかった、まだいたか」
いったいなんなんだと顔をしかめる葉山
「雪ノ下がカラオケに行きたいと言っている、女受けする曲を教えてくれ」
またも無茶振りである
「君が好きな歌を歌えばいいだろ・・・もう帰るから邪魔をしないでくれ」
「俺にプリキュアのオープニングをメドレーで歌えってのか?材木座とだったら朝まで歌える自信はある!でも相手は雪ノ下だぞ!絶対引かれるにきまってるだろ!お前ぐらいしかいないんだよ、女受けする愛してるーだの好きだーだのその手の雰囲気出せる曲知ってるの!」
「君は本当に・・・」
と葉山はあきれ顔になっていると
「すまん!この通り!」
とまたもや土下座である、もうそろそろ部活にいった連中が帰ってくる時間だ、見られたら今度こそ変な噂が立ちかねない
「わかった、俺の負けだよ・・・んじゃあちょっとレクチャーしてやるからカラオケ行くぞ」
「マジか!すまん、さすがみんなの葉山様だこのお礼はあとで精神的に・・・」
「それって結局何もしないってことだろ・・・」
というわけで一緒にカラオケにいく比企谷と葉山、女受けしそうな曲を数曲教えることにした。
あとデュエット曲も何曲か教えたのだが、男同士でデュエットは大変気持ちが悪い、なんかカラオケボックスの扉の窓に見知った赤い眼鏡がいたような気がするが幻覚だろう。
色々諦めた葉山は窓の外の赤メガネが鼻時を出して倒れているのを見て見ぬふりして比企谷とデュエット曲を歌い続けるのだった。
デート当日の夜葉山のスマホは鳴りっぱなしであった。
『雪ノ下が回転寿司を見て感激していてな?遊園地みたい!って子供みたいにはしゃぐんだよ!その姿といつもとのギャップがな?わかるだろ?んで食べた皿を戻そうとしてな?違うぞと指摘したら真っ赤になって・・・それがまたかわいいんだ!わかるだろ?それとな・・・』
『生まれて初めて男の人としたわ、由比ヶ浜さんとは何度かしたことあるのだけれど、やっぱり比企谷くんとするのはまた違うわね、途中疲れて息切れしてしまったのだけれど比企谷くんって意外と太いのよ?それで攻めてくるので私もそれに答えるように頑張って喉を使ったの・・・ああこれはカラオケのデュエットの話で歌声の話なのだけれど』
どうやら結果は別に知りたくもなかったのだが大成功だったそうだ。
『あとやっぱり作法はあったじゃないの、カウンターに蛇口が付いていたからてっきり手を洗うものだとばかり思っていたのだけれど比企谷くんから「危ない!」って手を掴まれて本来はお茶用のお湯が出るところだって教えてもらったわ、危うく火傷するところだったのだけれど比企谷くんからギュッと手を握ってもらえたから不問にするわ』
こんな感じで歓喜とも感謝とも自慢ともとれるようなメッセージが二人から次々に来て読むのもめんどくさい状況になっていたのである。
「むしろ比企谷の方がはしゃいでるだろ・・・わかるだろ?って何度使うんだ?俺にはお前がわからん、そして雪乃ちゃんはなんか微妙に卑猥じゃないか?大丈夫だよな?カラオケボックスはカメラ付いてるからな?下手なことして停学とかやめてくれよ?」
正直他人の惚れ気話なんぞ興味ないのだが、この二人がやらかしてしまうと自分にも被害が来るのでハラハラである。
怪しいことしていないかの確認の為二人に対する文句をぶつくさと言いつつ律義に次々と飛んでくるLINEを読む葉山であった。