「ハァァァァァッ!!」
その雄叫びと共に大きく盾を振り、スケルトンのようなモンスターをぶん殴る少女。
その後ろに少し腰が引けた様子の黒髪の青年。
2人共、マーカーは緑と黄色のストライプ。
初めて見るマーカーだった。
そしてスケルトンは間違いなく赤。
そして数が多い。
40はいるんじゃないか?
識別結果
マシュ・キリエライト デミ・サーヴァント 女性
シールダーLv.1
戦闘中 戦闘位置:地上
藤丸立香 人間 男性
マスターLv.1
戦闘中 戦闘位置:地上
スケルトン(剣) Lv.5
魔物 討伐対象 アクティブ
識別結果が普段と違うような気がするが、今はそれを無視して危ういと思える戦闘をしている2人を助けよう。
「先輩っ!後ろっ!」
「えっ?」
(ショート・ジャンプ!)
青年を後ろから襲おうとしていたスケルトンの前に飛ぶと同時に杖で胴体を薙ぐ。
ガラガラと音を立てて崩れるスケルトンの頭蓋骨と肋骨を踏み砕く。
レベル差がどれだけあろうが頭蓋骨と肋骨の中にある人魂を散らさない限り倒せないのがスケルトンの厄介な所だな。
「援護する!」
そう、青年と少女に声を掛けてすぐ近くのスケルトンの頭蓋骨を杖で殴る。
頭蓋骨が砕けるのを確認し、次に胸郭部分に肘を叩き込んで中の人魂を散らす。
正直、何の手応えも無かった。
仕方ない。
最初のクラスチェンジすらしていないモンスターだからな。
だが、Lv.1のプレイヤーにとっては脅威だろう。
突然現れた俺に「おわぁっ!」と声を上げる青年。
「先輩っ!」
俺を警戒したのか、大きな盾を持った少女が相対していたスケルトンを吹き飛ばしてこちらに駆け寄ってくる。
他のスケルトンは突然現れた俺に警戒してるのか周りを囲むだけだ。
2人の視線を気にせず、包囲に突っ込みスケルトンを砕いてゆく。
面倒な相手だが、ここまで簡単に砕けると少し楽しい。
見たところ、少女の方が少しHPが減っているようなので回復させた。
(ファイア・ヒール!)
「これは」
青年が傷が塞がっていく少女を見て間の抜けた声を上げるが少女の方は俺とスケルトンを見比べてスケルトンの方に突撃していった。
スケルトンを殲滅する途中、パーティーを組んだ時にパーティーメンバーが表示される所に新しく2人の名前が加わった。
パーティー申請してないはずだが勝手に登録されたらしい。
青年の視線が少女と俺とを行ったり来たりした後、こちらを見つめて
「助けてもらってありがとうございます!」
とお辞儀してきた。
良い奴だな。
何処ぞの筋肉バカに見習わせたいくらいの礼儀正しさだ。
筋肉バカと言えば爺様に横取りされたのを思い出してまた腹が立ってきた。
爺様自体は間違いなく斬った筈だが、最後の感触から考えると相討ちだろう。
相討ち、というのは気に食わないが爺様をこの手で殺れたので溜飲を何とか下げる。
青年が礼を言ったからかこちらへの警戒を解き少女の方も礼を述べてきた。
「お礼は構わないよ。それより聞きたいことがあるんだけどここはどこかな?」
「え、えーと」
「すいません。私達も気付けばここに居て」
「そうか」
うーん。
アイコン的に異世界の住人説が出ていた、確かホーリーランドオンラインだったか。
彼らと同じようなNPCかと思っていたが、違うのかもしれない。
兜を外して挨拶する。
「俺の名はキース。君たちは?」
「あ、俺は藤丸立香っていいます。立香って呼んでください」
「私はマシュ・キリエライトです。そしてこちらが」
『フォウ!』
いつの間にか立香君の肩に乗っていた謎の動物が一鳴きする。
「フォウさんです!」
狐?リス?犬?なんの動物だろうか。
「そうか。立香君にマシュさんにフォウだ──
ね、と続けようとした瞬間にどこからともなく若々しい男の大声が聞こえてきた。
「やっと繋がった!藤丸立香君、マシュ!無事でいるね!」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
爆発。
降ってくる瓦礫とその下敷きになる私。
そして最後のお願いとして先輩と手を繋いで貰って。
私は私の中の英霊に命を救われた。
目が覚めると炎上する都市だった。
どこか既視感がある。
人理を修復する為の最初の特異点。
資料で見たその光景とはかけ離れたものが眼前に広がっていた。
「うう⋯⋯」
思考が混乱の渦に飲み込まれる前に足元から聞こえる呻き声に気付いた。
この声は先輩の声だ。
そう思うとスっと落ち着いてくる。
ひとまず、先輩を起こそうとして屈むとガシャガシャと音を立てながら近寄ってくる存在が目に入った。
それは骨しかなかった。
動く為の筋肉が無い。
考える為の脳も無い。
そして、きっと、心も無い
私はその存在を本で読んだことがある。
『スケルトン』
数は3体。
瓦礫が降ってきた時のような明確な死の形。
少し前の私だったら為す術なく蹂躙されていただろう。
けど今は違う。
先輩を守る力がある。
私に力をくれた英霊が誰かは分からないけど。
それでも、先輩は護る。
「ハァァァァァ!」
両手で盾を持ち大きく振りかぶってぶつける。
ガシャン、と大きな音を立てて崩れる骨。
1体目、そう思ったところでスケルトンが来た道の奥の方から先程より大きく、沢山の骨の音が聞こえた。
焦りのままに2体目も粉砕し、3体目も押し潰したところでそれが見えた。
数にして20は余裕で超えるスケルトン達。
「先輩!起きてください!起きないと死にますよ!!」
いつの間にか先輩の近くにいたフォウさんと共に先輩を叩き起す。
一度、大きくスケルトン達を吹き飛ばし、一息つける。
どうする、どうすれば。
考えている内にスケルトンはどんどん包囲して来る。
どうにか先輩だけでも。
掛け声と共に盾で骨しかない身体を殴り、その先にいるスケルトンを吹き飛ばして突破口を開こうとした。
その視界の隅に先輩の後ろからスケルトンが錆びた剣を振りかぶっている。
「先輩っ!後ろっ!」
「えっ?」
どこか気の抜けた先輩の声。
駄目、間に合わない⋯⋯!
思わず目を瞑りそうになった瞬間、何かが現れた。
「援護する!」
突然現れた鎧兜の中からくぐもってはいるものの若い男の声が聞こえてきたと思えば、一瞬でスケルトンが蹴散らされた。
先輩が驚きの声を上げる。
目の前のスケルトンを吹き飛ばし、「先輩っ!」と声を掛けながら近付く。
先輩と2人で男性を見つめていると、スケルトンの包囲に突っ込んでいった。
男性が触れるだけで粉々になっていくスケルトンを見ていると男性から魔力が発せられて私を包み込むとスケルトンとの戦いで傷ついたところが塞がっていく。
そんな私を見て先輩が不思議そうな声を出す。
先程の援護という言葉、そして実際に守り、今なおスケルトンを蹂躙し、その上で私を回復してくれた男性。
未だに状況が飲み込めていないであろう先輩と男性を見て、もう大丈夫だと思いながら、私もスケルトンに殴りかかった。
うーん、コレジャナイ感
タグに何か付け忘れてる気がする