※一発ネタ
※ノリと勢いだけで書いたので誤字脱字乱文あり
※そもそもが神様のご都合主義展開
上記が許せる方はお暇つぶしにでもどうぞ
※※※
「あらあら~、大丈夫ですか~?」
「は、はい……何とか」
「うふふ~、それは良かったです」
初めてその女性、「花騎士」という存在を見た時は、心の底から美しいと思った。
スプリングガーデン最大の都市国家、ブロッサムヒル。
伝説の勇者を介して世界で最初の「花騎士」が誕生した土地であり、世界花を中心とした都心部では最大級の繁栄をしていると言われている。
そんなブロッサムヒルでも田舎というのは存在する。それが都市部からフォス街道を商業都市スカネ方面へと向かう道先の丁度中間辺りの北側にある、ブロッサムヒル外郭もその一つだ。
ウィンターローズとリリィウッドの国境が入り混じる区域。その特異な地理関係故に、付近には街や集落が存在せず、また各国の警備及び調査、花騎士たちによる巡回は消極的であり、大体は来てもそこから北東部にあるガルデ要塞までだ。
害虫による襲撃は大体そのガルデ要塞方面に向けられており、外郭と要塞の間に位置する集落へは意外なことにそれ程ない。
しかして、今はその小さな集落が要塞を狙う害虫たちの余波によって戦火に包まれていた。
集落と言っても小さなものであり、巡回する花騎士たちも多くはその存在に気づかずに素通り、来たとしてもガルデ要塞に寄るついで、という扱いであり、資源に乏しく特産物も特にないその集落は、国からしても、要塞からしてもそれ程価値はないだろう。
問題はその害虫に襲われている小さな集落というのが、それが俺の故郷だということだった。
「あの、ありがとう、ごぜぇ……ございます」
「一人で立てますか?」
「あっ、大丈夫だ……です」
無様にも尻もちをついて腰を抜かしている俺に目線を合わせ、心配そうにしてくれる花騎士は、サクラと他の花騎士から言われていた。
まだ若い……下手をしなくても自分よりも若い彼女は花騎士になりたての、所謂騎士学校を卒業したばかりの准騎士なのだという。
そんな後で知り得た情報を当時の俺が知る由もなく、ただただ、目の前の美しい女性の前で見栄を張ろうと小鹿のように震える足に活をいれて立ち上がり、彼女と共に害虫の襲撃に合ってしまった集落へと視線を向けた。
……俺は、そんな小さな集落に住む、最低限の読み書きと物作りは出来るだけの只の村人。
両親は既におらず、独り立ちこそしているものの、毎日畑仕事をしなければ自分の世話すら出来ない身分。そろそろ嫁でも捕まえなければならないが、あいにく集落にいる女性は自分よりも一回り上の年齢か、年端もいかぬ幼女ぐらい。見事なまでに同い年という存在がいない悲しい限界集落。初体験が自分よりも十歳以上年上の女性とか一体何の嫌がらせなのか。
「私たちがもう少し早く到着していれば、被害ももう少し減らせたでしょうけれど。ごめんなさいねぇ」
「い、いえ。俺……僕らからしてみれば助けてもらっただけでも」
「うふふ、ありがとうございます」
そんな女っ気のない集落に、非常事態とはいえ、隣に容姿端麗の女の子が一人。
これはもう――
(犯すっきゃねぇ!)
という傍から見れば残念極まる思考に俺の脳内は埋め尽くされていた。
だが待って欲しい。人間は生命の危機に陥ると、生存本能が極限に高まるとかスカネに寄った時の古本市で立ち読みした本に書いてあった気がするし、何ならそこには生殖本能も高まって何とかして自分の子孫を残そうとする、とも書いてあった。
そして現状は、その日の晩御飯である大根片手にいつも通り畑仕事終えて戻ってきた俺を集落から出てきた害虫が襲い、あわや命の危機一髪というところで彼女に救われたのだ。
生命の危機に陥っているし、目の前には女性がいる。しかも相手は自分好みの豊満な肉体の持ち主。
これは寧ろ犯さない方が失礼に当たるのでは?
条件は揃った。後はタイミングだけである。
俺は、今日……この女性、准騎士のサクラを、犯す!
※※※
「では、これで失礼しますね~」
まあ、普通に無理だったのだが。というか、隙が無さすぎる。無理じゃよ、これは。無理無理。
え? というか、君、本当に准騎士?
花騎士とはいえ、こう、流石に一人だけなら男の力でこう、何とか出来るとか。そういうのを期待して襲ったのですけど。
まさか全部華麗に回避されるとは思わなかった。それどころかそれとなーく釘刺されるし。
流石に頭で理解できなくとも心で理解できた。
彼女を、犯そうとしたら、死ぬ。
「またどこかでお会いしましょうね~」
正に興奮した頭に冷水を浴びせられた気分だった。
獲物だと思った相手は寧ろ捕食者側であり、対するこちらは捕食対象ですらない弱者。
先ほどまで猛りに猛っていた息子はどうしたことか。彼女はもう後姿だというのにまだ頭を垂れたままだ。
「しかし……」
あれが花騎士か、と遠ざかっていくサクラの後背を見送りながら思った。
各国の世界花より加護を授かり、人の身でありながら人を超えるかのような力を以て害虫と戦い、世界を守る者。
世界花の加護を受けた女性は、他の女性よりも強く、美しいと聞く。彼女以外にも美しい花騎士たちは沢山いるのだろう。
「よぉし! いっちょ、ヤったるか!」
だからこそ、性的交渉をしたいと心の底から思った。
いやまあ、一人目から失敗している訳だけれども。彼女は数に含めたくはない。
そもそも、犯そうにもこちらは力も、学も、地位も、金もない村人なのだ。後者の三つはともかく、前者だけでも何とか手に入れて、花騎士との一方的な合併交渉をしたい!
そんな、やはり傍から見たら阿呆極まりない思考を脳内でぐるぐる回して一念発起している俺の傍らで、俺の息子は静かに垂れていた頭を上げるのであった。
※
※※
※※※
「……迷った」
時は経ち、現在いる場所はブロッサムヒル王城内。
対する俺は、鍛えに鍛えた身体をなるべく騎士団長がするような装いで包むというそれなりの学を披露しつつ、なけなしの金貨の入った袋を懐に忍ばせて、中庭と思われる場所で絶賛立ち往生していた。
花騎士を犯すにはどうしたらいいか?
巡回している花騎士たちを狙う? 答えは「いいえ」の一択である。あの時の准騎士、サクラはたまたま助けに来てくれただけであり、普段は五人一組のパーティーを組んで行動しているという。
隙を突けば犯せるかもしれないが、他の者たちから手痛すぎる攻撃を受けた後、憲兵に引き渡されるのがオチだ。
同様の理由で、花騎士たちの駐屯地や騎士団を狙うというのも却下である。
どうせ犯すのなら、目指せ完全犯罪。ならば狙うは王城内にあるという騎士学校一択である。
数年前のサクラという准騎士にこそ叶わなかったが、流石に鍛えた頭脳と身体を以てすれば、彼女クラスの准騎士以外の子ぐらいなら組み伏せられるだろう。
正式な花騎士ではなく未熟さが残る准騎士を狙う、というところに現実を見るという悲しい成長が見られる気がしなくもないが、それはそれである。
一人になったところを問答無用で柱の裏でも人気のない部屋でも連れ込み、脅しながら犯し、隙を見て脱出。
そういうプランニングの元にいざ、と思い立ち、騎士団長らしい格好をし、騎士団長が通る際に見せる証も偽装した。そして、偽装がバレないように今日という、新米の門番が勤める日を狙って、怪しまれる前に城門を潜り抜け、城内に入ることも出来た。
そこまでは確かに良かった。後は好みの豊満な肉体を持った准騎士を狙って犯すだけだった。
「騎士学校は、一体どこだ……」
問題はその目的の場所が分からなかったのだ。
よくよく考えたらそれは当然の話であって、こちらに落ち度はない。
事前に調べようにも、一般公開されている訳でもない王城マップなど、どこで手に入れろと言うのか。闇の市場にならあるかも知れないが、こちとら只の田舎の村人。市場に入って出てくる頃には骨と皮、というのはごめんである。
いやまあ、実際にはブロッサムヒル王城も一般公開されることはあるのだ。
その際は順路案内の設置やら案内人を出すやら対応して迷わずに目的の場所まで行けるようになっているのだが、この日に行われるのは精々新人団長の就任式ぐらいであり、それは別に一般公開されていない。
だからこそ、騎士団長らしい格好をする必要があり、そのおかげで特に疑われることもなく「寝坊しました」とでも言ったら許されたのである。人の行き来が多い、一般公開時には当然警備もそれだけ厳しくなるが、そうでもない今日ならば新米の門番を置くぐらいには警備が緩いのだ。
しかし、だからといって、このままウロウロしていたらいくら何でも不審者扱いされるだろう。
早い所、何とかして好みの准騎士を見つけて――
「あー、いたいた。こんなところにいたのですねー! スコップちゃん、探しましたよー」
「え? あ、え?」
「もぅ、ナズナさんに会いに来たというのに、まさか手伝いをされるとは思いませんでした。さ、早く来てください。皆、貴方を待っているんですから!」
「いや、俺は……いや、その、あの」
犯してズラかろう、と思ったところに、後ろから急に声を掛けられ、その声の主の方へと振り返る前に背中を押され、なし崩し的に連れていかれる羽目になってしまった。
強引にするのは好きだけど、強引にされるのには弱い。悲しいかな、田舎者の性というやつだろうか。
そして――
「では、これより貴方を騎士団長に任命する」
どうしてこうなった、と声を大にして言いたかった。
※※※
嘘みたいな、冗談みたいな話であった。
確かに騎士団長の格好はしたし、酒場で酔いつぶれていた騎士団長候補を見つけて介抱しつつ、王城通行許可の証を借りて、偽装した。
だからこそ、場内で迷う以外には何一つ不自由なくこなすことができた。
しかし、その騎士団長候補の中から、前日に恋人と痴話げんかからの別れ話を切り出されて故郷に帰られた、とかいう者がおり、彼はそんな恋人を追って故郷へ朝一番に馬車で向かったのだという。
ならば一人欠員のまま就任の儀を進めればいいものの、女王陛下の前でそんな失態を晒すなど名誉あるブロッサムヒル騎士団にあってはならぬ。
そんな中で、遅れて城内に入った騎士団長がいるとの報を門番から聞き、それを受けて「スコップちゃん」と自身をそう呼んでいた彼女が俺を連れてきたのだという。
運命のいたずらか、はたまた偶然に偶然が重なったのか。
どちらにせよ、恋人に逃げられた彼がそのまま俺よりも先に城内へ入っていたのなら、こちらは既定の人数が通った後に城内へと入ろうとする不審者として捕まっていただろう。
因みに後に知った話だが、その彼は恋人と仲直りして、結婚。そのまま故郷で幸せな夫婦生活をしているのだという。クソが。
「しかしまあ」
就任の儀が終わり、城内にある騎士団の執務室に通されて、意外と座り心地の良い団長の椅子に座りながら一人でこれまでの流れを整理する。
何だかよく分からないが、これは寧ろ好機到来と言えるのではなかろうか?
この後に副団長となる花騎士が一人、ここに来るという。彼女はそのまま騎士団の配属となり、つまりは俺の部下となる。
上司と部下の関係ともなれば、多少強引なこちらの命令に従うだろう。つまりはあんなことやこんなことが出来るという訳だ。
流石に成り行きで騎士団長になれたとはいえ、どうせいずれバレてしまうだろう。下手をすれば国家指名手配となって逮捕され、一生檻の中かもしれない。
ならば最初にここに来る花騎士には悪いが、軽く一発犯して、残り少ないであろうこの騎士団長生活の華としよう。
ここはもう、相手が豊満だろうが貧相だろうが構うものか。幼い子でも来ない限り、この俺の餌食となるのだ。
「はーっはっは……ん?」
「じーっ、なの」
これからの展開を前に思わず笑いがこみあげて、実際笑いかけたところで、執務室の扉が少し開いていることに気づいた。
それだけなら良かったのだが、何やら頭にうさ耳のカチューシャっぽいのを付けている幼女がこちらの様子を伺っていることにも気づいてしまった。
あらやだ、恥ずかしい。
もう少しで高笑いしているところを迷子、らしい幼女に見られてしまうところだった。
「んっんぅ! あー、えーっとぉ? お嬢ちゃん、何か用事かなぁ?」
わざとらしく咳ばらいをし、流石に門前払いは可哀そうだと思いながらなるべく優しく聞こえるような声で幼女に声をかけた。
すると彼女は一度扉の裏に引っ込み……引っ込んだところでうさ耳はバッチリ見えていたが、もう一度姿を現すと真っすぐこちらへと歩いてきた。
中々肝の据わった子どもだな、と思いつつ、彼女の後ろに付いてくるニンジンっぽい何かは見なかったことにしつつ、執務机越しにこちらを見上げる彼女の言葉を待った。
「優しそうな人」
「うん?」
「……ううん、なんでもないの」
見た目は、五歳ぐらいだろうか。身なりが良いところを見るに、どこかの貴族の子どもでも紛れ込んだのかも知れない。
なんちゃって騎士団長の初任務が害虫討伐ではなく、迷子の親探しとはこれまた締まらない話だが、ある意味「らしい」と言えるだろうか。
そんなことを考えながら、相手が貴族王族の子どもである可能性を考慮して、優しそう、と言われた顔を保ちつつ、席から立ちあがる。
それから彼女の前まで行き、膝を折って視線を合わせた。その上で、ゆっくりと頷き、彼女の次の言葉を目で促した。
「はじめまして、ウーちゃんの名前はウサギゴケなの」
「うん、うん」
「がんばって役にたつから」
「うん、う……うん?」
「この子と一緒によろしくお願いしますなの、団長」
「……」
嘘みたいな、冗談みたいな話だった。
彼女は、この目の前にいる幼女は間違いなく、民を守り、国を守り、世界を守る、花騎士なのだという。
そしてそんな彼女、ウサギゴケが今はまだ俺の、といえる騎士団の副団長として配属されたのだという。
「ちょ、おま……嘘だろ、オイ」
ウサギゴケが懐から取り出した就任指令状を目に通しながら、俺は小さく呻くしかなかった。
この際、こんな幼女を戦場に送り出すとかいう道徳観や、幼女に頼らないといけないような世界情勢なのかという絶望感や、そもそも所属国家が最近まで鎖国していたというロータスレイクのウサギゴケがどうしてブロッサムヒルの騎士団に配属されたのか、というのは考えないことにする。というか、考えたくない。
問題は一つ。たった一つだがとても重要だった。
「犯せないじゃん……」
大問題だった。犯せるのであれば、選り好みはしないとは言ったし思った。でも幼女を犯すってそれだけは駄目だろ。常識的に考えて。
そもそも幼女に欲情するってのがまず控えめに言って頭おかしいし、何よりも俺の性の合併交渉対象外。対象内だったら頭おかしいのを自覚しつつも美味しく頂くつもりだったが、そもそも息子が猛らない。
折角ここまでトントン拍子で来ておいて、オチがこれとか嘘だろお前。
「ぐぬぬぬ、ぬーぬぬ」
「……なの」
「……ぬ?」
ウサギゴケには本性がバレないように立ち上がり、指令状を執務机の上に置いた後で顔が酷く歪むのを感じた。間違いなく、彼女が見たらドン引きする顔だったと思う。
しかし、そんな小さく呻く俺の耳に、それこそ兎が鳴いたかのような何とも可愛らしい音が聞こえてきた。
それがウサギゴケのお腹の音だと気づいたのは、振り返った視線の先の彼女がどこか申し訳なさそうな顔をしていたからだった。
「お腹、空いているのか?」
「ごめんなさいなの。ウーちゃん、緊張して朝ごはん、食べてこなかったの」
「……そうか」
しょんぼりしているウサギゴケを前に、俺は何も出来なかった。
花騎士を犯すためにここまで来た俺に、持っているものなど何もない。
偽りの騎士団長という座と、それこそそんな騎士団に配属されたウサギゴケ、彼女ぐらいだ。後は精々、騎士団長就任時に拝命した騎士団長の証である勲章と剣ぐらいか。
……いや、それ以外に一つだけあったな。
「よし! じゃあ初任務だな。ウサギゴケ、街に行くぞ!」
「任務なの? っ、なのっ!?」
「何だ、めちゃくちゃ軽いな、お前。ちゃんと飯を喰え、飯を!」
懐にある、なけなしの金貨が入った袋。だが、彼女の空腹を満たせるぐらいにはあるだろう。
抱き上げると思った以上に軽い彼女を背中に回し、慌てふためくニンジンっぽい何かは無視して、俺は執務室から廊下へと出ていくのだった。
※※※
「もっ、もっ、もっ……美味しい、の!」
「そうか、それは良かった。でももっとゆっくり喰えよ、誰も取らねぇからよ」
ブロッサムヒル郊外にある食事処。初めて城下町へ来た際に寄って、値段の割に味が良くて量があると思ったその店の一角で、俺の目の前の副団長は目を輝かせながら出てきた料理を食べていた。もう既に、初対面時に繕っていた態度は止めていたが、ウサギゴケはそれを気にしていない様子だった。
そして、彼女の傍にいるニンジンっぽい何かがニンジンを食べるとかいうシュールな絵面は見なかったことにする。というか、何だよお前ら。
「……美味しいか?」
「美味しい、の! 団長、ありがとうなの」
目的も果たせず、初任務にも行かずに、こうして幼女と一緒に食事をしている自分自身を嘲笑しながら、それでも目の前にいる彼女が幸せそうな姿を見ると、それはそれで良い気もしてくるから不思議で仕方がない。
いつか、もしかしたらすぐにでもウサギゴケには俺が騎士団長でないことがバレるかも知れない。だがまあ、それはそれでいいだろう。悪いことの想像は、今はしたくない。
それに案外、バレずにこのまま騎士団長としてやっていけるかも知れないしな。
だとすると、ウサギゴケ次第ではあるが、彼女の活躍によっては新しい花騎士が就任するだろう。
俺の本来の目的は、花騎士を犯すこと。流石に目の前の幼女は犯せないが、そこは変わらない。
初めての花騎士が幼女だったのだ。だからこそ、犯すのであれば豊満な身体の花騎士が良い、と改めて思った。
「じゃあ、まあ」
成り行きではあるが、乗りかかった船だ。行けるところまで行って、ヤることはヤってやるさ。
願わくは、次に来る花騎士が俺好みの、犯しがいのある花騎士であることを祈ろう。
終わってください…
MURABITOが本来の目的であるMURABITO(意味深)出来ないというネタが某所に落ちていたのでつい…