MURABITO団長と花騎士   作:沖津白波

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・続いてしまった
・某所産のネタの拡大解釈
・ノリと勢いだけで書いたので相変わらず誤字脱字乱文あり
・何なら推敲もしておりません
・神様のご都合主義展開
・個人的解釈


上記が許せる方はお暇つぶしにでもどうぞ


MURABITO団長と花騎士②

※※※

 

 

「やぁ」

 

 街道から少し外れた見通しの良い野原。雲一つない晴天の下で、一匹の害虫相手にウサギゴケが跳ねるように動きながら攻撃、回避、攻撃、と立ち回る。

 知徳の世界花、ブロッサムヒル。その中でも最大の繁栄をしているとも言われる都市部から西南西に位置するリリィウッドへと続く道がある。名をフォス街道といい、昼夜を問わず多くの市民や商人らが行き来する幹線道路だ。

 人の往来が多いが故に、騎士団による巡回も多い。何でも古くからそれが義務付けられていると言われている。そのおかげか害虫の周辺活動は抑えられているらしく、更にはそこまで強い害虫も滅多に出没しないらしい。

 害虫も阿呆ではないらしく、強い害虫ほど花騎士を警戒してこの街道に出てこないのが理由の一つとして挙げられている。……まあ、話を聞くと中には相当はっちゃけた害虫も世の中にはいるらしいが。出来れば極限指定害虫ともども、そういったものには出会わないことを祈りたい。

 そんな由緒正しき、と言っていいかは不明だが、そのフォス街道では准騎士の実地訓練や新人騎士団長の初任務先に選ばれるのだという。

 

「とぅ」

 

 リリィウッドへと続く道と、商業都市スカネへと続く道。その枝分かれする道の少し手前で俺とウサギゴケはその初となる討伐任務をこなしていた。

 といっても、新米騎士団の、それも花騎士が一人しかいない団と呼ぶのすら怪しい二人組が弱いとはいえ害虫討伐を本格的にやらせてもらうには荷が重く、この日は准騎士の実地訓練の護衛という形で討伐を行っている。

 

「よし。いいぞ、ウサギゴケ!」

「はーい、なの」

 

 内容としては、准騎士たちが教師たちの付き添いで初めての害虫討伐を行う傍らで、周辺に害虫が他にいないかを警戒索敵し、発見次第討伐をその日の正午まで行う、というものだ。

 発見したのならば報告を先に行うべきなのだろうが、そこはそれ。新人とはいえ騎士団長なのだから、花騎士に上手く指示を出して討伐せよ、とのお達しである。

 こちとら騎士学校を卒業したての新人花騎士と正式な騎士団長ですらない一般村人なのに無茶を仰る。発見した害虫の数が多かったらどうしろというのか。

 まあ、前者はともかく後者は言い訳に使えないどころか使った瞬間に牢の中に放り込まれそうなので口が裂けても言えないが。

 

「なの、なの!」

 

 初めての討伐ということもあり、任務開始する前はそんな不安もあったが、いざ蓋を開けてみれば准騎士たちや教師がほとんど倒してくれるので、こちらはそのおこぼれの一匹を相手するだけに済んでいる。

 聞けば、今回の訓練に出てきている准騎士たちは卒業を控えている者たちばかりなのだという。そういう意味では今年卒業したばかりのウサギゴケと実力はそう変わりないのかも知れない。

 

「この子と頑張るの!」

 

 ウサギゴケのお供……らしいニンジンたちが分裂し、相手のアリ型害虫に襲い掛かる。その間に彼女はいつも手にしているパペットのようなウサギのぬいぐるみを魔法で巨大化させて、横回転を加えながら相手へと放つ。

 この子と頑張るの、と言いながらそのお供ごと相手をふっ飛ばしているような気がするが、そこは深く突っ込まないでおこう。多分、俺には分からない何かが彼女たちの間にあるのだろう。多分。きっと。

 さて、そんな頑張っているウサギゴケに対し、俺は何をしているのかというと……。

 

「もう少しだ。気を抜くなよ!」

「了解、なの」

 

 戦いの余波に巻き込まれぬ位置取りをし、周囲を警戒しながら曖昧な指示を彼女に出しているだけであった。

 成り行きとはいえ、仮にも騎士団長なのだから「躱せ、ウサギゴケ!」とか相手の行動を予測して指示を出したいのだが、何分経験が足りない。一応害虫に対する基礎知識こそ勉強しているが、騎士団長の養成学校を出ている他の同期達と比べて知識も実戦経験もない。

 故に、今の俺に出来ることは戦闘の邪魔をせず、ウサギゴケの好きなように戦わせ、後ろから応援するぐらいしかない。

 騎士団長の存在意義を問われそうだが、慣れないながらも周囲を警戒はしているので許してもらいたいところだ。いや本当に、下手に同期の新人騎士団長たちと同じ任務でなくてよかった。

 別に自分が笑われたり馬鹿にされたりするのはいい。田舎者だし、村人だし、多少の学はあるつもりだが、本当に学のある者からしたら大したことはないだろう。こうして見ると、体力を含めたこの身体以外に誇れるものがあまりないと言える。

 自己評価をすると何だか悲しくなるが、これは仕方がない。己を過大評価するつもりはないし、過小評価するつもりもない。それに、相手が下手に俺のことを過大評価して警戒されるよりも、下に見てもらって油断してもらう方が何かとやりやすい。

 しかし騎士団長としての俺が笑われるということは、その部下であるウサギゴケも笑われるということだ。彼女の名誉のために、これだけは避けなければならない。

 

「えい、やあ」

「いいぞ。頑張れ、ウサギゴケ!」

 

 余談だが、未だにこちらの素性はバレてはいないらしい。だが、騎士団長としては未熟であると思われているらしく、配属された花騎士は初日から一週間経った今日にいたるまでウサギゴケただ一人である。新しい花騎士を迎えるためのガチャ、というものもそれを行うための華霊石というのが揃えられていないので出来なかった。

 しかし同期は既に、基本である五人一組のパーティを組めるようになり、出来る奴は既に花騎士を二十人揃えて他国からも任務依頼が舞い込むほどらしい。

 畜生。なんて羨ましいんだ。それだけの花騎士がいたら……いたら……。

 好きなだけヤれるというのに!

 執務室で。私室で。花騎士の部屋で。夜の訓練場で。屋外で。何なら討伐遠征先で。ありとあらゆる場所で、彼らはお気に入りの花騎士たちと共に凸と凹を合体させているのだろう。これを羨ましく思わない男は不能かホモセクシュアルのどちらかだ。そうに違いない。

 対する俺はどうしたことか。花騎士たちの穴に棒を挿し込むどころか、いんぐりもんぐりすら出来ていないのだ。以前本で読んだ、勇者と花騎士の恋の物語とは何だったのか。勇者とはそれすなわち団長ではなかったのか。団長が花騎士たちの横を通り過ぎるだけで、数多の花騎士たちは恋に落ち、追いかけてくるのではなかったのか。

 フィクションなのかよ、騙された!

 目的が花騎士を犯すことだというのに、それが未だに成されていないのは何かの間違いである。タイミングが悪いのか、花騎士が犯せそうな時はいつもウサギゴケが近くにいるし、かといってウサギゴケがいない時は単独行動をしている花騎士はおろか准騎士にすら出会えない。

 特に神を強く信仰している訳ではないが、神様がいるとするのならば、そいつは俺を「好機を掴めない男」として笑っているのかも知れない。

 ……いや、もしかするとその神様は笑いながらこう言うかも知れない。

 

『今はまだじゃが、いつかお前さんも花騎士に認められ、ヤれる時が来る』

 

 それは何時の話だ! 即時の承認と性の合併を求める!

 ウサギゴケのような幼女じゃないぞ! おっぱいが大きくて! 腰が引き締まっていて! 安産型のお尻をした花騎士だ! 准騎士でも可!

 

「うぅっ!?」

「ウサギゴケ!?」

 

 脳内の神様に中指を立てながらお願いをしたところでウサギゴケの苦悶の声が耳に入り、現実へと引き戻される。

 そうだ。一応、俺にとっては大事なこととはいえ阿呆な妄想をしている場合ではなかった。今は討伐中で、戦っているのは俺ではなくウサギゴケなのだ。

 慌てて視線を彼女の方へと向けると、瀕死のように見える害虫ががむしゃらに前脚を振り回しており、その一撃がウサギゴケに当たったらしい。

 らしい、というのもその瞬間を見ていないからであり、見れば害虫から少し離れたところでウサギゴケが両膝をついている様子からの憶測である。攻撃を喰らい咄嗟に距離を取ったようだが、その思いもよらぬ一撃によって二つの意味で衝撃を受けたのだろう。

 一般の者たちとは違い、世界花の加護を受けた花騎士は余程強い害虫の一撃でもない限り、軽装であっても深手は負わない。鋼鉄の鎧を引き裂くような爪撃であっても、花騎士の肌はかすり傷程度で済む、なんて冗談みたいな話もあるぐらいだ。

 

「くっ」

 

 とはいうものの、ウサギゴケはまだ幼い。例え世界花の加護があって怪我こそ負わなくてもその衝撃は直に受けるだろう。ムチムチボインボイ……大人な花騎士ならともかく、体躯の小さい彼女であれば受ける衝撃も大きいはずだ。

 幸い、害虫はまだウサギゴケを追撃しようとはしていない。しかし、それも時間の問題かも知れない。

 だが、だからと言って彼女を庇う様に害虫の前に立つのは愚の骨頂。心配は心配だが俺が害虫の前に立ったところで、肉壁になれるか否かぐらいだ。多少は鍛えているのだから弱い害虫ぐらい倒して見せたい気持ちはあるが、悲しいかなこれが俺の初陣なのだ。

 この一週間、団長業務を覚えることに必死で対害虫の練習や訓練はしていない。基礎知識はある程度詰め込んだが、実戦で役立てる自信があんまりない。一応、他にも四つ程任務はあったのだが、いずれも戦闘をするような内容ではなかったのだ。

 そして何よりも他の団長みたく、花騎士たちが戦うことによって周囲に飛散する魔力がクリスタルと化して、それを集めることによって放てる、「極陽解放‐ソーラードライブ‐」が撃てないのである。

 いやまあ、一応剣で戦える団長もいるらしいし、極陽解放が使えない団長も多くいるのだから単なる言い訳なのだが……悲しいけれども、俺、只の村人なのよね。勇者の系譜でも何でもない、普通の村人。

 

「……それっ!」

「ッ!? #$%?」

 

 あれもない、これもない。ナイナイ尽くめの俺が出来る事と言えば、こうして近場に落ちている石を害虫めがけていくつか投げ、それが相手に当たってこちらを見たのを確認した後に――

 

「バーカ!!!!」

 

 と、両手を広げてそれぞれの耳の横まで持っていき、なるべく害虫が苛立ちそうな変顔を作って煽り、注意を引きつけることぐらいだった。

 無論、下半身は何時でも走り出せる準備をしている。

 

「$#~%&¥!」

「ぅ、おっ、ぁああああ!」

 

 石を当てられたことなのか、罵られたことなのか。それとも敵がもう一人いるのだと気づいたからなのか。害虫は形容しがたい声か音を出してこちらに向かってくる。

 ウサギゴケの攻撃によって弱っているはずなのに結構な速度で迫ってくるものだから、俺も迷わずに走って逃げることが出来た。というか、瀕死になってようやくこの速度なのか。怖すぎるだろ、害虫。

 

「っは、ここまで、来やがれっ、アホめ!」

「¥$&%~!」

 

 だが、ここで相手が冷静になってもらっても困る。こちらも害虫一匹とはいえ、こいつを准騎士たちのいるところまで連れて行くという失態は犯したくない。

 相手への挑発を続行しつつ、一直線に逃げないよう蜿蜒たる走りを心がける。距離のことは考えない。何故ならば結構な速さで走っても、一定距離を保てているというのが現状だからだ。

 そして、当然そんな走りを続けていれば体力はすぐに底を尽きる訳で。

 

「~&%#¥!」

「おわぁああ! ウサギゴケぇ! 助けてくれぇ!」

 

 最初は余裕のある走りをしていたものの、次第に本気の走りとなり、最終的には走るフォームを崩して、みっともなく助けを乞うという恥を晒していた。

 いや本当に。ここに同期の騎士団長たちがいなくて良かったと心の底から思う。

 

「もぅ……!」

「うぉ!?」

 

 背後から迫る害虫の存在に戦々恐々としているところに、ウサギゴケの声と共に後ろから軽快な打撃音が響き、その後で害虫の気配が消えた。

 

「……お? おぉ~?」

 

 追ってくる害虫の気配が無くなったことで、俺は走る速度を落としながら振り返る。視線の先に害虫の姿はなく、少し遠くでウサギゴケがその名の通り兎のようにその場で跳ねている。

 疑う余地はない。俺たちの勝利と言えるだろう。

 

「やったぅおぉっ!? お? おぉう……」

 

 ウサギゴケの無事も確認し、勝利の雄たけびを上げようとしたところで、背後から何か大きな物体が落ちる音がした。

 首筋に冷えた水滴が落ちた時のように飛び上がり、顔だけを音のした方へと向ける。そこには先ほどの害虫が倒れており、世界花の力によって浄化されているところであった。

 彼女と害虫には結構な距離があっただろうに、大の男の背を軽く飛び越せるぐらいに吹き飛ばせるのか。改めて花騎士が如何に強い存在なのかがよく分かる。

 ……まあ、そうでなければ世界を守るために害虫と戦えないだろうけれども。

 

「……っと、ウサギゴケ。無事か!」

「んっ、ウーちゃんは平気、なの」

 

 それはそれとして勝利の余韻に浸りたいのを堪えつつ、急いでウサギゴケのところへ向かう。攻撃できたということは重症ではないだろうが、それでも確認しておく必要はある。万が一にも害虫が毒持ちとかであれば目も当てられない。

 世界花の加護によって毒の自浄作用は他の一般人に比べるとはるかに高いとはいえ、我が騎士団には医療に詳しい者がいない。

 まあ、二人しかいないのだから当たり前なのだが。

 

「どこをやられた? 痛みは?」

「んっ、ん~、ここ、なの」

「むぅ、赤くはなっているけれども、出血はない、か。触るぞ」

「んっ、んっ」

「……痛むか?」

「ちょっと、痛い、の」

 

 速やかにウサギゴケの前まで走り、膝を折って彼女と視線の高さを合わせる。それからマニュアルに則った質疑応答と触診を行う。

 服をめくりあげてもらった先の彼女の腹部には少し腫れが出来ており、気持ち強めに押すとウサギゴケは小さく苦悶の声を漏らした。

 だがまあ、大事には至っていないようだ。骨まで響くような攻撃であれば、こうして会話するのも辛いはずだし、触診した感じも内出血まではいって無さそうだった。

 無論、念のために後で正式な医療施設にて診てもらうが、このまま報告に行っても問題はなさそうだ。

 時刻も任務終了の正午付近だ。タイミング的にもちょうどいい。

 

「よし。病院は後で行くとして。これで任務は終わりだな」

「んっ、やった、なの!」

「あぁ、よくやったぞ。ウサギゴケ。お手柄だ」

「んふー」

 

 めくってもらっている服を戻させてから立ち上がり、俺はウサギゴケの頭を褒めながら撫でる。満足そうに笑う彼女を見て、こちらもまた満足しながら口角がつり上がるのを抑えられなかった。

 そう、ようやくだ。これでようやく念願の……ガチャを回せるのだから!

 ふぅーははははははははははは!

 

 

※※※

 

 

「んっ、戻ってきた、の」

 

 高笑いは心の中だけに留めておき、報酬はウサギゴケに預けて無事にブロッサムヒル王城内にある騎士団の執務室へと戻ってきた。住めば都、とはよくいったものであり、当初は田舎の村人には落ち着かないと思っていた騎士団の執務室も、一週間も経てば実家のような安心感すら覚えるのだから不思議なものである。

 先にウサギゴケの診察も済ませて、大事に至らなかったというのもあって、荷物を置いた後は休憩をしたいところだった。

 

「あぁ。改めて、お疲れ様だ。だが、もう少しだけ今日は付き合ってくれ」

「了解、なの」

 

 しっかーし! これから行われるめくるめく魅惑で蠱惑的な召喚が待っているので、ややダルさの残る身体には今一度気張ってもらい、ガチャを行いたいと思う。

 ウサギゴケは幼いこともあって早く休ませてやりたいのもやまやまだが、彼女にとっては騎士団内の後輩が出来ることでもあるため、付き合ってもらうことにした。

 

「よぉし。それじゃあ、これからガチャを行う! いくぞー!」

「おー、なの!」

 

 そして、ウサギゴケが手にしている報酬、華霊石100個と、この一週間で貯めた他の任務報酬である華霊石400個を袋の中に入れ、俺たちはガチャという召喚場所へと移動することにした。

 ぐへへー。これでようやく、花騎士を犯せるというものだ。

 

 

※※※

 

 

「石、ヨシ!」

「鉢、ヨシ、なの!」

「準備ヨシ!」

「なの!」

 

 ガチャ。所謂騎士団に花騎士を迎え入れるための召喚儀式のようなものであり、何故そういった名称で呼ばれるのかは諸説ある。

 一つは、花騎士の誕生はブロッサムヒルではあるが、この儀式の始まりが実はリリィウッドである。それを前提として、そのリリィウッド内では今や地方の方言扱いとなっている古い言葉から引用している説だ。

 ガチャ。転じてGACHAの頭文字をそれぞれ――

 

『Global … 世界規模(春庭のこと)』

『Access … 情報媒体に接触・接続(世界花と)』

『Connect 接続・繋げる(花騎士を)』

『Harvest 収穫・結果(集める)』

『Action 活動・動作(上記の活動を起こすための動作)』

 

 とのことらしい。

 つまりは、このガチャに使う魔法の鉢と、それを活性化させる華霊石を使って、春庭全土の世界花に接触接続し、そこから花騎士たちへと繋げ、選ばれた者を集める。

 という行動に名前を付けたのが「ガチャ」という名称の始まりである……らしい。

 正直うさん臭いのだが、それ以上に他の説がうさん臭いので、個人的にはこれが有力だと思っている。

 まあ、「いやいや、ガチャの始まりは文化や技術の進んでいるバナナオーシャンが発だよ」という意見もあって、実際にバナナオーシャンの技術は目を見張るものがあるのでそちらの説を信じたいところではあるのだが――

 

『G … 頑張れ』

『A … 諦めるな』

『C … 挑戦すれば』

『H … 本当に』

『A … 愛が生まれる』

 

 などと言われてしまうと、信憑性が一気に薄れてうさん臭さだけが残るというものだ。というか、語呂合わせするにしたってもうちょっとマシな言葉があっただろうに。

 しかしながら、陽気な者たちが多いバナナオーシャンらしい考え方ではあるので、この説が正しかったとしても特に驚きはしない。

 

「じゃあ、ウサギゴケ。華霊石を入れてくれ」

「はーい」

 

 閑話休題。

 とにかく今は、この古くからある花騎士を騎士団に迎え入れる儀式、ガチャを用いて我が騎士団に新しい者を迎え入れようとしている最中であった。

 ブロッサムヒル騎士団を統括するブロッサムヒル女王。彼女へこの儀式の申請を行い、魔法の鉢を借り受けて、現在はその儀式を行う広間まで来ていた。

 王族への申請や儀式、などと大層な言葉を用いてはいるが、これは最早形骸化した昔の召喚儀式の名残みたいなものだ。

 昔はどうだったかは分からないが、今は申請といってもガチャを行うと言うだけで書類はいらないし、儀式と言っても用意された広間の中央に借り入れた魔法の鉢を置いて、必要な華霊石を入れて、結果を待つだけでいい。

 無論、借りた魔法の鉢は返すし、選ばれた花騎士の現在地によっては着任に数日かかるし、着任したらしたでその子が騎士団入りすることを登録申請しなければならない。

 が、まあそこら辺は当然だろう。騎士団とて活動するのにお金が掛かる。傭兵や正規ではない花騎士を騎士団入りさせて、施設や権限を好き勝手使って浪費させても活動費は大体その騎士団の所属国家が負担する。

 人数が増えているのに登録申請を行わずに、活動費だけがやけに増えている、というのを避けるためにもこれらは必要な行動だと思う。中には騎士団長のポケットマネーでそれらの傭兵や花騎士を雇って活動しているところもあるようだが、俺のような田舎者にそんなお金があるはずもないので、これは関係のない話だ。

 

「ん? んん~?」

「なの」

 

 さて、そうこうしている間にウサギゴケが手持ち全ての華霊石500個を入れたところで、話に聞いていた「鉢割れ」という現象が起こらずに、俺は小首を傾げた。

 必要な華霊石、つまりは500の倍数を入れる事でこの「ガチャ」という召喚儀式は成立するはずだ。そして、この一週間でこなした任務は5つであり、報酬として貰った華霊石の数も500個で合っているはずだった。

 ガチャが成立しない以上、石も消費されない。

 そういう訳で、俺たちは魔法の鉢をひっくり返し、地道に華霊石を一つ一つ数える羽目になった。

 

「ない?」

「ないの」

「どこにも?」

「なの」

「どうしても?」

「なの……」

「……マジかー!」

「だ、団長ー!?」

 

 そして、何度も数え直してみたところで、どう足掻いても石が1つだけ足りないことに気づいてしまい、俺はその場で卒倒する様に仰向けに倒れることとなった。

 神様、神様。これは一体どういう仕打ちなのか。渡された報酬の石の内、どれかが1つ足りなかったのか?

 それともウサギゴケが今日の報酬であった石を1つだけ落としてしまったとか?

 何にしても彼女は責められまい。ちゃんと任務ごとに貰った報酬を数えず、管理しなかった俺の不手際なのだから。

 しかし、ああ、神様! 中指立てたことにキレたのなら謝るから! この際、来てくれる花騎士がムチムチボインボインじゃなくても許すから!

 ガチャを……新しい花騎士を犯させてくれ!

 

 

※※※

 

 

「団長、ごめんなさいなの。ウーちゃんがちゃんと持っておけば」

「いや、お前は悪くないさ。悪いのは俺だよ」

 

 時刻はもうすぐ、十五時となるところだった。一旦、魔法の鉢を返し、重い足取りのまま俺は王城から城下町へと出る。隣を歩くウサギゴケが心配するぐらい、今の自分は相当酷い顔をしているのだろう。何だか顔がしわくちゃになっている、と言われても信じられるぐらいだ。

 目的は果たせなかった。だが、ウサギゴケはこんな俺の元でも頑張って任務をこなしてくれた。ならば、彼女に報酬を与えるのは当然である。

 俺は約束通り、ウサギゴケを初めて連れて行った食堂、の横にある、最近出来たというスイーツ店へ彼女を連れて行くことにした。

 騎士団の任務報酬として、華霊石以外にも幾ばくかのお金は貰っている。少しお高いケーキを彼女にいくつか御馳走したところで全然減らない程度には財源が潤っているのだ。

 ……そう考えると、いくら死地に向かう者たちをまとめる役であったとしても、騎士団長というのは結構な高給取りな気がする。今現在懐にある袋の中にあるお金も村人時代からすると考えられないほどの大金だ。

 ガチャに関しては無念ではあるが、今回はこれで良しとしておくのが正解だろう。

 無論、神様に中指を立てるのは忘れないが。

 

「あぁ、困った……困ったわ」

「ん?」

 

 そうして後ろ髪を引かれる思いで城下町へと到着したところで、一人の、明らかに困っています、という雰囲気を出している女の子が目に入った。

 形だけの騎士団長とはいえ、女王と世界花に認められた存在であるが故か、彼女は花騎士であると何の疑いもなく思った。

 そして、騎士団長というものは他の騎士団の花騎士とはいえ困っている花騎士を見逃せない。まあ、それは俺の性分でもある気がするのだが。

 

「何かあったのか?」

「ひゃっ!? え、あ、あーっと」

「おぉう……」

「ちょ、ちょっと。あんまりジロジロ見ないで、ください」

 

 後ろからでも分かる、頭頂部に付けた大きなリボン。黄金に輝く太もも辺りまで伸びた長髪。振り返ったその花騎士は右目にお洒落、のように見える眼帯と首元にこれまた目立つリボン。こげ茶に近い色をしたゴシック調の服にやけに丈の短いスカート。それに足元は太ももまでの縞柄ハイソックスと足甲をしていた。

 彼女はこちらの呼びかけに驚き、また見つめる俺に頬を染めて恥じらいを見せるが無理もない。

 

「ふむ。何かあったのですか、お嬢さん」

「え、えぇ……」

「あぁ、いや。俺……私は通りすがりの騎士団長ですよ。ご安心を」

 

 思わずこちらが言葉遣いを変えてしまうほど、おっぱいがでかい! 腰のくびれがグッド! お尻も多分大きい! それでいて小柄で犯しやすそう!

 だったからであった。

 いやー、素晴らしい。捨てる神あれば拾う神あり、とはどこかの本で見た一文だが、正にその通りだった。

 不幸中の幸いか、運命の導きによるものなのか、はたまた偶然の産物によるものなのかはこの際どうでもいい。今はウサギゴケがいるから無理だが、ここでこの花騎士に恩を売って親密な関係になっておきたい。

 いやまあ、親密な関係にならなくとも恩を売っておいて、ウサギゴケがいない時に呼び出して犯したい。目の前の花騎士はそう思えるほどに俺の股間にドストライクな子であった。

 

「あぅ、あ、私の名前は……いえ、我が名はアイビー!」

「うん……うん?」

「生命の守護者であり、花騎士よ! 今はとっても重要な任務をこなしているところなの!」

「……はい」

 

 うーん、ちょっと、いやかなり癖のある子だった。こちらが先に名乗ったのに対してちゃんと自己紹介できる辺りは好感触なのだが、妙に芝居がかったその口上は何なのだろうか?

 あ、もしかして劇団関係者とか?

 

「あ、あのね。その~、最近出来たっていうスイーツのお店を探しているのだけれども、場所が分からなくて」

「あ、あー……」

 

 こちらが言葉に窮していると、それを見たアイビーと名乗った花騎士はもう一度頬を赤らめながら上目遣いに俺の様子を伺うような話し方に変わる。

 なんだ、やっぱり良い子じゃないか。声も可愛らしいし、大仰な喋り方をしなければ相当な美少女だ。これは男が放っておかないだろう。現に俺も厚手のズボンだからこそバレていないが、絶賛股ぐらがいきり立っているところだった。

 

「それならもしかすると、俺たちがこれから行くところかも知れないから、一緒に来るか?」

「えっ、本当!? ぁ、んんっ。……いいわ。この超越者たる私の知らない場所を知っているという貴方。今は貴方に従ってあげましょう!」

 

 あー、はー。可愛いわ。こちらが言葉遣い戻しても気づかないぐらいに話に食いつき、その後、わざとらしく咳払いして大仰な話し方をする辺りが最高に可愛い。

 これでウサギゴケがいなければ、件のスイーツ店に誘うフリして路地裏に連れ込んで、服をひん剥いて露わになった乙女の秘密の場所にてへこへこ腰を振れるのだけどなぁ。仕方がない。ここは大人しく案内して、犯すのは次の機会にするとしようではないか。

 

「じゃあ、俺たちの後についてきてくれ。悪い。待たせたな、ウサギゴケ」

「んっ、ウーちゃんは大丈夫なの」

「いざ行かん! 伝説の、力あるレガリアがあるという地へ! ……あ、スイーツ店のことね」

 

 獲物の前で舌なめずりはしない。それは確実にヤれる時になってからするものだ。そして、今はその時ではない。恩を売り、機を待つのだ。

 目の前に極上の身体があり、選ぶ必要はない。だが、今は落ち着け。俺はただ、花騎士とヤりたいだけなのだ。

 俺はいきり立つ息子を何とか宥めつつ、ウサギゴケと少し変わった花騎士、アイビーと共に目的のスイーツ店に向けて再び足を進めるのだった。

 

 

※※※

 

 

「これよ、これ! 私が求めていたレガリアは~! ……ありがとね、団長さん!」

 

 どうやら、彼女の求めるスイーツ店とは俺たちが向かおうとしていたスイーツ店で間違いないようであった。

 店を出て、購入したケーキ入りの箱をありがたそうに天に掲げた後、アイビーはこちらへと振り返り、眩しすぎるぐらいの笑顔を見せてくれた。

 お気に召したようで何より、と返しながら、俺は心の中で邪悪な笑みを浮かべる。ここで、お礼の話が出てきた際に格好つけて「お礼はいいよ」などとは言わない。確実にその恵まれた身体を一時的でも手に入れるためにも、何としても再会の約束を取り付けねばならぬ。

 隣にいる嬉しそうに手にしたケーキ入りの箱を眺めるウサギゴケへと視線を落とし、次の彼女の休みの日辺りにでもするか、と思いながらもアイビーの次の言葉を待った。

 

「あぁ! これでサクラさんとのお茶会に間に合うわー!」

「っ……サクラ、サン?」

 

 そして、ケーキの入った箱を天に掲げたまま、その場でくるくると回るアイビーの言葉に、俺は背中から腰に掛けて一本の冷えた棒を突きさされた気分になった。

 

「サクラさんよ、サクラさん。知らないの?」

「イや、知っテるヨ? 花騎士の、サクラ=サーンだよネ?」

「? 何で妙にカタコトになっているかは分からないけれども、そのサクラさんよ」

 

 俺が余程素っ頓狂な声を出したのか、回るのを止めて、どこか訝し気にアイビーはこちらを見つめる。

 いやだって、仕方がないだろう?

 俺だって、まさかその名前が出てくるとは思わなかったのだ。彼女の名前は数年前の出来事だがしっかりと覚えている。

 それどころか命を救ってもらった恩人なのだ。その名前を忘れるはずがない。というか、ちょっと命のやり取りでハイになって彼女を犯そうとやんちゃしようとしたぐらいだ。

 そして今、彼女の噂はなんちゃって騎士団長になる前の俺の耳にも入っていた。

 眉目秀麗。頭脳明晰。穏やかで柔和。一度の微笑は、それだけで値千金とまで言われる絶世の美女。

 それでいて何をするにしても万事手回しが良く、サクラを迎えることの出来た騎士団は、その万能っぷりのあまり申し訳なくなって手放すぐらいだと聞き及んでいる。

 フリーの花騎士になってもその名声は鳴りを潜める事はなく、寧ろ以前よりも鳴り響いているのだというのだから凄まじいの一言に尽きる。

 そんな彼女の名前を聞いたのだ、感謝こそすれ、何も怯えることはないはずだ。

 

「ウン、ソーナノね。あ、そーダ。彼女とハ、どのヨウなご関係デ?」

 

 なのに。なのに、だ。その名前を聞いただけで、「これでアイビーちゃんを犯せるきっかけを作れたぜ、なあ、相棒!」と先ほどまでイキりにイキっていた息子が塩を掛けられた菜っ葉の如く萎れ、二つの玉も心なしか痛いほどに縮み上がっていく感覚になった。

 まさかのまさかだ。あの数年前のやり取りだけで、俺がサクラに対してこれほどまでにトラウマを持っているとは思いもよらなかった。

 当時の彼女が俺に対して何かをした訳ではない。寧ろ、俺の方から彼女に色々とヤろうと仕掛けていたのだ。それを、まあ、色んな方法で回避された上で釘を刺されたぐらいなのだ。

 それがまあ、うん。無理やりヤろうとしたら死ぬってのを理解したので……自分で仕掛けておいて勝手にトラウマになるのか、最高に情けないなオイ。

 

「え? そんなこと、決まっているじゃない!」

 

 話を戻そう。思いもよらない所で俺がサクラにトラウマを持っているのは分かった。そして、目の前にいるアイビーの口からその名前が出たという事実を前に、嫌な予感がぬぐい切れない。

 単なる先輩後輩の関係であってくれ。お茶会とかいう単語が聞こえた気がするけれども気のせいだ。頼む! 頼むから、俺の気のせいであってくれ!

 

「サクラさんは私の敬愛する御方よ! それなのに、一緒に水着を選んでくれたり、着物を譲ってくれたり。今日だって、これからのお茶会に誘ってくれたのよ」

 

 はい、終了。解散、解散。

 ただの憧れの人ならまだよかった。一方的な尊敬であって、サクラからは社交辞令的な付き合いであれば救いはあった。

 だが、一緒に水着を選ぶならともかく、着物を譲るとかいう時点でその関係は深いものであることは容易に理解できる。社交辞令の相手にわざわざ着物なんて高価なものを譲りはしないだろう。

 目の前にいるちょろ可愛いアイビーは、恐らく犯せる。それも容易く、だ。彼女はどうも、人の言うことを素直に信じすぎるきらいがある。

 世の中、もっと俺のような畜生がいることを知っておいた方がいいと思えるぐらいだ。いやまあ、自分はそんな畜生の中では大分マシなほうだとは思う。思いたいが。

 とにかく。彼女とヤろうと思えば簡単にヤれるという確信が持てる。今回の件で関係を築き、次に会った時にでもなんやかんやすれば、なんやかんやすることができる。

 が、問題はその後だ。サクラとそこまで深い関係にあるのであれば、間違いなくアイビーを犯したことは彼女の耳に入る。

 そして、それを実行した犯人、つまりは俺の顔をアイビーが知っている以上、間違いなく報復が来る。というか、多分殺される。それは数年前の時に殺されてはいないけれども感覚として体験済みだ。

 ならば、犯した後にアイビーの両目でも潰すか?

 ふざけんな! 俺は花騎士を犯したいだけであって、花騎士に一生を左右するような傷を負わせたいわけではないのだ!

 ……いやまあ、犯す時点で一生を左右するような心の傷を与えているのだが。そこはそれ。こちらの目的のためには致し方ないというか、ただの言い訳です、ハイ。

 とにかく! 無理だ。犯すことは出来ても、その後に確実な死が見える以上、アイビーを犯すことは出来ない。

 目の前にあるのは豊満で絶対に美味しいブドウであり、手の届くところにある魅惑の果実。しかし、一度手を出せば物陰から銃を持った猟師が確実に脳天を撃ち抜いてくる禁断の果実でもあるのだ。食べたら最期、死は免れない。

 

「はぁ~……そうか、よかったね」

「え? あ、あの。顔が急にしわくちゃの、おじいちゃんみたいになっているけれども、大丈夫?」

「……気にしないでくれ」

「え~っと、何かお礼でも?」

「いいです、ハイ。次に出会った時にでもなんやかんやしてくれ」

「なんやかんやって……あ、そうだ」

 

 彼女に指摘されるぐらいに落ち込んでいる俺を前に、アイビーは何を思ったのかスカートのポケットに手を入れる。

 え? なに? パンティーでもくれるの? 犯せてはあげないけれども、このパンティーでシコシコ寂しく息子を慰めろって?

 はぁ~、マジかよ。折角、神を拝めたと思ったら罠とはな。

 

「はい。これ。1つだけじゃあ、意味がないかもしれないけれど。私が持っているよりは団長さんが使ったほうが役立てると思うわ!」

 

 そうして大袈裟に落ち込む俺の手を優しく掴み、握らせてきたものの硬さに俺は虚ろのままに目を向けた後、即座に叫んだ。

 

「貴女が神か!!」

「ひゃっ!? え、えぇ~?」

 

 神はどこにいると思う?

 俺の、人の心の中? それとも霊峰の頂上? 神社の中?

 いいや、違う。俺は確かに今日、目の前に神を見た。

 生命の守護者。俺にとっての救いの女神、アイビーを!

 

「いや、ありがとう! 本当にありがとう!」

「う、うん。そこまで喜んでくれて、私もその、嬉しいわ」

 

 彼女の手を強く握り返し、上下に激しく振ってお礼を言う。

 そんな戸惑うアイビーと俺の手の間には1つの、後1つ、ガチャを回すには足りなかった華霊石が確かにあった。

 

 

※※※

 

 

「石、ヨシ!」

「鉢、ヨシ、なの!」

「準備ヨシ!」

「なの!」

 

 時刻はあれから少し過ぎて、十六時半になったばかりだった。アイビーはあの後、無事にサクラとお茶会が出来ただろうか。

 優しい彼女はあれだけの施しの後にも「改めてお礼はするわ! 団長さんが言う通り、次に会った時にでもね!」と言って店前で別れた。

 もしかすると二度と会えないかもしれないが、今日のことは二度と忘れないだろう。

 次に出会った時は、レガリア……恐らくは好物であるケーキをたらふく食べさせてあげようと思う。アイビーはそれ程のことをしてくれた。

 

「よぉし! ウサギゴケ、石を流し込むぞ!」

「了解、なの!」

 

 無論、色々と心配や手伝いをしてくれたウサギゴケにも、今日買ったケーキを全部食べさせてあげた。一応自分の分も買っておいたが、これから出会える花騎士を犯せると思うと、それだけでもう胸がいっぱい腹いっぱい。股間元気でボク元気! という具合なのだ。

 随分と長い遠回りだったが、それも今日でおしまいだ。

 二人で石を入れた後に、「鉢割れ」の現象が起こる。銅色の魔法の鉢が震えて表面が音を立てて綺麗に割れる。銀色の鉢へと変わり、更に震えて先ほどと同じように割れて金色へ。

 

「おぉー」

「おー」

 

 このガチャの際の「鉢割れ」の色は、所謂花騎士としての実力……という訳ではなく、実力や可能性、潜在能力、花騎士としての完成度といった複雑なものが入り混じっているという。

 いくら実力があっても花騎士として完成されていれば銅の鉢。逆に騎士学校を卒業したての准騎士であっても、潜在能力や可能性に満ち溢れていれば虹の鉢になるのだという。

 詳しいことはよく分からないし、その花騎士の潜在能力や可能性の開花。単純な強化でさえも、マニュと呼ばれる妖精や進化竜と呼ばれる妖精などが必要になるという。

 そして、それらに好かれている団長の元にいる花騎士は、例え土色の鉢の者であっても虹色の可能性を持つ者へと引き上げられるのだという。

 しかし、今の俺にとっては難しい話であり、関係のない話であった。

 ガチャから出てきた花騎士を今晩にでも犯す! 無論、ウサギゴケをちゃんと寝かしつけた後に、だ。

 それだけが今の俺にとって大事なことであり、最も重要なことであった。

 

「っ!? おぉっ!?」

「なの!」

 

 そんな俺の下心、もとい心に呼応したのか。金色の鉢が一拍おいた後に更に震えて割れる。その黄金の鉢の下から虹色の鉢が姿を現したところで、その色に合った虹色の種が不意に宙から現れて鉢の中に入る。

 そして、広間全体を覆わんばかりの眩い光を鉢の中から放たれ、虚空へと消える。

 

「おわ……った?」

「みたいなの」

 

 あまりの光に目を伏せてしまったが、終わった後に見ると鉢の色は元の銅色に戻っていた。消えた光はその対応する花騎士の元へと飛んでいき、それに導かれた花騎士は騎士団の執務室まで来て、そこで初めて邂逅となる……らしい。

 ここはブロッサムヒルなので、ベルガモットバレー程遠ければ、相手の状況次第だがそれこそ着任まで丸二日か三日はかかる。だが、ガチャによる召集は花騎士である以上、絶対である。仮に一国の女王であったとしても、これには逆らえないのである。

 

「団長。どうするの?」

「んー。取り敢えず鉢を返して、執務室で待つか」

「了解なの」

 

 事前に調べていたはずなのに、目の前で起こる出来事に気を取られすぎてしまい、すぐ花騎士に出会えないことにやや肩透かしを食らいながらも、俺はウサギゴケを連れて、その場を後にすることにした。

 

 

※※※

 

 

「ん?」

「なの?」

 

 そして、鉢を無事に返した後に執務室へと戻った際、その部屋の前に誰かが立っていることに気づいた。

 見るからに幼い、子どもだった。背丈はウサギゴケよりも少し高いぐらいか。まさかまた迷子か?

 藍色の三つ編みおさげに、花弁を思わせるようなワンピーススカート。ふにふにしてる横顔は幼いながらも整っており、何だかまるで花騎士のように綺麗、で……。

 

「あっ」

「ど、どうかしたかい。お嬢ちゃん? あっ、もしかして迷子? 迷子かー、そうかー」

 

 ……嫌な予感がした。それもとびっきりの嫌な予感だ。

 中指を立てた神様が、こちらに対して中指を立てて「ムチムチボインボインじゃなくてもいいって言ったのはお前じゃ、バーカ!」と言っている気がする。

 気のせいだ。頼むから気のせいであってくれ。君は、こっちを見て嬉しそうに小走りで近づく君は! 花騎士だ。騎士団長としての俺がそう囁くから間違いない! だけど、迷子で、用があるのは俺では、ない! そうだろ! 頼むから! そうであってくれ!

 

「初めまして団長さん。私、ビオラっていいます」

 

 そんな俺の懇願を余所に、こちらを見たビオラと名乗った幼女は満面の笑みを見せてくれた。

 

「まだまだ准騎士にもなりたてなんですけど、にこにこ笑顔で精一杯がんばります! ふにー」

「ふ、ふに……」

「ふにー」

「ふにぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!」

「ひゃあぁっ!?」

「なのっ!? 団長、団長ー!」

 

 彼女の、花騎士ビオラの自己紹介を聞いて、俺は奇声を発して仰向けに倒れる。

 薄れゆく意識の中、ものすごく心配そうな顔でこちらを覗き込むビオラとウサギゴケがまるでお迎えに来た天使たちのように見えたのは言うまでもなかった。

 あぁ、神様。女神のように優しく可愛く、ムチムチボインボインなアイビーではない方の神様。

 クソみたいに可愛げのない俺の心の中にいる神様よ。

 ビオラのように可愛らしく、綺麗で、幼く、俺の性癖範疇外の子を連れてきてくれて心の底からありがとう。彼女は可愛い。間違いなく、可愛い。そんな彼女に罪などない。あってはならないし、擦り付けては絶対にいけない。

 だからどうか、神様。お前だけに伝えよう。

 くたばってしまえ、くそったれめ!!!!

 

 

続いてしまった……

 




わざわざ感想を下さった奇特な方々がいたのでつい…
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