夜の住宅街の一通り。そこに人の気配は無く、今そこにいるのは俺と霊体化しているランサーだけだ。
今、俺たちは漸く目的地──間桐邸に到着した。
「やっぱりデカイな、此処の屋敷は」
俺はそう呟くと、塀を我ながら見事な脚力で飛び越える。
しかし飛び越えた直後、とてつもない悪寒がした。
俺が直感で後ろに振り向いた刹那──
──俺の体を、ライダーと思われるサーヴァントが蹴り飛ばした。
俺はかわすことが出来ず、勢いよく吹っ飛ばされ、そのまま塀に激突する。
その反動で顔を隠していたフードも取れてしまう。
それと同時にランサーが霊体化を解き、槍をライダーに向ける。
ライダーの姿は、紺に近い黒の鎧に全身を包み、ヘルメットのような兜を被った異様な形であった。
「見たところ、ライダーのサーヴァントだな」
「如何にも。俺がライダーのサーヴァントだ」
ランサーがあの異様な形をしたサーヴァントをライダーだと見破る。
一方、ライダーは構えることもせず、こちらを様子見しているようだった。
「だが、生憎と俺は今、お前たちと戦う気が無い」
唐突にライダーが衝撃的な言葉を口にする。
「……そうか。どうする、マスター」
ランサーが先程まで踞っていた俺に問いを投げる。
申し訳ないがライダー、お前を此処で──
「──ランサー、ライダーを潰せ」
俺がランサーに対し、そう命令すると、ランサーはすぐさまライダーに槍の連撃をお見舞いする。
しかし、ライダーの鎧には一切傷が付いていなかった。
「……戦いは避けられないか」
ライダーは残念そうに零すと、目にも止まらぬ速さでランサーに肉薄し、腹部に俺にしたような蹴りをする。
それを食らい、ランサーは衝撃で少し後退する。
(あのライダー……真名が全く読めない……)
何故だろう、『Fate』シリーズには存在している英霊の筈なのに、何故か記憶が引っ張り出せない……。
しかし、トロイア戦争随一の戦士・アキレウスとほぼほぼ同格の英霊だとは戦い方を観察してみて分かった。
(ん? 待てよ……アキレウスとほぼほぼ同格……?)
駄目だ、あと少しのところでライダーの真名が分かりそうなのに、分からない。
「何度突いても傷つかぬとは、余程の鎧と見たぞ、ライダー」
俺が分析している間に、ランサーが何度も猛攻を仕掛けたらしい。
が、ランサーの言った通り、ライダーの鎧には一つも傷が付いていなかった。
「! すまないが、そろそろマスターと共に此処から出ねばならないようだ」
ライダーが少し焦ったように言う。
(ライダーのマスター……間桐桜のことか……)
俺はそう推測するが、一つ疑問があった。
何故ライダーが焦っている?
俺がそれを推測している途中、紫の髪と豊満な胸が特徴のライダーのマスター──間桐桜が屋敷から走って出てきた。
「ライダー!? 一体どうしたのですか……っ!?」
間桐桜がライダーを問い詰めようとした瞬間、ライダーは間桐桜をお姫様抱っこし、目にも止まらぬ速さでその場を去ろうとする。
「すまない、マスター。今は此処から急いで逃げるぞ!」
そう言うと、ライダーは間桐桜を抱え、屋根から屋根を伝い、どこかに去っていった。
「一体何なん……っ!?」
刹那、俺たちの眼前に蟲が集まり、やがて老人の姿を取った。
「間桐臓硯……!」
俺がその名を口にすると、目の前の老人──間桐臓硯はニヤリと笑う。
「ほう、その連れておるサーヴァントを見る限り、お主はランサーのマスターじゃな」
「ああ、そうだ。そして臓硯、今からお前を殺す」
臓硯はその言葉を聞いた瞬間、大笑いする。
「……何がおかしい」
「無論、儂を殺すということ自体じゃ」
「……御託はいい。ランサー、殺れ」
その言葉を聞いたランサーは、炎を放出し、あっという間に臓硯の全てを焼き殺した。
「……これで、一手終わったか……」
すみません。最後駆け足気味になってしまいました……。