そのため、某兄弟子や愛の人の出番は先送りになります。犬や眉毛に至っては7年先に…。
犬「7年もかからねえだろ!!」
眉毛「キレんなよ。つか本当に7年過ぎちまうんだよ」
ギルドの2階からこちらを見下ろす、いや見下しながら笑みを浮かべるその男『ラクサス・ドレアー』は強者揃いの
「ミストガンはシャイなんだ。あんまり詮索してやるな」
言葉だけを聞けば、自分と同じ最強候補の男を気遣っているようにも聞こえるが、表情と声の調子からはそれは感じられない。例えるなら「自分には知る権利はあるが、その権利を持たないおまえたちが知る必要なんかない。」と言外で主張しているものだ。
そんな彼の様子を、シエルは見上げながら睨むようにしてラクサスへの視線を鋭くする。
「ラクサスーー!!オレと勝負しろーー!!!」
「さっきエルザにやられたばっかじゃねえか…」
ラクサスの声を聞いて、眠ったままだったナツが意識を取り戻し、飛び起きると同時に勝負を挑みだす。周りはその様子に、先程エルザに同じように挑んで返り討ちにあったにも関わらず挑もうとしているナツに呆れているようだ。
「そうそう、エルザごときに勝てねえようじゃオレには勝てねえよ」
「どういう意味だ…」
「お、おい…落ち着けよエルザ…」
ナツに返した言葉に対し、エルザが怒気を含みながら呟く。その様子に、宥めたグレイを始め、周りのメンバーは恐々としていた。しかし、そんな怒気を真っ向から受けてもラクサスは全く揺らがず、柵の上から腕を放して己を誇示するように、両腕を掲げながら「オレが最強って事さ」と宣言する。虚勢ではなく、事実を語るかのように。
「降りてこい、コノヤロウ!」
「おまえが上がってこい」
「上等だ!!」
言うや否やラクサスのいる2階へと通じる階段目がけてナツは駆けだした。階段はカウンターの奥に存在し、それを跳び越え駆け上がろうとする。だが乗り越えた瞬間、カウンターに座ったままだったマカロフが左腕のみを巨大化させ、階段を目前としていたナツを叩き潰した。当の本人は文字通り潰された蛙のような声を上げてその場に突っ伏した。
「『2階』には上がってはならん!まだな…」
「ははっ、怒られてやんの」
マカロフの忠告も聞いているのかいないのか、ナツは彼の左拳から抜け出そうとするが、全く剥がれる様子はない。「ラクサスもよさんか」と特に力まず注意する様子を見るに、彼が放さない限りはナツはほとんど動くことはできないだろう。
「
最後の人物の名を呟いた瞬間、ラクサスはこの時初めてシエルの方へと目を向けた。目を細めて睨みつけているシエルを目にし、ラクサスの口角はさらに吊り上がる。少年の鋭い視線には最初から気づいていたが、敢えてこの時になるまでそれに触れようとはしなかった。
「なあシエル?そんなに睨んでどうした、カワイイ顔が台無しだぜ?」
ラクサスの言葉にシエルの睨みは一層深くなる。一切眼中に置かれず、皮肉交じりに揶揄われているとしか思えない態度と言葉に、歯軋りさえしてしまうまでに。だが、ラクサスの言はこれだけに終わらない。
「そういや聞いたぜ。
「じきに追い付いて見せるさ、その前にラクサスが先になるだろうけど…?」
「無理無理、あいつにさえも、あと何百歩も近づかなきゃ追いつけねえだろ。オレに追い付くなら千歩でも足りねえ。一体いつ頃の話になんだろうなあ?」
ギルドでの最年少である少年に対し、幾分か下に見る発言を頑なに変えずに告げるラクサス。悔しさを滲ませる様に両手を握り締めてこらえていたシエルだったが、落ち着けるように一つ深呼吸をすると、ラクサスへと向き直り真っすぐ見据えて宣言をする。
「何年かかってでも追いつくさ。そして少なくても、今年中にお前がいる『2階』に上がってみせる…!」
この宣言には、周りのメンバーたちもどよめいた。シエルのその言葉が何を意味するのか、ギルドのメンバーにのみそれが伝わる。ずっと笑みを浮かべていたラクサスでさえ少なからず驚きを表した表情へと変わっていた。違う反応があるとすれば、マカロフはシエルの姿をじっと見据え、ミラジェーンはどこか悲しみを秘めた物憂げな視線を向けており、ナツは潰された状態のまま「いーや!『2階』に上がるのはオレだーー!!」と叫んでいる。唯一シエルよりも(三日ほどの差とはいえ)後に加入し、意味を理解できていないルーシィは周りのメンバーが驚愕と動揺を表している中で一人困惑していた。そしてもう一人、俯いてシエルから視線を外した者もいるが、他の誰も気づかなかった。
「まあ、精々足掻きな。どの道オレには一生かかっても追いつけやしねえよ、オレが最強だ…!」
少しだけ崩れていた笑みを再び浮かべ、ラクサスは堂々と告げた。シエルだけでなく、ナツやエルザ、グレイを初めとした実力者たちと言える面々もその言葉に少なからず反応を示していた。
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そしてラクサスがいた2階。
「2階の
「S級!?」
ギルド内で唯一詳細を知らないルーシィに、シエルがS級に関して説明を行っていた。今日起きた騒動の中にあった『2階』について気になったようで、カウンターで夕食をとっていたシエルに質問しに来たのだ。彼と隣り合うようにカウンターに座り、説明を受けたルーシィは「S級」と言う単語に驚愕の様子を浮かべる。
「一瞬の判断ミスが死を招く危険な仕事ばかり、でもその分報酬はいいんだよ。そしてそのS級クエストを受けられるのは、マスターに認められた一部の魔導士のみ。エルザやラクサス、そしてミストガンを含めても6人だけなんだ」
「あ~、エルザならちょっと納得…」
「S級なんて、本来は目指すものじゃないのよ。本当に命がいくつあっても足りない仕事ばかりなんだから」
シエルの説明に、ルーシィの分の夕食を運んできたミラジェーンが補足と共に忠告を挟んできた。何気なく言っているように見えるが、その言葉にはまるで彼女が感じてきたかのような重みが混じっているようにも聞こえる。「みたいですね…」と力なく呟くルーシィの隣で、シエルは食べ終わった夕食が乗っていた空の器に視線を落とす。
「(ミラはやっぱりあの時のことが…でも、俺はそれでも…)」
ミラジェーンの過去を知る一人であるシエルは、彼女の心情を察しながらも、自分が目指す道を変えようとは思えない、そう改めて意志を強く持ちなおした。
いずれは自分もS級のクエストへと挑むことを望む者、自分はS級とは無縁となると思う者。隣同士に座りながら正反対の思考を抱いていたシエルとルーシィであったが…
まさかお互いに、その思いとは真逆の展開が翌日に起きることになろうとは、思いもよらなかった。
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翌朝、シエルはカウンター席にて雑誌を読んでいた。雑誌もとい、週刊ソーサラーには先日起きた
今日は
「たいへーーん!!」
「ん…?ミラ、どったの?」
珍しく慌てた様子で大声で叫びながら、2階から駆け下りてきたミラジェーンによって。シエルが思わず聞いてきたのだが、ミラジェーンは彼に返事する余裕もない。彼のすぐ近くにいるマスター・マカロフにすぐさま報告をあげた。
「マスター!2階の依頼書が一枚なくなってます!!」
「へ~、そりゃ大変だ…」
「ブホォッ!!?」
「ハァアッ!!?」
その報告に、コーヒーを口にしていたマカロフの吹き出しと、一度理解が追い付かなくて軽く返事した後、遅れて理解に至ったシエルの絶叫が見事にシンクロした。近くで見ていたメンバーはあまりのシンクロぶりに「狙ったんじゃねえのか?」と疑問を抱く始末だ。
しかし、この驚きようは至極当然とも言える。2階の依頼書と言えばS級クエストの依頼書だ。本来選ばれた者にしか受注の資格がないその依頼書がなくなっているということは無許可で何者かが持って行ったということになる。ギルド内も騒然となり、誰がその依頼書を持って行ったのかと言う声も上がる。
「ネコだ。羽の生えたネコがちぎっていくのを見たぜ…」
その疑問に答えたのは、2階に上がる資格を持ち、その2階の席に座り込んでいるラクサスだ。羽の生えたネコ。心当たりは
「ハッピーが!?」
「つー事はナツとルーシィも一緒か!?」
「何考えてんだあいつ等!!」
「バカだとは思ってたけど、ここまでとはね…」
「S級クエストに勝手に行っちまうなんて…!」
「ルーシィは比較的
後に分かったことを記載しておくと、S級クエストにナツから誘われたルーシィ、当初は勿論断ったのだが、後から依頼書を確認してみると、報酬は金額だけでなく、黄道十二門の鍵も含まれていたのだ。星霊魔導士である彼女はそれを放っておけず、彼らに同行を申し出てしまったのだ。
「これは重大なルール違反だ…。じじい!奴等は帰り次第破門…だよな?つーか、あの程度の実力でS級に挑むたァ…帰っちゃこねえだろうがな」
動揺する面々と対照的に、まるで他人事のような口ぶりでマカロフに問いかけるラクサス。問われた本人は何も言わずに黙っているままだったが、その態度にミラジェーンが表情を険しくして詰め寄ってきた。
「ラクサス!知っててなんで止めなかったの!?」
「オレにはどろぼうネコが紙キレくわえて逃げてったようにしか見えなかったんだよ。まさかあれがハッピーで、ナツがS級に行っちまった、なんて思いもよらなかったなァ…」
悪びれる様子もなく返答するラクサスに、ミラジェーンの表情が一変する。いつも朗らかに笑みを浮かべていた彼女からは想像もつかない、目や顔から光を消して陰を帯びた、相手に威圧を与えると言っていい程の、敵意すら感じる表情へと。一般の魔導士ならその表情で怯むところではあるが、ラクサスはそれを至近距離で見て「そんな顔久しぶりだ」と懐かしむように笑っている。堪えてないようだ。
「マズイのう…。消えた依頼書は…?」
「呪われた島『ガルナ』です」
ラクサスへの睨みを外さずに答えたミラジェーン。その島の名に彼女とラクサスを除くギルドの全員に衝撃と戦慄が走る。
『ガルナ島』――。
呪われた島、悪魔の島とも呼ばれ、船乗りたちの間でも悪い意味で有名である。絶対に近づくことはしない。付近を拠点にする海賊でさえも避けて通る程。人によっては名前も聞くことさえ嫌がる。それが呪われた島『ガルナ』である。
そんな島へと向かったという事実に「やっぱりバカだ」と叫ぶ者たちさえいる始末。マスター・マカロフも一層の重大さに気付き、慌ててラクサスの名を呼んだ。
「ラクサス!つれ戻してこい!!」
「冗談…オレはこれから仕事なんだ。てめえのケツをふけねえ魔導士はこのギルドにはいねえ。だろ?」
「今ここにいる中で、オマエ以外誰がナツを力づくでつれ戻せる!!?」
命令を拒否され、かつて自分が教えたギルドの者達の信条で返されたマカロフがさらに主張を重ねてくる。だが、その主張に反応したのは別の人物だった。マカロフの後ろから、立ち上がったことで動いた椅子の音が響く。
「じーさん…そりゃあ聞き捨てならねえなァ…」
ナツたちと共に
「つれ戻すっつっても、大丈夫かよグレイ…?」
「行き先がガルナじゃ…」
「かと言ってオレ達が行っても…」
もう姿が見えなくなってしまったグレイを案じ、各々が言葉を零す。シエルもどこか不安げにギルドの出入口の門扉を見据えたままだ。だが、このままではいけない。グレイ一人では難しくともせめてもう一人いれば…。
「マスター、俺も…」
「ならん!!」
だが、彼のその決意はマカロフによって阻まれた。声に込められた威圧に、思わずシエルは息を呑み、身体は縛られたように動かせない。
「これ以上誰も行くことは許可しない…。グレイに託すしか、なさそうじゃ…」
苦悶の表情で呟くマカロフを見て、シエルはさらに悔しさを表情に滲ませた。S級を目指すと宣言しながら、勝手にS級へと行ってしまった者たちを追いかけることすらできない。そんな自分の無力さを噛み締めることしかできなかった。
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ナツ達が無断でS級クエストへと向かった翌日のこと。シエルはマグノリアの東にある森の中を歩いていた。隣町からの依頼を受注し、滞り無く達成したあと、帰路に就くと同時に、ふと思いついて通り掛かったのだ。
「変わってないな…」
その目的地に到着した彼は目の前の建物を見上げながら言葉を零す。百年単位の年月を経ているであろう大木を刳り抜いて造られたそれは、木製の扉と所々にある窓のみが家であることを表している。ここに来たのは随分と久しぶりだな、と懐かしむように微笑み、石でできた階段を一歩ずつ登りながら出入り口の扉へと近づく。ノックをしようと手の甲を扉に向けて叩こうとしたその時だった。
「何の用だい?」
背後から決して大きくはないがハッキリと聞こえたその声に、シエルは一瞬肩を震わせた。勢いよく振り向くと、声をかけたであろう薄桃色の髪を後頭部で纏めた老齢の女性が、採取したであろう草花の入った籠を片手に、どこか不機嫌そうな表情で見ていた。だがシエルの顔を見た瞬間一瞬だけ目を見開いて「あんたか…」と一言、そして不機嫌気味だった表情が少しだけ(ほんの少しだけ)和らいだ。
「お、お久しぶりです。『ポーリュシカ』先生…」
シエルが目的としていたのは、この女性・
「先生に会いにきました」
「そんなことは分かってるんだよ。会いにきた理由を聞いているんだ」
「えっと、近くまで来たので久々に会いたくなった…じゃダメですか…?」
瞬間、少しだけ和らいでいたはずの表情は最初の時よりもいっそう不機嫌なものとなり、シエルはその表情を目にして思わずたじろいだ。ダメだったらしい。
「用が無いならさっさと帰りな」
「わーっ!待ってください!手伝います、何か手伝いますから!!掃除とか料理とか!あ、それ薬草ですよね!?すり潰すのやりますよ!」
「いらないよ」
「じゃああれです!肩もみでも…!!」
「老人扱いすんじゃないよ!!」
普段はメンバーを揶揄ったりイタズラを仕掛けたりするはずのシエルだが、何故かポーリュシカへの態度はそれとは真逆だ。シエルを通り過ぎて自分の家に入ろうとする引き留めようと彼女に縋りつく。何気に手に持っている草花を薬用と見抜いたりもしているが本人は鬱陶しそうだ。しまいには祖母が孫にしてもらえると喜びそうなことのランキング上位にある肩もみの提案をして、意図せず彼女への苛立ちを増長させてしまう。
その後も追い出そうとするポーリュシカと留まろうとするシエルの押し問答は続き、最終的には押し負けたポーリュシカがシエルを家の中へと入れることで決着がついた。そして二人は、台所を借りたシエルが淹れた紅茶を嗜みながら会話をしていた。
「こうして先生と話をするのも、いつぶりですかね?」
「…さあね、あたしは話よりも治す方が仕事だから、そんなのいちいち気にしちゃいないけど…」
一応しばらくぶりの会話の許可は下りたが、どこまでも他人との交流というか、馴れ合いと言うものに否定的である態度に、シエルは苦笑いを浮かべることしかできない。だが、紅茶を一口含んだ彼女は、目線を手に持つカップに向けたまま徐に尋ねだした。
「あいつはどうしてるんだい?」
ポーリュシカの言う「あいつ」。誰とは明言されてないが、シエルには心当たりは一人しか浮かばなかった。そしてその人物が、シエルにとって何よりも大切と言っていい存在であることも。
「この前手紙が届きました。元気にしていると、今は離れているけどまた会えるのが楽しみだと、書いてありました」
柔らかい笑みを浮かべながら伝えた内容に、ポーリュシカは「そうかい…」と一見素っ気なく答える。だが、シエルは気づいていた。その表情には安堵が含まれていると。口では素直にならない女性ではあるが、
「あの日、マスターに拾ってもらって、先生のお世話になって、家族のような存在に出会えて、本当に…本当に感謝しています。一生かけても返しきれないくらい…」
マカロフ、ポーリュシカ、
ポーリュシカは実を言うと人間が嫌いだ。強い力に溺れて醜く争い合う人間の様子を見てきたことが起因している。だがシエルはそれを知っていてもなお、彼女との交流をやめようとしない。嫌がらせなどではなく、ただ恩人に対して少しでも力になりたいと考えているからだ。その為にシエルはただ会うために帰路の途中で人里離れた森の中へと訪れた。
「よしとくれよ。あたしは薬剤師としての仕事をしただけ…。病人に対して適切な対処を施した結果に過ぎない…」
「その結果、俺たちは救われた。だからこれは、俺のただの我儘なんです。受け入れてくれ、だなんて言わないです。俺はただ勝手に、先生から受けた恩を返すだけですから」
真っすぐにこちらを見ながら告げたシエルの言葉に、ポーリュシカは思わずため息をついた。望まずとはいえ、かつては暗い世界に身を置いていた者の発言とは思えない。たった14年の生を過ごした子供が、まだ自分のやりたいことを為し、目指したいものを目指して走る年頃である彼が、他人から見れば自分のような天邪鬼ともいえる者に、これ程までに関わろうとすることは、正しいことなのだろうか?そんな疑問さえ抱かせられる。
「…それを飲んだら帰りな。依頼の報告がまだだろ?」
「え?いや、そうです、けど…まだ全然…」
会話と言うにはあまりにも短すぎる。会話はキャッチボールだと喩えられているが、本当の野球で例えれば今の会話は一打席で空振り三振、そしてその時点でゲームセットだ。表も裏もありゃしない。戸惑いながら会話を続けようと試みるシエルだったが…。
「ええい、うるさいね!病人でもないくせにこんなところにずっといるんじゃないよっ!!とっとと帰りな!!」
「は、はいーっ!!」
怒鳴り声一発で思惑は封じられ、呆気なく退散させられてしまった。結局紅茶を飲み干すことすらできないままで。訪ねた側であるシエルが淹れたものだったのに、だ…。だが、そんなことを指摘できる余裕はシエルにはない。そもそもあっても指摘できない。駆け足で家から出て、そのままマグノリアの方向へと走り去っていくシエルの姿を見ながら、ポーリュシカは先程の怒りも潜めて一つ息を吐く。
「まったく…」
そして見えなくなったと同時に、彼女は思い出していた。彼らを連れてマカロフが自分を訪ねてきたあの日の事を。片方は表情に暗い陰を落とし、子供が受けるには不相応な絶望を抱えていた兄。もう片方は生きていることが奇跡と言えるほどに衰弱しきっていた弟。
『お願いします、弟を助けてください…俺の命よりも大切な存在なんです…!!俺と違って、何の罪も持たない、失ってはいけない命なんです…!!お願いします…!!!』
身を低くし、額を地につけて涙混じりに懇願する兄の姿。人を治す仕事についている彼女は、元より弟を救うことに尽力すると決めていた。だがこの兄の姿勢に、その思いはより高められることになる。その後に「弟が救われるなら自分の命が失われてもいい」と発言した時には思いっきり引っ叩いたのだが。
「せめて、あんたらが大人になるまでは、真っ当に生きられることを願うよ…」
誰にも聞かれることがないと分かっていても、彼女はその願いを口に出さずにはいられなかった…。
おまけ風次回予告
シエル「グレイ帰ってこないな~。さては連れ戻すの失敗して一緒にS級クエスト行っちゃったかな…?」
レビィ「ルーちゃんもそこに行ってるんだよね?私が貸した本の感想、聞きたかったんだけどな~」
シエル「そう言えばルーシィって本好きと同時に小説家志望でもあるんだっけ?噂で聞いたけど」
レビィ「うん!私、読者第一号の約束とりつけちゃった♪」
シエル「そりゃ羨ましいな~、俺、第二号狙ってみようか。あ、でも…帰ってこれたとしても、『アレ』が待ち受けてると思うと…」
レビィ「ああ、『アレ』か…。ルーちゃんも可哀そうだね…。ナツたちのせいで…」
次回『幽鬼の支配者』
シエル「次に諸君は!『結局アレってなんだ!?』と言う!!」
レビィ「それ色々と違う世界の人のセリフー!!(汗)」