FAIRY TAIL ~天に愛されし魔導士~   作:屋田光一

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お待たせいたしました!先週は急にすみませんでした……。
Twitterの方で書かせていただきましたが、先週は突如休日出勤を頼まれて書けなくて……。

その代わりと言うのもなんですが、今回は長く書きました!2万字です!!珍しくめっちゃ進みました!!←

出来れば昨日……7/2のナツの日に投稿できればよかったんですけど、ひとまずは更新できただけでも良しとして置かせてください……。


第99話 終わりの始まり

「(もう、ダメだ…立ち上がれない…)」

 

全身に走る激痛、そして身体に襲う倦怠感。これまでの人生の中でも一番と言える消耗を感じながら、力なく横たわり、天竜のウェンディは心を折られていた。ドロマ・アニム黒天と、それを操るファウストの無慈悲で理不尽な攻防の強大さを前に、滅竜魔法を扱う3人でさえ手も足も出ない。

 

鉄竜の青年は自分と同様に倒れこんでおり、火竜の青年は矛によって大きく吹き飛ばされた。そして敵である黒き竜騎士には、ほとんどダメージらしきものが見られない。

 

《いくら無限の魔導士と言えど、一度尽きた魔力はしばらく回復せんだろう。大人しく、我が世界の魔力となれ》

 

ほぼ無傷に近い竜の甲冑を纏った国王から、再三に渡る言葉を投げかけられる。態度次第ではそれなりの待遇も考えると言っているが、元々そんなものになる気はない。だが今や、反論する気力も最早彼らには残されていない。

 

魔力は尽きた。

気力も出した。

死力を尽くした。

 

だがそれでも、目の前の存在は自分たちを大きく上回った。

 

ウェンディの脳裏に、“諦め”と言う言葉が浮かび上がる。どうにもならない、覆すことのできない現実。ここまで戦ったのであれば十分。だからもう、このまま楽になった方が…。

 

 

 

 

 

 

「諦めんな…!!」

 

現実を受け止め、すぐそこに迫る未来を受け入れようと目を閉じた瞬間、その声は聞こえた。閉じていた目を思わず開けて、彼女は声の方へと必死に目を移す。

 

おぼつかない足取り。絶え絶えの息。両手をぶら下げ、少しでも押せば再び倒れこみそうな程に消耗しながらも、俯かせている顔、そして目には、満身創痍となる前と同様、いやむしろ、それ以上に強い意志を宿して、倒れこんでいるウェンディとガジル、そして敵対するドロマ・アニム黒天へと一歩ずつ近づいていく。

 

「まだ、終わってねぇ…!!」

 

矛に突き飛ばされ、壁に叩きつけられ、それでもなお足を動かしてここに戻って来た。桜髪の火竜(サラマンダー)は、決して折れることのない闘志を燃やして、四肢に力を込めて叫ぶ。

 

「かかってこいやコノヤロウ!オレはここに立っているぞぉ!!!」

 

「……ナツさん……」

 

自分たちと同様に魔力も消耗し、自分たちよりも下手をするとボロボロの身体でありながら、彼はまだ諦めない。いや、彼は己の身がどうなろうと、決して諦めることを選ばない。ナツの叫びを聞いて癪に障った竜騎士が、踏み潰そうとするも、全身に力を込めてそれを受け止める。

 

「バカヤロウ…魔力がねえんじゃ、どうしようもねえ…!」

 

「捻り出す!!」

 

とうに魔力が尽きた体ではまともに戦えない。それでもまだ意思を曲げないナツにガジルがかけた言葉にも、ナツは知った事かと言うように更に力を込める。今にも潰されようとしている者とは思えぬ抵抗。重量をかけて潰そうとしてくる竜騎士の足を、徐々に押し返していく。

 

「明日の分を…捻り出すんだ!!!」

 

その言葉を体現するかのように、ナツは更にその力を捻り出し、押し潰してきた竜騎士の足を押し上げて、なんとその巨体を後方へと転倒させた。体格差をものともしない上に、魔力がほとんどないと思っていた青年の火事場の馬鹿力に、国王の驚愕の声が響く。

 

滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)なめんじゃねーぞ!!アァ!?」

 

本当にただ、驚くことしかできなかった。後ろに倒れこんだ竜騎士に乗っている国王に対して睨みをきかせながら叫ぶナツの声が、諦めかけ、心が折れそうになったウェンディの胸の内に、一つの火を灯す。

 

《身分をわきまえよクソ共がぁ!ワシを誰だと思っておるかーっ!!》

 

抗える力など残っていなかったはずのナツに転倒させられたことに更に苛立ったのか、起き上がりざまに腕を振るってナツを上空へと吹き飛ばす。焦りも含んだその絶叫を発するも、すぐさま国王は次の異変を察知する。ナツを打ち上げた更に上から、もう一人魔力を捻り出した存在が降下してくる。

 

「力を合わせる必要なんかねえ!!力は…願いは…繋げればいいっ!!」

 

右腕を鋼鉄の棍に変えたガジルが、竜騎士の右足を甲から貫き、さらに地中で棍を分裂させて縫いつけるようにロックした。跳躍力もかなりある為に、その機動力を纏めて封じるのが狙いだ。

 

巨大な黒き竜騎士の身体を大きく動かしてみせたナツの力。足を起点にその巨体を地面に縫い付けたガジルの胆力。明日の分。本当に明日に回せる分の力を、今この時に使えることが出来るのなら…。

 

「(シエルも言ってた…。今、この瞬間…しばらく出せなくなっても…明日の分が無くなっても…!)」

 

エクスタリアと、仲間の魔水晶(ラクリマ)、二つの浮遊島の激突を止めようとした時にシエルが心から叫んだ言葉を思い出しながら、ウェンディもまた激痛と倦怠に襲われた身体に力を込めて、立ち上がろうと振り絞る。

 

「(私の仲間を…家族を守る!!)」

 

可能な限りの(空気)を喰らいながら、内から、外から、己の最後の力を放とうと、その魔力を高めていく。

 

「ウェンディ!!オレに向かって咆哮だ!!」

 

「はいっ!!」

 

身体を上空に投げ出されていたナツが態勢を整え、落下している最中にも関わらず、ウェンディに向けてそう叫ぶ。その意図を、ウェンディだけじゃなく、ガジルも理解していた。

 

「そうだ行けェ!火竜(サラマンダー)!!お前しかいねぇ!!お前がやれーッ!!!」

 

「(ナツさんならきっと…!!私は、ナツさんを信じる…!!!)」

 

ガジルは右足を拘束する力を一切緩めず、ウェンディは己の中に込み上げる魔力を口へと溜め込んで、そしてナツは後方から来るであろう天竜の援護を信じて竜騎士へと視線を見据える。

 

《小癪な!!どのような攻撃を放とうが、竜ノ盾がある限りドロマ・アニム黒天の敗北はあり得んぞ!!》

 

ガジルの右足の高速を振りほどこうと動かしていた国王は、迫り来ようとしているナツの攻撃を防ごうと、左腕の盾に再び竜胆色の魔力を纏わせて完璧に防御しようと身構える。この攻撃さえも防がれては今度こそ終わる。ガジルがそれに気付いて阻止しようとするも、既に盾は展開されてしまっている。それでもどうにかしなければ…!その想いを抱えて左手に力を込めて攻撃しようとすると…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

周囲の岩壁の上を潜り抜けるように、凄まじい速度でドロマ・アニム黒天の背後から白い雲に乗って近づこうとしている存在に気付き、思わずその腕を止めた。

 

「ここだ!!こいつで…終わりだ!!」

 

その存在…天候魔法を操る少年が、楕円上の謎の機械を両手で持ちながら、その中心にあったボタンを、竜騎士に出来るだけ近い場所に至るタイミングで押し込む。すると、一度ドロマ・アニム黒天の目が赤い眼が点滅したかと思いきや、その異常を感じさせる声が甲冑の中から聞こえた。

 

《ん!?な、何じゃ!?『ドロマ・アニム緊急停止』!!?こんなもの聞いてないぞ!!!》

 

搭乗席のモニターに次々と、警告音と共に現れるメッセージウィンドウを出現させ、ドロマ・アニムの機能を停止させていく。目の前に映っているそのウィンドウを見て国王は、緊急の停止装置が存在しているだなんて報告を一切受けていなかったために、緊急停止の取り消しも出来ないまま混乱と共に時を過ごすばかり。

 

日光浴(サンライズ)!!」

 

更に、両手で抱えられるほどの大きさをした、魔力や体力などの回復力向上の効果を持つ優しい光の太陽を創り出し、ドロマ・アニムの真上へと飛ばす。これによって、緊急停止している竜騎士を除く、場にいるすべての魔導士に、魔力や体力と言った、今振り絞るべき力が少しずつ湧き上がる。

 

タイミングはバッチリ。準備は整った。あとは、彼らにすべてを託すだけ

 

「天竜の……咆哮ーーっ!!」

 

唐突に雲に乗って場に現れたシエルに驚いた様子を見せたものの、すぐさま切り替えてウェンディはナツ目掛けて純白の竜巻を口から放出。それにナツは敢えて身を任せ、横に回転する彼女の咆哮の特性を利用してその身体に勢いをつける。しかも今ではシエルが作った優しい光が、己の中にある力を更に高めていく。やるなら今しかない。内側に眠っていた自分の力を、思い切り振り絞った。

 

「火竜の…劍角!!!」

 

炎を纏いながら、頭からの突進。回転することによって高まった勢いをそのままに、真っすぐ黒き竜騎士へと突撃していく。

 

《待て!止まるな!!竜ノ盾よ!!あやつの攻撃を…!!》

 

迫りくるナツの攻撃をどうにか防ごうと操作を続けるも、警告音は鳴り続き、次々とその動力をシャットダウンして、モニターに何も映らなくなってしまう。それと同時に、待ち構えていた盾に帯びていた竜胆色の魔力が消滅。完全に機能を停止させた。完全に停止したと理解して硬直する国王。それから1、2秒足らずで黒き竜騎士の身体を、ナツが盾ごと貫通。更に勢いで、搭乗していた国王もナツによって外へと投げ出された。

 

地面へ叩きつけるようにファウストを投げつけるナツ。そして自分自身の身体も限界をきたし、少し離れた場所へと落下。一方で大きく貫通したことで大穴を開けられたドロマ・アニムは、完全に機能を停止したものの損傷は激しかったようで、支えを失って体勢を崩した直後、大爆発。大破し、木っ端微塵となった。

 

「な、何故……一体……何が……!?」

 

爆発四散し、最早残骸でしかその存在を確認できなくなってしまった最強兵器、ドロマ・アニム。だが、ファウストにはその原因が分からなかった。突如警告音と共に緊急停止のメッセージが入り、それでも継続させようと色々と操作したが受け付けず。気付けば桜髪の青年によって引きずり出され、地に足をつけていた。

 

何故?

何故急に止まったのか?それさえ無ければ、あの程度の攻撃、弾き返せたはずなのに…!

 

そう考えていたファウストの後方に、誰かが着地する音が聞こえてきた。反射的に振り向いた先にいたのは、衣服は傷だらけで破れた箇所が多々あるものの、特に目立つ外傷が見受けられない、魔科学研部長とよく似た少年。アースランドのシエル。怒りとも、哀れみとも取れる表情で、何かを言う訳でもなくこちらを見下ろしてきている。

 

「き、貴様は……!何故、ここに……!?」

 

「俺の事よりも、前を見てみろ」

 

エクシード達を守るために兵士たちを追いかけていったはずの少年が…残る魔戦部隊長と魔科学研部長によって淘汰されているはずの者たちの一人が、何故こんなところにいるのか?答えを知るよりも先に、シエルが投げかけた言葉に思わず従ってみると、彼が数瞬前まで抱いていた疑問はあっさりと吹き飛んだ。

 

 

 

「あれが……お前が禁忌を犯してまで欲しがっていた存在だ」

 

その目に映っていたのは、先程まで自分が追い詰めていた3人の魔導士。全員が満身創痍ながらも、こちらに向けて未だに敵意と闘志を失わずに鋭い視線を向けてきている。それ()()なら、まだよかった。

 

「(これは……幻想(ファンタジー)か……!?)」

 

こちらを睨みつけてくる3人の魔導士たち。その姿は、確かに先程までは人間と同じ形として見えていた。だが、今はどうか。実際に変貌したわけでもない。恐らく現実では、先程の人間たちがこちらに目を向けていることだろう。だが、ファウストの目には今、それぞれが違う存在として映っていた。

 

 

 

 

純白の翼を持った、美しくも猛々しさを残したドラゴン。

 

鋼鉄の体を持った、強固であり凶暴さも感じさせるドラゴン。

 

そして今にもこちらに迫ってきているように見えるは、灼熱の炎を口から洩れさせた、紅蓮の表皮を持ったドラゴン。

 

 

そのどれもがこちらに向けて咆哮を上げ、その気になれば簡単に蹂躙できてしまえるほどの、圧倒的な存在感。

 

 

 

実を言えば、先程も幻視していた。

 

鉄の竜が右足を縛り付け、天の竜が炎の竜を風で飛ばし、そして自らの身体を貫く炎の竜。

 

緊急停止の警告が流れたことでそちらに意識を持っていかれたが、確かにあの時見えた彼らの姿は、人間ではなくドラゴンだった。

 

人の形をした、竜そのもの。ファウストは、ようやくその身をもって思い知った。

 

自分がどれほど大きなものを手にしようとしていたのか、その存在が人の手にどれほど余るものだったのか、それを知らずに愚かにも魔力としてしか見れていなかったことも。

 

 

 

 

命の危機、ともいえる状況下に置かれたことで、最早彼に、恥や外聞は失われたも同然だった。

 

「……!!た、助けてくれぇ!お、おぬしもシエルじゃろ!?頼む!ワシを助けてくれ!!シエルであれば、どうにかできる……!!」

 

恐怖のあまり這う這うの体でシエルに駆け寄って懇願の声をあげる。自分が頼み込んでいるのが、一番の忠臣として置いていたシエルとは別の人物である事にも考えつかず、少年の身体にしがみついてただただ助けを求める。涙と鼻水に顔を濡らした、王の威厳など欠片も残っていない哀れな老人の姿。目の前の脅威から逃れたいと言う想いが、それ以上に強いからだろう。

 

だが、そんな老人の言葉は途切れることになった。しがみついてきた老人の目の前に、シエルが手に持っていた楕円型の機械を見せつけたことで…正確にはその機械の裏側に彫られていた「シエル・オルンポス作」と言う文字を見せたことによって。

 

魔科学研部長が作成した機械、突如起こったドロマ・アニムの緊急停止、そして突如現れていた少年の方のシエル。その三つの項目を目の当たりにしたファウストは察した。

 

「その“シエル”が……この場にいたらきっとこう言っただろうよ」

 

全てを理解した様子で唖然とした国王に、嘲るような笑みを浮かべながら、シエルは機械を持っていない右手の指を二本彼の額に近づける。何をする気かは分からないが自らの危機が迫っていることは明白。だがそれを理解できても衝撃が起こりすぎて、最早ファウストの身体は全く動かすことが出来なかった。そして……。

 

「『もうお前の下で働くのはウンザリだ。とっととくたばれ、クソジジイ』」

 

愉悦と侮蔑を混ぜたような笑みを浮かべたまま、愕然とした表情で固まっていたファウストの額に指を付け、雷の魔力で出来た電流を流し込む。それが決め手となったのか、彼はそのまま白目を剥いて、仰向けに倒れこみ気絶。今度こそ、戦闘不能となった。

 

「シエルー!!後から来たくせにおいしいとこ持ってくんじゃねー!!」

 

「え~?折角超特急で助けに来たんだから、お礼を言ってほしいとこなんだけど……一言ぐらい」

 

傷だらけで今にも倒れそうなはずだったナツが、最後のトドメをシエルがさしたことで怒りを露わにしている。意外と元気そうだ。日光浴(サンライズ)がまだ機能していて、少しずつ回復しているからと言うのもありそうだが。

 

「ま、あのめんどくせぇ盾を何とかした事だけは褒めてやっていいぜ、天気小僧」

 

「シエル、ありがとう!でもどうしてここに?一体何をしたの…?」

 

ガジル、ウェンディにも効果は及んでいるようで、誰もがその場に座り込みながらも身体の負担は先ほどと比べて大分軽くなっているように見える。素直に感謝をかけたウェンディが尋ねてきた質問には、ドロマ・アニムの緊急停止ボタンをエドシエルから受け取ったことを答えるとウェンディだけでなくナツも驚きを示した。

 

「あいつ、本気で王国に仕えていたわけじゃなくて、こっちの妖精の尻尾(フェアリーテイル)の為に色々仕込んでいるのをバレたくなくて、ほとんど全員を騙してたらしい」

 

「それって……あの時も……?」

 

「何だよ~!じゃあエドシエルってやっぱ味方だったんじゃねーか!」

 

簡単にいきさつを説明してみれば、ウェンディはそのエドシエルとの間に起きたことを思い返して顔を俯かせ、ナツは切り替えが早いのか表情に笑顔を浮かべ、頭の後ろに手を組みながら声に出す。正確には自分たちに対して味方と言っていいのか微妙なところだったが、それは胸にしまっておくことにした。

 

「それはともかく……ナツ、ウェンディ、あとガジル。お疲れ様」

 

「おい、何だそのついでみてーな言い方」

 

魔法の通じない巨体であったドロマ・アニムの大破。エドラスの絶対指導者の陥落。それが意味するのは、このエドラスでの戦いに勝利したこと。それを成し遂げた3人の竜の力を持った魔導士たちに向けて、穏やかな笑みを浮かべてシエルは労わった。それに対してナツは歯を剥けて笑い、ウェンディは少々照れくさそうにはにかみ、ガジルは一部気になるとこがあったのか不服そうに顔を歪める。

 

全て終わった。仲間も取り戻し、二度と奪われる心配もない。心からの安堵を感じながらこの先の事について話そうと口を開けた瞬間……。

 

 

 

 

 

「……っ……!?」

 

思わずシエルは、上空の光景を目にして言葉を失った。

 

「……シエル?」

 

その様子を怪訝に感じたウェンディが首を傾げると、突如辺り一帯に地響きが発生する。シエルの表情を見て同様に訝しんでいたナツとガジルもその異常を感知し、再び警戒を始める。地震か?それともまだ敵の増援がいたか?否、そのどちらでもない。シエルが目にしたものを見ようと振り向いたウェンディは、彼と同じように言葉を失った。

 

 

 

 

エドラスの空に無数に存在していた浮遊島。それらの島の全てが、今自分たちがいる地上へと、次々に落下を始めている光景だった。

 

 

 

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「な、何これ……!」

「「オイオイ、どうなってやがる!?」」

「島が次々と落ちて……」

 

その異常が起きたのは、ナツやシエルたちがいる周辺のみではない。エドラス……この世界の全域にわたって、次々と浮遊島が浮力を失い、落下を開始している。王国軍と戦闘を繰り広げていたルーシィたちやエドラスの妖精の尻尾(フェアリーテイル)の面々も、その光景に直面している。

 

消耗が激しく膝をついたルーシィ、二つの世界のそれぞれのグレイ、杖を支えにして弱った身体に鞭を打つマスターペルセウスも、その異常な光景に目を見張って困惑を露わにしている。その光景はまさしく、天変地異。

 

「一体、何が起きてるの……!?」

 

「……来ちまったのか、この時が……」

 

戦闘の間、ハッピーやシャルルの近くで戦っていたエドウェンディの言葉に応えるかのように、近くで戦闘を行っていたエドシエルが零す。その表情に浮かべていたのは落胆、あるいは諦観。いずれにしても、この光景が何を意味しているのかを、彼は理解していた。

 

「エドラスに存在する浮遊島は、この世界に溢れる魔力によって浮かんでいる。それが全て落下を始めた……となれば……」

 

「まさか……魔力が、無くなってるってこと!?エドラス(この世界)から!!」

 

エドラスのシエルの現状の説明、そしてそれを聞いて事態を理解したウェンディの言葉を聞いたこの場にいる者たちは、一様に衝撃と絶望を現した表情を浮かべる。エドラスの誰もが恐れていた事。魔力の枯渇。国王はそれを解決するために、方法は非道であるが魔力を異世界から吸収してきた。

 

だが、今起きている光景は、その恐れていた事よりも更に大きな、そして悲惨な事件だ。

 

「空だけでなく、大地からも魔力が流れ始めている。誰かがアニマを()展開させたんだろう。アースランドからエドラスに魔力を移した例とは逆に、今度はエドラスからすべての魔力がアースランドに流れていく」

 

「シエル、魔法(ぶき)が!?」

 

浮遊島に目を行かせている内に次の異変が発生した。大地の至る所から、金色の川のように何かが上に流れていって、空の向こうへと消えていく。あらゆるものから空へと流れていくそれは、魔力。大地だけでなく、エドシエルが武器として所持していたエレメントゥムロッドも、四色の珠がついた先端から、何も操作していないにも関わらず金色の魔力が空へと流れ始める。それを見て焦ったように声をあげるウェンディが両手に握っているトンファーからも、同じように魔力が流れ始めていた。

 

彼らだけでない。王国軍の兵士、魔科学研の戦闘班、そしてエドラスの妖精の尻尾(フェアリーテイル)の面々の武器からも同じように流れ出して、その魔法の力を消失させていく。突然武器が使えなくなったことによって、敵も味方も困惑するばかりの阿鼻叫喚だ。

 

「終わるんだ……世界が終わるんだよう……」

 

落ちていく島々を、流れていく魔力を、混乱する同郷の者たちを目にしながら、涙を浮かべたココが力なく呟く。心情は彼女も同じだろう。世界から、魔力が……魔法が消えていく。想像もつかない、地獄……。

 

 

 

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この異常な現象を引き起こした原因……それは、王城内で魔科学研がアニマの開発と強化を行っていたアニマを造り出す部屋。その部屋の中にいたのは、帰還したばかりのエドラスの王子・ミストガン(ジェラール)。そしてもう一人、彼に手当され、一命をとりとめた黒豹のエクシード・パンサーリリー。

 

「ま……まさか本当にやってしまうとは……!」

 

エドシエルが推測した「誰かがアニマを逆展開させた」と言う項目。その推測は当たりだ。それを実行したのが、今この部屋にいる、他ならないミストガンだったのだ。彼が考えていたエドラスを本当の意味で救える方法。数少ない魔力を奪い合っては争いや犠牲は止まらない。ならば、その争いの種となる魔力を、この世界から消滅させる。人と人がきちんと向き合える世界を作り出すために、彼は決断した。

 

ただ消滅させるわけではない。枯渇しているとはいえ、一気にその魔力を消費させるのは短時間では不可能。そこで鍵となるのが、隣り合う並行世界・アースランドの存在。彼はその世界を見て、こう感じた。「争いもあるが豊かな世界。きっと()()()になってくれる」と。

 

本来アースランドから対象を吸収して魔水晶(ラクリマ)へと変化させるのが、時空門(アニマ)と言う魔法。それを逆に展開することによってエドラスに存在する残り全ての魔力を魔力の豊かなアースランドへと流せば、その魔力はすぐに気化し、自然の一部になるはず。

 

エドラスから魔力が無くなれば、確かに戦争はしばらく起きることがないだろう。だが、今この時において国民は混乱を極めている。

 

火の魔力を失ったことで料理が出来なくなり、光の魔力を失ったことで夜がより暗くなり、水の魔力を失ったことで噴水が止まり、風の魔力を失ったことであらゆる乗り物が動かなくなっている。これまでの生活を大きく支えてきた魔法が……魔力が無くなる。生きていくことが出来なくなる。

 

今まで当たり前にあったものが無くなり、変化していく世界。素早く順応できる人間はそうはいない。

 

「だからこそ、新しい指導者が必要となる。新しい世界の新しい王。不安に脅える民をまとめ、皆を幸せに導く新たな王が」

 

「なるほど。それを王子が……」

 

「いや……私ではない」

 

魔力を失い困惑する民衆をまとめ、未来を導く新たな王。二つの世界を慮り、行動をしてきた目の前の王子にふさわしいと考えていたパンサーリリーだが、他ならない本人がそれを否定した。エドラス(この世界)と共に歩んでこなかった自分には、そんな資格も権利もないと。それに群衆を纏めるには、ただ指導者が一人で現れるだけでは意味がない。必要になるのは、“悪役”と“英雄”。

 

この世界を混乱に陥れた悪を晒し、処刑する者こそ英雄となり、その英雄は民を一つに纏め、王となる。そしてその悪役と英雄は、もうこの場に揃っている。

 

エドラス王に反旗を翻し、世界の魔力を奪った“悪”であるミストガン(自分)

 

種族間の誤解と偏見を調和できる“英雄”であるパンサーリリー。

 

それこそが、このエドラスの未来を導くために必要な、“悪役”と“英雄”。

 

「世界を滅ぼした私を、君が処刑するんだ。そして君が、この世界の王になれ」

 

それがミストガンの狙い。自らの命を犠牲とし、魔力の無くなった世界を導く者を英雄……そして王とするため。それには、王国軍の一人であり、二つの種族の元で過ごしたエクシードであるパンサーリリーが適任。そう考えての事だった。

 

混乱している民の前で悪役(ミストガン)を処刑し、混乱を鎮め、魔力の無くなった世界を新たに導く王となれ。それが、今このエドラスを救うことが出来る、唯一の方法だと。

 

 

 

 

「あなたは本気で、そんな戯言を言っておられるのかァ!!王子!!」

 

だがそれは、他ならないパンサーリリー自身が何一つ納得も許容も出来ない策だった。かつては種族の違いを超えて、人間であるミストガン(ジェラール)を救った。そんな彼に対して、自らの命を絶ち、十字架を背負って生きろと言っている彼の言葉に、世界を想って大きな決断を下せる彼の命を奪う行為に、賛成などできるわけがなかった。

 

少ない魔力を奪い合う現状を嘆き、そこからエドラスを救う為に行動を起こしたミストガン。争う事も、奪い合う事もない、魔力の無い世界のために。自らを世界を滅亡させた者として悪になり、その命をもって次代の王に思いを繋ごうとしている。

 

 

 

 

「(と、とんでもないことを聞いちゃった……!!)」

 

そんな彼らの話を、部屋の入り口に身を潜めながら聞いていた者がいた。右腕を上下に素早く振り続け、面長の顔を衝撃と驚愕に染めている黒毛のエクシード。名前は『ナディ』。女王、長老に次ぐ、エクスタリアの国務大臣。外見と性格に似合わず、国において上位に位置するエクシードだ。

 

彼も魔水晶(ラクリマ)にしようと襲い掛かる王国兵から逃げ続け、たまたま王都の方向へと逃げのびていた。その際城の中へと向かっていくミストガンとパンサーリリーの姿を見つけ、気になって後をついて行くと、アニマを逆展開して魔力を無くし、その上で混乱を鎮める計画を立てている二人を目撃したのだ。

 

エクスタリアを救ってくれた功労者の一人であるミストガン、そして同じ種族の同胞であるパンサーリリー。互いを想い合う彼らを、自分たちの為に動いてくれた彼らをみすみす犠牲にさせるわけにはいかない。何とかしてあげたいが、今のナディには彼らを止める……もしくは混乱に陥っている王都を収める方法が思いつかない。

 

 

 

 

 

「なあ、あんた」

 

「っ!?」

 

どうすれば……と考えていたナディの背後に、声をかけた者がいた。思わず声を発しそうになったのをこらえ振り向いた先にいたのは、アースランドから来た魔導士の一人である、水色がかった銀色の長い髪の青年。そしてエドラスの王城を破壊しまくった人物でもあった。

 

「今の話、聞いてたんだろ?一つ頼まれてくれねえか?」

 

「へ……?」

 

おっかなびっくりとして固まったナディに向けて、誰が見ても真剣で、決意を秘めたような表情を浮かべながらそう願い出た青年・ペルセウスに対して、思わず彼は呆けた声を発した。

 

 

 

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「た、退却だーーー!!」

魔法(ぶき)が使えねえんじゃ戦えねーーー!!」

 

魔力が空へと流れていき、手に持っていた魔法(ぶき)がその機能を完全に無くしたことを理解した王国軍が、これ以上は本当に無意味だと武器を投げ捨てて尻尾を巻いて王都へと逃げていく。撃退に成功した。その事実だけは、この場に残っているアースランドの魔導士であるルーシィとグレイに理解できた。

 

「オイ!やったぞオメーら!!」

 

戦いに勝った。思わず笑みがこぼれて、グレイは援軍としてきたもう一つの妖精の尻尾(フェアリーテイル)にそう言葉をかけると共に振り向く。だがグレイの目に映った彼らに、自分たちと同じ喜びはなかった。

 

「わぁーー!!もうダメだ~!!」

「魔力が無くなる……魔法が使えなくなる……」

「何もかも、終わりなのですね……今日、この日で……」

「どーすりゃいいんだ!?オレたちは……ギルドは……どーなるんだ!!?」

「魔法のない魔導士ギルドなんてあり得ねーっ!!」

 

頭を抱えながら嘆きを叫んだエドラスのグレイを始めとして、目の前の現実に呆然となるエルフマンやカナ、魔法を失った行く先のギルドを案じるジェットとドロイ。様々な反応を示しているが、誰も彼もが、希望を失ったような、それこそ絶望を味わったかのような悲しみを前面に出している。

 

「みんな落ち着いて!大丈夫だから!!」

 

「大丈夫なモンか!!!」

 

悲嘆、慟哭、絶望を表すギルドの面々に圧されながらも、何とか宥めようとルーシィが呼びかけるが、その言葉をエドルーシィが涙を浮かべながら否定を叫ぶ。ルーシィは、本当の意味では分かっていない。彼らエドラスの者にとって、今現在魔力が失われていくという状況が、どれほどの悲壮な出来事なのか。

 

「この世界の魔力が消えちまうんだぞ!全部!!魔導士ギルドはどうなっちまうんだよ!!」

 

「終わった……戦いには勝ったけど、僕たちは世界に負けたんだ……」

 

悲痛な思いと共に声を張り上げるエドルーシィの言葉を聞き、改めて魔法が失われることを実感させられたエドナツが、地を背中にして手足を広げながら力なく呟く。普段から弱気で臆病な彼も、慌てふためくよりも先に迫りくる悲壮な現実に気力を失いかけている。そして彼の言葉に肯定を示すように「そうだ……」と覇気を失ったように弱々しく言葉を零す声が聞こえる。発したのは、ようやく家族の元に戻ってきた元魔科学研の部長だった青年。

 

「魔力の枯渇。世界の誰もが恐れていた事。それを防ぐために、ギルドを離れて国に尽くし、家族も含めて多くの人たちを欺き、研究を続けてきた……。その結果が、この最悪の事態……いや、俺の想定さえ遥かに超えている……」

 

魔力が完全に消え失せて力を失った長杖から手を放し、地面に軽い音を立てる。虚しさを感じるように少しばかり転がったそれに目もくれず、顔を虚空に向けながら青年は膝から崩れ落ちた。すぐに身を案じて藍色の髪の女性が駆け寄るも、顔を俯かせたエドシエルから小さく、乾いたような笑い声が聞こえてきた。

 

「2年と半年……ギルドを捨ててまで、俺は何をやってたんだろうな……」

 

自嘲。その言葉を現すような笑みを涙と共に浮かべながら呟く。表向きとは言え、長きにわたって国に仕え、己が自由を捧げてまでやってきたことは、全部無駄だった。そう言い切った彼の姿に、つられるように涙を浮かべたエドウェンディも、ギルドの者たちも、エドシエルと共に国を裏切った者たちも全員理解させられた。

 

もう為す術はない。最早滅びは避けられない。

 

魔法が無くなる。魔力が消えていく。

 

世界の……エドラスの最後だと……。

 

 

 

 

 

「顔を上げなさい!!」

 

その絶望を、焦燥を、悲嘆を、振り払うかのように声が上がった。俯かせた顔を上げさせ、頭を抱えさせた両手を離れさせ、涙に濡れた目を一点に向けさせるその声をあげた先。

 

膝を折って無気力に苛まれた青年と、唯一血の繋がった兄にして、この世界の妖精を導く者。マスター・ペルセウスが、病弱とは思えない強い意志を持った顔で彼らに視線を向ける。

 

「確かにこれは、滅びの前兆かもしれない。ですが、そうでないとも言い切れない。魔法が失われていくことが、エドラス全土の終わりであると、決まったわけではないのです!」

 

「でもマスター……魔法が無かったらジュビアたちは……」

「そーだよ!魔導士ギルドはどうなるんだ!?」

 

いつもと違い力強さも感じるマスターの言葉に、次第に顔を上げる者が増えていくが、ジュビアやグレイのように不安を拭いきれないものがほとんどだ。だがそれでも彼は言葉を詰まらせない。自分でも分からない事が多いのは確かだ。ならば、今これから知る他に無い。

 

「それは私にも分からない。皆さんもそうでしょう。でもそれは、ここで絶望に打ちひしがれていたって分かる事でもない」

 

彼らに纏わりついていた不安が、その言葉で消えていく。彼らを束ねるマスターと言う立場か、それとも彼本人の人徳か、はたまた彼自身の心から訴えるかのような説得力のある言葉そのものか。場にいる全員がマスター・ペルセウスに目を向ける。そして己の告げた言葉に続くように、彼はこの先の運命を決めるために、導きを示した。

 

「全員、王都に向かいます!そしてこの目で確かめましょう……この世界の行く末……そして私たちの……未来を……!!」

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

エドラス王都。世界最大規模の街であるここも、混乱の真っただ中にいた。魔力が失われていくことで魔法が使えなくなり、浮遊島も次々落ち始め、魔力の奔流が建物の一部を削っていく。

 

街に住む民たちは悲鳴を上げながら、どうにもならない異常事態から逃げることしかできない。だが、世界中のどこにも、この事態から逃れられるような場所は存在しない。

 

 

 

更に彼らの不幸は続いた。街の中で暴れ始める者が現れた。その者は次々と街を破壊し、ただでさえ魔力が失われる恐怖に駆られている住民たちを、更に恐怖のどん底へと叩き落していく。

 

「これは……!」

 

「想定していた以上にひどい状態だ……!」

 

「城下で暴れている者がいる」。その報を受けたパンサーリリー、そしてミストガンは急ぎ城下を見下ろせる場所へと駆け付けた。そして目の前に広がっていた光景に思わず息を呑む。犠牲になっている人々はいないように見えるが、建物の被害は甚大だ。

 

「暴徒の数は?」

 

「それが……たった一人で……」

 

「一人!?一人でこれ程の被害を起こしているのか!?何故取り押さえん!!」

 

彼と共に来ているミストガンに対して「誰だ?」と声を出さずに尋ね合う兵士には目もくれず、パンサーリリーが暴徒が多数で暴れているとふんで数を聞くと、予想だにしない答えが返ってくる。たったの一人でこの王都を次々と破壊していること、そして兵士たちが何故取り押さえようとしない事に驚愕を表すと、別の兵士がその答えを提示する。

 

「パンサーリリー様も報告を受けていると思いますが、昼間、この王城内を暴れ回った()()()が、今度は街で暴れているのです!!」

 

「っ!?城内を……まさか、アースランドの……!?」

 

兵士の報告を聞いて心当たりを思い出したパンサーリリーがそう口にすると、ミストガンも目を見開いて反応を示す。そしてそのことを彼に問おうとするが、それをかき消すかのように建物の一部にが破壊された音が響く。その方向に目を向けたところで、ミストガンはかつてない程の衝撃を受けた。何故なら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「くっくくく……くははははは!!逃げ惑え!泣き喚け!恐れおののけ!」

 

長い水色がかった銀色の髪をうなじで縛り、端正な顔を悪意を抱いた凶悪の笑みで歪めて哄笑を上げながら、黒い翼のような羽が二枚首元についた長い黒いマントを風で棚引かせて、建物の一つの上から掌に浮かべた魔力の弾を放って街を次々と破壊していく青年の姿。

 

「そして刻むがいい。愚かな世界、エドラスに住まう愚かな民どもよ!我こそは!遥か天上に存在する国……アースランドよりこの世界に破滅と絶望を招きに降り立った、天の使徒……“堕天使ファルシー”なり!!!」

 

醜悪とも言える程に口角を吊り上げ、右手を天へと掲げながら堂々と自らの名を告げたその男……堕天使ファルシー……もといペルセウスの姿を見て、声を聞いて、街の住民たちが更に恐怖を露わにする。彼の上空にのみ、不自然に暗雲が立ち込めて雷が迸っている光景が、更に恐怖を増長させる。

 

「ペ、ペル……!?」

 

その様子を、特に彼をよく知っているミストガンが信じられないと言った様子で見ている。何故彼が王都で暴れ、理解できない格好と口調で、自らが忌み嫌う異名を堂々と名乗っているのか。

 

「ひいいいっ!!」

「た、助けてくれーー!!」

「わああああっ!!」

 

「エクシード共に封印されて幾百年……屈辱に塗れた長き時は、ようやく終わった!これよりエドラスを、我の手によって貴様ら諸共、滅びへと誘ってやろう!手始めに貴様らに奪われていた魔力は返してもらった……欠片も残さず!!」

 

名を告げて更なる悲鳴を上げる住民たちの声を聞きながら、ペルセウスは両手を大きく広げて言葉を続けていく。エドラスに破滅と絶望を。そこに住まう民たちも根絶やしにすることを宣言し、極め付きには世界から魔力を奪ったともとれるセリフを街中に響くような声で宣言する。

 

「魔力を……!?」

「じゃあ、魔法が無くなってるのは……!!」

「あいつの仕業か!?」

 

そして最後に告げたペルセウスの言葉を聞いた住民たちは、世界から魔力が消えていっている現象の原因が、堕天使を名乗るあの男であると思い至る。その噂は瞬く間に逃げ惑う住民たちへと伝播し、次々と共有されていく。

 

「堕天使ファルシー!?あの男は、確かにそう言ったのですか!?」

 

「え?あんた、何か知ってんのか!?」

 

すると、ペルセウスの近くに集まっていた群衆の後ろから、一人の男が焦燥を前面に声と共に出しながら駆け寄り、そのうちの一人に尋ねる。対して住民が尋ね返せば、テンガロンハットにメガネを付けたその男は、メモらしきものを手に取りながら彼らに伝え始めた。

 

「僕は記者をやっているのですが、取材の中で、とある失われた神話について知る機会を得ました。その神話の中に記されていたのです。堕天使ファルシーの名が!!」

 

ハッキリと通る声で記者と自称したその男が発した言葉に住民たちがどよめく中、記者は語った。

 

それは、古いエクシードの遺跡を偶然調べていた時の事。人間たちが魔力が枯渇していくエドラスの現状に悩み、アースランドと言う魔力が溢れる世界から魔力を吸収する術を考えついた。その魔法は成功し、エドラスは数百年とは言え、一時の繁栄が約束された。

 

だが、魔力を奪われたことに対して怒りを現したのが、奪われた世界・アースランドに住まう者たち。その中でも随一の魔力を有したとある存在が、エドラスから奪われた魔力を取り返すため、また二度と魔力を奪う愚行を犯されないように、人間ごとエドラスを滅ぼす為、世界をまたいで侵略をしに来た。

 

それこそが、天上の国から破滅を招くために墜ちてきた、堕天使ファルシーである。

 

繁栄の一途を辿るはずだったエドラスは、瞬く間に国も、人も、大地も蹂躙されていった。このまま破滅を待つだけであったエドラスであったが、そこに立ち上がったのが、当時のエクシードの長。

 

彼はエクシードの仲間と共に堕天使ファルシーをおびき寄せ、百重に至る厳重な封印にその堕天使を閉じ込めた。そして封印はエドラスの地中奥深くに沈められ、エドラスに繁栄と平和が戻った。

 

エドラスの民たちは、二度とアースランドへの愚行を働いて天の怒りを買わないよう、神話として堕天使ファルシーの存在を残した。世界の教訓として、国の教えとして、後世に残すために。

 

「ですが時が経つにつれ、堕天使の恐怖は我々人間から魔力と共に薄れていってしまったのでしょう。最早、脈々とその名が伝えられていたエクシードでさえ、知っている者は少ない程……!!」

 

「その封印が、解けちまったってことか!?」

「私たちがエクシードに逆らったから……!?」

 

「王国軍の手によって、エクシード達の力が弱まってしまったことも、原因の一つでしょう!このままでは、今度こそエドラスは滅ぼされてしまう!!」

 

「そんな!!」

 

記者の男が語った堕天使に関する神話の内容に、住民たちは戦々恐々と言った様子。数百年も前の話となれば、知っているであろう物も極一部。それが今回の悲劇に繋がってしまったのかと、より一層住民たちに悲壮感が襲い掛かる。

 

「……ギヒッ」

 

そんな街の様子を見て、記者の男は住民に見えないように帽子で顔を隠しながら笑みを浮かべた。上手く街中に伝えられた、と内心で呟きながら。

 

そんな彼の名は()()()鉄竜(くろがね)の異名を持つアースランドの彼とは異なる、エドラスのガジルである。職業はフリーの記者であり、普段は己の足で取材を行い、真実を伝えることを生業としている。そしてその真実には裏表が存在しており、結果的に、王国に対して批判的な記事となることもしばしば。大半からは嫌われている。だがそれでも、真実を伝えると言う彼のスタンスは変わらない。

 

そんなエドガジルは、たまたまアースランドのガジル、及びペルセウスと出会い、正反対な性格なのに何故かアースランドのガジルと意気投合し、ガジルとペルセウスの目的である彼らの仲間の救出に協力してくれたのだが、その辺りの話は、また別の機会としよう。

 

閑話休題。

 

そして今エドガジルは、堕天使を名乗っているペルセウス、及びその仲間であるガジルたちからの要望で、住民たちに()()()()()()()()()()の内容を広めていた。職業とスタンス故に嘘の情報を流すことなど本来はしない主義だが、魔力を失う事で起きる混乱を鎮めるために、彼もまた一手協力することを決めたのだ。

 

「さて、返してもらった魔力の次は……この王都だ!!」

 

エドガジルが偽の神話を住民に広げたのを悟ったペルセウスは、次の行動に移る。両手を掲げて声を張りながら、何も無かった虚空から三種類の神器の剣を顕現する。突如剣が出現し、それが浮いているという光景に、現実離れした行動を起こせるペルセウスが人間とは違うと言う事を理解させられる。

 

「愚民共に良いものを見せてやろう。我と共に永き封印を施された、我が(しもべ)たる竜の化身たち!今、目覚めの時だ!!」

 

そう言うや否や、浮かべていた剣のうちの一つ、紅の炎を模した剣・レーヴァテインを動かして、反対側の建物の屋根へと突き刺し、勢いよく炎を噴き出させる。その光景にまるで地獄を見たような錯覚を覚えた住民たちから、更なる悲鳴が響く。

 

「燃え盛る紅蓮の炎。其はあらゆるものを焼き尽くす、灼熱の業火!」

 

いつの間にか、刺さっていたはずの炎の剣は消えており、代わりにその炎の中に人影が現れだす。まるで、剣が人に……いや、人の形を模した人ならざる何かに変化したかのように……。

 

「全てを灰燼へと変えよ!!“火竜ドラグニル”!!!」

 

「ガーハッハッハッハ!!燃えろ燃えろ!全部焼き尽くしてやんぞぉ!!」

 

そして吹き出ていた炎を振り払うかのように姿を現したのは、桜色の短い髪を持ち、頭に悪魔のような角を生やして、ペルセウス同様の黒いマントを纏っている青年。だが、炎に焼かれてもピンピンとしている上、口や掌からも炎を発するその姿は、エドラスの民から見れば人間とは思えない。

 

「火竜の煌炎!!オラァ!!」

 

火竜ドラグニル……もといナツが両手に炎を生み出して合わせると同時に、近くにあった巨大な石像に投げつけて、容易く破壊する。凶悪そうに高笑いをしながら炎を生み出すその姿は、まさしく人の道理から外れた存在。

 

「な、何だあのバケモノ……!?」

「口や手から火が出た……!?」

「剣から、あんなバケモノを生み出すなんて……!!」

 

ナツ、そしてそれを生み出したように見えたペルセウスに対して更なる恐怖を感じる住民たち。だが、これだけには留まらない。

 

(しもべ)はまだまだいるぞ?」

 

その言葉と共に、ペルセウスの右側に浮かべていた銀色の大剣・グラムを動かしながら、今度は己の三つ先の建物の前にその剣を突き刺し、石や鉄の破片を巻き起こす。その光景を見て住民は悟った。火を噴くバケモノ同様の存在が、もう一体生み出されることを。

 

「頑強なる黒鉄の刃。其は立ちはだかる者も、逃げる者も斬り裂く凶暴なる剣!」

 

石と鉄の混じった粉塵から、大剣に変わって現れたのは、逆立った長い黒髪に、肉食獣のような獰猛な赤い眼を持った、やはり同じ黒いマントを纏った男。

 

「全てを斬り裂き打ち砕け!“鉄竜レッドフォックス”!!!」

 

「ギヒヒ……!ようやく暴れられるぜ。鉄竜剣!!」

 

見るからに凶暴な外見をしたその男、鉄竜レッドフォックスことガジルが、右腕を剣の形へと変化させて、背後にある建物の上階を一刀両断。崩れ落ちる建物を背景に、住民たちへと獰猛な笑みを向けている。

 

「腕が剣になって……!!」

「街がまた……!!」

「見た目も、明らかに悪そうだ……!!」

 

ナツとガジル。片や高笑いを続けながら、片や怪しく笑みを浮かべながら、ベクトルは違うものの、普段から目つきが悪いこともあってその様子は完全に悪の化身の一言である。

 

「あんな、あんなバケモノが二体も……!」

 

「いえ、二体ではありません!剣はもう一本!つまりもう一体生み出す気です!!」

 

一人の女性が震えながら呟いた一言に、エドガジルがペルセウスを……正確には彼の後ろに浮かぶ、もう一本ある緑の短剣を指さして叫ぶ。もう一体の化け物が現れると理解した住民たちから更に恐怖の悲鳴が上がり出す。

 

「その期待に応えてやるとしようか。さあ、目覚めろ!」

 

そして最後の一本が、ガジルが生み出された建物の反対側に来るように動かし、ガジルの時同様建物の前で突き刺さる。今度は風。短剣どころか周辺が全く見えなくなるほどの強風が竜巻のように吹き荒れて、住民に襲い掛かる。

 

「吹きすさぶ純白の風。其はあまねく全てを癒す天の恵み。我が名において、その天の力で荒廃を招け!」

 

口上を進めると共に、短剣が刺さっていた場所には、新たに人影が現れていた。藍色の長い髪を、赤い髪留めでツインテールにしている、先に出ていた者たち同様黒いマントと共に風に棚引かせる少女。

 

「全てを吹き飛ばせ!“天竜マーベル”!!!」

 

「天竜の……咆哮!!」

 

吹き荒れていた風が止むと同時に、膨らませた口から純白の竜巻を噴き出して、隣の建物を攻撃。建物が貫通して、瓦礫を更に生み出す。

 

「口から竜巻がー!」

「今度は風か!?」

「家に、風穴が……!!」

 

「何てこった……ただでさえ凶暴なバケモノが、二体どころか、三体なんて……!!」

 

新たに現れたバケモノの力を目にしてより深く絶望を抱える民たち。その内の一人の声が、力なく周囲に伝わり、最後に現れたその存在を目にして、更なる恐怖を……。

 

 

 

『あれ?』

 

だが、住民たちの恐怖は一気に失せた。何故なら、先程建物に風穴を開けたその存在をよく見ると、可愛らしい顔立ちをした、背丈も低い小柄な少女。振り向いてこちらにきりっとした表情を向けてはいるが、先に現れた二体と比べて正直迫力がない。

 

「女の子……?」

「それもちっちゃい……」

「何かさっきの奴等と比べると……」

「ああ、あんま怖くないと言うか……」

「つーかむしろ可愛くね?」

 

明らかに極悪人の面をしたナツとガジルと違って、純粋な美少女の外見をしている天竜マーベル……もといウェンディの姿を見た住民は、恐怖を完全に忘れて唖然とした様子でこちらを見ている。中には顔を赤くして表情が緩んでいる者までいた為、それに気付いたウェンディは何とかしなきゃ、と行動を起こした。

 

「がおーーーっ!!」

 

そして起こした行動は、両手を獣のような形で構え、近くにいた自分よりも幼い少年を威嚇すると言うもの。これで怖がらせようと思って起こしたのだろうが、可愛い少女がありきたりな威嚇のポーズと声をあげたところで怖くはないし、人によっては逆効果。現に幼い少年は目の前の少女の奇行に戸惑いこそすれど、一切恐怖はしない。

 

「アァ……!?」

「ギィイイイヤアアアアッ!!!?」

 

すると音もなくウェンディの背後に現れ、思い切り少年に対してメンチを切ったガジルを見た少年は、さっきの茫然が嘘のように泣き叫びながらその場を走り去った。落差が激しすぎる。

 

「バケモノが睨んだぞ!!」

「やっぱ仲間なんだ!!」

「見た目に騙されるなー!!」

「美女と野獣だー!!」

 

可愛い少女を庇うような形で睨んできたガジルの姿を見て、やはり彼女もバケモノ側だと理解した住民の悲鳴交じりの声が響く。……何か関係ないこと叫んだ奴いなかった?

 

そして自分では全く効果はなかったが、後ろのガジルがやったことで思い切り逃げられたウェンディは……。

 

「(ごめんなさい……)」

 

胸中で謝罪を告げながら落ち込んだ。その謝罪先は少年か、はたまたガジルか。後ろにいるガジルも、彼女になんて声をかけるべきか悩んだ。

 

「……どうやらマーベルの復活は少々早すぎたようだ。しかし威力は十分!このままで良しとしよう!!」

 

「(え!?そう言う設定で行くのか!!?)」

 

そしてそんな光景の一部始終を見ていたペルセウスとナツも、思わず演技を忘れて呆然となっていたが、わざとらしく聞こえるようにペルセウスがウェンディの姿に関しての説明を響き渡らせる。思わずナツが目を見開いて彼の方へと視線を向けたのは、気付かないふりをした。

 

「剣からバケモノを生み出し、街を破壊し尽くそうとしている!堕天使ファルシーは、魔力だけでなく、我々の全てを奪おうとしています!!」

 

住民の不安を煽るような口ぶりで呼びかけるエドガジル。その様子に気付いたガジルが彼に目を向けると彼も気付いたらしく、二人して独特な笑みを浮かべながらアイコンタクトをとる。互いにすべて分かっていると言いたげなやり取りだ。

 

「あんなバケモノたち、どうすれば……!」

「魔戦部隊がいれば、あんな奴等きっと!」

「そうだ、いざとなれば魔科学研もいる!!」

「陛下がきっと何とかしてくださるわ!!」

 

「魔戦部隊?魔科学研?」

 

まだ希望はあると言いたげに住民たちがあげていった者たちの名を聞いたペルセウスは、あからさまな反応を起こす。そして肩を竦めながら、何でもない事のように、彼らを更に失意のどん底へと叩き落す言葉を発した。

 

「ああ……封印から解放された直後、準備運動代わりに蹴散らしておいた奴等の事か?」

 

「な……何だって!?」

 

「呆気なかったぞ?」

 

ペルセウスが発した内容に信じられないと言いたげに反応を示した住民の一人。それの追随を許す間もなく、ペルセウスは一つ指を鳴らす。すると、彼のすぐ隣に強風が巻き起こり、何かを包み隠すように廻り出す。そして数秒間の竜巻に似た風が霧散した瞬間、住民たちの希望は完全に潰された。

 

「貴様らが讃えた愚かな王は、最早玉座から落ちたも同然!」

 

木の幹に縄で括りつけられ、囚われの身となっている国王ファウストの姿。その意識はないようで、強風に晒されながらも身じろぎ一つみせる様子はない。

 

「その命も終わらせてやろうかと思ったが、己の愚かな行為が導いた国の最期を、目に焼き付けさせるのも一興。今から全てに絶望する顔を見るのが楽しみだ……!!」

 

国の平和を考えて動いてくれていた国王の陥落。そしてあんまりな仕打ちに、再び住民からの悲鳴が上がる。そんな様子を見ながら、ペルセウスは再び両手を広げて声を張った。

 

「さあ!我が(しもべ)たちよ!復活の宴だ……存分に暴れ回れ!!」

 

その言葉を合図とするように、ナツの炎が国王を模した石像を融かし、剣に変わったガジルの右腕が家を斬り裂く。ウェンディもまた、威力を弱めた咆哮を住民にギリギリ当たらない場所へと撃つことで混乱させる。

 

「まさに悪逆非道!!魔力の為に、このエドラスごと我々を滅ぼそうとしている!!」

 

「何て……何て酷いこと!」

「許せねえ……!堕天使ファルシー!!」

「エドラスから出てけー!!」

「魔力を返せー!!」

 

「返せ?元から魔力は我らのもの。貴様等には分不相応な力よ」

 

恐怖や悲壮と言った感情が、不安を煽るエドガジルの言葉を聞くことで徐々に怒りに変わった民たちの言葉を聞き、侮蔑の表情を浮かべながら、左の掌を天へと翳す。すると、まるで空さえを操っているかのように、彼のすぐ背後に一筋の雷が落ちる。

 

「身をもって教えてくれよう。魔法の力……我の、堕天使の力を……!!」

 

そして掲げていた左の掌を住民たちに向けながら、魔力の弾を溜め込んで放とうとする。それを見て再び恐怖を叫び始めた住民たちに、笑みを深くしながら……。

 

 

 

 

 

 

「よせえっ!!ペルーー!!」

 

その声が、堕天使の動きを止めた。浮かべていた笑みを不機嫌なものへと変え、声のした方、王城の方へと目を向ける。民たちも今の声が届いたのか、城の方にその人物がいることに気付く。

 

「(やっと来たか、ミストガン)」

 

青藍の短い髪を持った、右目の上下に赤い刺青が刻まれた美青年の姿を目にして、ペルセウスは笑みを深くした。胸中でそう独り言ちりながら、ペルセウスはそれを悟らせないよう口元を吊り上げる。

 

「(来た!さあ……こっから本番、だな……!)」

 

そしてそれに気付いたのはペルセウスのみならず。彼が立っている建物の裏側の裏路地に潜み、上空の天気を操っている彼の弟・シエルも気付いた。

 

本番はこれから。エドラスの今後を導く英雄の第一歩。必ず成功させて見せる、とそれぞれ兄弟は改めて決意を固めた。




おまけ風次回予告

ペルセウス「よし、みんな準備はできたな。ってナツ、いつまで不貞腐れてるんだ?」

ナツ「だってよ~。オレのポジション、ペルの下僕っぽいじゃねーかよ。堕天使よりも魔王の方が親玉感出てると思うのに!」

ペルセウス「多数決でどっちが親玉をやるかもう決まったんだからしょーがねーだろ。4対1の圧勝だったけど」

ナツ「あ、そーだ!いいこと思いついたぞ!!せめてこれにしてくれ!」

ペルセウス「……特に期待できないがひとまず聞こうか。何だ?」

次回『堕天使ファルシー』

ナツ「魔王ドラグニル改め、大魔王ドラグニル!!これなら親玉っぽいだろ!?」

ペルセウス「さて、そろそろ作戦始めるか。ガジルとウェンディはそれぞれのポジションで待機。シエルは演出頼む」

ナツ「せめて却下とか言えよ!無視すんなぁー!!!」
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