リアルの方で色々と起こりすぎたせいで、スランプ気味だった執筆のモチベが危うく消えかかるところでしたが、何とか戻ってきました!
次回以降はここまでの遅れが出ないようにまた頑張っていきます!
取り敢えず、今の職場は近いうちに辞めたいな…。←
その日、一つの事件が発生した。
リサーナ帰還の宴から一夜明け、またギルドでの仕事を行う日々が始まる……と思っていた矢先での事だった。
「マスター……エドラスでの事について、もう一つ報告しなきゃいけない事がある……」
その発端となったのは、覚悟と決意を秘めながらも、どこか苦々しい表情を見せまいと堪えているように見えるペルセウス。兄の並々ならぬ様子に、シエルがどこか不安そうに彼の姿を見ている。彼の異常を感じ取ったのか、他のメンバーも、そして声をかけられたマカロフ自身も、閉口してペルセウスからの言葉を待つ。
そして彼が語りだした内容は、場にいるほとんどのメンバーを絶句させた。
「俺は……向こうの世界で、王国の兵士を殺めた。自らの手で、何人も……」
ほとんどのメンバーがどよめく中、エドラスに言っていた面々の何人かは気付いた。エドラスの王城内で大暴れしていたペルセウス。あの時に、魔戦部隊は命を取り留めたが、兵士たちの幾人かは手の施しようがなく、即死させていた。鎧さえも貫く短剣や、全てを焼き尽くした紅炎によって。
闇ギルドの者でもなくなった、正規ギルドの一員であるペルセウスがそのような暴挙を行ったとなれば、ギルド内で厳しい刑罰、もしくは破門とされるか、評議員によってとらえられるかのどちらか。本来であれば彼の行いを聞いた時点でそれは確定している。
「……何故、殺めた?理由や動機もなくする訳でもなかろう?」
彼の弟を始めとしてこの後に起こるであろうペルセウスに対する判決を想像して表情を歪めている面々とは違い、マスターであるマカロフは動揺を見せることなく、冷静に彼がその行為に至った経緯を問う。
「ミストガンから、エドラスの事についていくつか話を聞いていたんだ。あの国が何を目的としているか、アースランドからアニマを使ってどう魔力を奪っているのか……」
エドラスの狙い。それを阻止しようとしていたミストガン。仔細については解決した後に聞いたが、実を言うと異界から魔力を狙ってマグノリアを飲み込もうとしている存在がいることはペルセウス本人から聞いていた。だが彼は一つ、隠していた。
「二年前にリサーナがエドラスへと消えた後、ミストガンからの話を聞いた俺は……エドラスにリサーナを奪われたと思い込んだ」
エドラスがアニマを開発して実行に移したのが6年前。その時からエドラスはアースランドに存在する魔力を吸収するために世界中の空にアニマを展開した。その多くはミストガンの手によって閉じられていたのだが、アニマを閉じた後に出来る小さなアニマの残痕は、微量ながらもアースランドからの魔力を吸収していた。
2年前に跡形もなく消滅してしまったリサーナ。ギルドから伝え聞いていた彼女の最期と、ミストガンから聞いていたアニマの力。これに関連性があると結び付けたペルセウスは、アニマのせいでリサーナは吸い込まれてしまい、魔力となって消滅したと結論付けた。
実際には、アニマに吸い込まれはしたものの、王国が設定した
「成程……それが、エドラスの者たちに力を奮った理由か」
「そうだ……けど、リサーナはこうして生きていた。知らなかったとはいえ、俺が行った行動は、仲間、家族を奪われた復讐にすらならない、理由のないただの虐殺だ……」
「それを分かっていながら自白した……と言う事は、その罪に対する罰を受ける覚悟がある、と受け取ってよいのじゃな?」
「っ……!!」
マカロフの問いかけを聞いて、シエルの表情がさらに歪む。彼が多くの命を奪った根幹の原因となっているリサーナも、悲痛な表情を浮かべながら視線を下に向けて俯いている。
「……どんな処罰も甘んじて受けるつもりだ。たとえそれが、破門であっても、評議院への連行であっても。それだけのことをした自覚は、さすがに出来てる……」
シエルたちだけじゃない。ペルセウスの、己に対する如何なる厳罰も覚悟していると言える姿勢に、マカロフ、ギルダーツを除くほぼ全てのメンバーが顔に動揺や驚愕を浮かべてる。それ程までの衝撃を表しているのだろう。
その一方でマカロフは、ペルセウスが秘めた覚悟を目にしながら、目を下に向けて考え込むように唸る。
「ま、待ってマスター!兄さんはリサーナのことを思って罪を犯したんだ!そりゃあ、それがどれだけの事なのかは、俺も分かってる……!けど、ただ仲間の仇を取りたいって、独りよがりとは違う理由があったんだ!だから……!」
「よせシエル」
マカロフの様子、兄の犯した罪の重さから、兄に下されるであろう重い処罰を予感したシエルが、何とか回避できないかとマカロフに兄の弁明を叫ぶが、他ならない兄がそれを止めた。
「仲間の為でも、仇を討つ為でも、その道を選んだのは俺の意志だ。どのみち裁かれなければならない」
「けど……兄さん……!」
振り向きもせず、言い聞かせるように穏やかな声で、弟にとって残酷な言葉を口にする。ギルドを束ねるマスターからの断罪を、敢えて望んでいる。
そうだろう。
仇の為、家族の為、その理由故に今回の一件を正当化させてしまえば、今後ペルセウスがより一層残虐的な行動を犯すきっかけとなってしまいかねない。罪は罪。それも虐殺となれば尚更裁くべき。シエルとしては頭で理解はできても、心が追い付かない。
兄がこのままされるがまま、裁かれてしまっていいのか。阻止しようと言葉を発そうとするが、今のシエルにはその言葉が何も浮かばない。
「確かにペルの行いは、到底看過できるものではない。私としても、罪に対する罰は、受けるべきだと思う」
「エルザ……!!」
シエルが口を噤んでいる間にも時間は過ぎていく。他の誰もが言葉を発せなかった空気の中、周りで傍観を貫いて黙していた緋色の髪の女騎士が自論を発した。最早兄に味方してくれるものは、ギルドの者たちと言えど自分以外にはいないのだろうか。反論も出せずに表情を悲しみで歪めるシエルを、彼と親交のある者たちは各々、静かに見据えるか、心配そうな表情で目を向けている。
しかしエルザは次に「だが……」と呟いた後、こう続けた。
「私も、ペルがエドラスで行った所業を止められなかった。知らなかったからと言う理由で、片付けられる問題でもない。マスター、罰なら私も受けましょう」
そう告げた彼女の言葉に、ペルセウスやシエルだけでなく、ギルド内の魔導士のほとんどがどよめきの声をあげた。まさかエルザが、同じチームとして最近は行動を共にすることが多かったとは言え、ペルセウスが犯した蹂躙の罪に対する罰を共に受けると言ったことに、様々な衝撃を表している。
「エルザ!?お前、何を言って……!」
「お前の気持ちには共感を覚えたし、私もお前と同じ立場であったなら、何をしていたか自分でも分からん。
その中でも、たった一人で罪を背負おうと決意していたペルセウスは一際衝撃と動揺を受けている。そんな彼も気にせずエルザは、ペルセウスがこれまで一人でリサーナがエドラスによって捕らわれていた事を抱えていた事実を気付きもしなかったことも含めて、自分もまたこのまま放置しておくわけにいかないと行き着いた。
知らなかった、気付けなかった、それだけの事で家族が裁かれる場面を黙して見過ごすことなどできるわけがない。それがエルザが導き出した結論だ。
「んじゃ……オレも同罪だな」
「グレイ……!?」
「ガジルが来るまで何も出来なかったこともあるし、ペルが何を思って行動しているのか、全く疑問にも思わなかった。止められる方法はいくらでもあったことを考えれば、オレだって無関係とは言えねーな」
エルザの進言に続くように乗っかってきたのはグレイ。エルザ同様に
「それを言ったら、オイラたちだってそうだよ!それに、オイラたちの故郷も関係あったわけだし……」
「そうね。そもそもエドラス側がアニマを使ったことが、今回の事件の発端。その上、私は一度エドラスを見捨てようともした。ペルセウスと、結果的にやろうとしたことは同じだわ」
続けて彼の表情を強張らせたのはエドラスから渡った二人のエクシード。恐怖も浮かべず、家族であるペルセウスの弁解を叫び、己にも故郷にも非がある事を伝えて、一例のみではない事を示している。
「ハッピーたちが罰を受けるんならオレも受けるぞ!みんなで罰受けりゃ、その分軽くなんだろ!」
「わ、私も受けます!ペルさんたちがいなかったら、助からなかったかもしれないし……!」
更にはそんなエクシード達の相棒である
「私も一緒に、罰を受ける」
「なっ……!?」
「リサーナ……」
次に、これまでの中で一番ペルセウスが衝撃を露わにした。彼がエドラスで蹂躙を行った一番の理由にして根源となった少女。リサーナもまたペルセウスと共にすると名乗り出る。さすがに彼女までもが名乗り出てきたことには、姉であるミラジェーンが複雑そうな表情を浮かべているが、リサーナが並大抵の覚悟で言っているわけではないことは、姉である彼女も分かっている。
「元はと言えば、ペルは私の敵討ちをするために罪を犯した……。きっとみんなは、私は悪くない、仕方がなかったって言うかもしれないけど……私があの時エドラスに吸い込まれなかったら、きっとこの事件も起きなかった。だったらせめて、ペルの助けになりたい……!もう、誰も守れないままなのはイヤなの!!」
元々は彼女も被害者と言える。偶然に偶然が重なって、不運の歯車が噛み合って回ったことで起きた事。しかし自分が巻き込まれたことが原因でペルセウスが行動を起こしたと言うのも事実。それによって彼が後悔の末にその罰を受けるのを、リサーナは黙って見ていることは出来なかった。仲間たちからすればその必要はないと思えるだろう。だが、いやだからこそ、心の優しい彼女は自らも名乗り出てきたのだ。
「あたしも受けるわ、みんなと一緒に!ちょっと怖いけど……」
「オレもだ。話を聞けば、オレが所属していた王国側にも、多大な非がある事だしな。お前も受けるだろ、ガジル?」
「んなっ!?オレまで巻き込むなよ!!……だが……オレのネコだけ罪がかかるっつーのに逃げるのもダセェし……!」
エドラスに渡り、共に戦い、これまでの間にも長く過ごしてきた仲間たちからの発言。仲間の……家族の為に罪を犯したペルセウスに寄り添い、運命を共にするとも同義の覚悟を示してくれた彼らに、シエルは驚きを表しながらも目から涙を流した。
本当に……恵まれた。彼らのような仲間が、家族が傍にいてくれている自分たちは、本当に幸せなのだと改めて実感させられる。そして同時に思う。決意する。彼らに続き、自分も自分の想いをはっきりと主張しなければと。
「……勿論、俺も受ける!!兄さん一人だけ罰を受けるのは、俺がイヤだ!!」
溢れ出た涙を拭いながら、ずっと口を閉ざして仲間たちに目を剥けていたマカロフに、真っすぐと目を返して宣言する。巻き込むことを良しとしなかったペルセウスはそんな弟に悲しげな、他にも様々な感情が入り混じった複雑そうな表情を浮かべてシエルの名を呟き、俯く。
「ペルよ」
俯いていたペルセウスに、これまで口を閉ざしていたマカロフがとうとう口を開く。名を呼ばれた彼が思わず顔を上げてマカロフへと視線を戻すと、表情は変わらぬまま、だが声はどこか穏やかにして語りかけてきた。
「確かに此度の一件で、お前は取り返しのつかぬ罪を犯した。それはお前自身の憎悪に塗れたものであることも、事実やもしれん。しかし……こうしてお前が犯した罪を共に背負おうと、罰を共に受けようと、共に辛苦を舐めようと声を上げる仲間が、家族がおる。罪を擦り付けることを許すわけではない。じゃがお前が背負う重すぎる業に、お前が潰されるぐらいなら少しは支え、分けてもらってもいいじゃろう。強大な力を持っていたとしても一人では限界がある。その限界を無くすためにも、仲間がおるんじゃ」
エドラスからのアニマがマグノリアを飲み込むよりも前から、ミストガンからエドラスの事を聞いていたペルセウス。教えてくれた本人の意思を汲んで誰にも言わずに、一人で友の為に動き、出来る事をやって来た。もしも他の誰かに……弟のシエルや、チームで共にするエルザたちなどに話していたら、きっと信じてくれたし、協力もしてくれただろう。巻き込みたくないと言う美徳にも似た考えを悪とはしないが、その想いと重責に苛まれることに気付けない方が、仲間たちにとっては辛いことだ。
「もっと家族を頼るといい。一人で抱え込むぐらいなら、その苦しみを理解して、支えてもらう。率先して応えてくれることを、お前もよく知っているじゃろ?」
マカロフの言葉を聞き、自分の後ろに立ってそれぞれ笑みを浮かべている仲間たちに振り向く。誰も彼も、彼を責めるような目を向けていない。ペルセウスが抱えた罪を共に抱え、背負い、罰までも共にすると言い切った彼らの存在が、ペルセウスにとっての大きな救いとなっている。何度……彼らに対して大きな恩を感じただろう。その中でも、今回は段違いに感じられた。
「じゃが、今回に関して罪を犯したのはペル一人。止めようにも止められなかったことを鑑みれば、同罪と当てはまる者もおらん。よって罰を受けるのも、ペル一人じゃ」
しかしそのマカロフの言葉が、ペルセウスの後方にいた者たちに衝撃を与えた。特にナツはマカロフに今にも嚙みつきそうな怒り顔になっている。こればかりはどうにもならないのか。詰め寄ろうとするナツをエルザが窘めながら、一同はマカロフから下される判決を固唾を飲んで待ち、対象となるペルセウスは覚悟を決めて目を閉じた。
「では判決を下す。ペルセウス・ファルシー。お主が此度に、エドラスで犯した罪に対する罰は……」
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ペルセウスへ判決が下ってから二日が経った。マグノリアのギルドへ繋がる中央の通りを、二人の少年少女、そして少女に抱えられた白ネコが雲間から差し込む太陽に照らされながら歩いている最中だ。
「ほら、あそこがそうだよ」
「ホントに近かった……!それに大きい……!」
「あんたたち随分贅沢なトコに住んでたのね……」
少年シエルが指差したのは自分の家。周りの住宅と比べても、面積や高さなど、同じ二階建て住宅と比べてもひと回り大きな、そして絢爛とは言わずとも一般人では手が出せそうにない立派な外装の一戸建て。マグノリアで暮らす、彼ら兄弟の住宅である。
「ナツさんたちはもう来てるのかな?」
「多分ね。何度か来たことあったし、勝手に入ったこともあったし」
後半に、諦め気味な遠い目を浮かべながら呟いた言葉を聞いて、苦笑を浮かべる少女ウェンディと白ネコシャルル。何故彼女たちがシエルの案内で彼の自宅に来たのか、そしてナツたちも彼の家に来ていることになっているのか。
二日前にマスターマカロフから、ペルセウスのエドラスでの所業に対する判決を下された。以降、ペルセウスはギルドに一度も顔を見せていない。兄のいないギルドで過ごすシエルの様子を見て、色々と気になったナツたちは一度、エドラスから帰ってきたメンバーを中心として兄弟の家を訪ねることにした。元から家を知っているナツやグレイたちはともかく、ウェンディとシャルルは初めて。故にシエルが、ギルドから彼女を自宅へと案内することにした。
「さ、どうぞ」
「お邪魔しま~す」
シエルに導かれて、家の玄関へと入り、その奥のダイニングへとシャルルを抱えながらウェンディが入る。大きめの長方形のテーブルも置かれており、広々としたスペースに思わず二人から感嘆の声が漏れ出てくる。
だが、家の広さに着目しているだけでは気付くのに遅れてしまったが、先にここへ向かったはずと思われる面々がどこにも見当たらず、気付くと同時に首を傾げた。
「あれ?ナツさんたちは?」
「まだ来てない……とかかしら?呑気ね、あいつら」
ウェンディの言葉に続いて呆れながら呟くシャルル。だが、ダイニングやリビングに見当たらない仲間たちの姿、と言う事実を認識した直後、どこか諦めたかのように目を細め、口を噤みながら「多分だけど……」と零すと同時にとある部屋を目指して歩きだし、その後ろをウェンディが着いて行く。
「ここって?」
「ここはね……」
そしてダイニングから一番近い部屋の扉の前で立ち止まり、小首を傾げながら尋ねたウェンディの問いに答えるように呟くと同時にドアノブに手をかけて押し開いた。
「よーシエルー!」
「おかえりー!」
「おかー」
「遅かったな」
「邪魔しているぞ」
「わあ!これも並んでるー!」
「俺の部屋ぁーー!!」
開いた瞬間目に映ったのは普段から少年が使っている自室。彼自身の趣味である読書やリーダスに描いてもらった絵などが飾ってある少年にしては質素な部屋……の中で好き勝手寛いでいる最強チームの面々だった。リサーナまでいる。つい最近までルーシィが味わってきた光景。ルーシィがギルドに来る前は何かにつけてナツやグレイが来ることは実は多々あったのだが、久々な上に人数過多で叫ばずにはいられない。
「とぁーーっ!!」
「ぶべっ!?」
そして勢いそのままにシエルがナツの顔面目掛けて飛び蹴りを食らわせて壁に激突させた。ルーシィがよくやってるツッコミまでも再現である。
「何で蹴るんだよ!!」
「いつものノリ」
「何だ、ノリならしゃーねぇか」
「え……いいんですか……?」
当然蹴られたナツが抗議を申し出るものの、シエルが返したノリと言う単語を聞いて、怒るどころかそのまま流した。いいのだろうか、ノリで。ウェンディはそう思わずにはいられなかった。
「ウェンディたちの案内ご苦労だったなシエル。二人とも、今日はここでゆっくりしていくといい」
「は、はい。ありがとうございます……」
「でもそのセリフは
そんないつもの光景も他の面々は特に気にせず。持参してきたであろうケーキをつまんでいたエルザがウェンディたちを迎え入れるかのように声をかけてくる。自分の部屋でも家でもないのにさも家主のような口ぶりに二人して反応に困る。ちなみにリサーナだけは昔見た光景に懐かしんでいた。
「しっかしいつも思うが……何もねーよな、シエルの部屋」
「だよな~。もっとおもしれーモンとか置きゃあいいのによ」
「勝手に入って寛いでるくせにこの言い草……」
シエルの趣味が詰められた本棚と絵以外は特にめぼしいものがない彼の部屋は、ナツやグレイには特に面白みを感じられない。だがシエルからすれば自室の中のあらゆるものをバカにされたような気がして納得が出来ない。あからさまに不機嫌になった様子で文句を言っていた二人を睨みつける。
「あんたたち分かってないわね~!」
だが彼の心情を汲み取るかのようにルーシィが文句を言った二人に呆れながら、本棚にあった一冊の本をとってこちらに見えるように掲げて語り出した。
「有名な著書やコアな魔導書、更には知る人ぞ知る隠れた名作……!読書家にとっては宝の山よ!!それにこの“シャーロット・アーウェイの謎”の番外巻の初版だなんて、レア中のレア!!」
「何言ってんのか全然分かんね……」
言われてる側のナツには何のこっちゃと言いたくなる程の情報を、テンションが上がって饒舌になった状態でルーシィが次々と口にする。今の今まで兄やレビィぐらいしか価値を理解してくれない人物がいなかったので、同じ読書家の一面を持つルーシィの予想通りの反応にシエルの気分が少しばかりよくなる。それはそれとして……。
「いつも勝手に部屋に入られてる側のルーシィが何でみんなを止めなかったのさ?」
「あ、えっと……止めようとはしたんだけど、誰も止まりませんでした……」
目を半分細めてルーシィに尋ねてみれば、案の定彼女をもってしても部屋への不法侵入を止められなかったらしい。なし崩し的に部屋に入り浸り始めて初めは呆れるばかりだったのだが、本棚にある書物のラインナップを見ていたら、ルーシィもすっかりテンションが上がって寛ぎ始めてしまった、と言ったところか。
今更言ったところで変わる訳でもないので、もう色々と注意をすることをシエルは諦めた。溜息を吐きながら項垂れた様子のシエルを見て、ウェンディが苦笑いを浮かべている。
「ゆっくりしていてくれ、とは言ったがな……」
すると、部屋の外側から、この場にいる誰でもない人物の声が聞こえてくる。その声を聞いて真っ先に、シエルとウェンディの二人が振り向いてその人物に顔を向けた。
「想像以上にくつろぎすぎじゃないか、お前ら……?」
「ただいま、兄さん」
「お、お邪魔してます……!」
「お邪魔してるわ」
「おう。おかえりシエル。それとよく来たな、二人とも」
普段着の上からエプロンを纏った姿で、シエルの兄であるペルセウスが奥にいるナツたちに呆れたような視線を向け、その直後手前にいる弟とウェンディたちに軽く言葉をかける。
「ペルさん……その、大丈夫でしたか……?」
「ん?あぁ……ま、ここのところゆっくりすることもなかったし、ある意味いい機会だったと思ってるよ」
心配そうな表情をペルセウスに向けながら尋ねたウェンディに、笑みを浮かべてペルセウスは返す。彼女が心配しているのは、彼が判決を下されてから二日間、一秒たりともこの家から出ていない事、そしてそれを、マスター・マカロフから禁じられていることに由来しているからだ。
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「お主が此度に、エドラスで犯した罪に対する罰は……」
ほとんどの者が固唾を飲んで見守る中、マカロフはペルセウスに下したその罰を、揺らぐことなく宣言してみせた。
「“一ヶ月にわたる自宅謹慎”。今日から一ヶ月の間、おぬし一人のみを、住処としている家からの一切の外出を禁止とする。以上じゃ」
「……え!?」
そしてその判決を耳にして、思わずペルセウスは声をあげて驚愕した。一ヶ月間、自宅で謹慎?たったそれだけ?思ってもみなかった、言ってしまえば刑と言うにはあまりにも軽いそれに対して、完全に出鼻を挫かれた彼は思わず耳を疑って聞き返す。
「そ、それ……だけか……!?」
「んー?かなりきつめの罰を下したつもりじゃぞ?なんせお前にはかなりの放浪癖があるからのう。一ヶ月も家に閉じ込められるのは、相当苦じゃろうて」
呆気にとられているペルセウスの質問に対して、イタズラが成功した時のような笑みを浮かべながら答えるマカロフ。形だけとも見れるような罰を下すと言う宣告を受けて、困惑を隠しきれずにいる本人とは対照的に、周りのメンバーたちの表情は明るくなっていく。
「じゃあ、謹慎期間が終われば……!」
「また、いつものようにギルドの仲間として、仕事してもらうぞ。また仕事が貯まるじゃろうからのう」
浮かべた笑みをそのままに、だが優しげな声でいの一番に尋ねたシエルへと言葉を紡ぐ。それを聞いた瞬間、シエルも、ナツたちも喜びの歓声を発した。彼らほどではないが、見守っていたメンバーたちも、少なからず安堵している様子だ。
「だ、だけど……俺は……」
「そう簡単に、己を許せはせんじゃろう?それならそれでよい」
それでも割り切れないと言いたげな様子を見せるペルセウスに、マカロフが再び優しげな声で語りかける。そしてその言葉に、再び彼が驚きを示した。
「人は誰しも過ちを犯す。それは逃れられない宿命じゃ。軽かろうと重かろうと、過ちを犯さずして、人は生きてはゆけぬし、成長も出来ん。その過ちと如何にして向き合うか、如何にして乗り越えるか、目を背けずに真っすぐ見つめようとするお前のような姿勢なら、きっとさらなる成長を遂げられるじゃろう」
ペルセウスは確かに、重すぎる罪を犯した。それは逃れようのない事実。だがマカロフは、罪を犯した事実よりも、その罪にどう向き合うか、その姿勢を持ち続けられるのかが重要であると説く。ペルセウスの表情に、驚きが抜けることがない。
「己が罪、己が業を受け入れ、受け止めて、その上で自分で許せる時が来たら、それがお前が罪を乗り越えた瞬間じゃ。挫けそうになったら、周りにいる家族や、ワシらを頼るとよい。しっかりな」
それは激励の言葉だ。建前では謹慎処分として彼を罰すると言う形をとったが、その間にペルセウス自身が己の罪を乗り越えるために、親から贈る彼への激励。その意図を察することが出来たペルセウスは、歯を剥けながら笑みを浮かべるマカロフに少しばかり潤ませた目をこらえるように閉じながら、気付けば彼に向けて頭を下げていた。
「分かった……必ず、乗り越えて戻ってくる……!」
後方の弟を始めとするチームのみんな、前方に立つ親と、家を共にする家族たちからの信頼を感じる視線を受けながら、ペルセウスのエドラスで行った行いに対する処分は下された。
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「思ったより元気そうじゃねーか」
「全くだ。お前の事だから息が詰まりそうな、退屈を持て余しているような顔をしていると思っていたのだが、案外快適そうにしてるな」
「そんな風に思われてたのか、俺……?」
シエルの部屋から一同揃って、テーブルのあるダイニングへと移り、ペルセウスがキッチンから運んでくる料理をつまみながら、当の本人の様子について話題を上げている。ちょうど昼時だったこともあって、昼食をとりながら話の続きをしようと言う流れだ。
「まあ、自分でも正直意外とは思った。家を空ける時間の方が多かったから、いざ家の事をしていると次々とやるべきことが見つかるんだ。ここ数年は炊事や掃除はシエルに任せっきりだったし、謹慎期間を大いに活用するのも良さそうだ」
神器や闇ギルドの情報を収集するために身に染みていた放浪癖も収まっている程に、我が家での家事全般を行う内にのめりこんでいるらしいと、ペルセウス本人から語られ、窮屈な思いとは正反対の過ごし方をしていることを察することが出来た。
「ギルドの様子は?」
「いつも通り、って感じかな。兄さん、何だかんだでギルドにいなかった時も多かったし」
「シエルが少し寂しそうにしてた以外は、変わった事なかったわよ?」
「ちょっ、言わないでよリサーナ!!」
料理も並べ終わり、身につけていたエプロンを外しながら尋ねられたギルドでの様子を聞かれ、弟と、それに続くようにリサーナが彼に教えた。無用な心配はかけさせたくないから、寂しく感じていることは敢えて伏せていたのに、揶揄うように笑みを浮かべたリサーナにあっさり暴露された。気恥ずかしさでシエルの顔に熱がこもり、彼女に思わず抗議をあげる。その暴露をしっかりと聞いていた兄は微笑ましさと嬉しさが表情に浮かび、それと共に口から笑みが溢れる。周りもほぼ同様だ。
そこからは食卓を囲みながら話が転々としていく。二日の間に行っていた仕事のことや今後ギルドで行うだろう行事、リサーナがエドラスで過ごしていた時のことや、逆にリサーナがいなかった時にギルドで起きていた大体の出来事。ルーシィやウェンディがギルドに入った経緯など、食うことに集中しているナツも時たま言葉を挟みながらテーブルにあった食事はみるみる内に減っていく。
「そうだ。エドラスの話をしていて、一つ聞いておきたいことがあったのを思い出した」
食後のデザートに、ちゃっかり用意していたケーキの一つをつまみながらエルザは徐に口を開いた。聞きたいこと?と言いたげに全員が彼女へと視線を向けると、その疑問に答えるように「ミストガンのことだ」と付け加える。ウェンディがその名を聞いて弾かれるように反応を示した。彼女ほどではないが気になっていた者は数人はいるだろう。エドラスからわざわざこの世界に訪れ、ギルドの一員として名を連ねていたかの青年に関する、とある疑問。
「ペル、以前からミストガンとは親交があったというのは本当か?」
「ああ。あいつ自身が、ほんの一握りの人間としか接点を持とうとしなかったから、必然的に隠すようなことになっちまった……。すまん」
正体を明かさず、他の者と関わろうとしなかったミストガン。彼が唯一と言って良いほど、信頼さえおいていた人物がペルセウスだ。彼からエドラスのことについて話を聞き、ペルセウスは互いに手の届く範囲でアースランドの為に動いていた。そして魔力が失われたエドラスを導く新たな国王にミストガンが就けるようにも動いた。
「そもそも、ミストガンとどうやって知り合ったんですか?確かあの人、ギルドに来る時はいつも、みんなを眠らせてから入ってくるんですよね?」
「ラクサスはあいつの顔の事を知ってたみてーだが、ペルの場合はやけに親身っつーか、オレらも知らねぇことまで熟知してたよな。この場にいるほとんどが、顔を合わせた事すらなかったのに……」
ルーシィやグレイが思い出していたのは、ミストガンがギルドを訪れる時にほぼ毎回必ず行っていたこと。ギルド内にいるメンバーたちをマカロフを除いて全員眠らせ、その間に依頼書を受け取って依頼に向かう。その為ミストガンの全身を覆い隠すような風貌さえ見たことのある者は少ない。ペルセウスもギルドに来たばかりはその例に漏れず、彼の事を知る機会などなかったはずだが……。
「あ!
「やさ……?」
ふとミストガンの行動と、兄が普段から換装で着けていた神器の一つの事を思い出して結び付けた弟からその神器の名が出てきた。突如声を張ったシエルにビックリしながら、隣の席に座っていたウェンディが首を傾げる。聞き慣れない名前故に何の事か分かっていない様子だ。
しかし他の面々はその神器の名前で察したらしく、抱えていた疑問は一瞬で晴れることとなった。
「そうだな……折角の機会だ。全員聞いてくれるか?」
────────────────────────────────────────
最初に彼の事を知ったのは数年前。ギルド内で度々起きていると言う、メンバーのほとんどが眠りの魔法をかけられて眠らされた時だった。
「あれ……?いつの間に寝てたんだ……?」
当時少年であったペルセウスも、気付けば
「なあ、今の感じ……」
「やっぱミストガンだよな……?」
「ミスト、ガン……?」
そしてギルド内では、自分同様に眠っていたらしい面々が口々に起きると同時にそう口を開く。そして、ミストガンと言う聞き慣れない名前を耳にして、彼は起き上がりながら話をしているメンバーに声をかけた。
「なあ、ミストガンって誰の事だ?」
「そっか、ペルは知らねぇのか」
そうして彼は初めて知った。ギルドに所属する魔導士の中に、マスター以外と顔を合わせる事のない、ミストガンと言う謎の魔導士が存在し、ギルドを訪れる際は必ず中にいるメンバーを眠らせていること。その眠りの魔法は、ミストガンがいなくなるまで解除されない事も。
「(何だってまた、そんな面倒なことしてるのかね……)」
その時はまだ、ミストガンへの関心はペルセウス自身も薄かった。周りを眠らせてからギルドに入る事の奇特さを感じながらも、深く関わる事はないだろうと、どこか思っていたから。
転機のきっかけは、東の国から遥々届いた長期の依頼を完了し、その依頼先で東国に伝わる神器、八尺瓊勾玉を手に入れたことだった。初めて触れる神器を手にした瞬間、魔法や魔力の質故か、神器そのものからどのような力を有しているかを語りかけるように情報が伝わってくる。勾玉もその例に漏れず、毒や身体能力低下などのデバフ効果を一切遮断すると言う力を持つことを伝えられ、衝撃を受けたものだ。
それと同時に思い出した。いつもギルドに来る時は決まって中にいる全員を眠らせる人物を。「どんな奴だろう?」と言うちょっとした好奇心で、ペルセウスはミストガンとの邂逅を狙って八尺瓊勾玉を常に装備することを決めた。
それからひと月は後のことだった。
周りの面々が、唐突に眠気を訴えて深い眠りについていく。倒れ込む周囲の仲間たちを見ながら、ペルセウスは己がその眠気に襲われてはいないことを自覚した。やはり効果があった、と確信を抱きながら相手方に気取られないよう、周りと同様に眠気に襲われたふりをしてテーブルに倒れ込む。起きているのは、若干の眠気に襲われているのみのマスター・マカロフ。
そしてペルセウスは、目にせずとも気配を感じ取った。その場にいるだけで大抵の魔道士は魔力をどれほど有しているかを感じることができる。しかし、コツコツと足音を鳴らしながらギルドに入ってきたその人物は、その魔力をほとんど感じさせない。眠りの魔法を使ったにも関わらず。
今思えば、魔力を内包しない人間であるからと納得ができるが、当時の彼は眠りの魔法は自身のものではなく、魔道具か何かを使っているのだろうと言う予測で考えていた。それも間違いではない。
「ミストガン……やはりぬしか……」
マカロフが呼んだ名前を聞き、確信は現実となった。ミストガン。名前以外は全くの謎に包まれたその人物が、今この場に入ってきている。その人物は、
「まあ待てよ」
「!?」
自分の前を通り過ぎようとしていたミストガンに前触れなく声をかけ、直後に彼の動揺と衝撃を込めた反応を感じる。幻聴か、と早合点されるよりも早く、ペルセウスは突っ伏していたテーブルから身を起こすと同時に、ミストガンに声をかけながら振り返る。
「ちっとばかし話の一つや二つ、してからでもいいんじゃねーか?」
ミストガンの目には、信じられない様子が映っていた。マカロフを除いて一人残らず、ギルドの面々は全員眠らせたはず。だが振り返った先に見えた自分と同い年ほどに見えるその人物は、確かに冴えて開いた両眼をしたり顔と共にこちらへと向けている。
それを理解したミストガンの行動は早かった。背に背負った杖の一つを手に取って、ギルドに近づいた際にも使用した対象を眠らせる魔法をペルセウスに放つ。現状、ギルドのメンバーを行動不能にする方法はこれしかない。しかし、彼の放った魔法はペルセウスの身体に当たることなく、彼の前方を透明な膜のような結界が弾き、遮断する。
「そう焦るな。お前の事について言いふらすつもりはないし、危害を加えるつもりもない。ただ単に気になった……好奇心故にお前と話をしたいだけだ」
神器の力によって、他者からの眠り魔法を遮断したペルセウスの様子に、隠された素顔を面食らったように驚愕に染めたミストガンに対し、彼を刺激しないようにペルセウスは落ち着いた声色で伝える。
「ここじゃ都合悪いな……人目につかない、東の森まで行くか。依頼にも行くんだろ?」
「……」
「一体何者なんだ……?」
これが、ミストガンが最初、ペルセウスに対して抱いた全てに関する感想だった。ギルドの日常が過ぎていく裏で、後々そのギルドにおける実力者となる存在である二人の邂逅。片や家族として過ごす仲間の内の一人に対する好奇心を。片や己の素性を何故か知りたがる者に対する警戒心を。相反する第一印象を抱えた者たちがその後に深く関わっていく原点である瞬間を見ることが叶ったのは、うっすらと眠気を抱いたまま細めた目でギルドを出る二人の人物を見守る親一人のみだった。
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「そう言えば、気付いたら眠っちゃって、起きたらペルがいなくなってちょっと大騒ぎになったことがあったっけ?」
「オレも今思い出した。すぐにじーさんが問題ないって静かにさせたから疑問も持たなかったが……」
「あの時から、ミストガンとは面識があったのだな……」
ミストガンと初めて対面した時の事を話し終えたペルセウス。黙して聞いていたメンバーの内、リサーナは真っ先に当時の事を思い出して口に出した。グレイやエルザもその時の事を思い出したようで、その上でその時からペルセウスがミストガンと面識があったことに驚きも抱いている。ちなみにナツは思い出そうとしているがピンと来ていない。
「話を聞く限りだと、最初は随分警戒されてたと思うんだけど……よくそっから仲良くなれたね」
「誰かさんたちに倣って根気よく話しかけて、自分の事も話していく内に壁を壊していったな。エドラス……異世界云々の話は聞いた直後は信じ切れなかったが、冗談を言うようなタイプにも見えなかったし、割と受け入れられた」
兄の話から考えて、そう簡単に心を開くような邂逅とは思えなかったことをシエルが尋ねると、時間と根気をこれでもかと使って心の壁を破壊していったらしい。いざとなったら力押しをする兄らしいと言えばらしいが、兄の知り合いに影響されたと推測できる。
「へ~」
「誰かさん……どんな人かしら?」
「本人たちに自覚があるかは知らねーが」
「無いと思うよ、きっと」
呆けた感じで感心するナツと、口元に指を置いて上を仰ぎながら自分の周りの面々から候補を絞ろうとするリサーナ。夢にも思うまい。この時点でその誰かさんたちと言うのが二人を除いて全員把握できてしまっていることなど。兄弟の反応がその証拠だ。
「他には、どんなことを話したんですか?」
「そうだな……ギルドのみんなのことをオレから話したり、エドラスがどんなところだとか、いずれ来るだろうアニマの脅威の情報とか……あ、そうだ」
更に話が聞きたくなったウェンディから他にミストガンから聞いたことを尋ねられ、次々と羅列を呟いていく。そしてふと思い出したかのようにある話題についてあげた。
「ウェンディ、お前の事を聞いたこともあったぞ、あいつから」
「私の、事……!?」
まさかのことに大きく目を開いて驚きを露わにするウェンディ。ミストガンから聞いたウェンディの話。名前を聞いたわけではなかったが、アースランドに初めて渡った際に仲良くなった少女が気がかりになると、心配そうに話していた事があったと言う。
「
「世界って案外狭いな……」
共通の知り合いがどんどん判明し、こうして巡り合うことになる。遠い世界からやって来たミストガンが、ウェンディと出会い、
「(ジェラール……)」
一方で、ミストガンから自分の事を聞いた……つまりその時も自分の事をしっかりと覚えていてくれたことに、ウェンディ自身も少なからず嬉しくなっていた。
「オレもミストガンと色々話してみたかったな~。ズリィぞペルだけ」
「悪ィな。こればっかりはあいつの為にも言えなかった」
「だが、あいつが私たちの仲間であったことは、これからも変わらない。こうしてあいつの話が出来る限りな」
ペルセウスのみが知っている、
「ペル、もっともっと聞かせてよ!何だか私ももっと知りたくなってきちゃった!!」
「分かった分かった、そう急かすなよ。じゃあ次はそうだな……」
特殊な立場だった故に、正体を隠すほかなかった仲間の一人。家族としてほぼ過ごすことがなかったものの、彼にとっては心の拠り所となったはずの、一人の親友。知ってる限り、聞かれる限りは伝えよう。
今もなお、故郷の復興と、新たな進展に向けて歩み続けているであろう、異界の親友の事を。一つ一つの思い出を思い返しながら、罪を共に背負ってくれた家族に、彼は語っていった。
おまけ風次回予告
ウェンディ「ギルドのみんなでお花見?」
シエル「そう。毎年この季節になると、虹色の花を咲かせる桜が満開になるんだ。ギルドや街の人たちは、その時期に花見をすることが多いんだよ」
ウェンディ「虹色に咲く桜……!!見てみたいなぁ……!!」
シエル「きっと感動すると思うよ!楽しみにしててよ!」
ウェンディ「うん!!」
次回『虹の桜』
ウェンディ「あれ?でも桜って春のお花のイメージがあるけど、今って秋だったよね?」
シエル「……世の中には知らない方がいいこともあるんだよ、ウェンディ?」
ウェンディ「えっ!?な、なにを……!?(汗)」