FAIRY TAIL ~天に愛されし魔導士~   作:屋田光一

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やっぱアニメオリジナルは文字数が増える増える…。

本当は色んな書きたいシーンとかもあったんですけど、時間の都合上またもやいくつか削りました。

削っても二万字超えって…!


第106話 24時間耐久ロードレース

マグノリアの天候は本日も快晴。秋の合間だけでも多数のイベントが存在しているこの街……もとい魔導士ギルド妖精の尻尾(フェアリーテイル)。街の南口公園にて、また一つの大きなイベントが開催されようとしていた。

 

出入り口近くに設置されたアーチの大きな飾りに書かれているのは「妖精の尻尾(フェアリーテイル)24時間耐久ロードレース」。

 

そこに集うのは、現在街に戻ってきている妖精の尻尾(フェアリーテイル)の全魔導士たち。

 

辺りに集まるは、このイベント見る為だけに集まった、マグノリアに住む一般客たち。

 

今から始まる、一日分の時間全てを使った、大規模な魔導士たちによる熱き戦い……!

 

《ソークゥール!!今年もこのイベントがやって来たぁ!!妖精の尻尾(フェアリーテイル)恒例!全魔導士強制参加の!『24時間耐久ロードレース』!!》

 

ギルドに属するすべての魔導士たちが一堂に会し位置につく集団の脇にて、テーブルに乗せられた魔水晶(ラクリマ)ビジョンを確認しながらマイク片手に叫ぶのは、以前妖精の尻尾(フェアリーテイル)に取材に来た経験もある、金色の短い髪と額に乗せたサングラスが目立つ週刊ソーサラーの記者。

 

《実況はわたくし!週刊ソーサラーの記者でお馴染み、ジェイソンであります!!この一大イベントを、COOL(クール)HOT(ホット)にお伝えしていきまーすっ!!》

 

何と大陸中で有名な週刊誌の記者が、このイベントの実況の為にわざわざ訪れるほど。妖精の尻尾(フェアリーテイル)自体が、ここ最近での知名度を良くも悪くも上げていることも理由なのだろうが、ある意味これは好待遇と言っていいだろう。

 

ほとんどの者たちがレース開始に先駆けてやる気を見せるようにストレッチをしたり発破をかけあったりしている中で、ビーチパラソルを持ったミラジェーンに陰を作ってもらいながら、悠々と歩いてくる男がいた。全魔導士の中でも、一番優遇されているその人物は……。

 

《っと、出ました!!当ロードレース無敗のタイトルホルダー、ジェット!!》

 

チームシャドウギアの一人である魔導士、ジェット。彼の魔法は神速(ハイスピード)と言う己の速度を爆発的に上げるものであり、まさしくギルド最速と言っていい魔導士。速さ()()を競うこのロードレースにおいて、彼より前を走れるものはいないとまで豪語できる。

 

依頼(クエスト)じゃいまいちな活躍も、これでチャラとの、ウ・ワ・サ!!》

 

「おい!!」

 

《ウワサですよ、ウワサ!!》

 

そんなジェットだが、普段はその速さを活かしきれていない様子。ジェイソンからのちょっかいにも似た実況に苦言を呈すも本人はあしらうばかりだ。だが大体事実なので仕方なし。

 

「ジェットのヤロー……今年も余裕だな……」

 

そんなどこか強者になり切れないジェットだが、実際にロードレースで毎回トップを突っ走る実力は本物。堂々とレース前に実況にツッコめる余裕は連覇した者の特権と言うべきか、グレイが苦い顔で彼の様子を見ている。だが、それとは対照的に笑みを浮かべる人物もいた。

 

「へっ!そいつはどうだかな~!優勝はオレが貰った!!」

 

桜髪に白い鱗柄のマフラーが特徴的な滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)のナツ。毎年レースの優勝をジェットに奪われているが、今年はやけに自信があるようだ。だがそんな自信に満ちているナツに小ばかにするようにガジルが口を割った。

 

「貰った、って言う奴に限って、貰った試しがねーんだよ」

 

「スッゲー“秘密兵器”があるんだよ」

 

「なーにが“秘密兵器”だよ。ガキくせーな」

 

どうやらナツには今回のロードレースに対する秘密兵器と言うものがあるらしく、不敵に笑みを浮かべながら堂々としている。しかしそんな彼に対してグレイもガジルもどうせ大したことじゃないとばかりに構え、三人の間で静かに火花が散った。

 

「今日ばっかりは、誰が相手でも手加減しないよ。ジェットの連勝記録を塗り替えてやる」

 

「スゴイやる気だね……!」

 

「随分自信満々だけど、なんか作戦でもあるの?」

 

やる気を漲らせて、自慢げに笑みを浮かべながら実質の優勝宣言を口にするシエルに、近くにいたウェンディとシャルルが不思議な様子で尋ねてくる。作戦……と聞かれたら、少年は意味ありげな様子で不敵に笑うと律儀に答えた。

 

「このレースは魔法の使用も無制限なんだ。そしてこのレースにもってこいな秘策を、用意してあるんだよ。詳しくはレースが始まってからのお楽しみだけど」

 

ナツ同様にシエルにもレースを大いに有利にするような秘密があるらしい。首を傾げていながらもシエルの言う秘策に興味を向けるウェンディと、どこか胡散臭い印象を拭いきれないような視線を向けるシャルル。対照的な二人の意識を感じながらも、十分に見通せる勝利の未来を少年は見据えていた。

 

「みんな気合入ってるな~」

 

「みんな罰ゲーム食らいたくないからね。去年はひどかったからなぁ……!」

 

「はぁ!?罰ゲームって何よ!!?」

 

イベントとは言え妙に気合が入った様子の魔導士たちの様子を目にしながら、疑問に感じたルーシィがぼやけばハッピーが近づいてルーシィに説明した。毎年、このロードレースで最下位となった者には世にも恐ろしい罰ゲームが用意されている。内容も毎年変わるので、何が来るかも分からない恐怖も相まって絶対に罰ゲームを受けたくないと気合を入れる魔導士が多数いるのだ。

 

「去年のはそんなにひどかったのか?いなかったから内容知らねぇんだけど」

 

するとルーシィの後ろからハッピーに向けて尋ねてきた人物を見て、思わずルーシィは驚愕した。水色がかった銀色の長い髪を持った、本来であればまだ外に出る許可が下りていない人物の姿。

 

「あれ、ペルさん!?謹慎期間って、もう終わってましたっけ!?」

 

「いやまだだ。だがマスターから今日と明日だけ謹慎を解くって言われてな。その代わりレースに参加することを条件にされた」

 

「罰ゲームの対象者を増やす為だろうね……」

 

一ヶ月間の自宅謹慎を命じられたはずのペルセウスがここにいる理由。マスター・マカロフよりこのロードレースに参加するようにと言う条件と共に謹慎を一時的に解かれたからだ。マカロフ自身がこの罰ゲームを楽しみにしている節が大きく、その対象者を増やすための措置ではないかとハッピーが邪推した。恐らく合ってる。

 

「で、さっきの質問なんだが……」

 

「ある人が1から10まで全部考えて実行されたやつだったんだけどね、そりゃもうひどかったんだよ……」

 

「ある人?」

 

「ヒントは、“弟”です」

 

「あ、察したわ、すまん」

 

去年の罰ゲームの内容を考えた人物にこれ以上のない既視感を感じたペルセウス。自分が10年クエストでいなかったから遠慮も手加減も一切無しなエグイ奴を考えたんだろうな、とこれ以上聞かずともすぐに想像が出来た。今年からは参加側なので罰ゲーム考案まではやらないのだろうが。

 

そこまで会話が続いた直後、拡声器越しに「静かにせい!」と言う老人の声が公園に響く。高台に登ったマスター・マカロフからの開始前の挨拶、及び説明が始まったようだ。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の諸君!知力、体力共にあってこその魔導士だ!今日は存分にそのパワーを競い合ってほしい!!》

 

「知力なんかいるか?」

 

「どう考えても体力だけだよな」

 

そんなマカロフの激励の中に、今回必要と感じない知力と言う単語にエルフマンとグレイがそれぞれ反応を示す。今回に関しては知力の使い道が存在するのか確かに疑わしいところだ。

 

そしてここからレースのルールが説明される。ここ……南口公園からスタートして決められたコースを激走し、『イボール山』を目指すこと。今年はそのイボール山の頂上に白ワイバーンの鱗が参加人数分置かれている。その鱗を取って、この南口公園へと24時間以内に戻ってくる。以上が大まかなルールだ。

 

《脱落は認めんぞ?妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士たるもの、完走してこそ、明日の仕事に繋がると言うものじゃ!!》

 

ルールを頭に入れながら、シエルはマカロフの言葉によく耳を傾けて首肯を軽く二回する。体力的に明日の仕事ができるか否かと問われかねないが、そこは気迫の問題と言ったところだろう。

 

《さらに、多くの魔導士の要望を受けて、新たなレギュレーションを設けた。それが……『()()()()()()()』じゃ!》

 

 

 

 

 

瞬間直後、シエルの目が死んだ。シエルだけでない。主に飛行魔法を使うハッピーやエバーグリーンも例外ではない。シエルがこうなったのには理由がある。それはさっき得意げに語った秘策だ。

 

秘策と言っても内容は単純。イボール山山頂に向けて乗雲(クラウィド)を出しながら、コース内完全最短距離で向かうこと。ジェットの魔法もスピード系だが、彼は所詮陸路。空路を扱う自分の敵ではない。ぶっちぎりのトップを狙うことができる。

 

……と、去年からずっとその方法を狙っていたのに、いざ参加したら今年からのルール変更。誰かが意図的にこちらの作戦を潰しにきたのではないかと邪推さえしてしまう。

 

「(い、いや、まだ使えないと決まったわけじゃない。地面スレスレで使う分には問題ないはず。そうだよ、あれはあくまで乗り物の魔法なんだ、飛行魔法じゃない。乗雲(クラウィド)は飛行魔法じゃない)」

 

胸中でこのレースにおいての乗雲(クラウィド)の扱いについて延々と弁明を呟き続けるシエル。物凄く必死だが、ギルドのメンバーに正式に認定された時から心のどこかで決めていた必勝法を新ルールで勝手に潰された理不尽に抗おうとする姿勢を変えられない意地が見え隠れしている。

 

こればっかりは譲れない。どんなにこじつけと言われても去年から考えていたこの作戦を披露前にお蔵入りにすることなど……!

 

《そう言うわけで……乗雲(クラウィド)の使用は禁止じゃぞ、分かったかシエル!!》

 

「っておい!俺だけ名指し!?しかも念押しする程に乗雲(クラウィド)禁止って!マジ!?本気で言ってる!!?」

 

《そもそもマラソン競技で乗り物に乗る奴がおるかぁい!!》

 

残念ながらシエルの秘策はスタートするより先にお蔵入り確定となった。心の中で言い聞かせた内容が察知されたのかマカロフによって暴露と共に改めて乗雲(クラウィド)の禁止を宣言される。だがあんまりにもド正論で論破された為それ以上に反論が出てこない。周りの魔導士が爆笑に包まれているのが果てしなく悔しいが何も言えずに歯噛みするばかりだ。

 

「それで……一体どんな秘策があるのかしら?とっても楽しみだわ。ねえ、ウェンディ?」

 

「あ、えと、わ、私は、その……」

 

「いっそ殺せぇえっ……!!!」

 

最後のトドメにこれでもかと嫌味混じりな笑顔をシエルに、そしてウェンディに問いかける。先ほどまでドヤ顔しながら「秘策がある」と言っておきながら、その秘策と思われる魔法を禁止された、珍しくダサい姿になってしまったシエルへの微かな仕返しとばかりにわざとらしく言い放ったセリフを聞いて、色々察したウェンディが言い淀んでいる。その時点で諸々恥ずかしくなったシエルは両手で顔を覆ってくぐもった叫びを上げながら蹲った。人生最大の汚点だ、これは。

 

「あらら……」

 

「こりゃついてなかったな……」

 

そんなシエルの様子を遠目から見ていたリサーナやペルセウスは彼の心中を察して苦笑を浮かべた。だが正直、飛行魔法だと多くの魔導士との差がどうしても開くのは致し方ないと言うのも同意の為、それ以上のフォローは出来なかった。

 

《飛行魔法以外の魔法は使用無制限じゃ!》

 

「つってもなぁ……」

 

「そいつがくせものなんだけど……」

 

「毎年無茶苦茶だからな~……」

 

飛行魔法を制限されているとはいえ、他の攻撃魔法などがレース中に応戦される毎年の光景を知ってるものは、ほぼほぼ安心が出来ない。寧ろ今の今までの要望の中で飛行魔法だけが禁止されただけ奇跡と言える。ホント何で今年からに限って飛行禁止にしやがった……!!

 

「シ、シエルから暗いオーラが……」

 

「ルールなんだから仕方ないでしょ?」

 

未だに膝を抱えて蹲ったままのシエルから、黒と紫を混ぜ込んだ闇の雰囲気と言えるオーラが幻視させられて、ちょっと怖く感じたウェンディが一歩後ろに引く。一方のシャルルはしたり顔のままシエルの耳に聞こえるように残酷な現実を口にした。

 

《例によって、最下位になった者には……世にも恐ろしい罰ゲームが、待っとるぞぉ~!!》

 

だが笑ってばかりもいられない。最後の最後にニンマリとした笑顔を浮かべたマカロフから告げられた内容に一同が戦慄する。去年の悪戯妖精(パック)が協賛した罰ゲームを思い出しているのだろう。見るものでさえこれだら実際に受けた者はご愁傷様だ。

 

「結局のとこ、マスターが罰ゲームを楽しみにしてるだけだよな……」

 

「だろうなぁ……」

 

「去年はホント、最悪だったよ……」

 

去年まで……と言うよりつい先日までギルドを開けていたギルダーツも、過去にあった罰ゲームの事を思い出しているのだろう。そして妙にそれに対して楽しそうなマカロフの様子を、懐かしいとさえ感じている。

 

「つっても、食らうのは一人なんだろ?要は最下位にさえならなきゃいいんだよ」

 

「確かに。無理に優勝を狙う必要もなかろう」

 

「随分と合理的な考え方だが、しかし後ろ向きすぎる」

 

「何だと!」

 

少なくとも罰ゲームを受けるのは最下位だけ。逆に言えば最下位のみを回避することが出来れば罰ゲームも来ない。それならば無理に優勝を狙わずとも最下位以外で完走を目指せばいいと結論付けたガジルとリリー。しかしそんな彼らの考えを合理的と前置きしながらも、エルザが真っ向から叩き切った。「やるからには優勝あるのみ」と続け、エルザの身体が換装によって光に包まれる。

 

光が解けた時にエルザが身に纏っていたのは、普段の固そうな鎧姿ではなかった。上は朱色のタンクトップ、下は黄色のショートパンツ、極めつけにはランニング用の帽子とサングラスと言う、陸上アスリートのような服装に変わっていた。

 

「筋肉疲労を軽減させ、長時間の疾走を可能にした特注品だ」

 

「そこまでして臨むことなのか……?」

 

「本気で優勝狙ってやがるな……」

 

雰囲気に合わせているのか、それとも本当に言葉通りの効果があの服にあるのか、取り敢えず見た目だけを見ればこの中で一番やる気に満ち溢れているのはエルザであることが一目で分かる。本気度合いはガジルたちにも伝わったようで、軽く戦慄させていた。

 

「ハッピー、今日ばかりはライバルだ。手加減しねーからな?」

 

一方で秘密兵器があると自信に満ち溢れているナツが、相棒であるハッピーに挑発するように言ってくる。一瞬呆気にとられるハッピーだったが、それもすぐに気を引き締めて答えた。

 

「分かってるよ!でも……

 

 

 

 

 

 

新しいルールなんか嫌いだ……」

 

「同感だよ、ふざけたルール作りやがって……」

 

「うわっ……暗い……てか、やさぐれてる……!?」

 

やっぱりまだ飛行禁止のルールに納得がいっていない様子のハッピーとシエルの年少男子(?)コンビ。シエルに至ってはわざわざ離れたところにいたハッピーのセリフに同意を示すようにほぼ瞬間移動してきていた。二人揃って普段とは違った低い声で不貞腐れた様子は、まるでグレてしまった中学生である。ルーシィは二人の将来が不安になった。

 

《それでは!いよいよスタートだっ!全員、スタートラインに着いてくれぇいっ!!》

 

スタート前からなんやかんやと起きていたが、ついにその瞬間が迫って来た。談笑にかまけていた魔導士たちも含めて全員が一斉に気を引き締め、スタートラインに立った状態ですぐさま駆け出せるように構える。

 

「レビィ!スタート見てろよ?」

 

「見てる余裕ないよ?」

 

最前列に立った一人であるジェットから、レビィに向けて要望が出てくるが、当の本人はそんな余裕はないと返す。彼女の隣に立って構えていたルーシィがカッコいいところを見せたいから言っているのだと揶揄い気味に伝えるも、レビィが言っている余裕がないと言うのは、そもそもスタートを見ること自体が出来ない事らしい。ルーシィは首を傾げているが、去年以前にも参加している面々の中には、その事を察している者も大勢いた。

 

《よーい……ドン!!》

 

思ったよりも軽い調子な掛け声と小さめな魔力の花火を上げたマカロフの合図によって、とうとうスタートの火花が散らされた。そして同時に、スタートラインから巨大な砂煙が発生、発生源の近くにいた魔導士数名が後方へと吹き飛ばされた。

 

「いっくぜぇーー!!神速(ハイスピード)ォーー!!」

 

《スタートと同時にぶっちぎったのは今年もジェーットッ!!!》

 

その砂煙を発生させた原因はジェット。彼の扱う魔法神速(ハイスピード)による爆発的な加速によって起きたものであった。先頭は彼の独走状態であり、一気にマグノリアの街を駆け抜け、気付けばもう見えないとこまで走り去っていった。

 

「ね?見られなかったでしょ?」

「納得……」

「毎年こーなんだよね、あいつ……」

 

一方スタートラインでは、多くの魔導士たちが砂煙の前に怯み、ほとんど倒れこんでいる状態。事前に察知して回避できていたのはすれ違いざまに言葉を零して先に走って行ったシエルを含めて数人ぐらいだ。

 

「しょーがない、優勝は出来なくても、何とか罰ゲームは回避していかないと……!」

 

秘策がルールによって使用禁止にされてしまった為、優勝は最早絶望的。ならばシエルがすることは、出来る限りのベストを尽くして罰ゲームを回避することだけだ。そう考えて駆け出して行った少年の横を、後続から凄い勢いで一人の青年が追い抜いた。

 

「えっ!?」

 

「うおおおおおっ!!」

 

突如追い抜かれたことに驚愕の声をあげるシエル。だがその青年は雄たけびを上げながら、後ろに向けた両手に纏った炎を噴射して、それによる加速のままに駆け抜けていく。そう、ナツだ。火竜の鉄拳の炎を利用して、ロケット噴射のように前へ前へと進んで行っている。

 

「見たかオレの秘密兵器!“火竜の鉄拳ブースター”だ!!」

 

ナツがやけに自信を持っていた秘密兵器のお披露目。実際に目にすると確かに速い。思ったよりもしっかりとした手法でのスタートダッシュで置いて行かれた魔導士たちも次々と駆け出していく。「ジェット!ナツ!そんなのアリかよ!!」と言う声が聴こえてくるが、飛行魔法以外の魔法は使用無制限なので、主催側に立つ者たちの反則コールが上がることがない。

 

ちなみにスタートラインでは少々遅れてウェンディとシャルルもスタートし、未だに座り込んでいるルーシィとレビィも追い抜いて駆け出して行った。取り残されたのは二人のみ。その事実に気付いた少女たちは慌てながらも走り始めた。

 

「さーて!誰が罰ゲームかな?たーのしーみじゃー!!」

 

最終的にスタートしたルーシィとレビィを見送った後、マカロフが愉快そうなニヤニヤ顔を浮かべながら期待に胸を膨らませる。やっぱこのじいさん、罰ゲームをメインとして考えてやがるな。

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

ダントツで先頭を走るジェットと、ブースターによっていつも以上にスピードを出しているナツを筆頭に、一足先にスタートを決めたシエルが喰らいついている状態。そのすぐ後ろからはエルザやグレイを始めとした集団が迫ってきている、と言う現状だ。まだレースが始まったばかりの為、この後どうなるかはまだまだ分からない。

 

「ジェットに気を取られていたが、今年はナツも速いな」

 

「考えたよねナツも。よーし、私だって!!」

 

後続の集団の中で前方を見据えるペルセウスが、ジェットとナツの速さに目を見張っている様子。それを耳にして同様の感想を抱いていたリサーナだ。だが一つやる気を見せるように笑みを浮かべると、アースランドに戻ってきてからブランクを克服するために重ねてきた練習の成果を見せてきた。

 

接収(テイクオーバー)!『動物の魂(アニマルソウル)』!!」

 

そう口にすると同時にリサーナの身体に魔法陣が現れて彼女の身体が光る。その後、弾ける様に光が消えると、彼女の身体に変化が起きていた。頭部には白銀の猫耳、腰からは尻尾、手足もネコの四肢の形となり、服装は大胆にもビキニ仕様。頬にはネコヒゲと、全体的に白地と黒の虎模様を持ったネコを模した姿となっていた。

 

「キャット!!」

 

「ネコだと!?」

「久々だな、リサーナの魔法!」

「リサーナも本気か……!?」

 

何故か真っ先にガジルが驚愕の反応を示し、帰ってきて以来初めて見た彼女の魔法に意識を向けるものもいる。そしてその姿を見たエルフマンは、彼女もまたレースに全力を出したことを察知した。

 

リサーナの魔法は、姉のミラジェーンや兄のエルフマンと同系列である接収(テイクオーバー)。その中でも動物を接収することにより身体能力を動物準拠のものへと変えることが出来ると言う『動物の魂(アニマルソウル)』の使い手だ。今変身した姿はワーキャット。ネコの俊敏性、機動力と言った特徴を発揮することが出来る。つまり……。

 

「行っくよー!!ニャーーー!!」

 

手を後ろに引いた状態で風の抵抗を最小限にしながら足を素早く動かし、一気に後続集団から抜き出て、再び驚愕に目を見開くシエルをあっさり抜きながら、二位へと位置づいているナツへと迫っていく。

 

「んなっ!?リサーナ!!?」

 

「ナツ!悪いけど抜かせてもらうよ!!」

 

「何の!負けてたまるかぁーー!!」

 

短時間でナツとほぼ並走する位置へと辿り着いたリサーナに触発され、ナツも鉄拳の威力をアップさせて速度を上昇させる。それに追いつこうとリサーナも追随。思ったよりもデッドヒートを繰り広げる。

 

「ナツもリサーナも速っ……!!俺だって飛行魔法が禁止されてなきゃ……!!」

 

「お前、乗雲(クラウィド)の他に、あの雷で移動するやつあっただろ。あれ使わねーの?」

 

雷光(ライトニング)の事?あれも空中移動できるから結局禁止なんだよ……」

 

「ああ、成程……」

 

前方で更に距離を広げていく二人の姿を見ながら、悔しそうにシエルが零す。そんな彼の様子を見て近くまで来ていたグレイが雷光(ライトニング)を使わないのかと尋ねると、それも飛行魔法だったが故に使えないとぼやきの返事を返す。本当シエルに厳しすぎる新ルールだ。

 

 

 

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時間が過ぎていくと共に、最初の頃は集中していた魔導士たちの集団もばらけ始めてきた。何とか前線に縋り付く者もいれば、随分と遅れてきてしまっている者も存在する。だが勝負の行方はまだ分からない。その理由は、魔法の使用が飛行系以外無制限であることが理由だ。

 

絵画魔法(ピクトマジック)を使用するリーダスは、自らの肥大化させた腹に落とし穴を描き、前を走る者たちの前方に仕掛けて次々と足止めしていく。だが、その調子でどんどん作っていたのだが、後ろから迫ってきていたガジルに逆に自分が作った穴へ落とされてしまう。

 

さらに前方ではグレイがアイスメイク“(フロア)”を発動。自分より前を走っていた魔導士たちのバランスを崩して次々と転倒させていく。そして自分は慣れた氷の足場をスケートのように滑りながら進んで行き、山のように積み重なっている転倒した者たちをごぼう抜きしていく。

 

「悪く思うなー!」

 

「この野郎、グレイ!!」

 

転倒させられた一人であるナブが文句を言うようにヤジを飛ばすが、グレイはどこ吹く風で進んで行く。したり顔で後ろに振り向きながら悠々と告げていたのだが、よそ見をしていたのが仇となった。

 

「ビーストアーム!“鉄牛”!!」

 

「ぐっはぁ!!?」

 

右腕を黒鉄のものへと変化させたエルフマンがその腕を凍った地面に固定し、迫ってきていたグレイ目掛けて左腕でラリアット。前方を見ていなかったグレイはがら空きの身体にもろに受けてしまい、頭を地に付けた逆立ち状態で逆に後ろへと押し込まれるように滑っていく。転倒させられた魔導士集団が滑りながら戻っていくグレイを見て「あ」と一様に反応を示した。これぞ策士策に溺れる、である。

 

「うおっと、危な!?」

 

「グレイ様!?」

 

ジュビアと並走する形になっていたシエルの元にそんなグレイが横断し、彼とクラッシュする寸前に何とか回避に成功。一方ジュビアは殴り飛ばされて後方へと行ってしまったグレイの姿を見て、思わず滑っていた足を止めた。

 

「よし、今の内に……!」

 

転倒している魔導士の集団、後ろに滑って行ったグレイ、そんなグレイを見て思わず足を止めたジュビア。そんな彼らの様子を横目にシエルは再び前方へと進みだす。だがそこには、鉄の腕を食いこませているエルフマンが待ち構えている。

 

「ここから先は、漢として誰一人通さん!かかって来いやぁ!!」

 

ある程度氷が溶けるまで後続の者たちを足止めしようとする狙いなのだろう。動かせる左腕を振りながらシエルに対して闘争心を滾らせるエルフマン。そんな彼に少年は近づいていき……。

 

 

 

 

 

日射光(サンシャイン)

 

「漢ぉおおおっ!!?」

 

腕を振りかぶったところで彼目掛けて小さな太陽の光を浴びせ、目を封じた。溜まらず腕を戻して氷の床の上で目を抑えながら転がるエルフマンを尻目に、悠々としながら先を進んで行った。飛行魔法無くてもやっぱこいつ普通に脅威だわ……。

 

 

 

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さらに前線。比較的先頭に近い者たちの方はと言うと、コース上に設置された文字の壁……術式の中に3人の魔導士が閉じ込められていた。雷神衆の紅一点エバーグリーン、アルザックとコンビで活動することの多いスナイパーコンビの女性ビスカ、砂の魔導士マックスの三人だ。先んじて走っていたエバーグリーンが、同じ雷神衆のメンバーであるフリードが作った術式の起動トラップを発動してしまい、三人纏めて閉じ込められたのだ。

 

ずっと閉じ込めていてはレースにならない。それについてはフリードも当然理解している。術式は特定の条件を付ければ解除することも可能となっていて、その条件も彼は設定していた。

 

『特定の試験問題集を全て解き、なおかつ全問正解すること』である。

 

「このレース、知力、体力ともに試されるものならば……こんなゲームが余興にあっても、おかしくはあるまい。恨むなら、嵌まり込んだ我が身を恨め」

 

「待ちなさいフリード!!」

 

術式の解き方のみを伝えたフリードは、同様に術式で出来た幻影だったらしく、その身体を文字へと変えて姿を消す。共に術式内に入れられた二人に白い目を向けられながらも、エバーグリーンは半ば自棄で問題集の問題にとりかかった。

 

と、ここまではフリードの狙い通りだったのだが、ここから連続して彼の不運が続いた。

 

エバーグリーンたちを一時的に術式に閉じ込めたをの確認した直後、フリードは安定したペースで走り続けるエルザを発見。設置していた術式に嵌りかけた彼女だが、気配を察知して後ずさり術式から無事逃れた。

 

妖精女王(ティターニア)!勘の良さはさすがだな。術式のトラップに気付くとは……だが……っ!?」

 

彼女の勘の良さを素直に称賛しながらも、この後に続く術式たちの事を律義に説明しようとしたフリード。だが、その間もなく彼の周囲に20を超える数の直剣が囲むように張り巡らされた。思わず呆けた声を発してしまう。

 

「走りのリズムを崩した罪は重いぞ。またリズムの取り直しだ」

 

術式にかかりそうになった事より走りのリズムを乱されたことの方にどうやら機嫌を悪くしたらしい。フリードを一時的に拘束した直後、彼女はそのまま先を進んで行った。

 

次に彼の近くに来たのは思ったより進んでいたらしいペルセウスだ。その気になればジェット程とは言わずとも速く移動は出来るのだが前半で飛ばし過ぎて後半で消耗することを避けている様子。

 

だがそんな彼はエルザのようにはいかず、術式のトラップにかかってしまった。文字で出来た壁に囲まれたことを視認し、彼は足を止めざるを得なくなった。

 

「術式!?フリードか!!」

 

「その通りだ。よもやお前がかかるとは……エルザは勘の鋭さで事前に避けはしたが、お前はそうはいかなかったようだな。さて、この術式から出たいのならば……」

 

術式の中に閉じ込められて身動きが取れないであろうペルセウスに、エバーグリーンたちの時同様問題集を出現させようとしたフリード。しかし、ペルセウスはと言うと……。

 

「ダーインスレイヴ。……そいっ」

 

「え……ええーっ!?」

 

対魔の剣を換装で呼び出して術式の壁を一刀両断。魔力で作られたその壁をあっさりと切り裂いて術式の外へとペルセウスは出てしまった。さしものフリードもこの対応と光景に目をひん剥いて驚いている様子。

 

「おい待て!!その剣は滅多に呼び出さない代物のはずだろ!?術式を斬る為だけに簡単に出すやつがあるか!!」

 

「だっていちいち、術式を正攻法で解くのメンドクセーし。けど確かにこのまま出しっぱなしにするのも厄介だな……そうだ!」

 

余程のことが起きない限りは換装で呼び出したりしない危険な神器を、術式を解くのがめんどくさいからという理由で簡単に呼び出してしまったペルセウス。しかし術式一つを斬っただけで黒剣が満足するわけもなく未だに残り続けている。どうにかできないかと考えた末に辿り着いた答えが……。

 

「トラップトラップ……お、これか。んでもって斬っと。起動、斬。起動、斬」

 

「ダーインスレイヴ収める為だけに術式を斬りまくるのを止めろぉおっ!!」

 

敢えてフリードが仕掛けたトラップを次々と起動して、剣が満足するまで術式を斬り裂くと言う、常人には発想することも実行することも不可能な方法で解決してしまった。術式一つを書くのにも時間がかかると言うのに、それを次々と壊されて若干フリードの目に涙が浮かんでいた。

 

 

だが、最後の最後に不運は襲い掛かって来た。

 

 

 

 

 

その元凶はギルダーツだ。年齢の事も相まって比較的ゆっくり目に走っていた彼であったが、もう大体の方々は察しているだろう。

 

 

ギルダーツはあろう事か術式のトラップを起動した上で、それに気付くことなく壁をぶっ壊してそのまま走り続けていた。

 

「ちょっと待てぇっ!ギルダーツ!!」

 

「ん?あり、フリード?お前こんなとこで何してんの?」

 

「何してるはこっちのセリフだ!!術式がかかっていたと言うのに粉砕(クラッシュ)で突き破る事があるかぁ!!」

 

「術式……?ああ、何か妙な感覚したと思ったらそれかぁ!」

 

どうやら本気で気付いていなかったらしい。後続の者たちへ仕掛ける予定だったトラップまで次々と自慢の粉砕魔法で破壊していたようだ。走ってる間ボーっとしてたのかもしれない。

 

「まあでもあれだ。オレも罰ゲーム受けるのは勘弁してーから、悪いけどこのまま行かせてもらうわ」

 

「ま、待て!せめて術式を壊さずに……!!」

 

若干申し訳なさそうな表情と共に軽く謝りながらギルダーツは再び走り始めた。フリードが呼び止めて頼み込むも彼は止まる事はなく……

 

 

 

 

 

先に存在する術式のトラップを何故かほぼ全部発動(アクティベート)粉砕(クラッシュ)しながらその場を後にしていった。もうヤダこのS級魔導士(バケモノ)共……。普段のキャラを消失するほどの衝撃と悲しみを受けながら、フリードはしばらくその場で落ち込んでいた。哀れなり……。

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

スタートから数時間。既に時刻は夕方を過ぎ、夜更けとなっている。イボール山へと差し掛かろうとしている森の出口付近で、数時間に渡ってほぼノンストップで駆けあがろうとしている魔導士が二人。一人は両手から炎を噴射し続けている男。一人はネコの姿をした女だ。

 

ナツとリサーナ。幼馴染に近い、二年前までよく行動を共にしていた二人が、張り合うような形でデットヒートを常に続けていた。共に抜きつ抜かれつと互いに一歩も譲らない状況が続いていたが、ここに来て、とうとうその均衡が傾く時が訪れた。

 

ナツが噴射する火竜の鉄拳が、徐々に勢いを弱め始めてきた。無論ナツが鉄拳を弱めたつもりはない。

 

「え!?おいおい、止まんな!!」

 

「チャンス!ナツ、おっさき~!!」

 

「あ、コラ待てリサーナー!!」

 

どうやらナツの方だけ魔力が切れてしまったらしく、大幅にスピードダウン。その隙を突いてリサーナがさらに足を速めてナツを完全に置いて行ってしまった。当のナツは妙に力が入らなくなって、足を止めてしまう。燃料切れのようだ。どれだけ力を入れても煙しか出てこない。

 

「っ……!ここまで全力だったからなぁ……。クッソー……リサーナに随分先を行かれちまう……」

 

どうしたものかと足踏みをしていると、後方から凄い勢いで追い上げてきている存在が一人。いつの間にかその男……ガジルは後ろの方から迫ってきていたらしい。前方に見えたナツを邪魔だと一蹴するように殴り飛ばし、炎を出す間もないままナツはコース外へと飛ばされていく。

 

だが、その飛ばされた先でナツは、運よくキャンプをしている最中の一団と出くわし、囲んでいる焚火の火を貰う事になる。

 

その頃のリサーナはと言うと、長い道のりとなるイボール山の山頂へと、ワーキャットの機動力を持って登り切り、無事にワイバーンの鱗をゲットしていた。

 

「よし、ゲット!ナツは……登ってこないなぁ。やっぱ燃料が切れちゃったのかも」

 

一向に追いついてこないナツを気にかけて、下の方へと目を向けるリサーナ。火竜の鉄拳を常にフルパワーで打ち続けていたナツは回復にしばらく時間がかかる。火を食べてすぐさま回復すれば話は別だが、今すぐこちらに追いつくと言うのはなさそうだ。

 

「でもきっとナツなら絶対来るだろうし……よし、先を急ごう!」

 

鱗をしまって復路を走り始める。ジェットに続く二番手としてスタート地点である南口公園へとまた駆け出し始めていった。

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

そこから更に時間が経ち、スタートからちょうど12時間が経った頃。ギルド妖精の尻尾(フェアリーテイル)では魔水晶(ラクリマ)ビジョンで各場所の中継を目にしながらジェイソンが実況、ミラジェーンとマカロフが逐次解説を行い国中にその様子を流していた。

 

《24時間耐久ロードレース!後半戦、突入!!COOL(クール)!!》

 

折り返し地点となったイボール山山頂では、ワイバーンの鱗を持った全ての魔導士たちが既に折り返して帰りのコースを走り始めている。山頂に鱗は残っていない。全魔導士たちが辿り着き、折り返しを始めたことを意味している。

 

《トップは、依然ジェット!これを追いかけているのはワーキャットで素早くなったリサーナ!その後ろに続くのは全く呼吸を乱さないエルザ!この三名が現在トップ3です!!》

 

あまりの速さでビジョンに一切その姿を映すことすらしない断トツのジェットと、ジェット程のスピードまではいかずとも、時々コース上の木々を伝って速度と距離を更に稼ぐリサーナ。そしてリズムを崩すことなく着々と同じペースで後方を突き放していくエルザ。観戦側から見れば、この3人が上位3名になると確信さえ覚えている事だろう。

 

《上位グループにはシエル、グレイ、ペルセウス、ガジル!ちょっと遅れてルーシィも、パワフルな走りで続くゥ!COOL(クール)!!》

 

エルザの姿が見えている後方では、思った以上に追走が出来ているらしい5人の魔導士の姿が。ルーシィが若干きつそうな表情を浮かべているものの、何とかスピードは保っているようだ。

 

《その後ろは、追いつ追われつ一瞬も気の抜けない混戦状態だ!最下位争いがどうなるのか!?今年の罰ゲームは、一体誰なのか!?目が、離せなぁい!!》

 

去年と比べて大幅に魔導士の数が上がった故か、より先の見えない展開が続いている。ジェイソンの興奮度合いも相当上がっているようだ。トップは決まったようなものだろうが、最下位……罰ゲームを受けるメンバーが誰になるのかは、まだ分からない。

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

更に時間は経過して、朝日もすっかり昇り切って空は白んでいる。24時間という途方もない時間で行われたロードレースも残り数時間と言ったところ。ダントツで走っているであろうジェットに続く、リサーナ、エルザに続く後続へと注目を向ける実況席。

 

しかしそんな時、エルザの後方を追随するシエルたちを追い越してエルザへと迫って来る存在が確認された。雄叫びを上げながら火竜の鉄拳によるブースターで驚異の追い上げをしてきたナツだ。前半地点で火を食べたことで回復し、そのまままたもノンストップで次々とごぼう抜きしたらしい。

 

まだまだ負けられないと追い上げを続けていき、とうとうナツも含めてほとんどのメンバーがこれまで二位を保っていたリサーナのすぐ後ろへと迫ってきていた。彼女の後ろに着いているのはナツ、エルザ、グレイ、ガジル。その少し後ろで、少々ペースが落ちてきたらしいシエルが続き、その傍でペルセウスが並走している。ちなみにルーシィはもう大分遅れてしまったようだ。

 

「マグノリアまであと少し!もうジェットはゴールしたかな?」

 

「多分な。取り敢えず、罰ゲームだけは避けられそうだ」

 

遥か先へと行ってしまったであろうジェットは恐らく既にレースを終えているはず。その事について話しながら、後続から大分離れたこともあって無理に先頭に出ようとせずに着実にマグノリアへと向かって行く。

 

しかしマグノリアが見えてきたところで、突如後方から凄い音を立てながら何かが近づいてきているのに気づいた。物凄いスピードで、どんどん距離を詰めていく。何が来ているのか、気になって一同が後ろを振り向くと、その正体を目に写してその顔を驚愕に染めた。

 

「あれって……ジェット!!?」

 

『何!!?』

 

「うおおおおおっ!!」

 

何と、ダントツで自分たちの遥か先を行っていたはずのジェットが、先頭集団の遥か後方から猛スピードで迫ってきていた。序盤の時よりも更にギアを上げたとてつもない速度と気迫で、次々と他の魔導士を抜き去っていく。

 

「ゲエッ!?何でジェットが後ろにいるんだよ!?」

「って事は私たち、今……!!」

「優勝争いしてたってことか!?」

 

その速度はまさに神風。ジェットが走り抜けるだけで突風が巻き起こり、彼が抜いた魔導士たちを続々と上空へと投げ出していく。さらに先頭との距離を縮め、とうとうシエルとペルセウスの方に近づいて来た。

 

「うわっ!ちょっ!?」

 

「シエル!?」

 

そしてすぐさま通過。巻き起こった風によってシエルの身体が浮かび上がるも、耐えきったペルセウスがすぐさま腕を伸ばしてシエルの手を掴む。だが、思った以上の勢いで、兄弟二人とも横側の岩壁へと飛ばされてぶつかってしまう。

 

「いったたた……!」

 

「ジェット、あんにゃろう……!!」

 

これによって二人は更に先頭から突き放される羽目に。思った以上にぶつかった衝撃が大きかったらしく、痛みをこらえながらシエルは立ち上がる。それを見たペルセウスが憎らしげな表情で先を進んで行ったジェットを睨みつけているが、優勝を狙う為に必死になっているジェットはそれに気付かない。

 

「あれ?シエルにペルさん!」

 

「ん?ウェンディ!シャルルも!」

 

するとそんな彼らにずっと後ろで走っていたはずのウェンディが追い付いて来たらしく、兄弟の元に駆け寄ってくる。彼女たちはジェットの猛スピードに巻き込まれずに済んだのだろうか?

 

「ひょっとしてシエル、ケガしてるの?」

 

「ジェットに吹き飛ばされて、壁にぶつかっちまったんだ」

 

痛みで少しばかり表情を歪めているシエルの様子を見て、気が付いたウェンディが更に彼の方に近づいてくる。その表情には微かな焦りと心配の色が見える。それを察してシエルは何とか気丈に振舞おうと決め……。

 

「でも、これぐらいなら平気……」

「そういう時に限って平気じゃないでしょ!治すから見せて!!」

「あっはい」

 

失敗した。あっさりシエルのやせ我慢がバレてしまい、言われるがままにぶつけた場所を見せてウェンディの治癒魔法にあやかる事になった。シャルルが二人に向けて溜息を吐きながら呆れていたのだが、ウェンディだけはそれに気付くことすらなかった

 

シエルがウェンディからの治癒を受けている間にも、レースは佳境に入っていた。ゴールまでは目と鼻の先と言っていい距離まで達している集団。追いついたジェットを始めとする先頭集団の最後のデットヒートだった。

 

最初に動きを見せたのはエルザ。ジェットの脅威的な追い上げを見て、ここで今まで着ていた服装を換装。今までアスリートスタイルだった服装から、単純に白いウサギの着ぐるみへと変化していた。

 

「ウサギー!?」

「まさかエルザも、私と同じように!?」

「こりゃラストスパートかける気だ!!」

「ぬおおおっ!!」

 

もしやリサーナ同様、着ぐるみを着る事で身体能力を速く動けるようにできるのか!?それを察した他の四人も抜かれないようにと更にスピードを上げて振り切ろうと駆け出していく。

 

が、予想していたよりもあまりスピードが上がっていない……どころかむしろ遅くなっているようにも見えるエルザの様子に、後ろを確認しながら一同は首を傾げた。

 

「ウサギの割に遅すぎ……!」

「ひょっとして、見た目だけで買ったのかな……」

「確かに普通、着ぐるみだと逆に動きづれぇよな……」

「あいつ、割と形から入るタイプなんじゃねーの?」

 

どうやらあの着ぐるみには、身体能力を上げる効果がある訳ではなかったようだ。それに気付いているのかいないのか、表情は変えていないのにポテポテと言う擬音が付きそうな走りをエルザは続けている。

 

「待てーっ!お前らぁーーッ!!」

 

更にジェットが後ろから追いついてきており、危機感を抱いた残りの面々も最後の力を振り絞って速度を上げる。マグノリアに入った時には、六人全員が並走状態。優勝の手はこの六人に絞られたことになる。

 

ナツが鉄拳の出力を上げ、ジェットもさらに加速、リサーナは更に姿勢を低くして抵抗を抑え、ようやく着ぐるみでは効率が悪いと気づいたエルザが換装で元のアスリートスタイルに戻り、グレイとガジルも気合のみで素の状態で食らいつく。

 

と、ここでナツの鉄拳の出力がさらに落ち、燃料切れが発生。あわや優勝争いから脱落するかに見えたが……。

 

「これで終わって……たまるかぁーーー!!」

 

ある意味さすがはナツと言うべきか、鉄拳に頼らずとも気合で先頭に肉薄していく。実況のジェイソンのテンションが更に上がっているのが分かる。

 

最早ゴールは目前。誰が最初にテープを切るのか、南口公園で待ち構える観客たちの注目を浴びながら、優勝目指して6人は駆ける。

 

 

 

するとここで、一人に異変が起きた。一人の身体が突如一瞬光って、その姿を変化させた。

 

「え、ちょっ!?変身、解けちゃったぁ!?」

 

リサーナだ。接収(テイクオーバー)の効果がこのタイミングで解けてしまい、普通の人間の身体に戻ってしまう。その影響で、ワーキャットの時には出来ていた姿勢を保てなくなってしまい走りながらたたらを踏む。ここに来てついにリサーナも優勝争いから脱落か……と思ったその時だった。

 

 

「きゃあっ!?」

「ぐえっ!?」

「のごっ!?」

「ごはっ!!」

「でぇえ!!」

「うあっ!?」

 

バランスを崩したリサーナが咄嗟にナツのマフラーを掴んで引っ張ってしまい、首を絞められ引っ張られたナツがガジルの背中に頭突きをぶつけ、反応で突き出た左拳がグレイの右頬を殴りつけてしまい、勢いそのままジェットの身体をグレイが掴んで引きずりおろし、反射的に出てきたジェットの左手がエルザの膝を掴んだことで、6人纏めて直前大クラッシュ。ゴールテープを切る前にその場で石畳の上をスライドして止まってしまった。

 

《ああ~~!まさかの大クラッシュー!!……ああっと!ここでCOOL(クール)にやってきたのは~!?》

 

勢いよくクラッシュしてしまったことで、六人ともすぐさま立ち上がることが出来ない状態に。その合間に、勢いはなくとも必死にこちらへと健気に走ってきている小さな影を、ジェイソンが見つけそちらに注目した。

 

《ハッピーです!ハッピーが来たぁ!!》

 

「……ハッピー?」

 

唯一覚えている魔法(エーラ)を使う事もなく、地道に短い脚で走ってきたハッピー。クラッシュしてその場に座り込んでいたナツは、そんな相棒がパタパタと走ってきたのを見て彼の名を呟く。そしてハッピーはそれにも応えず、倒れこんでいる前線組を追い抜いていき、そして……!

 

「えい!!」

 

ミラジェーンとマカロフが両端を持っていたゴールテープを、飛び跳ねて切った。一着。誰よりも早くこの南口公園のスタート地点に戻ってきたのは、小さい青ネコハッピーだ!

 

「やったぁ!優勝だよー!!」

 

「おめでとう、ハッピー!!」

「うむ!よく走った!!」

 

GOAL(ゴール)!!今年の24時間耐久ロードレースの優勝は、ハッピーだぁ!!今ここに、歴史は大きく塗り替えられたぁ~~!!!COOL(クール)!クゥール!!COOOOOOOOOOL!!!》

 

歓声に沸く南口公園。賛辞を贈るミラジェーンとマカロフ。どんでん返しにテンションが最高潮に達しているジェイソン。そして優勝したことによる大きな喜びを露わにしているハッピーに対して、もうすぐ優勝できるはずだった一団は、ただただ呆然となっていた。

 

「嘘だろ……!」

「やられたな……」

「青ネコだと……!?」

 

ずっと後ろの方をてくてくと言った様子で走り続けていたはずのハッピー。どこで何が起こったのか、分からないまま優勝をかっさらって行った彼の姿に、ナツ、グレイ、ガジルはショックを隠しきれていない。

 

「ふっ……こんな幕切れも悪くない」

 

「このオレ様を起こしてくれたんだ。仕方ねえ……今回は勝ちを譲るぜ」

 

「ハッピー!おめでとー!!」

 

最初こそまさかの優勝者に衝撃を受けていたものの、素直に結果を受け止めたのはエルザとジェット。特にジェットは、ウサギとカメのウサギよろしく、道中で寝過ごしていたのをハッピーに起こしてもらった借りもあった。悔しさはあれど、彼の健闘を称賛せざるを得なかった。そしてリサーナもまた、彼の優勝に素直に喜んで賛辞を贈る。

 

 

だが、彼らは気付いていなかった。まだ自分たちは、レースの真っ最中である事を。

 

「あ、優勝したのハッピーだったみたい!」

「ハッピー!?マジで!?」

「思ったより根性あるな、どう思うよシャルル?」

「……ノーコメント。それより私たちもさっさと行くわよ」

 

『!!?』

 

立ち止まっていた彼らを尻目に、次に南口公園に辿り着いた一団を見て、再び目を見開いた。いち早く耳に拾って優勝した者の名を伝えたウェンディに続き、相棒のシャルルと、合流していたファルシー兄弟が通過していく。

 

「二人とも、お先どうぞ」

 

「いいの?じゃあ……!」

 

シエルが怪我の治療のお礼とばかりにウェンディとシャルルの二人に先導を譲り、譲られた二人が再び構えられたゴールテープを切っていった。

 

《あーっと!!二着ウェンディ!三着はシャルル!後に続いて、シエル・ペルセウスの兄弟も四着五着でGOAL(ゴール)!!TOP3は、妖精の尻尾(フェアリーテイル)きってのプリティーな三人が、独占だぁーっ!!!》

 

まさかまさかのトップ3が、ギルド内でもマスコットに当たるエクシード二人と最年少の少女。更に四着まで見ればみんな未成年と言う若者世代の独占状態。ちゃっかりその中で保護者みたいな立ち位置でペルセウスが五位をかっさらっていったことに、再び立ち止まっている先頭だった六人は絶句してしまっている。

 

そしてこれだけには留まらず、後方からジェットに吹き飛ばされて後れを取っていたらしい残りの魔導士たちがほぼ全員塊みたいな状態となって迫ってきた。相当に鬼気迫る様相だ。だがそれも当然だろう。誰もがみんな……

 

 

罰ゲームだけは受けたくないのだから!!!

 

「「ギャーーッ!!?」」

「踏むんじゃねーっ!!」

「イデデデデデデデ!!?」

 

一気に押し寄せて来た魔導士軍団が、この機に乗じて一斉にゴール。その洗礼を受けてしまった先頭にいた魔導士たちは、余波で踏まれてしまったらしく()()全員がその場に突っ伏して倒れてしまっている。……え?二人足りないって?それは……

 

《ちゃっかりエルザとリサーナもGOAL(ゴール) IN(イン)だぜ!》

 

混乱に乗じてリサーナを横抱きにしていた普段の鎧姿に換装したエルザが、何食わぬ顔(若干崩れそうで紅潮しているが)今しがたゴールした魔導士軍団に紛れ込んでいた。ちなみにリサーナは何が起こったのか理解が追い付いていない。それはそれとして、お姫様抱っこを()()()がやけに似合うな、エルザ。

 

「グレイ様!お早く!!」

「ナツ~!!」

「寝ている場合ではないだろガジル!!」

「みんな早く!!」

 

「しまった!」

「ヤベェ!!」

「早くじゃねーだろお前ら!!」

 

既にゴールをしている面々が未だ倒れ伏している四人に呼びかける。本人たちから見れば踏んづけておいてどの口が言うのか、と言いたいところだが、一刻の猶予もないのも事実。

 

「冗談じゃねぇ!!神速(ハイスピード)……ぐはっ!!?」

 

すぐさまゴールしなくては、と急いで魔法を発動して駆け出すジェットだったが、再びゴール直前になってアクシデント。足元の地面が突如破裂しジェット含めて残った四人がゴールから離されてしまった。何が起こったのか理解が追い付かない面々だったが、その犯人と思しき人物が集団よりもさらに遅れて到着していた。

 

こげ茶色のオールバックの髪型をした、最強を冠する魔導士の男が。

 

「危ねぇ危ねぇ。もうみんなゴールしちまってたのか」

 

「ギルダーツ!?今頃来たのかよ!!」

 

随分とマイペースで走っていたらしく、制限時間ギリギリでの到着。しかもあと少しで自分以外の全員がゴールするところだったことも含めると、かなりギリギリだっただろう。それをまさか力づくで阻止してくるとはさすがに予想できまい。

 

「くっそ……ギルダーツめぇ……!負けられるかあ!!」

 

中々起き上がれずにいたジェットだったが、悠々と先にゴールしていくギルダーツを睨みながら気力を振り絞って立ち上がる。そして再び神速(ハイスピード)を使ってすぐさまゴールに辿り着こうとするも、便乗して彼の身体に残りの三人もしがみつき、同時にテープを切る事になった。

 

《GOALGOALGOALGOAL!!!四人同時のGOAL(ゴール) IN(イン)だ!!今年は大番狂わせ!!COOL(クール)な上に、クゥールな決着を迎えました!最下位はなんと!ナツ、ガジル、グレイ、ジェットの四人です!!罰ゲーム、決定!!!》

 

そしてここで決着。四人同時のゴールとして決められ、罰ゲームも四人全員が受けると言う羽目に。怪しく笑いながらマカロフが罰ゲームを受けることになった四人へと近づいて「覚悟はよいか?」と尋ねてくる。

 

「嘘だろ、じっちゃん!?」

「じーさん!せめて、敗者復活戦とかよぉ!!」

 

「いかーん!!無様な事を言うでない!魔導士たるもの、仕事のしくじりと同じ!!やり直しは効かんのだ!!」

 

一人だけが受けるならともかく、全員が同じ目に遭うと言う事で納得がいかない様子の四人の抗議も聞く耳持たず、とにかく罰ゲームを再開全員で受けることを命じる。仕事に関する話も出されてしまっては、如何に納得できずとも反論が出てこない。

 

「わぁーたよ!何でもやってやらぁ!言ってくれよ罰ゲーム!!」

 

「ほお!いい覚悟だ……では今年の罰ゲームを発表する!!」

 

周りの魔導士たちが固唾を飲んで見守る中、ナツは覚悟を決めたようで内容の発表を促した。その意気や良しと言った様子でマカロフがそれに応え始める。「ズバリこれじゃ!!」と言う言葉と同時に彼が取り出したのは、週刊ソーサラー。今週号の分で、カメラに向かって眩しい笑顔を浮かべるミラジェーンが表紙になっている。

 

だが、それがどんな罰ゲームを意味するのかと言うと……?

 

「お前たち四人は、再来週発行の週刊ソーサラーにて……超恥ずかしいグラビアを飾るのじゃ!!超豪華堂々20ページ!一週間密着取材付きじゃ!!」

 

『ナァ~~ッ!!?』

 

思った以上にとんでもないものが待ち構えていた。グレイに関してはまだ顔がイケメンの部類だからまだいいが……コワモテのガジルや美と程遠いジェットのグラビア、と言うのは……本人以外にとってもダメージがデカそうだ……。

 

「こ、これは……」

 

「罰ゲームにならずに済んでよかった、ホントに……」

 

自分で言うのもなんだが相当キツイ罰ゲームだと言う感想が浮かぶシエルに続き、回避できたことを心から安堵するペルセウス。最悪この二人が受けたとしても、一部から物凄い需要があっただろう。

 

「保存用も観賞用も買いますわ~グレイ様♡」

 

「ナツのグラビア……気になるかも!私も買っちゃおっかな~?」

 

「「買わんでいい!!」」

 

だが一部……グレイにこれでもかと惚れてるジュビアや、ナツがグラビアを飾ることに何故か興味を示すリサーナは購入を決定、または検討しているようだ。真っ先に本人たちからストップ要請が入ったが。

 

「と言う訳で皆さ~ん!!早速、衣装選びと参りましょう!!」

 

ジェイソンが興奮半ばに罰ゲーム組へと告げた言葉を聞いて、シエルは気付いた。わざわざジェイソンが実況の為に来ていた理由。この罰ゲームの内容をマカロフから事前に聞いていたからだろうと。そして一大イベントの実況を担当することに加えて、すぐさまグラビアの一週間密着取材に移るために。やけに高いテンションとキャラで気付きにくいが、抜け目のない男である。

 

だがしかし、それで素直に応じるような奴等でもなく、ジェイソンの言葉を聞いた瞬間、四人全員一斉に走り出し、再びレースのコースを使って逃走。辺りに土煙が舞うほどの勢いである。

 

「あ~~!お待ちを~~~!!」

 

『待つかーーーっ!!』

 

「お待ちをCOOOOOOOOOOL!!!」

 

そして街の外目掛けて逃げていく四人を、彼らに負けないスピードでジェイソンが追いかける。魔導士でもないのに何者だよあの人……。

 

「また走ってる……」

 

「体力が余っているのだな。さすがだ」

 

「罰ゲームがイヤすぎて火事場のバカ力が出てるからだと思うけど……」

 

こうして、全魔導士強制参加型、24時間耐久ロードレースは幕を閉じた。

 

ちなみに優勝したハッピーが、後程マスター・マカロフに優勝したら何かあるのか聞いたところ、「優勝した喜びとみんなの歓声と言うこの上ない名誉」()()しか残っていなかった。デメリットのデカさに全く見合わないメリットしかないこのイベント……何で毎年開催されるのか、謎だけが残るのだった……。




おまけ風次回予告

リサーナ「ねえねえ!ペル、ようやく謹慎解けたんでしょ?折角だから一緒に仕事に行かない?」

ペルセウス「そうだな、リサーナと向かうのは随分久々だし……ナツたちはどうする?」

リサーナ「誘おうとしたんだけど、ルーシィたちと別の仕事があるみたいで……。折角なら、シエルも一緒にどうかしら?」

ペルセウス「いいな!あいつ、お前と仕事に行くの、楽しみにしてたし」

次回『願わくば彼の者に希望を』

ペルセウス「じゃあ、三人以上で行ける仕事はっと……」

リサーナ「あ、そうだ!もう一人連れていきたい子がいるんだけど、いいかな?」

ペルセウス「ん?もう一人?誰かアテがあるのか?」
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