後日加筆修正して公開いたしますので、それまではこちらのものでご辛抱を…。申し訳ない…。
「だっはー!!最高だぜー!!」
「妖精の
「ガジルの奴、そのうえ3人もやったらしいぜ!」
「みじめな妖精どもに乾杯だ!」
ギルドの中では、
自分たちこそ強き者。弱く哀れな妖精よりも優れ、それらを蹂躙する権利がある。そう信じてやまず、誰も彼もが嘲笑いながら高まった気分に酔いしれていた。
「あ、いけね!こんな時間だ」
すると魔導士の一人が気分もそのままに立ち上がる。荷物入れを肩に担いでいるところを見ると、どこかに外出するつもりだと分かる。
「女かよ」
「まあまあいい女だ、依頼人だけどな。脅したら報酬2倍にしてくれてよォ」
どうやら仕事に向かうようだがその言動は最悪のものだ。魔導士としても、人間としても。本来は依頼主との信頼が重要となるギルドでの仕事において、脅迫等の行為によって自分の利益のみを集中させるのはあってはならないことだ。そして残念なことに、それを咎める者はこのギルドにはいない。寧ろ同類のみだ。中には「オレなら3倍まで行ける」などどほざく輩までいる始末だ。笑い、貶し合いながら、男は出入口へと向かう。
そしてその出入口から突如、爆発が発生した。
外に向かっていた魔導士の身体があえなく吹き飛び、その勢いで先にあったテーブルや食器類が破損し、とんでいく。更には数人の仲間たちをも巻き込んで、怪我人も現れだした。
何が起こった?
しかしそれは、爆発で起きた煙が張れると同時に発覚することになる。まず見えたのは一つの人影。右の拳を振りぬいた態勢をしており、それによって自然と見えるのは右肩に刻まれた赤色の妖精を象った紋章。そして桜色のツンツン頭に白い鱗柄のマフラーを身に着けた、ナツ・ドラグニルを筆頭に、
「
ファントムによってギルドを壊され、仲間を傷つけられたことによって、怒りの感情を燃やした妖精たちが乗り込んできたのだ。ナツに続くように現れたマカロフの檄に雄叫びで応えながら、表情に憤怒を現しながら妖精たちがそれに続く。弱者と思っていた
「誰でもいい!!!かかって来いやぁ!!!」
両手に纏った炎で近場にいたファントムの者たちを吹き飛ばすことで先制を取ったナツ。それを皮切りにようやく状況を理解できたファントムの魔導士たちも、迎え撃つべく、武器、魔法を構え始める。
妖精と幽鬼、長きにわたり因縁を抱えていた二つのギルドが、ついに正面から衝突した。
先頭を切って多数の相手を吹き飛ばして暴れるナツ。それを筆頭に近づく敵を全て凍らせていくグレイ、右腕を棘が多く生えた獣の腕へと変えて振り回すエルフマン。
「パープル・ネット!!」
「スモークラッシュ!!」
若い者たちが目立つ
「
右目が隠れるほど長い黒髪の青年で、西部大陸出身と言うアルザック。彼は片手銃を連射して雷の魔力を帯びた弾を外すことなく命中させ、相手の体の自由を奪う。だが、後方から彼目がけて攻撃を仕掛ける魔導士が来ることに遅れながら気づいた瞬間、別の方向から魔力の弾が命中し、アルザックの危機を防いだ。それが誰によるものなのか、彼はよく知っている。アルザックと同じく西部大陸の出身である黄緑色のロングヘアに赤い口紅が特徴の女性・ビスカである。同じ出身、そしてアルザックと同系統の銃器を換装する魔法『
「ナイスショット、ビスカ!!」
「詰めが甘いよ、アル」
そして彼女はすかさず手に持ったライフルで照準を合わせ始める。味方を除き、敵のみを魔法で標的に定めていき、魔力弾を放つ引き金を引く。
「ターゲット、ロックオン!ホーミングシュート!!」
一つの銃口から放たれた複数の魔力弾が意思を持ったように動き、照準を定めていた敵の身を見事に撃ち抜き吹き飛ばした。戦況は妖精側が有利。ファントムは確かに数は多いが、個々の力が上である妖精の魔導士に数の利を潰されていることが一番の要因だ。せめて一人でも倒せれば。そう思ったファントムの魔導士は、他と比べて背丈が低い存在を視認する。
「おい、あっちは
シエルに目を付けたファントムの魔導士たちが一斉に襲い掛かってくる。想像以上の力を持つ妖精たちの中でも、格下と思い込んで排除に乗り出した。
が、彼らは知らない。この乱戦状態において一番脅威となるのは、この最年少の妖精であることを…。
「
少年は己を取り囲んで守る様に、その竜巻を発生させる。彼に襲い掛かり近づいてきた魔導士はそれに巻き込まれ、身体を宙に浮かされる。
「急に竜巻があ!?」
「迂闊に近づくとやべぇぞ!!」
一気に多人数が竜巻に巻き込まれたことにより、後方にいて難を逃れた者たちがこれ以上近づくのは危険と判断し、二の足を踏めなくなっている。が、それを目にした少年はその者たちを逃がしはしない。前方目がけて手をかざすと、水色の魔法陣を展開し、魔力を集める。
「『
離れたところにいた魔導士は、シエルが発動した純白の雪が混じる強風・吹雪に巻き込まれ奥の壁へと叩きつけられる。更には運よく直撃を避けた魔導士たちさえも、急激に温度を下げられたことで身を縮こまらせてしまう。仲間の安否を確認することもできずに「さ、
そしてシエルの攻撃はこれだけにとどまらない。
「『
そして顕現されたのは砂塵が混じるもう一つの竜巻。本来砂漠地帯などで気流が発生しなければ起こりえない砂嵐を塗装された屋内で発動させたことにより、さらにファントム側に甚大な被害を生み出していく。
「ぎゃあああっ!!なんじゃこりゃあああ!?」
「竜巻に、吹雪に、さらには砂嵐!?」
「この
「つーか、これ…!!」
『ギルドがメチャクチャになるだろうがぁああっ!!!』
砂、雪、そして何も加わっていない純粋なもの、と言った3つの風が渦巻く魔法によって、
「先に俺たちの
3つの風が渦巻く混沌地帯から少し離れた位置にいた魔導士たちの後方、その机の上にいつの間にか立ち乗っていた状態で高低差が逆転したファントムたちを見下ろしながら、汚らわしいごみを見る様な目で睨みつける様子に、思わずファントム側も相手が小柄な体をした子供であることを忘れて戦慄している。
「やられたままで、怯えたままでいる妖精だと思ったら、大間違いだぞ、ファントムども…!」
悔しくないわけがない。本当は
破壊された
そして最後の仕上げと言わんばかりに、同じ手から雷の魔力が発射され、
「テメェら全員!」
挙げていた手を振り下ろした瞬間、少し前まで彼の近くにいた魔導士たちに落雷が降り注いだ。彼の怒りの鉄槌が如き黄色の閃光が、
「
予想を遥かに超える力を持った少年に、襲い掛かろうとする魔導士はもういなかった。更には…。
「かぁーーーーーっ!!!」
別の場所で、マスター・マカロフを狙い攻撃を仕掛けた魔導士たちが、
「貴様等はそのバケモノのガキに手ェ出したんだ!人間の法律で
「ひっひぎ…!!」
「つ…強ェ!!」
「兵隊どももハンパじゃねえ!!」
「こいつらメチャクチャだよ!!」
マカロフの言葉、そして妖精側の魔導士の力を前に戦々恐々とした様子のファントムたち。その間にも胴体のみが肥大化した、
「オイラだって魔導士だよ!」
小柄なネコだと思って狙いにきたファントムたちを、
「ジョゼーーー!!!出てこんかぁっ!!!」
「どこだ!!ガジルとエレメント
進撃を続けるマカロフ、換装を駆使して次々と敵を切り抜けるエルザが、
「ならまずは雑魚たちを叩きまくって、あぶり出す!!」
言うや否やシエルは早速行動に移る。屋根近くまで広がっている雲に追加の
「あのガキ舐めやがって!!」
「一斉攻撃だ!やれぇっ!!」
魔法陣から種類は違えど赤き炎がシエル目がけて発射された。しかし、その直線状に立ち塞がるように一つの影が遮ったと思いきや、炎の魔力は影に着弾。しかし、当たった炎は見る見るうちに影に収束していく。
「サンキュー、ナツ!」
「いいってことよ!喰ったら力が湧いてきた!!」
影の正体、ナツがすべての炎を喰らい、力へと変えていたのだ。そして彼はその力を一気に敵側に放出する。
「火竜の咆哮!!」
「アイスメイク、
「換装!黒羽の鎧!!」
「漢ぉぉおおっ!!」
ナツに続き、グレイ、エルザ、エルフマンも各方向の敵を薙ぎ払っていく。そしてその中心地にいる少年、シエルも左右それぞれの手に違う色の魔法陣をそれぞれ展開。上空に漂う雲に向かって二つの魔力が放たれる。
「大雨、及び強風注意報発令!現世に蔓延る幽鬼を、冥界へと吹き飛ばすことでしょう!『
雲と雨、竜巻の魔力が混じり合い、外の快晴とは正反対の豪雨と強風にさらされたファントムたちの身体は、次々と紙のように吹き飛ばされていく。味方側にも甚大な被害を及ぼしかねない強力な魔法だがそこはシエルも仲間たちも考えている。唯一風と雨が及んでいない中心に、背中合わせに妖精たちが合流しているため、味方の被害はゼロである。
「こ、こんなのが妖精の
自分たちと同じように妖精にも
「大分減ってきたんじゃねえか?」
「このまま押し切るぜ!」
妖精たちの士気はまだまだ上がる。このままの戦況が続けば、勝てると見込んだ味方たちが再び構える中、マスターであるマカロフが動き出した。
「エルザ!ここはお前たちに任せる!!ジョゼは恐らく最上階…ワシが息の根を止めてくる…!!」
立ちはだかる敵を一撃でいなしながら進むマカロフに、エルザは堂々と歩く背中を見ながら「お気をつけて…」と言葉をかけることしかできなかった。そして、マカロフ自身は最上階に繋がっていると思われるギルドの奥地の方へと歩いて行った。
「行くぞ!落雷警報!
マスター・マカロフが戦線から一時的にいなくなったとしても行動を止めるわけにはいかない。即座にシエルは黄色の魔法陣を黒雲に放ち、ファントムの魔導士たちに雷撃を喰らわせようとする。だが、その落雷は突如方向を変えて、屋根裏の一点に集まるように落ちていった。予期せぬ現象に思わずシエルは驚愕の声を漏らす。
「おーおー、危ねぇじゃねえか。こんな狭い建物の中でゴロゴロゴロゴロ雷落とすもんじゃねえよ」
その一点に一つの影が映るのが見えた。「ギヒッ」と独特な笑い声を一つ零したと思えば、屋根裏から飛び降りていき、右腕を後方に引いていく。そこでシエルは気づいた。右腕の先が鋼鉄の棍のような形になっていることに。
「はァーーー!!」
「くっ!!」
「ぐああああっ!!?」
狙いを定めて突き出されたその攻撃を瞬時に身を引いて躱したシエル。だがその躱した攻撃は他の魔導士…それも味方であるはずのファントムの者たちに襲い掛かった。
「何だ、あいつ…自分の仲間も躊躇なく…!?」
態勢を立て直しながら少年は呟くと同時にその姿を視認した。腰の近くまで伸びたハリネズミのようにとがった長い黒髪に、獰猛な肉食獣のような赤い瞳。何より特徴的なのは二の腕や眉、耳、鼻、顎など至る所にいくつもつけられた釘のようなピアス。
第一印象だけですぐに分かる。他の者と比べて一回りも二回りも我の強い人物であると。
「来いよ、クズども。鉄の
「上等だ…!」
この男こそ、
先程周辺にいる魔導士に向けて放った
「(
技の一つを実質的に封じられはしたが、それでも手がないわけではない。
「なら…
「うおっ!?」
今シエルが扱える技の中で一番威力を発揮するのは
「合わされ!
ガジルを飲み込んだ竜巻に、砂塵が混じる砂嵐が追加される。既に彼の姿は見えなくなり、二重螺旋の形で巡る二つの上昇気流がギルドの屋根にまで届いている。普通の人間ならば一溜りもないだろう。
――――
「こんなもんじゃオレは吹き飛ばせねえぞ?ギヒヒッ」
「っ!?」
悠々とした足取りで風の牢獄の中を進むガジルの姿が薄らと見えた。全身を鋼鉄化させて重量を大幅に上げたことで、上昇気流でも持ち上げられずに立っていられるようだ。
「くっ!
「甘ぇよ、『
吹雪を追加して彼の動きを少しでも封じようと試みるも、最初にシエルへと攻撃してきた鉄製の棍へと腕を変化。吹雪すらも突き破ってシエルの腹部へと命中し、小さな体は宙を飛ぶ。
「パープル・ネット!!」
壁の方へと激突しかけた時、その身体を紫の炎が掴み、衝突を避けた。マカオの魔法だ。「大丈夫か?」と問いかけるマカオに「平気…」と腹部の痛みに顔を歪めながらもシエルは態勢を立て直す。
「ほう?思ったよりはタフだな、あのガキ」
「漢はァーー!!」
少し感心したようにシエルを見ていたガジルに、腕を魔物のように変化させたエルフマンが飛び掛かる。ビーストアームのエルフマン。
「クズでもガキでも漢だぁ!!」
選手交代。今度はシエルとは真逆の大男。だがガジルはそれに怯みもせず、寧ろ獲物を見つけたかのように口元を吊り上げて、殴り掛かってきたエルフマンの拳を鉄棍の腕で受け止める。
そのまま逆の腕も鉄棍に変えてカウンターを仕掛けるが身を捩ってエルフマンは躱し、さらには足をも鉄棍に変えて蹴りの要領で突き出すも、エルフマンは右腕で受け止め、足の自由を奪う。
「ほう…なかなかやる」
「漢は強く生きるべし」
「じゃあこんなのはどうだ?」
対してガジルは足の先端からいくつもの細い鉄棍を繰り出して拡散。瞬時にエルフマンは右手をガジルの足から離して回避するが、彼の攻撃は周りにいるファントムの魔導士たちをも蹂躙していく。その様子にエルフマンは信じられない光景を目の当たりにしたかのように目を見開いた。
「貴様!自分の仲間を!!」
「何よそ見してやがる!」
その隙をついてガジルの左腕の鉄棍がエルフマンの顔面を殴りつける。後方へと身体を倒していくエルフマン。するとそこに…。
「ガジルーーッ!!!」
エルフマンの胸を足場にして跳躍し、炎の拳を纏いながらナツがガジルを殴り飛ばす。その勢いでガジルの身体は飛んでいき、壁に激突。周りのファントムの魔導士はその光景を信じられないという様子で見ていた。彼が吹っ飛ばされる所など、初めて見たからである。
「オレが
堂々と名乗り上げるナツに対し、起き上がったガジルは笑いを浮かべる。自分と同じ
「エルフマン!こいつよこせ!!」
「貴様!オレを踏み台にした上、漢と漢の決闘を邪魔するのか!!」
ナツとエルフマンがガジルと戦うのはどちらか言い合いを始める中、もうガジルにはナツの方しか目に入っていなかった。
「鉄竜棍!!」
ナツ目がけて手の棍に変化させた腕を突き出し、腹部に命中させるガジル。近くにいたエルフマンだけでなく、エルザやシエルもその様子に息を呑む。
「こいつが…ギルドやレビィたちを…!!」
だが、受け止めた本人は、身体から、そして棍を掴む手から怒りの炎を発し、熱気を放つ。その様子を見て目を見開いたガジルをそのまま掴み上げ…。
「くたばれぇっ!!」
屋根裏目がけて投げ飛ばす。ガジルは態勢を立て直して反撃を仕掛けようとするも、気づいた時にはナツは目前まで近づいてきており、再び鉄拳によって吹っ飛ばされた。その様子にシエルたち妖精側に安堵、もしくは喜色の表情が浮かぶ。唯一相手を取られたエルフマンは納得のいかない顔をしていたのだが。
「で?それが本気か?
「安心しろよ。ただの挨拶だ。竜のケンカの前のな」
しかしガジルの方もほとんど堪えた様子がない。火竜と鉄竜。二頭の
――――その戦いが起こる前に、幕が下ろされてしまう。
屋根裏の更に上、最上階と思われる空間から落ちてきたものによって―――。
「な、何だ…?」
「なんか落ちてきたぞ!」
「…え…?」
その落ちてきたものを視認したシエルは、己の目を疑った。何故ならそれは…
肌の血色が白を通り越して緑になるまで抜け落ち、一切の魔力を感じなくなった自分たちのマスター・マカロフだったのだから…。
おまけ風次回予告
シエル「あれ?そう言えばルーシィの姿が見えないね?」
ナツ「ああ、あいつ置いて来ちまったんだよ。今頃その事ですねてんだろうな~…」
シエル「まあレビィたちの看病の事もあるし、何かお土産でも持っていったらきっと許してくれるって」
ナツ「やっぱそうだよな。なんかうまい食いもんでも持ってってやるか!」
シエル「いや、食い物よりも本とかの方がいいんじゃないかな…?」
次回『ルーシィ・ハートフィリア』
ナツ「本つっても何の本をやればいいんだよ?」
シエル「そうだな~。世界の美味な炎辞典とかどう?」
ナツ「おお!なんか美味そうな本だな!それにしようぜ!!」
シエル「…いや、冗談に決まってんじゃん…」