FAIRY TAIL ~天に愛されし魔導士~   作:屋田光一

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ここ最近は短くても隔週投稿になってしまっています。上手く書けなくなってきてる…。原因はなんだろ…?

あと今回は、ちょっとバトル描写が上手いこと思いつかなくて、駆け足気味な上に投げやり気味になってしまってます…。申し訳ない…。

更にもう一つ報告が。来週はどうしても外せない用事がありますので、投稿目安日がまたその次の週になりそうです。


第120話 チーム再結成!

森の中を、その青年は真っ直ぐ走っていた。水色がかった長い髪を揺らし、手遅れにならないでくれと心中で懇願しながらただ必死に足を動かしている。

 

向かう方角にあるのは、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のベースキャンプ。その場所から突如起こった謎の爆発の正体を確かめる為、ペルセウスは表情に焦りを抱えながら一心不乱に駆けていく。

 

「(リサーナ……!!)」

 

真っ先に脳裏をよぎるのは、集合地であるキャンプにいるであろう想い人。他にもそこに集っているであろう仲間たちのことも気がかりではあるが、どうしても彼女の安否が真っ先に気になってしまうのも事実。

 

しかしその心情とは裏腹に、彼の根底には先程まで対話していたスプリガンとの、別れ際の言葉が妙に引っかかってしまっていた。

 

 

『今この島には、君たちとは違う者たちもいるんだね?』

 

『ああ……人の庭を勝手に踏み荒らす迷惑な集団だよ……』

 

ベースキャンプがある方角から起きた爆発の瞬間を目にし、険しい表情を浮かべているペルセウスはスプリガンからの質問……と言うより確認に近い問いに対し、顔を向けないまま答える。彼も気付いているのだろう。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の聖地であるこの島に今、悪魔の心臓(グリモアハート)と言う闇ギルドが乗り込んできていることを。そしてその目的も……。

 

『彼らの狙いは、恐らく僕だ』

 

『!?』

 

『何となく、そうじゃないかと思うんだ。闇の世界に生きる者たちが、僕の力を欲して多くの罪なき命を奪っていった。どの時代でも、それは変わらない……』

 

予想だにしなかったスプリガンの言葉に、思わずペルセウスは顔を驚愕に染めながら彼を見る。ペルセウスの目に映ったスプリガンの表情は、哀しみに染められていた。

 

『ごめんよ。僕がここにいなければ、ここが戦場になる事も、君たちが傷つくこともなかったはずだ』

 

『そうとは限らないだろ!!』

 

『いや、確信を持って言える。僕のせいなんだ……』

 

自らの責任を感じてペルセウスに詫びるスプリガンに対し、否定の言葉を返すも彼は自責の考えを変えようとはしない。自分がここにいる限り争いが止まることがない。ならば自分は早々にこの島から出る必要があると、これ以上島の中に留まるわけにはいかないと告げるスプリガンに、しばし迷っていたペルセウスは意を決して告げた。

 

『俺と来てくれ、スプリガン』

 

躊躇うように歪んでいた表情を正し、真っすぐに彼の顔を見据えたペルセウスが口にした要請に、今度はスプリガンが驚愕の表情を浮かべる番だった。敵の狙いがスプリガンにあるのなら、奴らの手に渡してはならないはず。ギルドのみんなにも事情を説明して彼の身柄を保護するように頼むつもりだ。彼が並大抵の魔導士ではない事はペルセウスも承知の上だが、恩人である彼をこのまま放っておくことも出来ない。

 

『どのみち奴らは、俺たちのギルドも標的にしてるんだ。だったら……!』

 

『それは出来ない』

 

しかしそんな彼の頼みを、スプリガンは真っ向から断った。何故、と言いたげに目を見開くペルセウスの反応に対してスプリガンはその理由を伝えた。

 

『今この島に、君以外の人間が僕に近づくのは、あまりに危険すぎる』

 

その的を射ない言葉にどういうことかと尋ねると彼は教えてくれた。スプリガンには自分でも抑えきれない衝動が存在している。昔、とある存在からかけられた呪いの類であり、前触れもなくその衝動が発生すると、周囲の命を奪ってしまうのだと言う。ペルセウスを含め、彼の知人の一部はその例に当てはまらないが、彼の仲間にはどのみち迷惑をかけてしまうと。

 

その話を聞いてペルセウスは先程目にしたとある光景を思い出した。スプリガンが持っている魔力と同じ魔力を漂わせていた、黒く変色した森の一部。死んでいた一角を。あれはやはりスプリガンのものだったのだと理解できた。

 

『けど、約束はできるよ。僕にも今やるべきことが出来た。君たちのギルドに……妖精の尻尾(フェアリーテイル)の者たちに危害は加えない』

 

儚げな笑みを浮かべながらスプリガンはペルセウスにそう約束をかけた。この島にいる間、ペルセウスの仲間であるギルドの人間には手を出さない事。元々彼は、誰かを傷つけることを良しとしていないようだが、その決意を更に強め、限定的にしようとしている。

 

『でも俺には……あんたへの恩が……!』

 

『その心配はいらない。まだ、その時じゃないから』

 

彼に手を伸ばしてどう呼びかけるペルセウスに背を向けるように体を翻し、彼の恩を返す時はまだ早いと告げる。その時じゃないとはどういうことか。今のペルセウスにはその言葉の意味がまだ理解できていない。

 

『君はあの時よりも強くなった。君の弟も、力を手にし、今もなお強くなろうとしている』

 

スプリガンが初めてペルセウスと会った時、彼は幼いながらも彼に内包されている極めて高い魔力には初めから着目していた。まだ若すぎる少年の時点であれほどの力を持っているペルセウスならばいずれは……と。そして5年経った今、彼の力は想像通りの向上を見せ、尚且つ彼の弟も彼の背を追って予想以上の成長を遂げていると来た。

 

だがそれでも足りない。ペルセウスも、シエルも、そして彼がようやく会えたかの存在も、スプリガンの望みを叶えるにはまだ遠いのだ。その時が来るまで、更に待つ必要がある。

 

『君たちは、更に力をつけていってほしい。その力を振るい、発揮するその時まで……』

 

長い長い時を座して待っていたスプリガンにとって、さらに苦しい時間となるだろう。だがその分の期待もしていた。きっとこの兄弟なら、()同様に大きな存在となってくれるはずと。背中の向こうにいるペルセウスは、それでもまだ納得してくれていないだろう。彼からすれば、すぐにでも自分の力になりたいと考えているのに、それが出来ないもどかしさがあるのだから。

 

『それでも君の気が済まないのなら、僕から一つ頼まれてくれるかい?』

 

振り向きながらスプリガンは彼に対してこう頼んできた。自分に出来る事であれば、恩人の願いを無碍にする訳がない。どんなことでも言ってくれと、彼が口を開く前に、思わずその口を閉ざしてしまう、驚愕の願いを、スプリガンは口にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

()()のことを、どうかよろしくね』

 

 

 

 

思いもよらない人物の名。どうして、スプリガンがナツの事を知っていたのか?そして彼がナツの事を託したように聞こえる言葉の意味は?多くの疑問が出来た先程までの出来事を思い出しながらも、ペルセウスは足を止めることなく駆け続ける。

 

「(まず優先するべきはギルドのみんなだ……!)」

 

スプリガンに関する疑問を抱えながらも何とか一度振り払い、爆発があったベースキャンプへとさらに足を速める。意中の少女、そして仲間たちの無事を祈りながら。

 

 

 

彼はまだ、知る由がなかった。スプリガンが悪魔の心臓(グリモアハート)に狙われる理由が何なのかを。彼が魔法界においてどのような存在なのかを。

 

 

 

「いくら伝説の黒魔導士と言えど……眠ってる状態じゃ、てんで話にならないわね……」

 

ペルセウスと別れた後、スプリガンは彼の敵となるギルドの魔導士と邂逅した。島を出るように警告し、それに従おうとしないその魔導士の女に、無理でも追い出そうと攻撃を仕掛けた。

 

しかし実力は拮抗。物体の“時”を戻すことが出来た彼女の魔法、及び彼女自身の機転によって、スプリガンは倒れてしまった。傷の痛みに藻掻き倒れ伏す彼を、切り揃えられた長い黒髪の女性魔導士は、同様に傷だらけになり、息を切らしながらも確かに立ち、見下ろしていた。

 

手こずらせてくれた青年に苛立ちの感情さえ向けていた彼女であったが、次第にその表情は笑みに変わっていった。ついに、手に入れたのだ。伝説の黒魔導士の全てを。

 

「私は!ゼレフを手に入れたぁぁーーーッ!!!」

 

 

 

 

 

スプリガン……彼こそが、史上最強最悪と呼ばれた黒魔導士・“ゼレフ”そのものであった。

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

時はそれから約1時間ほど経った頃。鬱蒼と茂る森の中を駆け足で回りながら、一人の少年が周囲に目を配っている。探している人影は、まだ見つけられていない。

 

「え~っと……確かこっちに行ったと思ったけど……」

 

匂いの元をたどって駆け出して行ったナツの後を追い、同じように森の中を駆け回っていたシエル。だが気付けばナツはどんどんと先へと進んで行ったのか、今や影も形も見当たらない。

 

このまま宛てもなく彷徨ってしまうと、今度はこっちが迷ってしまう羽目になる。来た道順までは一応記憶にあるが、これ以上の宛てのない深追いは危険だ。

 

「魔力をちょっと使うが、仕方ないよな……。乗雲(クラウィド)!」

 

そうぼやきながら自らの足元に雲を出現させ、共に上昇。一気に上空へと浮かび上がったシエルはナツの姿を探して辺りを見渡す。空から探せばすぐにでも見つかる……とも思っていたのだが、木々が深いところも多いため、存外目に入り辛く、ナツたちらしき姿が見当たらない。

 

「ん~~……どこまで行ったんだよ、ナツたちは……」

 

呆れ果てた顔で溜息を吐きながら愚痴のように零したその瞬間、とある一角から何かがぶつかったような衝撃音が響き、同じ方向から土煙のようなものが木々の間から上がった。

 

「あそこか!!」

 

直感で気付いた。ナツたちはあそこにいる。そして現在グリモアの魔導士のいずれかと戦闘を行っているところだろう。すぐさまその現場へと雲を動かして移動。そしてその先で起きている光景を目にすることが出来た。

 

「いた!ナツ!……と、ルーシィ!?」

 

自分の目当てであるナツと共に、カナのパートナーとして島に来ていたはずのルーシィの姿をシエルは見つけた。その場には見かけない人物も一人存在している。ゴワゴワしているような髪を持った真っ白の肌をした巨漢だ。手には小さい人形のようなものを持って掲げている。だが何か様子がおかしい。敵であるはずの巨漢を放って、ナツがルーシィを羽交い絞めして止めているように見える。どういう状況だ?

 

「よく分かんないけど……取り敢えず敵だと分かってるのは……」

 

ひとまず判明している事のみを重点的に置いておき、ナツたちの真上へと移動して雲を消す。そして落下を始めた体に雷の魔力を握り潰して巡らせ、狙いを見覚えのない白い巨漢へと定めて速度を上げた。

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

同時刻の地上。ガルナ島で会った老人を追っていたナツは現在、目的とは別の人物と対峙していた。本来追っていた者は先に見つけていたゼレフを連れてこの場を去ってしまっている。後からルーシィと共にこの場へと成り行きで乱入してきた煉獄の七眷属の一人・『華院=ヒカル』と名乗る白い巨漢が、今現在二人が相手をしている者だ。

 

一見すると肥満形態で、どこか間抜けな印象すら与える言動を持つこの男。だがその実見た目に反した機敏性と身のこなし、そして見た目を裏切らないパワーも兼ね備え、極めつけには彼が使用する魔道具『丑の刻参り』と言う、髪の毛を一本差すことで相手の動きを制限できる人形の存在が、ナツとルーシィを苦しめていた。

 

呪殺魔法の一つである丑の刻参りを扱える人形・『ノーロさん』には現在、ルーシィの金色の髪が一本差されており、彼の操る人形と同じ動きでルーシィの身体が動かされ、ナツはそんな彼女に動きを封じられていた。何とかルーシィの動きを止めようとしたナツだったが、現在は逆に抜け出されて、普段の彼女以上の力で次々と拘束技を喰らっている。

 

「丑の刻参りの力はこんなもんじゃないっスよ。更なる悲劇が二人を襲う―――」

 

更に残忍な方法でナツたちへと攻撃を仕掛けようとするヒカル。その為に手に持っているノーロさんでそれを行おうと構えた矢先だった。

 

「頭上に~~?」

 

「ウェ?頭上……?」

 

突如ヒカルの上から子供の声が聴こえ、思わず彼はそれに反応して上へと顔を向ける。一方ナツたちは上から聞こえた声に覚えがあり、それぞれが驚いたような反応を示す。そして、上を向いたヒカルの目に映ったのは、こちらへと急激に落下してきている、黄金の雷を纏った少年の姿。「えっ!!?」と仰天の表情を浮かべて驚いていたがもう遅い。

 

「落雷!注意報ーーー!!」

 

「ヴェェェェイッ!!?」

 

上を向いたことで露わになったヒカルの顔面目掛けて、黄雷と共に少年の両足が突き刺さる。目と鼻の間が着弾点の中心となったことで悲鳴は上がったが、勢いは凄まじかったのかヒカルの頭は後ろから地面へと激突。その影響で身体全体がひっくり返った。さらに拍子にヒカルの手に握られていた人形も、ポロっと手から離される。

 

「シエル!?」

「お前なんで来たんだ!?」

 

人形がヒカルの手から離れたことによって、ルーシィの身体にも自由が戻り、ナツも解放される。だがそれと同時にナツたちはシエルがこの場に現れたことに対して大きな驚愕を見せていた。そんな声を聞きながら、シエルは踏み潰したヒカルから飛び退き、新体操選手のように回転ジャンプをしながらナツたちの前へと降り立つ。

 

「先走り過ぎて迷ってたりしたらナツが大変だと思ってね。あと回復したばっかなのに七眷属を相手にするなんて無茶、絶対すると予感してたから」

 

「無茶じゃねーよ!横取りすんな!!」

 

などとナツは主張しているが、先程までルーシィに関節技のようなものを決められて明らかに苦戦していたようにしか見えなかったので説得力皆無だ。まるでエドルーシィにやられていた時の事すらも思い出したほどに。

 

それは兎も角として、シエルは先程踏みつけた白肌の巨漢へと改めて目を向けた。ナツが匂いを辿って駆け出し、この場にいると言う事は……。

 

「で、ナツが言ってた奴って“アレ”?ハッピーの話と大分印象違うんだけど……?」

 

「そいつじゃなくて別にいたんだ。でも今逃げられて……!」

 

「あたし、こいつに襲われてたの。それで、たまたまナツたちのトコまで……」

 

シエルが呟いた疑問に答えたのはハッピーとルーシィ。どうやらナツが目当てにしていた人物はもうこの場にはいないらしい。そして追いかけようとしたがあの巨漢……ヒカルに足止めを喰らっていたと言ったところだろう。

 

「ウーウェ……!い、いきなり何スか……人を踏んづけるなんて、酷いことするっス……!」

 

空高くから一気に急降下して踏みつけられたことで意識も飛んだと思われていたヒカル。だが彼は顔の痛みを訴えるように手でさすりながらも、手から落とした人形を拾い上げて起き上がり、突如現れて自分の顔を踏みつけたシエルを睨みつける。まさか起き上がるとは思わなかったらしく、ルーシィとハッピーが驚愕に顔を染めるも、シエルはそう簡単に倒れはしないと予想していたのか冷静に敵の姿を見据えている。

 

「あ、あれ受けて、平気なの……!?」

 

「これしきの攻撃ワケないっス。けど、どうやらお仕置きが必要な悪い子みたいっスね」

 

見た目に違わず体の頑丈さも持ち合わせていたらしく、ルーシィの反応に対してさしたるダメージなど受けていないと言いたげにヒカルは大きく片足を上げて踏み下ろし、地ならしを起こす。その姿は相撲の力士が行う四股踏みそのもの。気合を入れ直す彼のルーティーンだろう。

 

「そうだ!シエル、もう一人いた七眷属はゼレフを連れていっちゃったの!急いで追いかけて止めないと、大変なことになっちゃう!」

 

標的の一人にされたと理解して、いち早く迎撃できるように構えるシエル。そんな少年にルーシィは焦りを孕んだ顔で重要事項と思われる言葉を告げた。悪魔の心臓(グリモアハート)の目当てとされている黒魔導士・ゼレフ。それが七眷属の一人に連れていかれたことだ。そして奴らがゼレフを狙っていた理由も、明かされる。

 

悪魔の心臓(グリモアハート)の狙い。それはゼレフを手中に収め、世界の王にすること。彼らの幹部煉獄の七眷属は、全員が魔導士の深淵に近づきすぎた者が手に出来る失われた魔法(ロストマジック)の使い手。それ故に、強力な副作用も存在している。そんな副作用を抑えるどころか、なかったことに出来る方法……混沌と闇が支配する“魔法”本来の世界、『大魔法世界』へと変える事。

 

「『大魔法世界』……!?」

 

「何だか、スケールが物凄く大きい話……!」

 

シエルも、話を共に聞いたハッピーとナツもその顔に浮かべるのは大きな驚愕だ。更に聞けば、その世界では魔法を扱える者のみが存在出来る……つまり魔法を扱えるほどの魔力を持たない一般人は生きられず、生きていられたとしても地獄の世界。世界中の人間の約一割のみが魔導士を生業にするこの世界において、残る九割が滅びゆく結末を迎えてしまう。

 

「その通りっス。ゼレフがこの世界の王となり、導く世界。それが自分たちがゼレフを探していた理由っス」

 

ルーシィが説明した内容に肯定を示し、ゼレフを探していた理由として答えるヒカル。その表情には驚愕も恐れもない。先程までとは違った冷酷さをも感じさせる表情で、淡々と自分たちの目的を述べていた。これは優先すべきことを間違えてはならない状態だ。それをすぐさま理解したシエルは、すぐさまルーシィたちに問いかけた。

 

「ゼレフを連れてった奴は、どんな特徴だった!?」

 

「えっと、長い黒髪の女の人!」

 

「けど騙されるなよ!あくまでアレは女装した姿だ!!」

「女装が趣味だったみたい!!」

「え……?どー見ても普通に女の人っぽかったような……?」

 

ゼレフ、及びそれを連れて行った者を追いかけること。その為に特徴を聞いたシエル、だったがルーシィとナツたちとで極端に分かれている。女性の姿……だがそれは女装しているからと言う混乱必至の情報だ。結局のところ性別すらはっきりしない。

 

「ウルティアさんが、女装……?あれ?ウルティアさんは最初から女性だったような……ウーウェ……?」

 

そして混乱してるのは敵側であるヒカルも一緒だった。ゴワゴワとした黒髪を手で掻きながら、女装が趣味と扱われているウルティアなる人物の姿を思い出している。同じギルドのメンバーじゃないのか……?

 

「……ん?ウルティア?……その名前、どっかで……」

 

しかしふと『ウルティア』と言う名前に聞き覚えがあるような気がして、シエルは思わず考え込んだ。いつだったか、誰かからその名前を聞いたことがあるような……?確か……それ程昔ではなかったはずだが、ここ数か月は濃密な出来事が次々起こっていた為、明確に思い出すことが出来ない。

 

「考えるのは後回しだ。とにかく……ゼレフを連れた女を追いかける!」

 

考え込んでも仕方がない。すぐさま思考を切り替えてシエルはウルティアと呼ばれた女(もしくは女装した男)を追い、ゼレフを連れていかれないようにする。それを最優先と考えて乗雲(クラウィド)を出し、すぐさま空へと飛ぼうとする。

 

「そうはさせないっス」

 

しかし、意味深に口元を吊り上げたヒカルが人形を持ちながら動かすと、ルーシィは顔を青くし、更にその身体に異変が起きた。

 

「ちょっ、きゃあっ!?」

「ごはっ!?」

 

あり得ない挙動でルーシィの体が宙に浮いたかと思いきや、シエルの背中に彼女の頭突きが炸裂。目を見開いて悲鳴を上げながらシエルは雲から落ちて、前のめりに地面へと激突する。

 

「あ!またアレか!!」

 

見ようによっては間抜けな光景だが、普段はそれを笑っていそうなナツもその正体を理解して顔を苦々しく染める。

 

「ルーシィ……ひょっとして日頃の恨み?だとしても何で今なの……?」

 

「違う!身体を操られてるのよ!!」

 

一方のシエルは体を起こしてルーシィへと振り向き、思った以上にショックを受けたのか涙目になりながら声を震わせてルーシィに問いかける。対するルーシィは誤解だと言外に告げるように自らの無罪を主張している。

 

「子供が一人増えたところで自分のやる事は変わらないっス。3人纏めて、自分が始末するっス」

 

ナツとルーシィの二人がかりでも退かなかったヒカルは、シエルと言う子供が増えたところで負ける気はないようだ。自信に満ちているが実際に今ヒカルは再び人形を動かしてルーシィの身体を操り、場を離れようとしているシエルを抑え込んでいる。味方に邪魔されていることでシエルは混乱しながら離れるよう叫ぶが、ルーシィは自由に体を動かせないので謝る事しかできずにいる。

 

「どきやがれェ!!」

 

そんな中唯一自由の利くナツは拳に炎を纏ってヒカルに肉薄するも、人形を持つ手を器用に離さないまま片方の腕でその拳を弾き、お返しと言わんばかりにナツを張り手で吹き飛ばす。

 

「ドドスコーイ!!」

 

その威力は実際高く、咄嗟に防御をとったナツの身体を、吹き飛ばすほどの腕力が窺えるほど。魔道具による魔法だけかと思いきや、身体能力も高いとは厄介だ。その上、彼が手に持っている人形を見て、シエルは何かを思い出したように表情を歪めた。

 

「そ、そう言えば他人の身体を呪いの力で意のままに操る、失われた魔法(ロストマジック)の一種があるって、本で見た気が……!」

 

「実際物凄く厄介なの~!」

 

操られるままのルーシィにポカポカと殴られ続けて地味に痛みを負っているが、仲間である彼女に対して反撃することも出来ずされるがままになってしまっている。足止めとしてはこの上なく有効だろう。あの人形をどうにかしない限りは事態は好転しない。

 

「なら、手っ取り早く退けるしかないな。雷光(ライトニング)!!」

 

瞬間、シエルはやり口を変えることを決定。ルーシィに囚われていない方の手で雷の魔力を握り潰して雷光を纏い、一瞬の隙をついてその場を脱出。直後にヒカルへと肉薄していく。

 

「さっきの雷攻撃っスか!?けど、二度も同じ手は喰わんっス」

 

動体視力も優れているようですぐさまシエルの攻撃を察知したヒカルが、彼に狙いを定めて右の掌を突き出して吹き飛ばそうとする。だがシエルはもう一つの雷の魔力を握り潰してその張り手をすぐさま回避。カーブを描いてヒカルの懐に入って……。

 

「そらっ!!」

「ヴェエ!?」

 

巨漢のがら空きになった顎目掛けてサマーソルト。そのまま着地すると同時に飛び上がり、右に二、三回回転した後右ストレートを放ち、浮かんでいた巨体を数メートル殴り飛ばした。小柄な体に似合わぬ威力は、思わぬ衝撃をヒカルに与えたことだろう。

 

「シエル横取りすんなっつっただろ!?」

 

「その意見は汲みたいけど、向こうは逃がしてくれそうもないしさ」

 

だが勝手にヒカルに攻撃をしたシエルに文句が出来たナツは牙を剥き出しにしながらそれを叫ぶ。シエル自身もこのままナツに任せてゼレフを追いたかったのは事実だが、肝心な敵がそれを許してくれない為致し方なしと言える。現に話を聞くと、ナツも本来狙っていた敵をヒカルの手によって逃がされたらしい。となれば、ナツがこの白い巨漢にこだわる理由は薄いと言える。

 

「それに、ナツが目当てにしてるのはこいつじゃないんだろ?なら人数が有利な内にさっさと倒した方がすぐに追いかけられる」

 

もっともな意見を聞いたナツは、しかし納得しきれない部分があるようで「けどよぉ」とどこか居心地悪そうな表情を浮かべている。

 

「いいだろ?俺たち、チームなんだからさ」

 

対してシエルは、不敵な笑みを浮かべながら勝気にそう告げる。それを言われたナツは、何回か目を瞬かせると、珍しく折れた様子で口を吊り上げると同時に息を吐く。

 

「……しょーがねーな!そこまで言うんなら!」

 

燃える炎を両手に纏いながら拳と掌をぶつけて再び気合を入れるナツ。蒼雷を纏いながら右爪先をトントンと地に叩き、駆け出せる構えをとるシエル。その背中を見るハッピーは、久々に見るような光景に思わず笑みを零していた。

 

「何人か足んねーけど、最強チーム再結成だ!!」

 

「おう!」

 

試験絡みで対立していた関係は一度解消。侵入してきた闇ギルドの魔導士相手に、同じチームとしての共闘タッグ。炎を燃やす青年と天気を駆使する少年は、互いに不敵な笑みを浮かべながらヒカルへと視線を向け堂々と宣言した。

 

「あの……あたしの身体操られたままなの、忘れてない……?」

 

「「あ」」

 

そんな二人に引き攣った表情でぼやいたルーシィの言葉に、思わず声が漏れた。そう言えば、忘れてた。自在に体を動かせない故に、地に転がったままの体勢で放っておかれたままだった。

 

「自分だけ仲間外れにして随分楽しそうっスね……!」

 

シエルに殴り飛ばされた後に起き上がってみれば、ヒカルには楽しい雑談のように見えたのかどこか怒りを露わにしてこちらを睨みつけている。その胸中は割と分かりやすい。途端にシエルは笑みを浮かべながら挑発する。

 

「何だ?ひょっとしてほっとかれて傷ついたか?構ってほしかったのかよ」

 

「じ、自分、これでも心は繊細なんっス!!あんた、昔の自分に似てカワイイ顔してるからって調子に乗るんじゃないっス!!」

 

その挑発には見事に釣られて怒り心頭と言った様子を見せはしたものの、代わりにとんでもない発言が聞こえてシエルたちは思わず絶句した。

 

「え……てことは俺将来はああなる可能性があるってこと?何それ……心の底から嫌……う、想像しただけで……」

 

「だ、大丈夫よ!何もそうと決まったわけじゃ……!!」

「そうだぞ、本気にすんなシエル。あんなのジョークに決まってんじゃん」

「冗談にしてももっとマシな事言ったらいいのにね」

 

「何スか、そのリアクション!?失礼の極みっス!!」

 

幼いながらも見ようによっては女の子にも見えそうなほど整った美少年が、将来白い肌のゴワ毛を持った巨漢に成長すると言う世にも悍ましい未来予想図を考えついてしまったシエルが、顔を真っ青にして口元に手を当てているのを、ルーシィが必死にフォローし、ナツとハッピーがズバッとヒカルの主張を冗談と決めつけて切り捨てる。

 

どれほど自意識過剰なのか定かじゃないが、ヒカルからすれば事実を言っただけ。なのにここまで引かれて嘘と決めつけられるのは今までの人生の中でもトップクラスにショックな事だったろう。実際今、彼の目には涙が浮かんでる。

 

「ウーウェ……!どこまで自分の純情で繊細な(ハート)を傷つければ気が済むんスか!許せんっスゥーッ!!!」

 

涙を流しながら怒りの形相を浮かべ、ヒカルはその巨体を素早く動かしてこちらに接近。一早く気付いたナツはそれを迎撃しようと前へと乗り出した。駆け出すと同時にその右脚に炎が宿る。

 

「火竜の鉤爪!!」

「ドドスコーイ!!」

 

真っ向からぶつかり合う足と張り手。その力は拮抗し、明らかに体格の差があると自負するヒカルは意外そうに目を見張る。それを見たナツは口元をニヤリと吊り上げると、身を翻しながら両手の炎を振り回す。

 

「からの~?翼撃!!」

「ヴェーイ!!」

 

咄嗟の事で迎撃が間に合わず、鞭のようにしなる炎がヒカルを襲う。さらに追撃をしようとするナツだが、今度はすぐさま回避され、ロケットの如く頭から突っ込んでナツの身体を弾き飛ばす。

 

「ぐおっ!?」

 

「今度はこっちの番っス~!!」

 

反撃と言わんばかりに追いかけて攻撃を加えようとするヒカル。しかしそこに背中から蒼雷を纏った少年が飛び蹴りでヒカルの身体を貫いて転ばせる。

 

「ウ、ウーウェ……!またあんたっスか……!」

 

「悔しかったら追いかけてみなよ」

 

先程の精神ダメージ(?)からは回復できたようで、再び挑発的な笑みを浮かべながらヒカルを誘い込む。単純な面が強いヒカルはまたしてもそれに乗り、表情に怒りを募らせながらツッパリと共に少年を追いかける。しかし蒼雷を纏って敏捷性が格段に上がっているシエルを追っても追っても捕えられる気配がない。

 

「ウェ……!ちょこまかと鬱陶しいっス……!」

 

「図体がデカいから動きがとろいんじゃないのか?」

 

「ウェーイ!本当に口が悪いお子様っス!!」

 

わざわざ一気に加速するのではなく、ギリギリ次に届く範囲に着地しながら回避していることで、余計にヒカルの苛立ちを助長する。いくら優れた魔導士の攻撃であっても、当たらなければ意味がないと体現しているようだ。そしてヒカルが苛立ち、冷静な判断が出来ない状況になればなるほど、その攻撃に精密性が欠けていく。

 

「お、おのれぇ……!ゼェゼェ……は、腹減ってきたっス……ヴェッ!?」

 

何度攻撃しても当たらず、次第に奪われていく体力と気力。激しく息切れし、ついでに空腹感も感じてきたヒカルに更なる追撃がかかる。青に黄色の線が巻き付いたかのような魔力で出来た鞭がヒカル目掛けて伸びていき、彼の首に巻き付いたのだ。唐突に首を絞められたヒカルは苦し気にもがき出す。

 

「な、何スか、これ……!?」

 

星の大河(エトワールフルーグ)よ」

 

ヒカルが零した疑問とも取れる言葉に返した声を聞き、ヒカルは思わず振り向いた。伸縮自在の鞭を携えてこちらを拘束してきたのは、自分がノーロさんによって操っていたはずのルーシィ。だがその身体は今自由がきいているらしく、こうして自分の行動を制限している。

 

そしてヒカルは気付いた。ナツやシエルに気を取られ、さっきからノーロさんを一切触っていない事を。まさかと思ってシエルの方を向くと、少年が返したのはしたり顔。まさか、挑発も交えたここまでの動きは計算づくだった……!?

 

「今だ、ナツ!!」

 

身動きが取れなくなったヒカルを確認し、シエルは上を見上げながら声をあげる。その視線にヒカルが目を移すと、炎を纏った青年がこちらに向けて落下しているのが見えた。高い木の上にいつの間にか上っていたようで、そこから跳んで雄叫びを上げながらこちらに突っ込むつもりなのはすぐに分かった。だが、分かったところでどうにもならない。

 

「火竜の劍角!!」

 

ナツの炎の頭突きが顔面を直撃。顔をめり込ませてヒカルのバランスを崩す。ナツを除いた三人はそれに喜色満面の笑顔を浮かべて勝利を確信していた。

 

「……ドド……ドスコーイ!!」

 

「ぬご!?」

 

勝利を確信していたルーシィが鞭を彼の首から外した数瞬後、足を踏みとどまったヒカルの横平手がナツの身体を飛ばし、もう一発反対の手を使ってより弾き飛ばす。それを見た瞬間先程まで笑みを浮かべていたルーシィとハッピーが驚愕に顔を染め、信じられないものを見るかのように口を開く。

 

「そんな!?」

「渾身の一撃だったのに!!」

 

「あ、危なかったっス……ですが自分、七眷属っスから、負けられないっス……!」

 

相当な数の攻撃を受けても尚立ち続ける白き巨漢に、次第にルーシィたちに絶望の文字が浮かんでくる。何度叩いても起き上がってくるその様相は、本当に人間なのかと疑いたくなるほどだ。ほとんどこちらに余力はないと思われる。万事休すか……。

 

 

 

 

 

「俺たちだって負けられないさ。ギルドの名を背負ってんだから……!!」

 

ふと、唯一絶望を感じる顔を浮かべなかった少年が呟いた言葉が、状況逆転の合図となった。その言葉を告げると同時に、ヒカルの足元が突如青く光り始める。その色はまるで、今もなおシエルが纏わせている雷と、同じ。

 

「あれって……!」

 

その正体に最初に気付いたのはハッピー。挑発しながらヒカルの攻撃を避けている際、飛行して避けてもいいはずなのに、わざわざ足に地を着けて彼は攻撃を回避し続けていた。その際に足をつけて、地を蹴った場所と、一致している。謂わば……

 

「シエルの足跡!?」

 

「あの状況で、(トラップ)を仕掛けてたってこと!?」

 

まさか戦いの中で、自分がナツの攻撃を受けても踏みとどまる事さえも予測し、ダメ押しの為の魔法まで用意していたとは、ヒカルは驚きを通り越して恐怖さえ覚えた。まるで未来を見ているかのような行動に、用意周到過ぎて人間とは思えないほどに。そして今ヒカルは、(トラップ)と聞いて迂闊に動くことを躊躇ってしまっていた。

 

「なあお前、“地雷”って知ってるか?」

 

震えて動けずじまいになっているヒカルに対し、シエルは下に狙いを定めて右の拳を振りかぶりながら尋ねた。「ウ、ウーウェ……?」と返答になっていない受け答えをぼやいたヒカルに向けて、シエルは最後の仕上げを繰り出した。

 

「東の国では、“地の雷”って書くんだぜ……!」

 

そして蒼雷の魔力を込めて突き出した拳は地面に突き刺さる。これによって、自分が仕掛けた蒼雷の(トラップ)が作動し、一斉に真上にいる標的へと牙を剥いた。

 

 

 

 

 

「『地雷網縛(ブリッツマイン)』!!!」

 

「ヴェェェェエエエエッ!!?」

 

一気に放出された雷の柱。何十にもわたるその柱は天へと昇り、標的となったヒカルの身体に炸裂する。貫通さえしている多くの雷柱が収まる頃には、ヒカルの白い体は青い電流が走った所々が黒こげの状態へと変貌し、そして前のめりに倒れ伏した。

 

「うっし!」

 

「やった!」

 

今度の今度こそ。崩れ落ちるように倒れこんだヒカルの姿を見て、シエルは思わず腕を掲げて喜びを表し、ルーシィもまた顔に弾けるような笑みを浮かべた。ハッピーも飛び跳ねながらナツの元へと駆け寄って行く。

 

「ナツー!やったよー!!……ってあれ?どしたの?」

 

「オイシーとこ持ってかれた……」

 

喜びを分かち合おうと駆け寄ったものの、どこかナツの表情は不機嫌だ。不貞腐れてると言ってもいい。しょうがないだろう。火竜の劍角でとどめを決められたと思ったら耐えられて、結局最後に決めたのはシエルだったのだから。

 

「まあまあ、作戦勝ちだったんだし、いーじゃないの」

 

そんなナツを窘めるように言うのはルーシィ。実は突っ込んできたヒカルをナツが迎撃していた際、ショックから立ち直ったシエルはすぐさまルーシィに作戦を伝えていた。「シエルがヒカルを挑発して引き付けて、疲れが見えたら鞭で拘束。直後にナツが上から仕留める」と言う簡素な言い方で。

 

即興で考えた為にシンプルなものとなったが、単純な思考回路だったらしいヒカルには効果覿面だった。しかも移動しながら罠も仕掛ける徹底ぶり。上手く噛み合ったように思える。

 

「つーかあの技どーやったんだよ?」

 

「ああ、あれ?雷光(ライトニング)の魔力を足に集中させて、踏みつけると同時に切り離すんだよ。後は同じ魔力を思いっきりぶつければ作動する」

 

「簡単そうに言ってるけど、大分高度なことしてるでしょ、それ?」

 

移動しながら罠を仕掛けて一気に作動したアレンジ技『地雷網縛(ブリッツマイン)』についてナツが尋ねれば何のことは無いと言いたげに答える。元々魔力の繊細な操作に優れていたシエルだから使いこなせるものだが、その心得が無いと本来は不可能に近い。

 

「詳しく知りたいなら後で話すよ。それより、今はゼレフの事でしょ?」

 

「あ、そーだった!!」

 

「ナツ……ひょっとして忘れてたぁ?」

 

元はと言えばゼレフを連れて行ったウルティアと言う魔導士を追いかけるのを邪魔したヒカルを退けようと戦っていた。それを忘れてしまっていたナツにハッピーもルーシィも息を吐きながら呆れる様子を見せる。相当時間を食ってしまったのでやや足早にウルティアが向かったと思う方向へとナツたちが歩き出し、それに続こうとシエルも若干駆け足でその背を追いかける。倒れ伏したままのヒカルを通り過ぎ、速度を少し上げようと踏み込んだ……

 

 

 

 

その時だった。

 

「っ!!何っ!?」

 

突如ナツが何かに気付いた様子で慌ててこちらへと振り向く。他の三人は疑問符を浮かべながらナツの方へ視線を向ける。だがルーシィとハッピーは、シエルとは違い、自分の方へと目が移ると途端に目を見開こうとしていた。その理由は……。

 

 

 

「シエル!!避けろぉ!!」

 

一瞬、何のことか分からなかった。

 

ふと、彼らの目線の先は、自分の後ろに言っているように見えた為、振り返ろうとした。

 

だが、それは叶わなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウーウェイッ!!!」

 

ついさっきまで倒れていたはずの白き巨漢のツッパリを、背中から押し潰される要領で受け、地面にその身体を叩きつけられたからだ。

 

「ッ……!カッ……!?」

 

突如起きた衝撃。押し潰される重圧。軋む骨の音。無理矢理吐き出された空気と共に、シエルの口から赤い液体が吐き出される。ぶれ出した視界に辛うじて映ったのは驚愕に口を開くハッピー、恐怖に近い感情を表すように口元に手を当てるルーシィ、そして……。

 

「シエルゥーーーッ!!!」

 

驚愕、困惑、怒りを混ぜ込んだ表情で、己の名を慟哭するナツの姿だった……。

 




おまけ風次回予告

ルーシィ「見た目的に間抜けな感じするのに、どんだけ強いの、どんだけタフなのあいつ!?」

シエル「腐ってもバラム同盟ギルドの幹部って事か……。あれでも倒れないってどんな体してんだ……?」

ルーシィ「でも、ナツやロキはそんなとんでもない敵に勝ったのよね。あたしたちも……でも、あいつすっごい怒ってるっぽいし……!」

シエル「それでも向こうの好きにはさせられない。絶対負けてたまるか!」

次回『逆鱗』

シエル「取り敢えずまずは……今俺、叩き潰され中なんで、何とかルーシィたちに助けてもらわないといけません」

ルーシィ「いやここで他力本願にすがらないでよ!?あたしたちだって限界近いのに~!!(泣)」
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