FAIRY TAIL ~天に愛されし魔導士~   作:屋田光一

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中々筆が進まずに何度目かのギリギリの投稿になってしまいました…。

頭の中に浮かびはするんですけど、いざ文字にするとなるとなんて書けばいいのか…。(汗)

そしてFAIRY TAILの最新ゲームがついに発売しましたね!まあ、僕自身は実際にプレイするのは幾分か先になりそうですけど…。他のゲームが楽しすぎて…。

けど買った暁には楽しんでプレイしたいです!


第11話 ルーシィ・ハートフィリア

自分たち妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士たちをまとめるマスターであり、親同然の存在たる老人・マカロフ。いわばこの戦いにおける大将と呼べるその存在が、一切の魔力を感じられぬほどに衰弱している。白を通り越して緑に変色してしまっている体色も相まって、その状態が命に関わることを物語っている。

 

マカロフを視認し、即座に駆け寄るメンバーたち。ギルドのマスターを務めるに値する魔力が忽然と失われている事実に、動揺を感じずにはいられない。最上階で一体何があったのか分らぬまま、無情にも時は過ぎていく。

 

「お、おい聞いたか!?」

「奴等のマスターがやられたってよ!!」

「いけるぞ!これで奴等の戦力は半減だ!!」

「こっちにはガジルも、エレメント(フォー)もいるんだ!」

「ぶっ潰せぇ!!」

 

妖精たちを束ねるマカロフが落ちたことにより、味方の士気が大幅に低下。そして逆にファントム側の方は勢いをつけて攻めかかってきた。戦いに於いて大将と言うものは組織の象徴の一つ。その象徴が崩されることは組織が崩れる前兆とも揶揄される。

 

攻め立ててくるファントムに対して、ナツを始めとした実力が高い魔導士は返り討ちにできているが、他の者たちはマカロフが戦闘不能となったことによる動揺でうまく力を出し切れずに押されていく。敵地の真ん中でマスターの負傷、それを間近で見た味方の士気低下。このままではまずい。そう瞬時に理解したエルザは左目に浮かんでいた涙を拭い、即座に決断を下した。

 

「撤退だー!!全員ギルドへ戻れーー!!!」

 

撤退。その二文字を耳にした妖精の魔導士全員が驚愕した。ギルドと仲間の仇討ちのために乗り込んだというのに、相手の主戦力を誰一人崩せないままの撤退。ほとんどがこのままでは戻ることはできない、そう主張する。

 

「オレはまだやれるぞ!」

 

「私もいけるよ!」

 

「俺だって、まだまだ戦える!」

 

「駄目だ!!マスターなしではジョゼには勝てん!撤退する!命令だ!!」

 

ジョゼを相手にしていたと思われるマカロフが実質抜けてしまった今、この場で長く戦ったとしてもジョゼに勝てる確率は限りなく低い。それにこのままマカロフを放置しておく訳にもいかない。即刻処置をしなければ最悪の場合は手遅れになる可能性もある。

 

メンバーは悔しさを滲ませながらも、エルザの命令に従い、次々と幽鬼の支配者(ファントムロード)のギルドから外へと向かい、撤退行動に移る。そんな様子を屋根裏の骨組みに逆さの状態―足の裏から返しのある刃を出して突き刺している―でガジルはにやけ顔を浮かべながら眺めている。

 

「あらあら、もう帰っちゃうのかい?ギヒヒ」

 

「撤退とは悲しい…悲しすぎる…」

 

すると、ガジルのちょうど真上の位置に、まるで最初からそこにいたかのように一人の男の姿が浮かび上がる。体格はエルフマンと同等かそれ以上の巨漢であり、緑のシルクハットに同じ色のコート、群青色の帯を首にかけており、何より特徴的なのは目元を隠す白い布。視界を封じられているように見えるが、佇まいからは微塵もそれを感じさせない。

 

その男の名は『アリア』。幽鬼の支配者(ファントムロード)の幹部級の魔導士たち、エレメント(フォー)の一人であり、またの名を『大空のアリア』。

そして、マスター・ジョゼの作戦に従い、マカロフの魔力を枯渇させた張本人でもあった。

 

「素晴らしい!!」

 

「いちいち泣くな。ウゼェからよォ」

 

そして当の本人は作戦通りにマカロフの行動を封じ込めることができたため、ジョゼに対して感動に打ちひしがれたのか、隠されたその目から洪水のように涙を流していた。彼にとっては日常茶飯事のようなので、ガジルからは苦い顔をされたのだが…。

 

「撤退だ!退けぇ!!」

 

「逃がすかぁ!!」

 

エルザの指示に従い撤退を続ける妖精の尻尾(フェアリーテイル)を、幽鬼の支配者(ファントムロード)が追いかける。尻尾を巻いて逃げようとしている妖精たちを狩り尽くそうと考えているようにも見える奴等に対し、シエルは一度(きびす)を返す。

 

「足元にご注意を!豪雨(スコール)!!」

 

幽鬼の支配者(ファントムロード)の魔導士たちの最前線目がけて大雨を降らせ、相手の勢いを削ぐと同時に視界も防ぐ。「今の内だ!」と撤退を再開するシエルの声を聞き、さらに足早に自分たちの(ギルド)へと向かう妖精たち。

 

「くっそ!あのガキィ……お!?」

 

そんなシエルに対して苛立ちを抱いた一人のファントムの魔導士が突如背後から襟首を捕まえられた。振り向いた先にいたのは、先程までガジルと互角に渡り合っていた妖精側の(ドラゴン)

 

「おいテメェ、面貸せ…!」

 

「は、はいはいはいぃっ!!」

 

ガジルとアリアの会話を唯一聞き取っていたナツが、ファントムの魔導士を一人捕まえ、撤退する一団から抜けて別の方向へと向かうところを、誰一人として気付ける者はいなかった…。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

魔力を失っているマカロフは、ポーリュシカの元へと搬送されたらしい。運んで行ったアルザックとビスカを除くメンバーたちは、ガジルによって半壊にされたギルドの地下に再び集まっていた。ギルドやレビィたちシャドウギアの仇もとれずに撤退せざるを得なかったのは、屈辱にも等しい。多くの者が怪我を負い処置を受けており、マスターであるマカロフが不在であるが、このままやられたままで終わるつもりは毛頭なかった。

 

ギルドの本部の位置を確認し、南西の高台から遠距離魔法で狙撃する案を出す者。爆弾魔水晶(ラクリマ)を持っていけるありったけの分を持参しようとする者。所持(ホルダー)系魔導士用の強力な魔法書を持っていこうとする者など、様々ではあるがいずれも幽鬼の支配者(ファントムロード)に対して怖気づいた者はいない。反撃する気満々だ。

 

無論その中にはシエルも含まれている。彼も幽鬼の支配者(ファントムロード)との戦いにおいて、改めて思い知らされた自分の魔法の弱点…変動する天候に対処がきく単体の魔導士相手には一方的に不利であることを考えていた。

 

ガジルのように身体を鉄と同じような性質へと変質させ、時には雷の攻撃を引き寄せた上で地面へと逃がす避雷針に、時には突風でも吹き飛ばすことができないほどに己の重量を大幅に上げることができるなど、彼は戦いの経験値においては確実にシエルよりも上だ。

もしもエレメント(フォー)がガジル同様に天候への対処を行えるほどの実力者だったら…?そしてそんな相手に自分が遭遇したら…?

 

「(()()に関してはまだ練習中だし、ぶっつけ本番じゃ期待できない…)」

 

勿論簡単にやられるつもりはない。だが死力を尽くしてもかなわない場合はどうすればいいか、正直不安に思うことは多い。そんな胸中を抱えていると、今いる地下の倉庫へと続く扉を開く音が聞こえ、一人の声が響いた。

 

「みんな…」

 

決して大きい声ではないが、倉庫内に響いた声。幽鬼の支配者(ファントムロード)へ乗り込んだ時には、負傷したレビィたちの見舞いのためにマグノリアに留まっていた少女、ルーシィのものだった。ナツとハッピーに連れられた形で戻ってきた彼女の姿を見て、皆一様に声をかける。彼女の姿が見当たらなかったために、心配の声をかける者たちがほとんどだった。

 

「てか、何でナツと一緒に?」

 

「そもそもどこ行ってたんだよお前」

 

「ルーシィが捕まってたから助けに行ってたんだよ」

 

「捕まってた!?ファントムにか!!」

 

どうやら幽鬼の支配者(ファントムロード)に殴り込んでいる間に、ルーシィは別の刺客によって囚われの身となっていたそうだ。ナツがガジルとアリアの会話で聞いたのは「ルーシィを捕らえ、本部に幽閉している」と言う内容であり、撤退に乗じて捕まえたファントムの魔導士から本部の場所を聞き出し、辿り着いたと同時に抜け出していたルーシィを取り戻していたそうだ。

 

だがここで一つ疑問が浮かぶ。何故ルーシィを捕らえ、本部に幽閉していたのか?と言うことだ。助けに行ったナツもよく知らないのだが、今回のファントムとの騒動は自分に原因があるのだと、倉庫内の樽の一つに座ったルーシィが告げている。

 

「あたし、ファーストネームしか名乗ってなかったんだけどね。フルネームは『ルーシィ・ハートフィリア』って言うの…」

 

「…?確かにフルネームは初耳だが、それがどうしたんだ?」

 

尋ねたグレイ、そして近くにいるナツ、ハッピー、エルフマンといった面々はルーシィのフルネームを聞いてもピンときていないようだが、シエルだけは心当たりがあった。フィオーレ王国の中でも1、2を争う有数の資産家・『ハートフィリア財閥(コンツェルン)』の代表と同じ家名であると。

そして幽鬼の支配者(ファントムロード)に狙われ、捕らえることを目的とされていると言う事は…。

 

「もしかしてルーシィは、そのハートフィリア財閥(コンツェルン)の御令嬢ってこと…?」

 

『お嬢様!?』

 

シエルの言葉にルーシィは言葉を発さず首肯する。彼女についてのまさかのカミングアウトに、ナツたちは目を見開いた。比較的常識人ではあるが、魔導士として時々自分たちに通ずる一面が多々見られていた彼女が、お金持ちのお嬢様という予想ができなかったから。

 

「ファントムのマスターはこう言ってた。あたしを連れ戻すように依頼したのはパパだって…そして…そのついでとして…妖精の尻尾(フェアリーテイル)を潰そうとした、って…!」

 

そう語る彼女は、膝に置いた手を握りしめ、声と同時に肩を震わせ、今にも俯かせている目から涙が出てもおかしくない表情だ。責任を感じているのだろう。確かに客観的な視点で見れば、妖精の尻尾(フェアリーテイル)にルーシィがいたことで、彼女を連れ戻す依頼を受けたという大義名分を得た幽鬼の支配者(ファントムロード)に、妖精の尻尾(フェアリーテイル)が襲撃された、と言う見方になる。本人にそんな気が無かったとはいえ、今このような状況になっている根本の理由が自分にあると感じるルーシィは、申し訳ないという気持ちで占められていた。

 

「まあ金持ちのお嬢様は狙われる運命よ。そしてそれを守るのが漢!」

 

「そういう事言うんじゃねえよ…」

 

腕を組みながらぼやくエルフマンの言葉に、ルーシィの思いを察したグレイが注意をする。するとハッピーが尋ねてきた。何故自分の身分を隠していたのかを。だがルーシィ自身、どうしても隠したかったわけでもないらしい。

 

「家出中だから…あまり話す気にもなれなくて…。一年間も家出した娘に関心なかった癖に…急に連れ戻そうとするんだもんな…。パパがあたしを連れ戻すためにこんな事をしたんだ…最低だよ…!!」

 

話を少し聞いただけでも察することはできた。ルーシィと父親との間に明らかな確執があったことが。血の繋がった家族だというのに、心を通わせることができていない。辛そうに告げるルーシィの様子に、シエルもナツも、誰もが彼女に声をかけることができない。

 

「でも…元を正せばあたしが家出なんかしたせいなんだよね…」

 

「それは違うだろ!悪いのはパパ…」

「バカ!!」

「おぐ!?…い、いや…ファントムだ…!」

 

エルフマンなりに励まそうと思って出した言葉なのだろうが、実の父親が元凶などと言われては尚のことルーシィの肩身は狭くなる。シエルは咄嗟にエルフマンの腹に肘打ちを食らわせて訂正させた。身長差のおかげでその方がちょうどよく当てやすかったらしい。ちなみに肘打ちを受けたエルフマンはしばらく腹を押えていた。

 

だがしかし、ルーシィの表情は未だ晴れない。自分の身勝手な行動がみんなの迷惑になってしまっている。自分が早々に家に戻ればそれで済むのだと、ルーシィは告げる。

 

そんな言葉を否定したのは、彼女をいち早く助けに行った青年だった。

 

「つーか『お嬢様』ってのも似合わねえ響きだよな。この汚ねー酒場で笑ってさ…。騒ぎながら冒険してる方がルーシィって感じだ」

 

ナツは彼女がギルドに入ってから…いや、ギルドに案内する前からずっとルーシィと共にしてきた。そこで彼が見たいてルーシィの様子は、お金持ちのお嬢様とは程遠い、自分たちの仲間として、良くも悪くも馴染んでいるただ一人の少女だ。妖精の尻尾(フェアリーテイル)に憧れて、ぶっ飛んだメンバーの一挙手一投足にツッコミを入れたり振り回されたり、想像を超える魔法の数々に感動していたり…。

 

そして、幽閉されていた幽鬼の支配者(ファントムロード)の本部から取り戻した時に、自分のせいだと責めながら、涙を流しながらもナツとハッピーに零した言葉は、よく耳に残っていた。

 

『それでもあたし…ギルドにいたいよ…!妖精の尻尾(フェアリーテイル)が大好き…!!』

 

「ここにいたいって言ったよな。戻りたくねえ場所に戻って何があんの?妖精の尻尾(フェアリーテイル)のルーシィだろ。ここがおまえの帰る場所だ」

 

その言葉は、今のルーシィにとって何よりの救い。生まれ育った家を捨て、憧れて入った場所。そこから離れてしまうことを覚悟さえしていたのに、ナツはそんな自分を突っぱねず、ギルドは彼女を受け入れてくれる。折れかけていた心に寄り添ってくれるような彼の言葉にルーシィは感極まったのか、その双眸から涙を浮かべ、そして流れ出した。

 

「泣くなよォ、らしくねえ…」

 

「そうだ!!漢は涙に弱い!!」

 

「だって…!!」

 

溢れ出したその涙をもうこらえることができない。両手で顔を覆い、涙を流すルーシィに、グレイもエルフマンもたじたじとなってしまう。そんな中シエルだけは違った。普段のような悪戯を行う笑みではなく、優し気な笑みを浮かべてルーシィに近づく。

 

「大丈夫さ、ルーシィ。妖精の尻尾(ここ)はどんな人も受け入れてくれる。拭いきれない忌まわしい過去を持っていても、辛い現実に打ちのめされて逃げたとしても、最後には笑って迎え入れてくれる」

 

顔を覆っているルーシィの左の肩に、温かい感触が生じる。思わず両手を放して前を見ると、感触の正体はシエルの右手。そして目の前にいるシエルの顔は年相応の、純粋な笑顔だった。

 

「俺も、ナツも、みんなもいる。みんながルーシィの味方で、家族だよ」

 

自分よりも年下の少年の言葉。だがそれを聞いた彼女は、再び涙を溢れさせる。

 

温かい。

ルーシィは、今までの人生の中で一番心が満たされるような感覚を味わった。過去にこれ程の温かい気持ちで心がいっぱいになったことがあっただろうか…。

 

本当に、妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入って良かった――。

 

 

 

しばらく涙を流していたルーシィだったが、それはギルドの中、否、町全体に響くような謎の地鳴りによってそれは止まることになる。

 

「外だー!!」

 

それを知らせたのは、マスター・マカロフをポーリュシカの元に送り届けた魔導士の一人、アルザック。知らせを受けてギルドの外へと向かう妖精の尻尾(フェアリーテイル)。ギルドの裏口からは、一見海と見紛う程に広大な湖が広がっているのが見える。だが、本来なら絶対に存在し得ないそれが、今魔導士たちの目の前に確かにあった。

 

「な…何だあれは…!!?」

 

声を出したのは誰だったのか、それを確認することもできない程に、全員がそれに注目していた。

 

まるで城のような巨大な建造物に、岩石で作られた台座からまるで生えたような機械の脚。それが左右に3本ずつ。6足歩行の生き物のように湖の上を妖精の尻尾(フェアリーテイル)目がけて、大きな地響きを鳴らしながら歩いていたのだ。そして建造物のてっぺんから挙げられた旗には幽鬼の支配者(ファントムロード)のギルドマーク。

 

「想定外だ…!こんな方法で攻めてくるとは…!!」

 

シャワーを浴びているときに響いた地鳴りにバスタオル一枚で駆け付けたエルザも、さすがに予想だにしなかっただろう事態。大胆な格好に誰もが反応できない程に、今この状況が凄まじいことを物語っている。

 

六足歩行ギルド・幽鬼の支配者(ファントムロード)―――。

それが、奴らの拠点としている本部の正体だった。

 

しばらく湖上を歩いていた建造物であったが、その動きは粗方距離を詰めてきた状態で停止。そして建物の一部。全体から見るとちょうど中心部に位置する場所から数段階に伸びる一本の鉄で出来た大砲が現れた。間もなくして大砲の発射口に収束される黒い魔力。見るに明らか、狙いは妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルドであった。

 

「ま、まさかアレを発射するのか!?」

「しかもアレ、魔導収束砲だ!!」

「ギルドが吹っ飛ばされるぞォ!!」

 

「全員伏せろォオ!!!」

 

全員に伝わる声量で叫びながら最前線へと駆けだすエルザ。勢いでタオルがその身から外れるが構いはしない。次第に彼女の身体が光に包まれ、その身は普段彼女も扱う換装魔法によって鎧に包まれた。

 

「ギルドはやらせん!!!」

 

金剛色を基調とし、身体全体を覆うほど頑強な作り。さらには頭部をも保護する兜。両肘の部分に取り付けられた身の丈ほどの大きな盾。

 

金剛(こんごう)の鎧』――。

エルザが身に纏う鎧の中で一番の超防御力を誇る鎧だ。これを出したという事は…。

 

「まさか、受け止めるつもり!?」

 

超防御力の鎧をまとい、最前線にて迎え撃つ。それしか考えられなかった。しかし、相手は人間ではなく複数人の魔力を結集して一気に解き放ち破壊する魔導収束砲。いくら最高級の防御力を誇る鎧であっても、下手をすれば死んでしまう。呼びかけて止めようとする者もいるが、彼女は一切退く気はない。

 

「「エルザ!!」」

 

「ナツ!ここはエルザを信じるしかねえんだ!!」

「お前もだシエル!これ以上は行くな!!」

 

エルザを助けようと必死にナツとシエルが手を伸ばすも、グレイ、エルフマンにそれぞれ身体を抑えられ、届くことはない。ギルドを狙う魔導収束砲、それを迎え撃とうとするエルザ。後方で見ているルーシィは恐怖で彩られた表情でそれを眺めることしかできない。

 

そしてとうとう…魔導収束砲は発射された。

 

湖を二つに割るほどの勢いで妖精の尻尾(フェアリーテイル)へと向かう黒き波動。

 

対するは装備した盾で身を固め、守ろうとする妖精女王(ティターニア)

 

両者はとうとうぶつかり合い、激しい拮抗を起こす。エルザ越しで感じる波動の勢いで起きる風圧に、後方に控える魔導士たちは身をかがめて伏せている。

 

次第に勢いが減っていく波動。だが、エルザの抱える盾と鎧も、衝撃に耐えきれず罅が生じ始める。やがて盾は淵の方から欠けだしていき、抑えきれない波動の余波がエルザの身体全体を襲う。

 

 

 

そしてとうとう、エルザの守りが崩れてしまった。粉々に砕けた鎧と共に宙を飛ぶエルザの身体。だがしかし、黒い波動も勢いを殺されエルザよりも後方へと行くことも無いまま霧散する。

 

魔導収束砲の威力は確かに絶大だった。エルザが立っていた場所よりも前方の地面がえぐり取られているのがその証拠。妖精の魔導士たちに安堵の空気が漂う。魔導収束砲を止めた妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の女魔導士。しかし…。

 

「エルザーー!!」

 

「エルザ!!しっかりして!!」

 

その代償もまた大きい。超防御力を誇る金剛の鎧を身に纏っていたとはいえ、身一つで魔導収束砲を受け止めた。鎧は砕け散り、彼女の身体には全体的に傷がついている。負担も明らかに大きい。戦力の一つが確実に削がれたことを全員が理解した。

 

《マカロフ…そしてエルザも戦闘不能…》

 

突如幽鬼の支配者(ファントムロード)から拡声器を通じて聞こえてきたその声。声の主はジョゼ。幽鬼の支配者(ファントムロード)のマスターにして、マカロフと同じく聖十大(せいてんだい)()(どう)の一人だ。

 

《もう貴様等に凱歌は上がらねえ。ルーシィ・ハートフィリアを渡せ…今すぐだ…!》

 

これは交渉とは程遠い、脅迫に似たものだった。主戦力を二人も失った妖精の尻尾(フェアリーテイル)に最早勝ち目は残っていない。早々に目当てのものを手に入れるための脅迫。そうとしか考えられなかった。

 

「ふざけんな!」

「仲間を敵に差し出すギルドがどこにある!!」

「ルーシィは仲間なんだ!!」

「そーだそーだ!!」

「帰れ!!」

「ルーシィは渡さねえ!!」

 

無論、それで簡単に渡そうとするなど、妖精の尻尾(このギルド)では行うわけがない。この場にいるすべての魔導士がジョゼの言葉に真っ向から反対し、声を上げる。

 

しかし、その声が今のルーシィの心をえぐるような刃となっていた。自分のためにここまで戦ってくれる者たちが、自分の事を大切にしてくれる者たちがいる。だがその為に、マカロフも、エルザも、動くこともままならない状態となってしまった。もしこのまま自分がファントムの元へと行かなければ、また誰かが傷つくことになる。

 

大切にしてくれるからこそ、思ってくれるからこそ、これ以上そんな姿を見たくない。自分が犠牲になればいい。そうすればもうこれ以上誰も被害に遭わない。

 

「あたし…あたしは…!!」

 

 

 

 

 

「仲間を売るくらいなら死んだほうがマシだっ!!!」

 

そんな思いを打ち砕くように、軋む体を起こしながら叫んだエルザの言葉に、ルーシィは息を呑んだ。そしてそれに続くようにシエルとナツも声を荒げる。

 

「おまえ等みたいなクズどもの要求なんか、誰が聞くもんか!ましてや俺たちの大事な仲間を、絶対に渡したりなんかしないッ!!!」

 

「オレたちの答えは何があっても変わらねえっ!!おまえ等をぶっ潰してやる!!!」

 

その叫びに呼応するように、雄叫びをあげる妖精たち。その言葉と、その思いに、ルーシィはまたも涙を流す。本当はもう傷ついてほしくない、犠牲になるのは自分だけでいい。

 

 

 

だけど、そのみんなの思いがたまらなく嬉しい。そう思う自分がいた…。

 

《ならば特大の魔導収束砲(ジュピター)を食らわせてやる!!装填までの15分、恐怖の中で足掻け!!!》

 

二度目の妖精と幽鬼による衝突が、今始まる…!!

 

 




おまけ風次回予告

シエル「へぇ~、最近はこんな魔法アイテムが流行りになってるんだ~。ふ~ん…」

ルーシィ「ちょ、ちょっとシエル!もう時間になってるわよ!?」

シエル「え?あ、本当だ!週刊ソーサラーに集中してたら忘れてた!!」

ルーシィ「もう!気を付けてよね!あたしが呼びかけなきゃどうなってたか…」

シエル「う~ん、何かに集中するとついつい時間を忘れることがあるんだよね…」

ルーシィ「それはあたしもあるけどね。小説書いてるときとか本を読んでるときとか。でも、何か予定があるときにはちゃんと知らせが来るから助かってるんだ~」

次回『15分』

シエル「知らせって、誰が知らせてくれるの?」

ルーシィ「あ、そっか。シエルはまだ知らないのよね?あたしの契約星霊、時計座のホロロギウム!」

シエル「ホロロギウムってそんな仕事もあんの!?」
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