FAIRY TAIL ~天に愛されし魔導士~   作:屋田光一

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ち・こ・く・しました…!!
やってしまいました、またも…。

少しでも余裕もつためにこの連休中で書き進め…ようとしてできなかった前科が…!

またもご迷惑をおかけすると思いますが、どうか見捨てないでいただければ幸いです…。

それでは本編へ!



マリオって罪なゲームですよね…(小声)


第17話 あたしの決意、そしてさよなら

魔導巨人の崩壊した上半身の裂け目の中から、神々しいとも言える純白の光が注がれる。その光量は膨大であり、その光を目に映している魔導士たちのほとんどが目を覆い、光を遮る程に。

だが、次第に彼らはその光への印象を変え始めた。その眩しい光は同時に、彼らに安らぎと温かさを感じさせるものとなっている。

 

「…マス、ター…?」

 

眩い光を浴びて、今まで閉じられていた瞳を開いた少年シエル。彼を背負っていたエルザはそれにいち早く気付いた。

 

「シエル、起きたのか」

 

「エルザ…これって…」

 

「ああ、『妖精の法律(フェアリーロウ)』だ」

 

妖精の法律(フェアリーロウ)』――。

聖なる光をもって闇を討つ。術者が敵と認識した者のみダメージが渡り、相手によってはその命すらも奪えるとされる、もはや伝説の一つとされる超魔法だ。

 

名の付く通り妖精の尻尾(フェアリーテイル)にはこの魔法を始めとした超魔法が残り二つ存在しており、審判魔法たる妖精の法律(フェアリーロウ)を含むその三つの魔法は『妖精三大魔法』としてギルドの文献にも残されている。

 

「(眩しいけど、暖かくて優しい光だ…マスターの魔力を、光から感じる…)」

 

意識を失ったままであったシエルがその光を身に浴び、目を覚ますことができたのは、光によって目を開かずにいられなかったのか、それとも妖精の法律(フェアリーロウ)の光が、シエルの魔力を回復させる効果を発したのかは定かではない。一つだけわかるのは、この光が妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士たちにとって、とても穏やかで優しい光であることのみ。

 

ある程度の時が経つと、光は収まっていった。光が収まるとともに、魔導巨人を中心に荒れていた空模様が晴れていく。轟音が鳴り響いていたことが嘘のように、周りの音はもう聞こえない。幽兵(シェイド)もすでに消滅しており、追加で放出されることも無くなっていた。マカロフによる超魔法の直後のこの静まりが意味することは一つ…。

 

『勝ったぁ!!ファントムに勝ったぞぉおおおっ!!!』

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)幽鬼の支配者(ファントムロード)。フィオーレを代表し、因縁も深かった二つのギルドによる衝突は、ここに決着がついた。不利になる状況も多々あったが、最後に勝利を掴んだのは仲間のために戦った妖精たち。勝利を実感した彼らは共に喜び合い、盛り上がり、歓声を上げ、中には互いを抱擁して喜びを表す者、戦いの終幕に胸を撫で下ろすものなど、様々だった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

明るかった空も日が沈みだし、空と街は夕暮れによって赤く照らされている。見るも無残に倒壊してしまったギルド・妖精の尻尾(フェアリーテイル)の前で、ギルドを家として過ごした仲間(家族)とマスター・マカロフが表情を曇らせていた。

 

「こりゃあまた…派手にやられたもんじゃのう…」

 

声にこもった感情は落胆。最初にガジルによって襲撃されたときは、その感情を表に出さずにこらえていたが、最終的には元の形に戻すことが出来そうもない程の惨状。(ギルド)を壊されたことへのショックは、やはり逃れられるものではなかった。そしてそれは他の者達も同じ事であり、特に落胆の他にも複雑な感情を抱いているものがいる。今回の衝突において原因とされてしまった少女、ルーシィだ。

 

「あ、あの…マスター…」

 

「んー?お前も随分大変な目にあったのう」

 

責める者はいない。だがそれでも自分が発端でギルドは崩され、仲間も傷つき、多くの悲しみが生まれてしまった。その事実がルーシィの心を強く締め付ける。

 

 

「そーんな顔しないの、ルーちゃん」

 

そんな彼女の顔を上げさせたのは、一人の活発そうな少女の声だった。ルーシィが声をした方に顔を向けると、病院で治療を受けて安静にしていた彼女の親友であるレビィ。そしてレビィと共に、チームメンバーであるジェットとドロイ、さらに今回ルーシィの避難と護衛を務めていたリーダスがいた。

 

「皆で力を合わせた勝利なんだよ」

 

「ギルドは壊れちまったけど…」

 

「そんなのまた建てればいいしな」

 

「ウィ」

 

彼らは自分たちの負傷の事も、その原因も全く話題に出さず、ルーシィに笑顔を向けている。それどころか、ルーシィの出自、そして今回の騒動の流れを聞いた上で、誰もルーシィのせいとは思っていないと主張する。

 

「ていうかオレ…役に立てなくて…あの…ゴメン…」

 

「そんな…ことっ…!」

 

さらには、ルーシィを探し出して連れ出そうとしたガジルを止められず、負傷してしまったリーダスが、彼女を守ることができなかったことを後悔して謝罪する。もとはと言えば自分が発端だというのに、謝る必要などないのに、心の中にある仲間への想いが溢れそうになる。

 

「ルーシィ。楽しい事も、悲しい事も、全てとまではいかないがある程度は共有できる。それがギルドじゃ。一人の幸せはみんなの幸せ、一人の怒りはみんなの怒り、そして一人の涙はみんなの涙。自責の念にかられる必要はない、君には、みんなの心が届いている筈じゃ」

 

マスター()のその言葉に、仲間(家族)の温かい笑みに、想いが涙となって溢れそうになるのを、彼女は両手を覆ってこらえている。数々の悲しみを生み出した自分が、ある時を境に家族の温かさを受けられなくなった自分が、これ程幸せな思いをしていいのか…?

 

「顔を上げなさい。君はもう、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の仲間なんだから」

 

心の問いに答えるかのように、マスター・マカロフが言葉をかける。認めてくれる。覆っていた両手を外し、俯かせていた顔を上げる。溢れていた涙がこぼれて彼女の足元を数滴が濡らす。もう、こらえることができない。こらえる必要もない。

 

大きく声を上げて、目から多くの涙を流して、彼女はまるで子供のころに戻ったように泣いた。仲間はみんな笑顔だ。一部の者達は彼女の涙にもらい泣きをしながらも、優しく笑顔を浮かべる者ばかり。立つこともできずに膝をつきながら泣き続けるルーシィをレビィが優しく抱きしめる光景を見ながら、シエルも彼女に笑みを向けていた。ようやく、彼女が抱えていた悲しみが和らいだのだろう、と…。

 

 

 

 

「(それにしても…ちと、派手にやりすぎたかのう…?こりゃあ評議院も相当お怒りに…いや待て…!?下手したら、禁固刑…!!?お怒りと言えば、シエルの“天の怒り”使用の事も考えると、最悪…解散!!!?)」

 

誰もが大泣きするルーシィに笑みを浮かべている空気の中で、マスター・マカロフも大声をあげて泣き出した。エルザを始めとして何故か突然泣き出したマスターの、先程ルーシィを励ました時と大違いの姿に一部の者達が目を見開いて彼を凝視していた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

その後、妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーたちの平穏はすぐには訪れなかった。と言うのも、幽鬼の支配者(ファントムロード)との衝突が決着した直後、魔法評議院傘下の強行検束部隊『ルーンナイト』によって、一同は囲まれたのだ。早くも騒動をかぎつけて、全員が連行される羽目になった。余談だが、すぐさま逃げようとしたナツは真っ先に捕まり、その様子を見て他の者達は大人しく連行されたそうだ。

 

そして軍の駐屯地に連行され、毎日取り調べを受ける日々。それが落ち着いたのは一週間経った頃だった。妖精の尻尾(フェアリーテイル)に対する処分は、評議会の後、後日下されることとなっている。しかし状況証拠や目撃証言はファントムの襲撃を立証しており、妖精の尻尾(フェアリーテイル)側の処分はそう重くならないだろう。

 

 

 

 

ある一件を除いて…。

 

 

「本当に…当時の事を覚えていないのかね?」

 

「覚えてない、と言いますか…記憶が曖昧で…霞がかっていると言いますか…」

 

ほぼ全員が取り調べから解放され、ギルドの復旧、再建築の作業を行っている最中、ギルド最年少のシエルのみ、未だルーンナイトからの取り調べを受けていた。疑いの目でシエルに再三問いかける男性に対し答える少年は、普段とは打って変わって身を縮こまらせているうえに目が泳いでいる。

 

その一件とは彼が発動させた“天の怒り”についてだ。ただでさえシエルが扱う天候魔法(ウェザーズ)は人智を超えており、「その気になれば世界の(ことわり)をも変える魔法」だとエルザに言わしめるものだ。

 

一年前と同様彼の怒りが頂点に達し、暴走に近い状態で発動されたそれが再び起こされた。一度目は廃村、二度目は幽鬼の支配者(ファントムロード)が犠牲となったが、もしこれを民間人が多くいる場所で使用されればそれこそ犠牲と損害は計り知れない。そしてこれの厄介なところは、暴走状態に近いものであるが故にシエル自身の理性と意識が“天の怒り”発動直前から魔力切れの際まで限りなく薄まることだ。

 

制御できるものであるならシエル個人への注意喚起、及び警告で済ませられるのだが、シエル本人もその制御がままならない。つまりいざと言う時の抑止力が無いのだ。基本的に問題を起こすことが多い妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーには珍しく、破壊行為を多発する面はないのだが、時として甚大な被害をもたらす恐れがある彼を野放しにすることもできないのだ。

 

しかしこの取り調べ機関の中で“天の怒り”に関する処遇の情報はあまり多くない。前例ではただの異常気象による自然災害で済ませられたが、二度も同じような現象が起きたとあってはさすがに不自然だ。以降も取り調べを続けたがシエルも、部隊の者も頭を抱えて好転することはなく…。

 

「…仕方がない…。今ある判断材料を提示して、評議員の方々の判断を仰ぐことにしよう…」

 

「申し訳ない、お手数かけます…」

 

若干の不安を抱えたままであるが取り調べは終了となった。こうして最後の最後にルーンナイトから解放されたシエルは、疲労と不安のこもった重い足取りでギルドへと戻る道中を歩いていた。

 

「ようやく終わった…。けど、どうなっちまうのかな…?」

 

シエル自身が“天の怒り”を発動させていた時に覚えていたのは、幽兵(シェイド)からの拘束を抜けたこと、雷雲を呼び寄せたこと、姿が見えたファントムの魔導士一人を攻撃したら逃げていったこと、そしてナツの声が聞こえたこと。それ以外は怒りにかられていたのか、ほとんど意識がはっきりしておらず、今挙げたことに関しても確実に覚えているわけでもない。自分が犯した実態によっては重罪に問われる可能性も…。

 

それを考えると彼の口からため息が漏れだした。今後の課題は自分の暴走をいかに制御できるかになるのだろう。だがその課題に取り組めるかどうかも、今は怪しかった。

 

「ん…?」

 

そうしてギルドへ向けて歩いていると、見覚えのある姿がシエルの目に映った。桜髪に白い鱗柄のマフラーをつけた青年、白い翼が生えた青い毛皮のネコ、黒髪の半裸の青年、そして長い緋色の髪の女性(何故か建設現場の作業員のような作業服を身に着けてる)だ。

 

「おーい、エルザー!何してんのー?」

 

その内の緋色の髪の女性・エルザに声を張って呼びかけると全員が少年の方へと目線を向けた。

 

「おお、シエル!ようやく終わったのか!?」

 

「随分なっげぇこと縛られてたな」

 

「まあ、事が事だし…」

 

取り調べを最後に終えたシエルに、ナツとグレイが彼に声をかけた。彼らは確か壊されたギルドの再興を行っていたはずなのだが、どこに向かうつもりなのだろうか?と純粋に疑問を感じていた。

 

「ルーシィの家に向かう所だ。ここしばらく姿を見ていないから様子を見にな」

 

「そうだったの?」

 

「あい、あとロキがこれ見つけたからルーシィに渡しといてって」

 

ずっと取り調べを受けていたことでギルドの様子を知らないシエルは、ルーシィが姿を見せていないことを初めて知った。そして続けざまにハッピーが取り出したルーシィの契約している星霊たちの鍵束を見せて補足する。最初にファントムの魔導士に捕まった際に落としたのだ。それをロキが数日かけて探し出して見つけたらしい。

 

「星霊魔導士が苦手だって言ってたロキが、珍しいな…」

 

「何だかんだ言って、あいつもルーシィを気にかけてるんだよ」

 

話によるとロキ自身は「フェミニストはつらいな」と零していたらしいが、やはり仲間であるルーシィの事は気にかけていたようだ。実は割と親交の深いグレイがフォローに似た言葉をかけている。

 

「そうだ、お前もルーシィんとこ来るか?」

 

「まあ、ギルドに行く前に俺も顔見せといた方がいいよね。うん、そうする」

 

そうしてシエルも加えてルーシィの住む家へと向かうナツたち。距離もそんなに離れてないため直ぐに到着し、彼らは各々彼女の家に入り込む。ナツとハッピーは窓から、グレイは煙突の下の暖炉から、入り口から普通に入ったものはエルザとシエルしかいなかった。そんなエルザも入って早々何故かルーシィの家にあるカップで紅茶を飲んでいたのだが…。「まともに入るのは俺だけか…」と溜息混じりのシエルの呟きが部屋に響いた気がした。

 

「あれ?」

 

と、ここで全員気付いた。いつもだったら「あたしの部屋ーーー!!」と言う叫び声を上げながらルーシィのツッコミが入るのだが、彼女の声すら全く聞こえない。別の場所にいるのだろうか?と予測を立てる。真っ先に動いたのはグレイだ。

 

「風呂か…!?お約束の展開が待っていそうで、申し訳ねぇが!!」

 

 

 

「いねぇ」

 

「風呂のチェックはぇえよ!!つか入ってんじゃねぇ!!」

 

どこか期待に満ちた表情で湯気が満ちる風呂場のカーテンを開けたグレイの目に映ったのは、服を着たまま湯船に浸かって否定のジェスチャーをしながら答えるナツだった。色んな期待を裏切られた上に謎の奇行をするナツに対してグレイが叫ぶのも無理はない…が…。

 

「女子がいるかもしれない風呂場に堂々と乗り込むなケダモノども!!」

 

「「お前こそ風呂場で魔法使うなーー!!」」

 

思春期の男たちがあまりにもオープンスケベである様子に、思わずシエルは風呂場に乗り込んでいる二人に向けて豪雨(スコール)を撃ち放つ。双方ともにツッコミどころ満載だ。だが一応風呂場の被害が一番少ない豪雨(スコール)を選んだのは賢明かもしれない。

 

「出かけているようだな」

 

「あんたも何しに来たんだ!くつろぎ過ぎだろ!!」

 

そしてエルザに至っては風呂上がりのようなバスタオル姿でいつの間にか取り出したケーキをつまもうとしている。本当に我が家のようなくつろぎ様にツッコミが止まらない。普段ルーシィに任せているせいで彼女の苦労が身に染みて実感できる気がする。

 

「ルーシィ~!出てきてよぅわあああっ!!?」

 

すると先程から絶対に人間がいるようには見えない場所ばかりを探していたハッピーの悲鳴が聞こえた。見て見ると数十枚はある未開封の手紙にハッピーが埋もれていた。

 

「手紙…それもこんなに沢山…」

 

「『ママ、あたしついに憧れの妖精の尻尾(フェアリーテイル)に入る事が出来たの』…」

 

「おいおい勝手に読むもんじゃねえぞ」

 

床に散開した手紙の内の一通をナツが取り出して読み始める。グレイがそれを制止しようとするが、勝手に人の家に上がり込んでいる時点でもうその説得力はない。現にナツは一切気にせず手紙の続きを読みだしている。

 

「『今日はエルザさんって人に会ったの!カッコよくてキレーで、あのナツとグレイがね…』」

 

自分の話題を書かれていたことも気恥ずかしいが、率直に褒められる文言を聞かされてエルザは思わず頬を染めた。それを聞いてシエルも気になったのか手紙の内の一枚を開けてそれを読み始める。

 

「『妖精の尻尾(フェアリーテイル)にはあたしと歳が変わらない子もいっぱいいるの!中にはシエルって言う、あたしよりも年下なのにしっかりしてて強い魔導士もいるのよ。悪戯好きなのが玉に瑕だけど…』俺の事も書いてる…」

 

「これ全部、ママへの手紙か?」

 

「みたいだね、なんで送ってないんだろ…?」

 

書いたのはルーシィであり、宛先は彼女のママ(母親)であることは確実だ。しかし、何故その手紙が送られずに彼女の部屋にしまってあるままなのか、そこが謎である。すると、手紙とは別の方、ルーシィが普段使っている机の上にある書置きを見つけたエルザが彼らに声をかけた。

 

「これは、ルーシィの書置きだ…」

 

そう言ってエルザはその書置きをシエルたちに見せた。そこに書かれた内容は…。

 

 

 

 

 

 

―――I will go home(家に帰ります)

 

 

 

 

『なっ、何でぇぇえええっ!!?』

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

四方を山に囲まれた平地の中に、一軒の広大な庭を持つ豪邸が一つと、豪邸と比較すると小さな家が数軒。その中の豪邸こそが、ハートフィリア財閥(コンツェルン)の代表が抱える家であり、その令嬢たるルーシィの実家・ハートフィリア邸である。

 

その豪邸の一室、代表であるルーシィの父が業務を行う本宅の書斎の前で、煌びやかな桃色のドレスを身に纏ったルーシィは、一つ呼吸をして声を放つ。

 

「ルーシィです。ただ今戻りました、お父様」

 

「入れ」

 

一年もの間家出していた自分の娘が帰ってきた際、大喜びで彼女を取り囲んだ使用人たちとは打って変わり、自分が待つ書斎の方に来いと命じた父。そして今も、ただただ簡素に感情の揺らぎもなく娘に命じるかのように答えている。

 

「ようやく帰ってきたか、ルーシィ」

 

書斎の奥にて窓の外へと身体を向けていたその男性は、ルーシィが部屋に入ってきたことで、ようやくその身体をルーシィに向けた。外からの光を浴びてルーシィから見れば彼の顔に影が差しているように見える。娘である彼女と比べて色素が濃い目の髪はオールバックに、そして年季を重ねているであろう口元には髭が生えている。

 

名は『ジュード・ハートフィリア』

ハートフィリア財閥(コンツェルン)の代表にしてルーシィの父親。そして今回幽鬼の支配者(ファントムロード)にルーシィを連れ戻すように依頼を出した張本人。

 

「何も告げずに家を出て申し訳ありませんでした。それについては深く反省しております」

 

「賢明な判断だ。あのままお前があのギルドにいたのなら、私はあのギルドを金と権威の力をもって潰さねばならないトコだった」

 

深々と頭を下げるルーシィに対して淡々と父は告げる。それを耳にしたルーシィは、下げている頭を上げることもしなければ、表情を変えることも無い。

 

「やっと大人になったな。身勝手な行動が周りにどれだけの迷惑をかけるのか、身をもって良い教訓になっただろう。お前はハートフィリアの娘だ。他の者とは違う。住む世界が違うのだ。それを知ることができたのは幸運だったな、ルーシィ。」

 

淡々と言葉を続ける父に、反応を示さず微かに目を細める。既に彼女は覚悟を決めている。己の人生を変貌させてでも決めた覚悟…。

 

「今回お前を連れ戻したのは他でもない。もう一つの幸運。ジュレネール家の御曹司との縁談がまとまったからだ」

 

ジュレネール家の御曹司・サワル―公爵との婚姻。

この件に関してルーシィは予想していた。以前からルーシィに興味があると話も聞いており、実際に顔を合わせたこともある。低身長で肥満な体型であり、自分に下品な眼差しといやらしい手つきを向けていたことは今でも覚えている。

 

「ジュレネール家との婚姻により、ハートフィリア鉄道は南方進出の地盤を築ける。これは我々の未来と幸運を決める結婚となるのだ」

 

「幸運…」

 

「そしてお前は男子を産まねばならん。ハートフィリアの跡継ぎをな」

 

言葉の端々から、自分を仕事のための道具としか見ていないとされる発言が見られている。だがそれは昔からそうだった。あの時を起点に、彼は自分を娘と見なかった。だが彼女の心は揺るがない。覚悟も、もう揺るがない。

 

「話は以上だ。部屋に戻りなさい」

 

 

 

 

 

「お父様、勘違いしないでください」

 

淡々と話を告げていたジュードの表情に、初めて驚愕が現れた。ルーシィの言葉が一瞬理解できなかったからである。

 

「私が戻ってきたのは自分の決意をお伝えするためです。確かに何も告げず家を出たのは間違ってました。それは逃げ出したのと変わらない…。だから、今回はきちんと自分の気持ちを伝えて家を出ます!」

 

「ル…ルーシィ…?」

 

そう、彼女は覚悟を決めていた。それは今度こそ自分の父と、家と、決別をする覚悟。最初に何も告げずに家を出た時とは違う。揺らがぬ覚悟をもって、堂々と実の父親とたもとを別つ覚悟だった。

 

「人に決められる幸運なんてない!自分でつかんでこその幸運よ!あたしはあたしの道を進む…結婚なんて勝手に決めないで!!」

 

黙って己の話を聞いていたと思っていた娘の、強い意志を感じさせる反論に、ジュードはとうとう動揺を隠せなくなった。更にルーシィの主張は続いていく。桃色の妖精を象った紋章が刻まれた右手を勢い良く振り、その人差し指を父に向けて言い放つ。

 

「そして、妖精の尻尾(フェアリーテイル)には二度と手を出さないで!今度妖精の尻尾(フェアリーテイル)に手を出したら、あたしが…ギルド全員があなたを敵とみなすから!!」

 

白いコルセットを除いて、己の身に纏っていた桃色のドレスを引き裂き、彼女は堂々と宣言する。過去の自分、ハートフィリアの娘としての自分との決別を現すその行動。だが、それに後悔はない。

 

ジュードが幽鬼の支配者(ファントムロード)を仕向けなければもう少し話し合えたかもしれない。だが、過ぎた時間はもう戻せない。彼はルーシィの大切なものを傷つけ過ぎた。

 

「あたしに必要なものは、お金でも綺麗な洋服でもない。あたしと言う人格を、認めてくれる場所…!妖精の尻尾(フェアリーテイル)はもう一つの家族。ここよりずっと温かい場所なの」

 

自分の右手に刻まれた妖精の紋章を見せながらルーシィは語る。自分を家族と認めてくれて、自分の居場所と告げてくれて、ルーシィにとってはただそれだけで満たされた気持ちになっていたのだ。

 

短い間とはいえ母と過ごした家を離れることも、幼い頃から世話をかけてくれた使用人たちと別れることも、本音を言えば寂しく、辛いものがある。

 

「でもね…もしもママがまだ生きていたら…あなたの好きな事をやりなさいって言ってくれると思うの…」

 

儚げに微笑む娘の表情。そしてその横で、今はもういない妻が、娘と同じ微笑みを浮かべている姿が、ジュードには見えた。思えば不思議であり、ありえないとも言える光景。だが彼はそれを本当に母が娘の応援に来たようにも見えたのだ。

 

二の句を告げることが出来ずに立ち尽くす父に、ルーシィは背を向けて歩き出す。あの時はただ逃げ出しただけだった。しかし、もう逃げはしない。

 

「さよなら、パパ…」

 

堂々と告げた彼女は、生まれ育った家を出た。今度こそ本当に、己の家と別れを済ませたのだった。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

敷地内に点在する均等に並べられた石の列。それはすべて墓石だった。この周辺に住まう者達の遺族が眠っている場所。

 

 

そして、ルーシィの母・『レイラ・ハートフィリア』は一際目立つ女神像の下にその墓が建てられていた。

 

母の墓石の前に立ち、墓参りを済ませたルーシィ。そんな彼女の耳に、唐突に自分の名を呼ぶ声が届いた。

 

『ルゥゥウシィーー!!!』

 

「何でぇ!!?」

 

ナツ、ハッピー、シエル、グレイ、そしてエルザが必死の形相で自分目掛けて走りかけてくる光景を見て彼女は度肝を抜いた。何故自分の実家に来たのか、と言うかどうして知っているのか、泣きながら胸に飛び込んできたハッピーを宥めながらルーシィは彼らから話を聞いた。

 

どうやら自分が残した書置きを「ギルドを辞めて実家に戻る」と解釈した一同が連れ戻すために駆け付けたそうだ。だが実際には一度家に帰って今度こそ別れを告げるために、そして二度と妖精の尻尾(フェアリーテイル)に危害が及ばないようにするためだった。それを聞いた一同は一様に呆然。その後はナツは怒り、エルザは笑い、グレイは意気消沈とし、ハッピーも喜びで涙を流したりと大騒ぎ。シエルに至ってはわざわざ書置きを持ってきて「もうちょっと細かく書いてよ作家志望!」といじりだして彼女を慌てさせる。

 

だが、そんな彼女に浮かぶ笑顔は、とても輝やかしいものだった。

 

 

 

書斎の窓からその様子を見ていた父が、母である妻が亡くなる前によく見た笑顔だと、思い出すほどに。

 

 

 

「皆…心配かけてごめんね…?」

 

「気にするな、早合点した私たちにも非はある」

 

「取り越し苦労だったわけか…」

 

「散々ルーシィを引っ掻き回したりしてるし、たまにはいいよね、これも」

 

豪邸を後にし、帰路に着き出した一同はルーシィとともに歩きながら話を繰り広げている。後から聞いた話によると、母親の墓参りも兼ねた里帰りであったらしい。話題には出さなかったが、母への手紙を出さなかった理由がこれで分かった気がすると、シエルは心の中で考えていた。

 

「ハッピーなんかずっと泣いてたぞ」

 

「ナツだってオロオロしてたじゃないか?」

 

「し、してねえよ…!」

 

「な、なんかごめんね…?」

 

本当に散々心配かけていたのだと改めて実感したルーシィは、以前の騒動とはまた違った自責を感じている。だが、自分を案じてこうして迎えにまで来てくれた彼らに、改めて温かみを感じていた。

 

「しっかし、やけにでけー街だよな」

 

「そりゃ、国有数の資産家がいる街だし」

 

「だが、のどかでいいところだな」

 

ハートフィリア邸を擁する街を横断しながら、彼らは雑談に花を咲かせ、ギルドへと戻っていくの―――

 

「あ、違うの、ここは庭だよ。あの山の向こうまでがあたしん()

 

 

 

 

 

 

………………。

 

 

 

 

 

「あれ?どうしたの、みん…」

 

「お嬢様キターーーーー!!!!」

「さり気自慢キターーーーー!!!!」

「ロイヤルジョークいただきましたーーーーー!!!!」

 

ルーシィ の 天然規格外発言!!

 

グレイ と ナツ と シエル が 

混乱状態に なった!!

 

三人は 訳も分からず ハッピーの物真似をしながら

小躍りしている!!

 

「ナツとグレイとシエルがやられました!!エルザ隊長、一言お願いします!!」

 

「ああ…」

 

ハッピー は エルザ に

伝令 を 使った!

 

 

 

「空が…青いな…」

 

駄目だ! エルザ は 混乱している!

エルザは 夕焼け空に向けて 呟いた!!

 

「衛生兵ーーーー!!エルザ隊長が故障したぞーーー!!」

 

『うぱーーーーーー!!!』

 

パーティ は 全滅した…

 

 

 

「…っ…あははっ…!」

 

 

 

―――天国のママへ…あたしは、元気にやっています

 

 

―――あのね、ママ…あたしはね、みんなと一緒じゃなきゃ、生きていけないと思う

 

 

―――だって、妖精の尻尾(フェアリーテイル)はもうあたしの一部なんだから

 




おまけ風次回予告

シエル「今回の話見て思ったんだけどさ、俺の影がちょっと薄くなってる気がするんだよね…」

ルーシィ「突然のメタ発言!?どうしたの急に!?」

シエル「いや~、前々回は出てる方だよな…って感じは出してるけど主人公としてどうなのかな~って部分が結構あってさ」

ルーシィ「ええと…自分で言うのもなんだけど、今回はほら、あたしメインの話だったし…?」

シエル「次回が俺のメインになるって確証もないし…」

ルーシィ「何かやさぐれてる…めんどくさくなってきたわ…」

次回『NEXT GENERATION』

ルーシィ「ほら!メインでもサブでも主人公がいなきゃ話にならないんだから、次のためにもしゃんとする!!」

シエル「は~い」
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