FAIRY TAIL ~天に愛されし魔導士~   作:屋田光一

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早めに手掛けて早めに書き上げて終わらせるぞー!と意気込んで昨日の夜から書き始めたのに結局間に合いませんでした、どうなってんの!?

多分一通り書き上げた後ボリュームが少なく感じて、急遽次話の冒頭に入れる予定だったオリジナルシーンを入れたせいかもしれない…。

最近急激に寒くなってきたので、体調管理も気をつけなければ…。皆さんも注意してくださいね~。


第22話 星霊王

「星霊・ロキ…。ううん…本当の名は…『獅子宮のレオ』」

 

ただただ衝撃だった。それが、シエルが今抱いたロキの真実に対する感想。ロキが星霊…それも黄道十二門の一体である獅子宮のレオ?何故正体を隠してギルドに?そして何故それをルーシィが知っている?様々な疑問が頭を巡るも、内容が内容だけにすぐさま聞くことができない。だがその疑問を一つずつ解消していくように、彼らは語りだした。

 

「よく気づいたね…。僕が星霊だって…」

 

「あたしも、たくさんの星霊と契約している星霊魔導士だからね。あんたの真実に辿り着いた…。でも、もっと早く気付くべきだったんだよね…」

 

ルーシィからの話によると、鳳仙花村にて宿を抜け出したルーシィは、その後とある男二人組に絡まれていたところをロキに助けられた。その礼も兼ねて、ロキと食事をしたそうだ。その際のロキの言動からただならぬ事情を察知したルーシィは、それを基に彼の真実を見抜いたそうだ。

 

星霊との契約は、所有者(オーナー)が死亡した時点で解除される。本来であれば契約が解除された時点で星霊は強制的に星霊界に戻されるらしい。

 

ロキ(レオ)所有者(オーナー)だったカレンが死んだ時点で、彼も星霊界に還されるはずだが、今目の前にいるようにロキは人間界に残っている。ルーシィは、彼が何らかの理由で帰れなくなったと考えた。

 

「人間が星霊界では生きていけないのと同じように、星霊も人間界じゃ長く生きてはいけない…。生命力は徐々に奪われ、やがて死に至る…」

 

その説明を聞いて、シエルは息を呑んだ。思い出したのだ、本で読んだある一説を。星霊が人間界に長い期間存在することはできない。数か月もしないうちにその身体は消滅する、と。だが、今目の前にいるロキはが妖精の尻尾(フェアリーテイル)に来たのは…。

 

「ちょっと待って…!?ロキが妖精の尻尾(俺たちのギルド)に来たのは、3年近く前…少なくともそれだけの間、生命力が奪われているってこと…!?」

 

「3年!?1年でもあり得ないのに…!!」

 

「ああ…もう限界だよ…。全く力が出ないんだ…」

 

シエルが告げた事実にルーシィが驚きの声を上げる。勿論その長い期間人間界に留まり続けた代償は大きい。ロキ自身も最近はよく体が透けることを実感しており、自分の力が全く入らないことも自覚していた。だからだろう…。消えゆく自分に未練が残らぬよう、ここ最近はあらゆるものから避けていたのは…。

 

「あたし…助けてあげられるかもしれない!帰れなくなった理由を教えて!!あたしが(ゲート)を開けてみせるから!!」

 

星霊魔導士である自分なら彼を助けられるはず。このまま彼を死なせるわけにはいかない。その一心で告げたルーシィの救いの手。だがロキはそれを取ろうとせず「助けはいらない」と切り捨てる。それでルーシィは納得するはずもないが、ロキはさらに続けた。

 

「帰れない理由は単純なんだ。所有者(オーナー)と星霊の間の禁則事項を破ってしまったんだ。結果…僕は星霊界を永久追放となった」

 

黄道十二門であるロキ(レオ)が永久追放。

予想もしなかった理由と境遇に、ルーシィは言葉を失う。しかし、これはまだ序の口だった。ロキが破ってしまったとある禁則事項。星霊を使役する魔導士に対し、その力で応えるべき星霊が犯してはならない罪。その罪による罰であるなら、この“死”でさえも受け入れられる。

 

 

 

 

「僕は裏切り者の星霊だ。所有者(オーナー)であるカレンを、この手で殺した…」

 

青い天馬(ブルーペガサス)の星霊魔導士、カレン・リリカ。彼女の死を招いた獅子宮のレオ。その真実はとても残酷で、誰にとっても不幸で、救いのない、悲しい顛末だった。

 

 

X781年…今から3年前。青い天馬(ブルーペガサス)にっ所属する星霊魔導士であったカレンは大きな人気を博していた。週刊誌に何度も特集を組まれるほどの美貌を持ち、希少な黄道十二門の鍵も持っていることで、注目を集めていた。

 

しかし、そんなカレンにはある問題があった。それは性格。何人もの男を引きつれて貢がせてギルドを闊歩し、他の女性メンバーに煙たがられていたうえに、それに鬱陶しく感じれば彼女が契約している『白羊宮のアリエス』―頭部の羊の角を除けばもこもことした白いウールの服を着た可愛らしい少女の容姿をした内気な性格の黄道十二門―に押し付けて相手をさせていた。ある時は相手の魔導士の攻撃を受ける盾にさせたこともあった。周りに対しても、身内に対しても、彼女は傲慢な性格だったのだ。

 

そんな時だ。自分が契約している星霊に対する仕打ちの酷さに見かねたマスター・ボブは、常に浮かべている笑顔のまま彼女をやんわりと注意した。しかし「星霊は所有物であり、所有者(オーナー)がどう使おうと勝手だ」と主張するばかりで、まともに聞こうとしない。その言葉を聞いて、普段とは打って変わって怒りに満ちた表情を浮かべて忠告するマスター・ボブの様子を見たカレンは、見当違いな結論に行き着いた。

 

 

「アリエスがマスター・ボブにいらんことを吹き込んだ」と。

 

全くの事実無根な解釈に対し、カレンはアリエスを呼び出して、明らかな八つ当たりを始めた。終いには、人間界にいれば生命力を奪われ続ける星霊のアリエスを、7日間人間界に留めおくという所業まで行おうとする。そんなアリエスを助けるために無理やり入れ替わったのが獅子宮のレオ―当時のロキである。

 

ロキは、星霊への素行の悪さが限度を逸していること、他の星霊たちが彼女に鍵が渡るのを恐れていることを伝え、人間界に留まり続けることを選んだ。星霊魔導士は基本一度に一体しか星霊を呼び出すことができない。二体を同時に呼び出すことができるのは魔力を一般以上に持つ者。カレンはそれが出来ない部類だったため、ロキが人間界にいる間はアリエスを始め、どの星霊も呼び出すことができなかった。

 

そしてロキは、自分を星霊界に戻したいのなら、自分とアリエスの契約を解除するように命じた。黄道十二門の星霊を二体も手放すなどできないと、彼女は勿論拒否。だがロキは頑として彼女の言を受けず、自分たちを解放するように説得した。

 

最初は生命力を奪われ、身体にも負荷がかかっていたロキであったが、3ヶ月もすればその負担にも慣れてきた。もうそろそろ許してあげよう。そう思ってカレンの元へと戻ろうとしていた。だが、その直後にロキを訪れたマスター・ボブによって彼は知った。

 

 

 

仕事に向かった先で、星霊の二体同時開門に賭けて失敗し、カレンが命を落としたことを。

 

「あの時ほど後悔したことはなかった…。僕はただ、カレンに分かってほしかっただけだったのに、って…」

 

星霊は道具じゃない。意思も、心も、人間が持つものと変わらないものを抱く存在であることを。分かってほしかったが故の行動。決してカレンが死ぬことを望んでいたわけではなかったのだ。だが、もう全てが遅い。失った人の命は二度と戻りはしない。己の罪を償うには、自らもその身を消さなければ対価とならない。それがロキの覚悟だった。

 

彼の罪。そしてそれを償う覚悟。聞き終わったシエルとルーシィは何も言えずにいた。直接ではないにしろ、所有者(オーナー)の身を守るべき星霊がそれを放棄し、死なせてしまったことは、ロキが殺したのと同義なのだろう。すると、ロキは突如立つ力を失ったように身体をふらつかせて腰を地に着けた。突如起きた出来事に二人はロキの元に駆け寄る。

 

「そろそろ来たか…!」

 

「来たって、まさか!?」

 

「ああ、僕の消える時間だ…」

 

「ちょっと!しっかりしなさいよ!!」

 

最早ロキはいつ消えてしまってもおかしくない状態だ。ルーシィが必死に呼びかけるも、ロキの身体はあちこちが何度も透けては戻るのを繰り返しており、ロキの顔色も秒を刻むごとに悪くなっていく。

 

「あの日を境に…星霊界に帰れなくなった…。主人の命令に背いた星霊を拒否しているんだろう…」

 

気を紛らわせるために色々なことをした。だがその度にもういないはずのカレンがこちらを呼んでいるような錯覚を覚えた。今ここで…カレンの墓の前で消滅する日をロキは待っていた。そしてついにその時が来たのだと…。

 

「ルーシィ…最期に君のような素晴らしい星霊魔導士に会えてよかった…。シエル…ここにルーシィを連れてきてくれて…感謝してるよ…。ありがとう…。」

 

「そ、そんなことで礼を言うな!消えないでくれよ、ロキ!!」

 

どんなに呼び留めようとも、もうロキ自身でさえ止めることはできない。妖精の尻尾(フェアリーテイル)の仲間たちにも最期の言葉を伝えてほしいと頼むロキに、シエルは何もできずに言葉を詰まらせる。己の無力さに対し、悔しさが募る。

 

「いや!!」

 

そんな二人の耳に響いたのは、ルーシィの否定だった。このままロキを死なせるわけにはいかない。

 

「絶対助ける、諦めないで!あんたは星霊界にさえ帰れたら、生命力を回復できるのよ!!絶対帰らせてあげる!!」

 

星霊魔導士である自分ならそれが出来る。そう信じて疑わないルーシィの言葉に、ロキの目が見開かれる。だが、いかに優秀な魔導士であろうとそれは不可能。星霊界の掟は星霊にとって絶対なものなのだから。

 

それでも、ルーシィには納得できない。ロキが帰れなくなった理由として、どうしてもおかしいと思うのだ。ロキがアリエスを思ってしたことは、カレンを殺したことにはならないと。不幸な事故なのだと。だんだん消えかかっている部分が多くなっていくロキの身体に腕を回して、強く抱きしめながら、ルーシィは彼を助けようと必死に叫んだ。

 

「開け!獅子宮の扉!!ロキを星霊界に帰して!!…開いて…お願い…!!」

 

鍵を介して星霊が通る(ゲート)を開閉できる星霊魔導士。鍵は確認できないが、星霊自身の身体ならば通すことができると考え、彼を帰そうと魔力を放出する。しかし、彼女が何度呼びかけてもロキを戻る門が開かない。

 

「ルーシィ…もういいんだ…やめてくれ…」

 

「よくないっ!目の前で消えていく仲間を放っておけるわけないでしょ!?」

 

その言葉はロキだけじゃなく、シエルの心にも響く。今シエルは、ロキを助けるための行動が何一つできていない。星霊魔導士ではないから…そんなことは言い訳に過ぎない。目の前で仲間が消えるところを、指をくわえてみることなどしたくない。その気持ちはルーシィと同じだ。

 

「ロキ!ルーシィが、仲間がこんなに必死になってお前を助けようとしてるんだ!罪だ!?掟だ!?俺たち妖精の尻尾(フェアリーテイル)がそれよりも何を大事にしているのか、お前も知っているはずだろ!!」

 

物理的なことは何もできなくたって、彼に声をかける事ならできる。少しでもロキに希望を持たせる。それが今シエルにできる最善の事だ。シエルの言葉にも衝撃を受けた様子のロキの目の前で、ルーシィから発せられる魔力の量が増える。

 

「ルーシィ!!?そんなに一度に魔力を解放したら駄目だ!!」

 

発せられる魔力は金色の光の奔流と火花を生み出して、ルーシィとロキを包む。それに比例するようにルーシィの表情が苦悶に満ち、汗が次から次に噴き出す。だが彼女は止まらない。ロキを助けるまで、もう止めるつもりもない。

 

「言ったでしょ!絶対助けるって!星霊界の扉なんて、あたしが無理矢理開けてみせる!!」

 

「開かないんだよ!契約している人間に逆らった星霊は、星霊界には戻れない!」

 

止まるように懇願するロキの声も聞かず、扉を開こうと魔力を発する。すると、発せられる魔力の奔流が、一瞬のうちに更に強くなる。ロキだけでなく、ルーシィも驚愕した。ルーシィの両肩に手が触れる感覚を感じる。その正体はシエルだ。彼の身体を通して魔力がルーシィへと流れ込んだことで、一時的にルーシィが扱う魔力量が増えているのだ。

 

「シエル、一体何を!?」

 

「ルーシィ一人に負担をかけせるわけにいかないだろ…!俺にとってもロキは仲間だ!その仲間を助ける為なら、何だってやってやる!」

 

消費の激しい魔力を二人分で補えば可能性があるとふんだシエルも加わり、門を開けようと更に激しく奔流が強まっていく。二人の表情が苦しそうに歪んでも止まろうとはしない。

 

「待ってくれ、シエル!君の魔力量じゃ…!」

 

「開けぇ!!獅子宮の扉ぁ!!」

 

「開けぇええっ!!!」

 

更に強く。更に激しく。勢いよく発し、減っていく魔力。そして二人の身体も、魔力と共に何かが流れていくように形が揺らぎ始めていく。

 

「やめてくれ!星霊と同化し始めているじゃないか!!このままじゃ、君たちも一緒に消えてしまう!!」

 

「お前一人を消させるよりは、よっぽどマシだ!!今ここで仲間を救えなかったら、助けられなかったら!俺は魔法を覚えてきた意味がないんだ!!」

 

「っ…!!頼む…!これ以上、僕に…罪を与えないでくれーーー!!」

 

「何が罪よ!!そんなのが星霊界のルールなら、あたしが変えてやるんだから!!!」

 

 

 

 

 

その時だった。

 

 

 

 

 

あれほどまでに勢い良く、荒れ狂うとも言えた魔力の奔流が、一瞬のうちに消滅。3人の身体は弾かれるように少しだけ飛び上がって地に落ちる。その衝撃でロキがかけていたサングラスも宙を舞って…落ちたと同時に、空間全体に衝撃が走る。

 

ふと周りを見渡した全員がその光景に目を疑った。

周りを囲っていた滝の水がすべてその場所で時が止まったように動かなくなり、星がいくつも浮かんでいた空は、まるで星の日周運動を描いた図のように曲線を描いている星たちで埋め尽くされている。

 

まるで時の流れから外れているようだ。実際に、ロキたちの身に起きていた体の変化が全員止まっているのが証拠でもある。

 

そして衝撃はこれだけに終わらなかった。動きが止まっていた滝の水が一気に空へと引き寄せられていく。その水は一点のみが暗く染まった部分へと集結していき、ある存在の姿を象っていく。

 

「まさか…そんな…!」

 

シエルもルーシィも、その存在の事は知らない。だが、ロキだけは知っていた。星霊である彼だけが。それは、星霊界に住まう星霊ならば誰もが知っている。星の力を形作る星霊たちを統べる者。

 

 

 

「『星霊王』!!!」

 

その存在は一言で言えば荘厳な巨体。鎧甲冑に身を包み、表は新緑、裏は夜空を思わす黒の外套を羽織り、額の部分に五芒星を模した飾りと、二本の角がついた兜、赤く光る眼、そして何といっても特徴的なのは、鼻の下から肩幅にまでまっすぐ伸びた、立派な二又の髭。今までも立派な髭を生やした老人たちを数多く見たが、その中でもダントツと言える。

 

そんな存在が、腕を組んで宙に仁王立ちをしながら佇み、こちらを見下ろしていた。巨体であることも相まって、その威圧感は生半可なものではない。

 

「な、何でこんな所に…!?」

 

「星霊…の、王様…!?」

 

「それって、一番偉い星霊ってこと…!?」

 

唐突に登場したことによって、3人を困惑が支配する。名の通り星霊を統べる王である彼が、何故ここに現れたのか。その疑問に答えることも無く、彼は重厚感の溢れる声で彼らに語りだした。

 

『古き友…人間との盟約において我ら…鍵を持つ者ヲ殺める事を禁ズル…。直接ではないにせよ…間接にこれを行った獅子宮のレオ。貴様は星霊界に帰ることは許されぬ』

 

「ちょっと!それじゃあんまりじゃない!!」

 

星霊王の告げた内容に、最初は星霊王の姿を見て愕然としていたルーシィが、立ち上がって主張を叫ぶ。王である星霊王へ真っ向から意見するルーシィを見て、ロキは慌ててルーシィを止めようとする。

 

『古き友…人間の娘よ…。その“法”だけは変えられぬ…』

 

ルーシィの意見に対して淡々と返した星霊王の言葉を聞いて、ロキは一つの可能性を考えた。ルーシィが口にした「星霊界のルールを変える」という言葉。これに乗じて姿を現したのではないかと。だとしたら、こんな小さなことに対し、王自らが出向くことは前代未聞の出来事だろう。

 

「3年も…ロキは苦しんだのよ!?仲間の為に!アリエスの為に!仕方なかった事じゃないの!!」

 

『余も、古き友の願いには胸を痛めるが…』

 

「古い友達なんかじゃない!今、目の前にいる友達の事言ってんの!!ちゃんと聞きなさい!()()()()()!!」

 

「プッ!?」

『ヒゲ…!?』

「る、ルーシィ!!」

 

多分、昂った感情のままに告げたのだろう。星霊王に対してあまりにも無礼な物言いに、3人は各々別の意味で衝撃を受けている。言わずもがな、シエルはツボにはまって吹き出した。

 

「これは不幸な事故でしょ!ロキに何の罪があるって言うのよ!?無罪以外は認めないっ!!」

 

叫びに呼応するようにルーシィから再び光が発せられる。しかし、それを彼は…ロキは黙ってみていることはできなかった。

 

「もういい…ルーシィ…!僕は誰かに許してもらいたいんじゃない…!罪を償いたいんだ!このまま消えていきたいんだっ!!」

 

 

 

 

「そんなのダメーーー!!!」

 

「あっ!?」

『む?』

 

発せられる光が強くなると同時に、ルーシィの魔力が瞬間的に跳ね上がっていく。そしてそれに呼応するように、彼女の周りには、星霊王を見上げる形で彼女と契約をしている星霊たちが勢揃いした。

 

「あんたが死んだってカレンは戻ってこない!新しい悲しみが増えるだけ!罪なんかじゃない、仲間を思う気持ちは罪なんかじゃない!!」

 

ルーシィが契約している星霊の数は9体。その9体全員を一気に呼び出すという、カレンを始め、どんな星霊魔導士にも成し得なかったことを成したルーシィに、シエルもロキも驚きを隠せない。

 

「あんたが消えたら!今度はあたしが、アリエスが、ここにいるみんなが!また悲しみを背負うだけ!!そんなの、罪を償うことにはならないわ!!!」

 

星霊たちと共に今度はロキと向き合い、消えることを望む彼を引き留めようと声高に主張する。だが、その主張が終わった一瞬、魔力を持続させることができず、星霊たちは皆星霊界へと戻り、魔力を使い過ぎたルーシィはそのまま頽れた。

 

「おっと」

 

そんな彼女を、腹部に腕を引っ掛けることで支えたのはシエル。身長差の都合で抱えられたのは低い位置だが、十分に支えられているようだ。

 

「無茶するよ、ナツたちといて感染ったんじゃない…?」

 

笑みを浮かべながら告げるシエルに、力なく笑みを一つ返すと、ルーシィはロキの方を向いた。

 

「今姿を見せてくれたあたしの()()も、おんなじ気持ちよ…!」

 

友達。その言葉がロキの心に、胸にストンと落ちたような気がした。その合間にもまた告げる言葉があるのか口を開こうとしたルーシィに、シエルは制止をかける。

 

「これ以上は無理しないで。あとは俺が代弁するよ…」

 

自分の力で立つこともできないルーシィをロキに預け、シエルは一人星霊王へと足を向け、一歩ずつ歩きながら問いかけだした。

 

「星霊の王よ。あなたも、ロキ…レオやアリエスの気持ちは、痛いほどわかるはずです。彼女は…俺の仲間は、自らの危険も顧みず、種族の違いも超えて仲間を…友を助けようとしました。そして今、彼女は星霊魔導士でありながら、星霊を統べる存在であるあなたに、正面から自らの正しさを、友と共に証明したのです。

 

 

 

 

 

これを見てもまだ、彼女に異を唱えますか?法を守るために、仲間への想いを抱いた友を、切り捨てるつもりですか?」

 

シエル自身も、星霊と星霊魔導士に憧れを抱いた者。だが、その憧れを含んでも尚、己の仲間を、友の正しさを信じ、味方であることを選んだ。星霊を統べる王に対し、反発し、意見を主張することをしてでも…。

 

 

『……古き友たちにそこまで言われては…間違っているのは、“法”かもしれぬな…。同胞・アリエスの為に罪を犯したレオ。それを救おうとする古き友。その美しき絆に免じ、この件を「例外」とし、獅子宮のレオ…貴様に星霊界への帰還を許可スル…』

 

星霊王直々に、帰還の許可が出た。それはつまり、ロキが消えることはなく、星霊としてこれからも生きていけることを意味する。それを理解したロキは、自分の身に起きた恩赦に、大きな衝撃を受けていた。そしてシエルとルーシィ、二人の人間はその判決に喜びを表した。

 

「ありがとうございます!星霊王!!」

「いいトコあるじゃない、ヒゲオヤジ!」

 

人間二人からの素直な感謝と称賛を受け、星霊王は「ニカッ」と今まで動かしていなかった口元を動かし、歯を見せた笑顔を浮かべる。意外な一面だ。

 

『免罪だ。星の…いや、天と星の導きに感謝せよ』

 

外套を手に掴んで、自らの姿を覆い隠すように翻しながら告げた星霊王の言葉。それに対し、涙を浮かべながらロキは彼を呼び止めようとする。

 

「待ってください…僕は…!」

 

『それでもまだ罪を償いたいと願うならば…その友たちの力となって生きる事を命ずる』

 

星霊王の姿はもう見えず、彼がいた場所には四角星の形で輝く光のみ。声だけがその場に響き、頬を涙で濡らすロキへ、別の贖罪の方法を命じる。慈悲に溢れるとも取れるその贖罪。目から溢れる涙はより強くなっていく。

 

『それだけの価値がある友であろう…。命をかけて守るがよい…』

 

その言葉を残し、星霊王は完全に星霊界へと戻った。その証拠に、空は朝日によって白み出し、滝から消えていた水は元の場所へ。ずっと宙に浮いていたサングラスも、時が再び動き出したことで「カタン」と地に着く音を立てた。

 

「だってさ」

 

笑顔を浮かべてロキに声をかけるルーシィ。その時、ロキにはあるものが見えていた。崖の先端部分に建てられた墓の前で、寂しげな、だが心残りのないような笑みを浮かべながら、粒子となって姿を消したカレンの姿。何を思っていたのか、それはもう誰にも分らないだろう。だが、もうロキには迷いはなかった。

 

―――これで僕の罪が消えた訳じゃないけど…君たちには前へ歩き出す勇気をもらった…

 

―――ありがとう…。そしてルーシィ、これからよろしく。今度は僕が、君の力になるよ

 

「こちらこそ…よろしくね、ロキ…」

 

光の粒子となって、その姿を消していくロキ。だがそれは消滅ではない。その証拠に、ルーシィがロキを掴んでいた右手には、獅子宮を表す金の鍵が握られていた。

 

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

 

フィオーレ王国・国内に、とある迷宮が存在する村がある。

その村はとある理由で10年もの間作物が思うように育たず、壊滅の危機に瀕していた。だが、その日の夜は、盛大な宴が、実に10年ほどの長い歳月を空けて、久方ぶりに繰り広げられていた。

 

村人たちは皆笑顔を浮かべ、踊り、歌い、話に花を咲かせ、唯一村人ではない一人の青年を崇めるかのように持て囃していた。そんな青年は、一度宴から席を外し、荷物の中にあった一つの魔水晶(ラクリマ)にて、通信を行っていた。

 

《お疲れ様。クエストの方はどう?》

 

「つい先ほど終わったよ。今は村人たちから感謝のもてなしを受けているところだよ」

 

《完了したの!?さすがね!》

 

通信先の相手は妖精の尻尾(フェアリーテイル)の看板娘にして元S級魔導士のミラジェーン。どうやら親しい仲のようで、彼も妖精の尻尾(フェアリーテイル)のメンバーらしい。

 

「迷宮の中にいる間は通信繋がりにくいから確認できなかったんだが、一つ着信が入っていて気になったからかけたんだ。何があった?」

 

《それがね…》

 

ミラジェーンが青年に語ったのは少し前に起きた幽鬼の支配者(ファントムロード)との衝突の事件。彼にも救援要請を飛ばしていたのだが、生憎通信が繋がらず、彼自身も確認が遅れてしまい、今その詳細を聞かされたところとなったのだ。

 

「ファントムが!?そうか…すまなかったな、駆け付けられず…」

 

《連絡も通らなかったもの。仕方ないわ…。でも、幸いみんな最悪の事態にはならなかったし、あなたの方ももう帰ってこれるんでしょ?》

 

「そうしたいとこなんだが、何日かまだ続きそうな雰囲気でな…。ミラ、悪いんだけど伝言頼めるか?手紙も後で書いて飛ばしておくが、『幻想曲(ファンタジア)が始まるまでには必ず帰る』ってみんなに伝えておいてくれ」

 

ばつの悪そうな顔で伝言を頼んだ青年に対して、ミラジェーンは一つ笑みを零しながら「分かったわ」と返し、もう一つ付け加えて知らせてから、通信を切った。

 

《それと、シエルが正式にうちのメンバーとして認められたわ。早くあなたに会いたがってたから、出来るだけ急いであげてね?じゃ!》

 

その言葉を…正確にはミラジェーンが出した少年の名前を聞いた瞬間、青年の反応が明らかに変わった。そして、彼女の告げた言葉を心の中で反芻する。

 

「…そうか…。とうとうシエルが…」

 

口元に弧が描かれていることにも気づかず…いや、気づいた上で戻そうともせず、彼は魔水晶(ラクリマ)を荷物入れに戻し、宴の席へと戻っていった。

 

 

 

 

 

その荷物入れの近くにある依頼書には、こう書かれていた。

「依頼書発行日:X773年1月23日」




おまけ風次回予告

シエル「青い空!」

ルーシィ「白い砂浜!」

シエル「照りつける太陽!」

ルーシィ「そして、何といっても…?」

「「海だーーー!!!」」

シエル「どーしよー!?何かすっごいテンション上がってきた!!」

ルーシィ「あたしもあたしも!根拠とか理屈とか分かんないけど、すっごく楽しいわ!」

次回『アカネビーチ』

シエル「まず何しようかな~?『スイカ叩き』?『ヤシの実バレー』?あ、『沖の先まで乗雲(クラウィド)レース』?ルーシィどれがいい!?」

ルーシィ「勿論全部…ってちょっと待って!?どれもなんかおかしい!テンション上がりすぎて変になってない!?」

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