来週は3連休に入りますが、地元でどうしても行きたいイベントがあるので、後進の方がスムーズに出来るかは不明です…。スムーズじゃなかったのは今更ではあるんですがね…。
ロキの厚意でフィオーレ内でも最大級のアカネリゾートを訪れた、
「んも~!こんなもの絶対ぶっちぎってやるんだから~!!」
必死にもがきながら床を転がるルーシィだが、拘束は全く緩む様子はない。傍から見ればただただ足掻いているようにも見えるが、彼女にはある策があった。体の位置を必死に変えながら揺らし、自分の懐からあるものを落とそうとしている。そしてその目当てのものは重力に従って、彼女の近くにポトリと落ちた。
彼女が契約している星霊を呼び出す鍵を収納したポーチである。
「よし!…開け、巨蟹宮の扉!キャンサー!!」
黄道十二門の一体、蟹座の星霊・『キャンサー』。
蟹の名を呈するように両手に鋏を常備した星霊であり、彼の持つ鋏を利用してチューブを切断してもらおうという考えだ。本来はスタイリストの服装をしていて、美容室で行っているメニューをこなす星霊ではあるが、その鋏は大抵のものなら切ることができる。
しかし、彼女の呼びかけに応えて現れるはずのキャンサーは一向に姿を現さない。
「あ…あれ?キャンサー!?じゃ、タウロス!!ロキ!!出て来てぇ!!」
他の星霊を呼び出そうとするも、誰を呼んでも召喚されない。時間だけが過ぎていき、彼女を拘束するチューブはさらにきつく絞めていく。呼んでも来ない…のではなく、今の自分に魔法が使えないのでは?自分を縛るチューブが魔法を阻害しているのだろうと彼女は結論付けた。だとすると、脱する方法はない状態。万事休すか…。
諦めかけたルーシィに突如それは訪れた。まず肌に感じたのは風、そして耳に入った「ゴウッ」と言う音。
「え、何!?」
すると、見開いた目が開けられないほどの強い一陣の風が彼女を囲むように吹きすさび、狙ったかのように彼女を縛るチューブにいくつもの切れ込みを入れる。それに気づいたルーシィは驚きながらもほぼ反射的に腕に力を込めて開いた。
そしてどんなにもがいてもちぎれなかったチューブは、切れ込みを起点に数本に分かれるようにちぎれ、魔法の効果が無くなったことで作られたチューブは消滅し、ルーシィは解放された。
「ほどけた!!けど、どうして…?」
気になることは多々あるが、とにかく体の拘束は解けた。エルザをこのままにしておけず、追うためにも、無事を確認するためにも、まずは仲間と合流すべきと考えた彼女は立ち上がって駆けだした。破壊されたバーに辿り着いたルーシィは、そこで信じがたい光景を目にする。
「!?グレイ、シエル…そんな…!!」
折れた木材にもたれかかるように倒れ、胸に鉄パイプが突き刺さった状態のグレイの姿。その近くには仰向けの状態で、壊れた石壁の一部に右足を潰された状態のシエルも見えた。その近くの床には人一人分の水溜りもあるが、ルーシィには目を向けている余裕がない。
「嘘でしょ!ねえ、しっかりしてよ!!」
目を疑う惨状にルーシィはグレイの身体を揺さぶって彼を起こそうとする。だが、彼女が触れたグレイの身体はとても冷たい。まるで氷のように…。
そして、身体全体に罅が入り、そのまま粉々に砕け散ってしまった。氷のように。
「いいやあああああっ!!?」
悲しみ飛び越えて驚愕を全面的に表したルーシィの悲鳴が木霊する。もしかして彼の身体は魔法の影響で氷になっていたのか、とでも思ったのか必死になって砕けた氷を繋ぎ合わせてグレイを元通りにしようとする…が、造形のセンスの問題か、あらぬ体勢と身体のつくりで、色々とあべこべ状態なグレイが出来上がる。そんなものが長く形を保っていられるはずもなく、再び砕けた時と同様にバラバラとなった。
「どーしよーーっ!?ねえ、シエルッ、お願い起きて!グレイがーーーー!!!」
錯乱状態となって未だに目を覚まさないシエルの肩を掴んで上下に揺さぶって起こそうとするが、それでも目を覚まそうとはしない。何という事だ、まさかこんな形で仲間を一人失うとは…と発狂気味になっていたルーシィの耳に、聞き慣れぬ声が届いた。
「安心してください」
床に溜まっていた水溜りが蠢き、両腕で身体を起こした格好で、一人の少女が形作られる。正体はジュビアだ。
「待て、ルーシィ!こいつはもう敵じゃねえ」
その声と共にジュビアに覆いかぶされる位置に姿を見せたのは、先程砕け散ったと思われたグレイだった。無事だったのだ。
「そうです、グレイ様はジュビアの中にいました」
「な、中…あはは…」
「あなたではなくジュビアの中です」
「うん…そ、そうね…」
何故かルーシィに詰め寄って自分の中と言うことを強調しているが…まあ色々とあるのだろう、彼女にも。何となく発言の内容に至っては危ないような気もするが、言及はしないでおこう。
それは兎も角、最初にルーシィの前で氷の
「じゃあ、このシエルも、あんたが?」
「シエル?いや、オレは自分だけ作ったんだが…」
一向に目を覚まさないシエルも、グレイが作り出した偽物かと考えたルーシィだが、それは否定される。するとルーシィが肩を掴んで抱えていたシエルが、彼女の手から滑り落ちて床に背中から強打される
…と同時に「ポロッ」と、彼の頭部が体から外れ、床をコロコロ転がっていき、顔がルーシィたちから見えない方向に向いてピタッと止まった。
……………………………。
辺りに静寂が広がり、誰も声を発せずにいる。どこからか何回もの木魚を叩く音に続いてお
「~~~~~~~~!!!?」
そのお鈴の音が鳴ったと同時に静寂を真っ先に破ったのはルーシィ。声にならない悲鳴を上げて涙が両目から溢れさせながら、現実を受け止められないでいる。
「あ、あなた…!!何てことを…!!」
「ち、違うの!いやあたしのせいかもだけど!でも!そんなつもりは~!!!」
こんな簡単に首が取れていいはずがない。勿論ルーシィにそんな意図はなかったが目の前の光景に対してジュビアが思いっきり引いている様子を見て、必死に何かしら弁明をしようとする。どっちにしろ少女二人は突如起きた惨劇に頭の中が混乱状態に陥っている。そんな中唯一比較的冷静になっているグレイが「いや、こいつは多分…」と、彼女たちに言葉をかけたその時。
「ルーーーーシィーーーーーーッ…俺の首ぃ…かーえーしーてーー…!」
「「きゃああああああ~~!!!?」」
ルーシィの背後から、じわじわと地の底から這い上がるような低い声としゃべり方で口を開くシエルの頭部を両手に抱えて、首と右足が失われたシエルの身体がゆっくりと彼女に迫ってきていた。その様子があまりにも怖すぎて、迫られたルーシィだけでなく近くにいたジュビアまでもが、涙を流して悲鳴を上げながらお互いを抱き合っている。そこに存在しないはずの身体の上の頭に向けて、グレイの手刀が軽く打ち込まれた。
「おいコラ、くだらねぇイタズラしてる場合かよ」
「え〜、グレイノリ悪いよ〜」
グレイの手刀と発言で、これ以上は騙せないと観念したシエルが魔法を解除した。幻影の自分を投影する魔法・
「ノリの有る無しじゃないわよこれぇ!!」
「し、心臓に悪すぎる…」
今までの中でも最大級に恐ろしかったシエルのイタズラに涙が引っ込まないまま怒鳴るルーシィと胸を抑えて膝を折るジュビア。さすがにやりすぎたと感じたシエルは「ごめん…」とこめかみをかきながら謝罪した。
と、その時ルーレットゲームが存在していたエリアの瓦礫の下から、赤い炎が勢いよく発せられた。
「あれは!!」
「「ナツ!!」」
瓦礫の中に埋もれていたナツが、瓦礫を炎で吹き飛ばしているところだった。駆け寄ってみると何やら口の中から煙が出ていて、激しく息切れしている。激しく動いたから、と言うわけではなく、あまりにも大きな焦りからのように見える。何があったのか聞いてみれば…。
「普通口の中に
「普通の人間なら、完全にアウトなんだけどね…」
「むしろ何で無事なんだろ…」
「今のナツこそ、ゾンビじゃねえだろうな…?」
「さすが
口々に仲間からそんなツッコミを入れられるナツだが、最早そんな言葉を聞こえていない。今や彼の頭の中を支配するのは、自分に対して弾丸を撃ち込んだ、全身が角ばったハードボイルド気取りの男・ウォーリーへの怒りのみ。
「あんの四角野郎ォオーーー!!!逃がすかコラーーーー!!!」
そう叫びながらナツは脇目もふらずにアミューズメントエリアを駆け抜けて、外へと向かっていく。それを見たシエルとグレイはナツを追うことを提案する。
「追うって言ってもどこにいるのか…」
「あいつの鼻の良さは獣以上なんだよ」
「放っておくと見失う。早く
人数分の大きさで具現化された
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夜が更けていた頃から数時間も経ち、太陽が随分と登ってきた時間の中、シエルたちがいるのは海の上だ。ナツに追いついたのち、海の向こうに探している男がいると告げたナツの言を信じて、一行は小舟を一つレンタルして海へと出た。その途中で軍に今回の襲撃事件を報告したため、被害に遭った者たちの対応は任せてもいいだろう。
そして移動中の中で、一同の情報も共有することができた。
「ええ!?じゃああんた、エルザが連れていかれた時、あの場にいたの!?」
「みすみす逃がしちゃった形になったけど、俺一人ではエルザを取り返すにはリスクが大きすぎたんだ。情けないよ…」
一行の中で唯一自分が作り出した雲に座って、小舟に合わせて移動しているシエルから聞かれた内容に、ルーシィは驚愕していた。シモンたちがエルザを確保する際のポーカーエリアに、
しかし、シモンたちの仲間の中にいる『ジェラール』と言う人物の存在、そして彼らが向かった先が“楽園の塔”と呼ばれる場所と言う情報を得られただけでも有益だ。ないよりもある方が有利に事を運べる。ついでに言えばルーシィを縛っていたチューブを切るきっかけとなった一陣の風。あれもシエルが起こした魔法によるものである。
「じゃあエルザの身に起きていたことを知った上で
「いや…ホント…ごめん…」
睨みつけるルーシィの視線から逃れるように視線を逸らして再び謝罪するシエル。相当トラウマになったようで、しばらく根に持たれそうだ。
それはそうと、数時間ほど小舟で進んでいた一同は未だに辺りを見渡しても大海原が広がる景色のままでいることに、徐々に不安を感じている。
「つかよぉ、どこだよここはぁ!」
「ジュビア達、迷ってしまったんでしょうか…?」
今進んでいる方向で本当に合っているのか、唯一の手掛かりとなるナツの嗅覚が頼りではあるのだが…忘れてはいけない。小舟は乗り物。そして乗り物は彼にとって地獄であるという事を。淵に体を預けて吐き気を我慢しているナツに、再確認の余裕はない。
「オメーの鼻を頼りに来たんだぞ!」
「グレイ様の期待を裏切るなんて信じられません」
同上の目線を向けているシエルとルーシィとは対照的に、グレイとジュビアが怒り混じりに発破をかける。ジュビアに関してはグレイ中心の意見ではあるが…。
「シエル、あんたのその
するとルーシィがシエルが今乗っている雲にナツも同伴させられないかと尋ねてくる。シエルが今具現している雲は魔法だ。自分の脚を動かす以外の移動手段にハッピーの
「いや…クラウィドって『雲』に『乗る』魔法だからさ…ね…?」
「あ…うん、もうそれだけで察したわ…」
小舟も雲も結局変わらないのだ。ついでに補足しておくと
「しかし、オレ達がのされてる間にエルザとハッピーが連れてかれるなんてよ。全く情けねえ話だ…!」
「でも…エルザさんほどの魔導士がやられてしまうなんて…」
「あ…!?やられてねえよ、エルザの事知りもしねえくせに…!!」
「ご、ごめんなさい…!」
「グレイ落ち着いて!」
ジュビアに対して睨みつけながら怒りを現すグレイを見て、ジュビアは怯え、ルーシィがグレイを窘める。対してグレイは舌打ちをしながら居座りを直し、グレイの発言を聞いたシエルが、視線を前に向けたまま口を開いた。
「俺たちだって、
ルーシィたちからはシエルの表情は見えない。しかし、心情はみんな同じだっただろう。ギルドに来る前のエルザの事を知らない、聞かされていない彼らにも、本当の意味でエルザを分かっていない、という思いが…。
「…うぅ…ん?何だ、この危ねえ感じ…?」
すると、ずっとグロッキー状態だったナツが珍しく意識をハッキリさせて船から立ち上がって周囲を警戒しだした。それにつられて場にいる全員が辺りに気を配る。だがその間にも自分たちの頭上を飛び回っていた鳥たちが、力を失ったかのように意識を失って次々と海に落ちていく。海に目を凝らせば絶命した魚たちが、海の表面を埋め尽くすように浮かんでいた。
それだけじゃない。魚に混じって所々に船の残骸と思われる木片も浮かんでおり、ある一つの木片に引っかかっていた旗はフィオーレ王国の国旗だった。王国軍の船の残骸と思われる。
「おい、あれ…」
更に船を進めてとうとうその姿を目にすることができた。塔と呼ぶには歪な形で建立されており、形容するとすれば巨大な蛇が体をくねらせながら天に向かって直立しようとしている。そこから全体的に機材や歯車が取り付けられた。そんな表現が似合う様相であった。
間違いない。全員が確信していた。楽園の塔であると…。
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塔の外側には螺旋状に上下を一気に繋ぐかのように長い石階段が取り付けられており、そこには大勢の見張り兵と、薄皮が剥かれた様な様相をした目鼻がない四足歩行の獣が所狭しに埋め尽くされている。その兵たちから見えない岩壁からその様子を見ているひとりの影があった。
「見張りの数が多いな…。ナツたちなら一気に突破する、ってこともできそうだけど、ここから見た限りでは出入口も見当たらないし、エルザとハッピーが危険になる可能性も高い…」
影の正体はシエルだった。
すかさずシエルは
「どうだった?」
「思った通り見張りの数が多い。正面から突破しようとすればきっと次々と足止めが湧くか、エルザたちが危険になりそうだ」
「そりゃ分が悪いな…。しかも塔の方までちと遠そうだし…」
船からようやく解放されたナツは、覚め切っていない乗り物酔い状態においても「構わねぇ…突撃すっぞぉ…!」と力ない声で力強い発言をしているが、どのみち無理だと全員に一蹴される。するとシエルがふと気づいた。一人見当たらない。
「あれ、ジュビアは?俺が先行く時にはいたよね?」
「ああ、塔が近づいてきた時に自分も一足先に様子を見てくるって、海の中に…」
噂をすれば影。答えたルーシィの声を途中で遮って桟橋近くの海からジュビアが肩から上を出して上がってきた。
「お待たせしました。水中から地下への抜け道を見つけました」
「マジか、でかした!」
「褒められました!あなたではなくジュビアがです…!」
「はいはい…」
思った以上の有力な情報にグレイが告げたグッジョブに、何故かルーシィの方に詰め寄って自慢している。何で自分ばっかり詰め寄られているのか…訳が分からないルーシィには受け流すことしかできない。
「水中を10分ほど進みますが、息は平気でしょうか?」
「なんともねーよそんくらい」
「だな」
「俺はギリかなぁ」
「いや無理に決まってんでしょ!!」
どうやら常人は自分だけのようだ、とルーシィは感じた。10分も息を止められるとかどんな鍛え方したら出来るんだそんなこと…。そんなことを思っていると、ジュビアは右掌を横に上げて気泡が混じった水の球体を作り出す。混じっているのは酸素だ。これを被ることで水中内でも息をしながら行動できるらしい。とても便利だ。
「水の魔法ってだけで凄い汎用性だ。さすが元エレメント
「え…?」
改めてジュビアが扱う
「あの…今…」
「おぉーっ!お前すげぇな!…つか誰だ?」
「!?」
シエルにそのことを追求しようとしたが、残念なことにナツから告げられた言葉のショックで、頭から抜けてしまった。彼が零した言葉の意味を聞くことができるのはいつになるのか…。
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水中を移動すること約10分。抜け道から漏れ出る海水が浸る岩場に乗り上げ、塔の地下へと潜りこむことに成功したシエルたち。岩場だけでなく、天井近くには信仰の対象が彫られた柱や飾りなどが取り付けられており、作業段階の名残が見える、木で作られた足場が残されている。
「ここがあの塔の地下か?」
「ハッピーとエルザはどこだ?」
地下、という事はここから上の方に向かわなければどのみち二人を救出することも叶わない。上へと進む道を探さなければ。なんかジュビアが「ルーシィだけ酸素を少なくしたのによく息が続いた」とか何とか聞こえたが気のせいだろう、そう思いたい。
「侵入者だー!!」
しかし、思った以上に敵の動きも早かった。バレない様に海中から地下に侵入してきたというのに巡回していた兵士の一声で一気に地下の橋の上に埋め尽くさんばかりの兵士が現れる。こうなった以上やるしかないだろう。
「何だ貴様等は!!」
「『何だ貴様等は』だとォ…!?上等くれた相手も知らねえのかよ!!」
兵士の一人の言葉に、ナツが体から熱気を放ちながら炎を纏った拳を地面に叩きつけて一面を煙に包む。その影響で兵士たちが戸惑い、ほぼ全員に隙が生まれた。既にこちらが先手を取ったも同然。
「
同時に全員が勢いよく飛び跳ねて橋の上にいる兵士たちに攻撃を仕掛ける。ナツの噴き出す炎の息が相手を焼き、グレイが造った氷の槍が正確に敵たちを貫き、シエルが放った竜巻が兵士たちを蹂躙する。ルーシィも処女宮のバルゴを呼び出し、橋の上にいる兵士たちの足元を崩して一気に落としていく。
対してジュビアは激しく動こうとはしない。剣を持つ相手がジュビアを斬りつけてくるが、斬られた断面が水となり、彼女に対して手応えを感じることなくすり抜ける。
「け、剣が効かねえ!?」
「何だこいつ!?」
「なら魔法弾はどうだ!」
「撃ち込めぇ!!」
刃物が駄目ならば銃弾で。一斉射撃でジュビアを狙い撃ちにするも、それすら彼女の水の身体をすり抜けてダメージを与えられない。相手に対して打つ手のない兵士たちは恐怖で戦意を失っていた。
「『
そんな兵士たち目掛けて斬撃へと変えた水で兵士たちを切り裂く。最早どちらが優勢なのか、一目瞭然だ。その後も炎の翼、氷の大槌、乙女の体術、黒雲からの雷、水による拘束をそれぞれ受け、埋め尽くすほどの規模を持っていた兵士たちは一人残らず戦闘不能となった。
「粗方片付きましたね」
「だな」
「大したことないや」
「こんなに騒いで大丈夫…じゃないよね…」
「お仕置きですか?」
「四角はどこだ!?」
全くもって苦戦した様子も無く、一同は一息ついた。すると壁に取り付けられていた顔を模した飾りの口の部分が開き、その中へと通じる道が現れた。上の階へとつながっているようで、上へ来いと言いたげである。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「四角ーーー!!どこだーーー!!」
上への通路を登り、塔の中へと入ることに成功した一行。その中でナツがウォーリーを、叫んで探していく。ルーシィが大声を出さないようにナツに注意するも、地下で散々派手に暴れた後では、最早バレていたとしてもおかしくないだろう。それよりも…。
「何食べてんの!?」
どうやら今いる空間は食堂のようで、ルーシィを除く全員が、上へと着いた瞬間目に着いた料理の山を、各々が手をつけて食べだしていた。ウォーリーを探していたナツでさえ、手掴みで次々に肉料理を口の中に入れていく。と言うか男三人全員肉ばかりに手をつけていた。
「先程の扉ですが、魔法で遠隔操作されていましたよ?」
「どう考えても気付かれてるね、完全に」
「だったら何で扉を?」
こちらを監視しているにも関わらず、地下での兵士たちを倒したら次のエリアへの道が開いた。まるでゲームのようだ。あるいはただ挑発されているのだろうか、と推論する。
「ところで姫、食堂でそのような格好ははしたないかと。お召替えを」
「はしたない!?って言うかここでかい!!」
実を言うと水中に潜った時からずっとルーシィは水着姿だった。(水着だったのはシエルもであり、グレイに至っては下着一丁だったが)この場での服装としては相応しくないという理由で、有無を言わさずバルゴに着替えさせられる羽目になった。唐突に起きた刺激的なシーンにグレイは顔を赤らめながらも凝視してジュビアに注意され、シエルは目に着いた瞬間口に含んで噛み切れてない料理を思わず飲み込んでしまい喉を詰まらせていた。
そして着替えたルーシィの服装は、星霊界特有の服装であるらしい深緑のバンダナに緑や翡翠色を基調としたドレス姿となっていた。ルーシィ自身も気に入ったらしく、自慢気にポーズをとっている。すると一番反応を示したものが一名。
「す、すっげぇ~~!星霊界の服!!マジで!?ねえねえバルゴ、男用のやつもある!?俺も着てみたい!!」
「承知いたしました」
熱烈な要望に応えてバルゴが用意したのはルーシィとデザインが細かく似ている深緑のターバンと緑と翡翠色を基調とした、貴族や王族が纏っているイメージのある服装へと変わった。着替え終わったシエルのテンションは鰻登りであり「似合ってる?ねえ似合ってる!?」とはしゃいで聞いてくる。
「どっちも似合ってんじゃねえか。ただ…なんかペアルックみてえだな…」
「そう?」
素直に感想を零すグレイであったが、二人が纏う星霊界の服の意匠が似ているせいかどことなくそう見えてしまう。そんな何気ない一言に、ジュビアは目を光らせて反応した。
「とっても似合ってますよ!
「何でそこ強調した…?」
そしてシエルたちに向けてやけに必死な形相で褒めて(?)きた。この女、必死過ぎである。
「どぅえきてるぅ」
「巻き舌風に言うな!」
「何で知ってるの?」
そんな様子を見て徐にバルゴが告げてきた。普段は星霊界にいる筈なのに一体どこで聞きつけたのだろう、そのハッピーの物真似…。そして役目を終えたバルゴはルーシィへの健闘を祈る言葉を残し、星霊界へと帰っていった。
「ところで、水になれるジュビアは兎も角、ナツとグレイはよく濡れたままの服でいられるわね?」
唐突に浮かんだルーシィの素朴な疑問。その答えは単純明快だった。全身から炎を発するナツの近くで、グレイはせめてもの着衣なのかズボンをはためかせながら「こうすりゃすぐ乾く」と答えた。
「あら!!こんな近くに人間乾燥機が!!」
「いつどんな時にもたった数秒で乾かせちゃう!人間乾燥機『ドラグニル』!77777
「どっかの社長か!!」
ルーシィのツッコミで閃いたのかナツに手を向けて謎の裏声で紹介するシエルに対して重ねてルーシィの声が響いた。何なんだこれ本当に…。
「いたぞー!!侵入者だー!!」
するとタイミングが合っただけなのか、今のルーシィの声で気付いたのか、兵士の一団が食堂に乗り込んでくる。それを視認した一同はすぐさま身構えようとするが、それよりも早く兵士たちに数回の剣閃が襲い掛かり、吹き飛ばした。
剣閃の正体はエルザ。いつも彼女が纏う鎧姿で、兵士たちを一瞬で斬り伏せてしまった。
『エルザ!』
「無事だったのね!」
「か…カッコいい…」
「!?お、お前たちが何故ここに…!?」
囚われていたと思われたエルザと、シエルたちは合流することに成功した。しかし、彼女の表情には戸惑い、驚愕の感情が浮かんでいた。
おまけ風次回予告
ジュビア「あ、あの…ジュビア、少々聞きたいことがありまして…」
シエル「聞きたいこと?」
ジュビア「え、えと…先程の話…なんですけど…」
シエル「先程…エルザの事かな?そう言えばジェラールって言う人物とも何か訳ありな感じがするし…」
ジュビア「あ、いえそうじゃなくて、水中から地下に潜るとき…」
シエル「あ、分かった!グレイについてのあれやこれやとかが聞きたいのかな?(ニヤニヤ)」
ジュビア「それは確かに是非聞きたいです!!」
次回『エルザとジェラール』
ジュビア「でも、ジュビアが聞きたいのは、ジュビアがその…雨を…魔力で…」
シエル「ごめんジュビア、時間切れ…(汗)」
ジュビア「ジュビア焦れったい~!!」