FAIRY TAIL ~天に愛されし魔導士~   作:屋田光一

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二週間お待たせしました!
今回は今までの中で文章量が一番少ない回となりました。
もう少し何かしら文字を増やせればよかったんたんですが、少々体調不良気味でいい言葉も浮かばず、次回に持ち越したい展開も多かったので断念。

将来的に加筆修正できればいいな…。

そう言えば皆さんのところは雪降りました?
僕が今いるとこは結構降って積もりまくってます。除雪車も通りました。

シエルが吹雪(ブリザード)でも使ったのかな?←


第28話 正義の光が落ちる時

「これは…さすがに予想できなかったな…」

 

最上階で階下の様子を見ていたジェラールは、純粋に驚いていた。斑鳩が負けた。その事実だけならば特に驚きはしなかっただろう。彼が予想していなかったのは、斑鳩を打ち負かしたのがエルザではなく、シエルであったことだ。

 

斑鳩の実力はエルザに匹敵するものだと予測はしていた。そんな彼女と比べてシエルの実力はあまりにも不足。加えてシエルの扱う天候魔法(ウェザーズ)は斑鳩にほとんど通用しなかった。戦局は一目瞭然…となるはずだった。

 

「ふっ…これはこれで面白い…が、残念ながらゲームはもう終わってしまいそうだな…」

 

少しばかり心残りを感じさせる声でシエルを模した天候の駒を、女性の駒にぶつけて倒す。他の二人を模した駒も、既に倒された状態だ。

ギターの駒のモチーフとなったヴィダルダス・タカと言う床に付くほどの黒い髪と白塗りの顔でパンクファッションに身を包んだ男性は、ルーシィとジュビアの少女二人を相手にし、ジュビアを洗脳して味方に付けたが、ジュビアの心の声を感知したルーシィが彼女の身体を使ってアクエリアスを召喚。勢いそのままに二人は魔力を融合させ合体魔法(ユニゾンレイド)――信頼し合う二人以上の魔導士が文字通り魔力を融合させて放つ魔法――を発動。強大な威力を前に倒された。

フクロウの駒のモチーフとなった、ナツと対峙していた戦士梟。シエルが先に進んでいったあの後、ナツを飲み込んでその力を己に吸収しようとしていたが、その後グレイが想像以上の力を発揮して打ち倒された。

そしてつい先ほどの斑鳩。ジェラールが雇った3人の戦士はこれで全滅となった。

 

残りは支配者・ジェラールただ一人…。

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

倒れ伏した斑鳩。片膝をつくだけで持ちこたえたシエル。その光景を垣間見たエルザたちは茫然という様子を隠すこともできなかった。

 

「す、すげえ…勝っちまいやがった…!あのとんでもなく強い女に…!!」

 

ショウに至っては、圧倒的なまでに苦戦していた相手に逆転勝利をおさめたシエルの姿に感動さえ覚えていた。自分は全く為す術もないまま斬り伏せられたのに対し、同様に倒されるばかりと思っていた少年の想像を超える活躍に、心なしか胸が震えたのだ。

 

だがその時、片膝をついた状態だったシエルの身体がぐらりと傾き、倒れようとする。一番近くにいたエルザがすぐさま駆け寄り、地に着くよりも早くシエルの身体を抱き留めた。

 

「シエル!大丈夫か!?」

 

エルザの呼びかけに、微かにだけ目を開けたシエルは、ほとんど力も入れられない状態だ。もしかしたらこのまま…。そんな悪い想像すらしてしまうエルザの心配に対し、シエルはかすれるような小さい声で答えた。

 

「…魔力を…ほとんど、使い切った…かも…」

 

斑鳩との戦いにおいて次々と天気を変動させ、体中の傷を癒すために消費の激しい慈雨(ヒールレイン)の使用。そして気象転纏(スタイルチェンジ)。大幅に消費した魔力はしばらく時間をかけなければ回復できない状態だ。ここまで消耗してしまった彼の様子に、エルザは口元に笑みを浮かべて「本当に無茶をするな…」と呆れたような、安心したような言葉を零した。

 

「最後の最後に…上手くいってホント…良かったよ…。エルザのおかげも、あってね…」

 

エルザと斑鳩。二人とも女剣士という共通点がある。戦い方に差異はあれど、剣を扱う二人の動きには少なからず同じ部分がある。数ヶ月前からエルザの戦いを直に感じていたシエルは、その経験を糧にした。

 

さらに気象転纏(スタイルチェンジ)は、エルザとの修行期間の合間に思い付き、練習に練習を重ねた戦い方でもある。何回も酷い目にあってきたが、ついにこうして実戦でも活かせる程には精度も上げられた。エルザとの修行が無ければ、この勝利も掴み取れなかっただろう。

 

「…よくやってくれた…」

 

「ムグッ!?硬…くなっ…柔、らッ…!!?」

 

大きく差の空いた格上を相手に勝った。その功績が自分との手合わせを発端としているともとれる言葉をシエルから聞いたエルザは、彼の背中に腕を回し抱き寄せた。まだまだ未熟だった少年の成長を垣間見た彼女にとっては、嬉しいとしか言いようがない。

 

ところで、普段のように頭を胸に勢いよく抱き寄せては硬い鎧に押し付けられる、というのが今までのパターンだったのだが、今エルザの鎧は斑鳩の攻撃によって砕かれて、鎧の下に着ている私服の状態だ。そんな状態で抱き寄せられたシエルは、彼女の大きな胸に顔を埋めた格好になっている。思春期男子にとっての思わぬアクシデントに、彼の顔は真っ赤に染まった。

 

…ショウがどこか羨ましそうな目をシエルに向けているように見えるのは気のせいか?

 

「うちが負けるなんて…ギルドに入ってから、初めてのことどす…。シエルはん…でしたね…。ここまで強いとは、思いもしまへんでした…」

 

意識はまだ残っていた斑鳩の途切れ途切れの声が彼らの耳に届く。それに反応すると同時にエルザの拘束が解かれ、シエルも解放されると同時に斑鳩の方に振り向く。彼女が浮かべていた表情は笑み。嘲りはなく、純粋にシエルの強さを認めたための笑みである。

 

「…聞いてもいいか?あんたどうして暗殺ギルドになんか入ってるんだ…?」

 

突如尋ねられたその問いに斑鳩は少しばかり戸惑った。そんな質問をされたのは初めての事であり、今更気にするようなことでもなかったから。更に聞けば、斑鳩の実力があればわざわざ暗殺のみに限定しなくても正規の仕事で十分に実力を発揮できるはずだと、少年は語った。その問いの回答は、斑鳩にとっては特に難しい事ではない。

 

「無月流は暗殺剣の一種…。うちにこの剣技を教授してくれはった師匠も、闇の世界に生涯を捧げることを誓っとりました…」

 

人を殺めることに特化した技の数々。立ち塞がる全てを一刀を以って退け、必ずその獲物の命を刈り取る修羅の道。彼女はその剣技を身に付けた日から、これまでの過去、これからの未来、全てを人を殺める剣に捧げる勢いだった。それを身に付けたからには、己の人生は闇に染める事こそ意義のあるものだと、信じていたから…。

 

「技や魔法に善も悪もないだろ」

 

そんな彼女の価値観は、少年の一言をきっかけに崩れ始めた。驚愕に顔を染めてシエルの方へと見開いた目を向ける斑鳩に、シエルは続けて口を開いた。

 

「暗殺剣って言ってもさ、人を殺してきた剣技がそう呼ばれるだけで、その剣技を殺す以外の目的のために使ったらいけない、なんて決まりがあると思えないんだよな。黒魔術、破壊魔法、死霊魔法とかもそうだ。その魔法にしか適性が見いだせなかった魔導士もいると思う」

 

斑鳩だけでなく、ショウも表情に驚きを表してシエルの言葉に耳を傾ける。唯一表情を落ち着かせているエルザは、シエルの言葉に心当たりがあるのか笑みを浮かべて頷いている。

 

「けど、最後にその技の良し悪しを決めるのは、使い手の心だと俺は思うよ。俺が使う天候魔法(ウェザーズ)も、使い方を間違えれば世間から非難されるような魔法だし」

 

自分の魔法もまた、使い手によって左右される強力な魔法。暴走させれば周りに極度の危険を招く可能性も高い。それを嫌でも知らされているからこそ、シエルは知っている。魔導士の心次第で、魔法は善にも悪にもなり得ることを。だからこそ、斑鳩の剣も、人に仇なすだけでなく、守るために使うことができるはずだ。それがシエルの意見だった。

 

それを聞かされて面食らった様子だった斑鳩は、しばらくすると「ふっふふ…!」と吹き出したかと思うと笑い始めた。

 

「最後の最後に…坊ちゃんに教えられることがあるなんて、思いまへんでした…」

 

「最後の最後…?」

 

気になる単語を耳にしたシエル、そしてエルザがその言葉を反芻すると、あと13分、とだけ答えた斑鳩は右腕を天井へと伸ばして、言葉を紡いだ。

 

「落ちてゆく~正義の光は~皆殺し~」

 

その一句と、「ひどい詩…」と自嘲する一言を残して、彼女は意識を失った。13分…正義の光…。関連するものと言えば一つしかない。エーテリオンだろう。

 

「ショウ、ケガは平気か?」

 

「う、うん…なんとか…」

 

痛みが落ち着いてきているショウの元にシエルを運び、彼の身体をショウの方へと預けさせながら、エルザはさらに言葉を続けた。

 

「シエルを頼む。そして今すぐシモンたちや、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の者たちも連れてこの塔を離れるんだ」

 

「で、でも…」

 

「私の言う事が聞けるな?ショウ…」

 

穏やかな笑顔で問いかけてくるエルザに、ショウは肯定の返事しかできなかった。そして背を向けて歩き出したエルザに、今度はシエルが彼女に声をかける。

 

「…エルザ…死なないでね…?」

 

「…勿論だ。決着をつけてくる」

 

その言葉と共にエルザの身体が光に包まれる。そして彼女の換装魔法は新たな装いを生み出していた。下半身には炎を象った意匠の袴。上半身は胸を白いさらしだけで覆っている。斑鳩と同様の東洋で見られる装束だ。

 

「姉さん…」

 

そして一人、ジェラールの元へと駆けて行ったエルザの背を見つめながら、ショウは彼女の無事と勝利を願った。

 

「エルザなら大丈夫…。それはショウたちも知ってるだろ…?」

 

「…ああ」

 

抱えられた状態のシエルが笑みを浮かべながらかけた言葉に、ショウは不安を拭いきれない、だが信頼を思わせる決意の表情で答えた。

 

「姉さんの言うとおり、オレたちは脱出しよう。…そうだ、シモンたちに連絡するからちょっとだけ待っててくれ」

 

「頼んだ…」

 

もう自分は限界だ。後はエルザに全てを託す他ない。そう言えば、三羽鴉(トリニティレイヴン)とぶつかっていた他の面々は無事なのだろうか…?

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

「ショウから通信が入った。シエルが最後の一人を倒して、三羽鴉(トリニティレイヴン)は全滅したらしい」

 

「オレ何もしてねえ!!!」

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

ショウによって連れられ、自分たちが乗ってきた小舟の元に戻ってきたシエル。既に小舟には、エルザ、ナツ、シモンを除く、エルザの仲間たちと妖精の尻尾(フェアリーテイル)の面々が乗っていた。

 

「みゃあ、ショウー!早く早くー!!」

 

「分かってる!…自分で動けそうか…?」

 

「うん…結構回復できた…」

 

道中、日光浴(サンライズ)を出して自分の体力と魔力を徐々に回復させながら移動したおかげで、シエル自身も大分動けるようになった。万全には程遠いが避難するには十分。最後に来たシエルたちが船に乗り込んだことを確認したウォーリーは、船を動かして桟橋から離した。船が動いたことに気付いたグレイが今すぐ戻すように言うが、ウォーリーたちにもそれはできない。

 

「でも、エルザがまだ中に…!ナツだって!!」

 

「姉さんなら、大丈夫…。信じなきゃ…!」

 

「それに、シモンだっている…何とかなるだろ…」

 

「何とかって!!何よそれ!」

 

塔の中に残された3人を連れ戻すために戻ろうとする者。指示に従って塔から離れようとする者。意見が二分され、互いの主張が場に響く。

 

「シエル、てめえ何でエルザを行かせた!!お前が一番近くにいたんじゃねえのか!!」

 

満足に動くことができないシエルの胸倉を掴みながらグレイが声を張って詰め寄る。戦いによって疲弊しているとはいえ、言葉だけでも彼女を止めることができたはずだと。だが彼は今この時にもエルザたちを思って戻ることを主張していない。このままでは塔の中にいる者は消滅してしまうと言うのに…。

 

「…約束させてきた…」

 

シエルから帰ってきたのはその言葉だった。その言葉にグレイは思わず「は…?」と呆けた声を漏らす。

 

「『死なないでね…?』って約束させてきたんだ。そのまま無理に止めようとしても、エルザを止められない。だから、生きて戻ってくることを信じるために、一方的に取り付けてきた…」

 

「そ、そんなの、本気でエルザが守ると思うのか!?」

 

「それを信じることが、今俺たちにできる唯一の事だ」

 

ただの口約束だ。しかし仲間であるエルザがそれに対して簡単に無碍にすることができないことを知っている。ただ信じるしかない。もう動くことすらままならない自分たちにできるのは…それしか…。

 

「そうだよ…信じなきゃ…!きっとナツはエルザを連れてきてくれる…!シモンだってそう言ったんだ…!!」

 

相棒(ナツ)が心配で、自分も戻りたい気持ちは同じだ。しかしハッピーはそんなナツやエルザを信じる。火竜(サラマンダー)が真の力に目覚めれば、ジェラールのような悪にだって、きっと…。

 

塔の中にいる3人を信じ、徐々に遠くなっていく塔を見ながら船で離れていく。そして塔の全てが視界に収まった頃、塔の上空に一際目立つ光が見える。

 

「あの光って…!?」

「エーテリオンだ…!!」

「みゃああ…っ!!」

 

目視でさえ確認できる全てを滅する正義の光。狙い撃つのは史上最悪の魔導士復活を目論む男が統べる楽園へと導く塔。光を放つ権限を持つ評議員に名を連ねる一人の男を頭に浮かべ、シエルは戦慄した。

 

「本当に撃つ気なのか、エーテリオンを…!自分の弟がいる塔に…正気か、ジークレイン…!?」

 

「ナツ…エルザ…!早く脱出して…!!」

 

涙を浮かべて願うハッピーの声も空しく、光は徐々に強くなっていく。上空に展開された複数の属性の魔法陣が、一つの基盤を作る魔法陣に集約され、そして脱出した者達の姿が一つも確認できないまま…

 

 

 

 

 

 

正義の光は落とされた―――。

 

「ナツ!エルザーーー!!!」

 

声を上げたのは誰だったか。誰もそれを確認する余裕もないまま、楽園の塔は落とされた極太の光線によって包まれ、着弾点にある海を勢いよく波立たせる。それによって起きた巨大な波はなるべく遠くに離れていたシエルたちの乗る小舟をいとも簡単に巻き込み、一同は船から投げ出された。

 

ジュビアが咄嗟に自分の魔法で全員を水の球体に包み込み、海の中に放られるという事態は避けられたものの、周りの海は未だ尚荒れ狂い、光が収まる気配もない。小さな島を、付近の海ごと蒸発させて消し去るエーテリオンの二次被害が、ここからどれほど広がるか、計り知ることもできない。

 

「そんな…!!」

「ナツ…!!」

「…エルザ…!!」

 

あれほどの威力を受ければ、巨大な塔は見る影もなくなるだろう…。そしてその内部にいる者たちも…。間に合わなかったのか。エルザに取り付けた約束は、無駄なものとなってしまったのか…。押し寄せる後悔に苛まれ、シエルは塔があったであろうエーテリオンの着弾点から目を離さない。

 

 

 

 

「…え…?消えて、ない…!?」

 

最初に気付いたシエルの一言が、全員に驚愕を走らせた。そう、エーテリオンは落とされた。それによって消えたはずの楽園の塔は、その形を残していた。

 

だが、あくまで塔の形として。その様相は先程とはまるで別の建物としてその姿を変えていた。一言で形容するなら、水晶の塔。機械仕掛けのように見えた先程のものとは打って変わって、全てが水晶によって作られたように見える、魔水晶(ラクリマ)の塔へと変貌していたのだ。

 

「ねえ、無事だよね…!?ナツもエルザも、シモンって人も…!」

 

塔の姿が健在ならば、中にいた者たちも生きているはず。動揺を隠せないまま、仲間たちの身を案じるルーシィの呟きも聞こえず、シエルは声を出した。

 

「あの魔水晶(ラクリマ)は…ショウたちは知ってる…?」

 

「ああ…あれはRシステムだ」

 

あの水晶の塔こそがRシステムの真の姿。建立に深く携わっていたショウたちも、その魔水晶(ラクリマ)で作られた姿に心当たりがあるようだ。そして、そのシステムが作動していることも、ミリアーナによって明かされる。

 

「作動って…まさか、ゼレフが復活するの!?」

 

「分からない…オレたちだって、作動してるのは初めて見るんだ…」

 

「ナツとエルザはあの中にいるのか…!?」

 

仲間たちの会話を耳に入れ、シエルは一つの推測を立て始めた。今までの会話を思い出し、この状況に行きついた原因を探る。

 

 

 

『この戦い…勝とうが負けようが、私は表の世界から姿を消すことになる…』

 

『禁じられていた死者を蘇らせる魔法を発動させるために、建設を始めた』

 

『ジェラールはそのゼレフを復活させようとしている、って事ですか…?』

 

『ジェラールは、評議員の一人であるジークレインの双子の弟だ』

 

『評議員が衛星魔法陣(サテライトスクエア)でここを攻撃してくる可能性がある』

 

『自分まで死ぬかもしれない中で、ゲームだなんて…!!』

 

『ジェラールはエルザを生贄にするとか言ってるってのに!』

 

『オレたちが造ってたRシステムの本当の姿だゼ』

 

『オレたちだって、作動してるのは初めて見るんだ…』

 

 

 

 

 

『そんなジェラールは、私にとって憧れだった…』

 

エーテリオン…複数属性の魔力を掛け合わせた膨大な魔力を誇る魔法…。

 

目に見える魔水晶(ラクリマ)の塔は、多くの魔力を放っている。この状態が本当の姿…。

 

(ジークレイン)がいる評議員がエーテリオンを放つことを(ジェラール)が知っていた…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…!!!ま、まさか…!!」

 

結論が出た。もし仮にこの推測が正しいものだったとしたら、自分たちは全員あの男たちの掌で踊る人形に過ぎなかったことになる。

 

そしてそれは、エルザも同様…。

 

 

「…ジェラール…!!くぅ…!!!」

 

自分にしては珍しいとも思う。これ程までの怒りを感じるのも、感情的な衝動に身を任せることも。昂った感情が尽きかけて少しばかり回復した魔力を、さらにそこからあふれさせるように高めていき、身体から放出されていく。その様子に仲間たちが驚愕の目を向けているが、今シエルにはそれを気にする余裕はなかった。

 

「ジェラァァアアアルゥウッ!!!!」

 

激昂しながら乗雲(クラウィド)を発現し、ジュビアの魔法で出来た水の球体を突き抜けて全速力で塔の最上階を目指していく。数分もせぬうちに辿り着けるような、今までの中でも最高速度の勢いだ。

 

「ちょ、ちょっと!?」

「まさかあいつ!」

「シエル!待て、戻って来い!!」

 

仲間たちの動揺と制止の声に目もくれず、ただただ昇っていく。彼の中にあるのは最早、未だ対面すらしたことのないはずの男への嫌悪と怒り。荒ぶる、昂る感情のままに雲に乗る少年は夜空を突き抜けていく。

 

「てめえはどれだけコケにすれば…!

 

 

 

 

 

 

 

エルザを苦しめれば気が済むんだぁ!!!」

 

少年は吼える。邪悪とも呼べる男への怒りを。大切な仲間(家族)を救うため、絞り出した魔力へと変えた勢いのまま…。

 

妖精たちは刻一刻と楽園の最上階に集い始めていた…。

 




おまけ風次回予告

ハッピー「ねえシエル、“天体”って何?」

シエル「“天体”…って、星の事だよ。夜になると空一面に見えたり、遠くの方に観察できる星を全部ひっくるめた言葉だね」

ハッピー「それって宇宙の先にあるってことだよね?シエルが使う天候よりも凄いって事なの?」

シエル「ああ…それは、天候はあくまでその星一つに限定される現象だし…。けど、魔法の優劣は関係ない…はずだよ…!」

次回『天候魔法 vs. 天体魔法』

ハッピー「オイラ知ってるよ、それってフラグって言うんだ」

シエル「物騒なこと言うなって!大丈夫、きっと勝てる、天気の力を見せてやらぁ!!」

ハッピー「何かシエルがバカになっちゃった…」
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