FAIRY TAIL ~天に愛されし魔導士~   作:屋田光一

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お待たせいたしました!ちょっと危なかったですが無事投稿です、そしてまたちょっと長い!前回ほどじゃないけど!

前回書き損ねましたが、BoF編はそれほど長く書く予定はありません。ラクサスが好きな方には申し訳ないですが…いやむしろ雷神衆の約一名が好きな方には…出番が、ねぇ…?


第33話 バトル・オブ・フェアリーテイル

魔導士ギルド・妖精の尻尾(フェアリーテイル)依頼板(リクエストボード)には、今日も様々な依頼が貼り出されている。「魔物退治」や「深海の宝探し」など、実力のある魔導士たちの力が必要とされるものがほとんど。王国の中でも随一の実力者たちが集う妖精の尻尾(フェアリーテイル)に向いていると言えばそうなる。

 

「う~ん…あたし一人で行けそうな仕事、あるかな~」

 

だが、そんな依頼書たちに目を通して渋い顔をしているものが一名。星霊魔導士のルーシィ・ハートフィリアである。普段ならシエルやナツを始めとした最強チームの面々と共に報酬が高い依頼に行くことが多いのだが、今日に限っては彼女しかギルドにいない。

 

グレイは新人であるジュビアの面倒を見るようにマスターから言われたらしく、二人で依頼に行ってしまった。去り際のジュビアのどや顔は今でもルーシィの脳裏に焼き付いている。エルザは、壊されたために新調した鎧に不具合があったそうで、製造元である「ハートクロイツ社」に抗議をしに行った。補足しておくと、ハートクロイツ社は服飾専門の製造会社であり、衣服のブランドとして有名だ。インテリア方面にも製作をしているらしいのだが、エルザが換装で扱う鎧や武具などを作っているのもこの会社。だが本来、鎧や武具の発注は承っていない。作ってもらっているのはエルザのみだ。

 

そしてシエルとナツだが、数日前に修行と称して出て以来、未だに帰ってきていない。

 

「せめてどっちかだけでもいいから、帰ってきてくれればな~」

 

「あれ?あそこに見えるの、ナツとシエルじゃねーか?」

 

噂をすれば影。ようやく帰ってきた二人を迎えて早く仕事に向かおうと、すぐさまルーシィはギルドの入口へと駆けだしていく。取りあえず一言か二言ほど文句を言ってからじゃない時も済まない。そう心に決めていたルーシィであったが…。

 

「もー!二人ともどれだけ留守にしてたら気が…済む…の?」

 

その言葉にかかる圧は徐々にしおれていき、気づけば言葉も途切れ途切れとなった。その理由は今しがた帰ってきた二人の様子を見たから。表情がどこかくたびれていて、目の下にうっすらと隈が浮かんでいるシエル。そしてそんなシエルにおぶられて、全くもって活力を感じられない、生気を失ったかのような表情で体をだらんと預けているナツ。

 

「あ、ルーシィただいまー」

 

異常状態とも言える二人の様子に、唯一普段通りに見えるハッピーの挨拶が耳に届くまで、ルーシィの思考は停止していた。

 

「お、おかえり…何があったのこれ…?」

 

戸惑いながらも尋ねてきたルーシィの質問に、ぽつりぽつりとシエルが語り始めた。競走も含めて野外での修行を共に行い、特に何の問題もなく実行できていたのだが問題は突如発生した。ナツが昨日突然動こうともしなくなったのだ。体調不良を訴えるナツの魔力と体力を回復させるために火を差し出したりもしたのだが、食欲もないようで全く口にせず。修行どころじゃなくなったために、仕方なく帰ることにしたのだが…。

 

「初日に俺を追い抜いたナツが考えなしに走ったせいで、帰り道が分からなくなっちゃったもんだから…あちこち迷ってた…」

 

「本当に何してんのよ…」

 

もう怒りよりも呆れ果てた。更に聞けばナツが一向に動こうとしないので、移動中はシエルとハッピーが交代交代で運んでいたらしい。乗雲(クラウィド)に乗せて運んだ時もあったのだが、ただでさえ体調が優れない上に乗り物酔いが常時続くのは堪えたらしく、乗せてもずり落ちたりするので仕方なくおぶっていたそうだ。昼夜問わず移動していたために、ようやくマグノリアに到着した時には既に今のくたびれた状態だったわけだ。

 

「そんな訳だから今、物凄く、眠くて…ふぁ…」

 

「その隈を見る限りはそうなるわね…」

 

説明している間も時々こっくりこっくりと首を前後していつ眠ってもおかしくない状態だった。そしてナツもギルドに到着したというのにシエル同様身体を揺らして今にも再び寝てしまいそうな状態だ。本当に何があったのか。

 

「多分だけど、この前エーテリオンを食べた時の副作用が出たんだと思うんだ」

 

疑問に答えたのはナツの相棒であるハッピーだ。先日まで普通に活動できていたのに今頃になって副作用が出るとはどういうことなのだろう。だがそれ以外に理由は考えられないとハッピーは続ける。

 

「前にもラクサスの雷を食べたらこーなっちゃったんだ」

 

「火以外の魔法を食べちゃダメなのね」

 

元々魔法は食べれるものではないのだが、そこは滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の他とは違う異質な点の一つと言うものだ。すっかり机に突っ伏して眠りだしたシエルとナツを置いて、ギルド内の話は続いていく。

 

「てか、何でラクサスの雷を?」

 

「ああ、昔ナツが勝負を挑んだんだよ。そん時に食ったんだ」

 

「まあ、瞬殺だったけどな」

 

ギルド内にいたナブやマックスといった他の魔導士たちがルーシィたちの話に加わってくる。しかしルーシィにはその内容に度肝を抜かれた。あれほど強い魔導士であるナツが瞬殺。全く歯が立たないとは、ラクサスはそんなに強いのかとぼやくほどである。

 

「あい、メチャメチャ強いよ。あ、でもエルザやペル、ミストガンだっているしな~」

 

「ペルって、シエルのお兄さんの?」

 

「そういやペルも、ナツにしょっちゅう勝負挑まれてたよな?」

 

「で、その度に毎回瞬殺されてよ」

 

エルザ、ラクサス、ペルセウス。ナツがギルドで最強候補と謳われた魔導士たちに、勝負を挑んでは瞬殺されるのが、最早恒例になってしまっているのだろうか?しかもペルセウスには何度も勝負を挑んでいるのによくめげないもんだとルーシィは素直に思うばかりだ。

 

「それにミラだって昔はヤバかったんだよ。『魔人』って呼ばれててね」

 

「ま…『魔人』!?ミラさんが!!?」

 

さらには予想もしなかった人物の来歴までもが公開される。常に笑顔で優しいイメージが強いあのミラジェーンが『魔人』などと呼ばれていた時期があったのか。ある意味ルーシィにとって一番の衝撃である。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強決定戦やったら、誰が優勝するんだろうね?」

 

「最強なのは兄さんだーー!!」

「いーやオレだーー!!」

 

「起きた!?」

 

ハッピーの一言に反応したのはずっと寝ていたはずの二人(シエルとナツ)。眠っていながらも聞き捨てならない言葉に反応して飛び起きた二人の様子に、即座に声を上げたルーシィ含め、ギルド内の全員が驚愕している。

 

「「くかー」」

 

『そして寝たー!!』

 

起きたかと思いきやまたも机に突っ伏して寝息をかき始めた二人に、今度はギルド内のほぼ全員のツッコミが響いた。「何か少し前にも同じもの見たような気が…」とルーシィはアカネリゾートにいた際のナツを思い出しながら呟いていた。

 

「けど確かに気になるな。やっぱラクサスが一番じゃね?」

「いやいやここはペルだろ。ギルド入った時から頭一つ抜けてたしな。」

「わ、私はエルザさんを推そうかな…」

 

一方で魔導士たちは、最強決定戦を実際に行ったら誰が勝つのか、各々予想を立て始めた。古株でもありマスターの孫でもある代表格のラクサス。ギルドに加入してから短期間で頭角を現したダークホースペルセウス。そして最早語るまでもなく最強の女であるエルザ。中には交流が深いという理由で名を出す者もいるが、応援の気持ちが入っているのかもしれない。

 

あちこちで「けどギルダーツ含めたら誰も勝てなくね?」とか「いやあのオヤジは人間枠じゃねえから」とか不穏な会話が聞こえてきたが、ルーシィは気のせいと思うことにした。

 

「ルーシィは誰だと思う?」

 

「え~。あたしは身内同士で優劣つけるなんて、やだなー…」

 

ハッピーからの質問に対して、どこか乗り気ではなさそうな反応を示すルーシィ。ナツを始めとした当の本人たちが主張する最強。これを実際に確かめる事自体、彼女は好ましくないようだ。過去にナツとエルザが勝負する際も止めようとした時のように。

 

「ぅう…やっぱ、調子悪ィや…帰ろ…」

 

すると寝ていたナツがフラフラとしながら立ち上がり、ぼやきながらギルドを出ようと動いていた。それを見てルーシィは自分がここに来ていた理由を改めて思い出した。仕事に行かなければいけなかったことを。

 

「え、ナツホントに帰っちゃうの!?待ってー!仕事行かないと家賃がー!!」

 

「…あれ…?前に俺と行った依頼の報酬は…?」

 

ナツが帰る意思を見せたことでついて行ったハッピー共々引き止めようと必死のルーシィ。そのルーシィのセリフを聞いてシエルは首だけルーシィに向けながら尋ねてきた。この間シエルと共にビショックイノシシの討伐をしたことで貰った報酬、及びイノシシの肉で手に入れた金はどうしたのかと。

 

「先月までは払えたけど、食費や衣服に本とか買う事を考えると、それでも今月ピンチなのよ…!シエルお願い一緒に行ってー!!」

 

「そうしてあげたいけど、ごめん今日は無理だ…。仕事にならない…」

 

どうやらルーシィの予算は早くも限界になってしまったようだ…。思わぬ収入が入ったことによる反動なのだろうか?そんなピンチにシエルの力を借りようと頼み込んでくるが、睡眠不足の状態である今ではそれも難しい。彼の返答を聞いたルーシィは泣いて項垂れた。このままではこの先も危ないかもしれない。

 

「あ…でもすぐお金が欲しいなら、あれだ、ミスコンがあるはずだよ…」

 

「ミス…コン…?」

 

そこにシエルから一つの提案が出された。『ミスコン』と言う単語を反芻するルーシィに何かを思い出した様子のマックスがルーシィに近寄って一枚の紙を手渡した。

 

「そうか、ルーシィ初めてだもんな。これ見てみなよ」

 

「ん…?『マグノリア収穫祭』のチラシ?」

 

主な産業が酪農や園芸農業のフィオーレ王国。その内の街の一つであるマグノリアも例外ではなく、実りの季節である秋に、街近郊の農業関連の地で作られた作物等の収穫を祝い、マグノリア総出で祭が開かれる。

 

それが『マグノリア収穫祭』――。

そしてこの収穫祭には妖精の尻尾(フェアリーテイル)も大きく関わるイベントが存在するのだ。その内の一つが、チラシの右下にあまり目立たないが確かに記されていた。

 

「『ミス・フェアリーテイルコンテスト』!?」

 

「そう。妖精の尻尾(フェアリーテイル)に所属する女の子たちの美の競演!」

 

「あと優勝者は賞金50万J(ジュエル)

 

その話を聞いてルーシィの沈みかけた気分は一気に盛り上がった、一月の家賃が7万のルーシィにとっては7ヶ月分。そして美の競演となればルックスに自信のある自分も勝機が存在する。ミラジェーンやカナなどの魔導士も出場を決めているが、ルーシィも負けてはいない。しかし週刊ソーサラーでグラビアの特集も組まれるミラジェーンが参加するとなれば手強い相手だ。

 

「で…でもあたしの方が若いし!フレッシュな魅力って事で…いける!いけるわ50万J(ジュエル)!!絶対優勝してやるんだから!!!」

 

「OK!ルーシィもエントリーって事で、登録しとくよ!」

 

先程まで身内同士の優劣がどうとか言っていたような気がしたがこの際蒸し返すのもよしておこう。物凄く意気込んだルーシィの様子を見ながら、コンテストの主催らしいマックスは彼女の名を登録し、シエルは首を向けながら「まあ…頑張ってねぇ…」と力なさげに声援を送った。

 

「シエル~~あたしん家に来な~い?お肉御馳走するよ~?」

 

「賄賂なんか無くても応援するって…」

 

突然シエルの背中に手を添えながら高い甘えるような声で誘ってくるルーシィ。少しでも票を獲得しようとする魂胆が見え見えだが、同じチームのよしみでシエルは元からルーシィを支持するようで意味はなさそうだ。呆れた様子で返したシエルにどこか釈然としない表情をルーシィは浮かべた。

 

 

 

だがこの収穫祭に、ある一人の男の野望が待ち構えていることを、この時誰も気付くことは出来なかった…。

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

早くも時は流れ、収穫祭当日―。

マグノリアの街は、祭に相応しい様々な飾りつけや出店、そして多くの人たちの声でより一層の賑わいを見せている。今ここに姿を見せている人々は、6万ほどいるマグノリアの住民のみならず、近隣の街からの観光客も数多くいる。その最大の理由は何と言ってもマグノリア、もとい妖精の尻尾(フェアリーテイル)が大陸に誇る収穫祭のメインにして最大のイベント、魔導士たちによる魔法を使った大パレード『幻想曲(ファンタジア)』を見る為であろう。

 

「祭りだーー!!」

「あいさーー!!」

 

数日経って寝不足が解消されたシエルが、ハッピーと共に盛り上がる。ここ数日のロウテンションとは打って変わってハイテンションのシエルに対し、ハッピーの相棒であるナツは未だに不調のようでフラフラとしながら歩いている。

 

「食えるもん…片っ端から食うぞぉ…!」

「「食うぞーー!!」」

 

それでもこの一大イベントをただ不調のままで過ごす気は無いのか食べ物を販売する屋台に向けて一歩ずつ近づいて行き、その後ろをシエルたちがついていく。その様子を後方の離れた位置から見ているのはルーシィ、そして依頼から戻ってきていたグレイとジュビアの3人。

 

「まだ調子悪そうね…」

 

「大丈夫でしょうか?」

 

「放っときゃいいんだよ、シエルもいるしな」

 

フラフラと歩くナツの様子に心配を向ける少女二人に対し、グレイは気にしていない。この前と違って逆に調子がよさそうなシエルが同行しているなら、何があったとしても問題はないとも判断した故かもしれない。

 

「相変わらずだな」

 

すると、ルーシィたちの後方から一人の青年が声をかけてきた。3人が振り向いた先にいたその青年は、黒い髪を七三分けに伸ばした、たらこ唇が特徴的だ。今しがた街に到着したようで、肩に荷物をまとめた袋の紐をかけている。この青年とはグレイのみ面識を持っていた。

 

「『ウォーレン』!久しぶりだな」

 

「収穫祭に何とか間に合ったよ」

 

念話(テレパシー)魔法の使い手であるこの青年、名は『ウォーレン・ラッコー』。彼は複数の仕事を一気に掛け持ち、それら全てをこなしていくギルド内でも上位の実力者だ。その功績は週刊ソーサラーにも掲載されたらしく、ルーシィも本物のウォーレンに会えたことに少しばかり感激している。新人であるルーシィやジュビアと互いの紹介も済ませたところで、改めて一同は街の中にいる人の数に圧倒されている。

 

幻想曲(ファンタジア)を見るために他の街からも集まってくるからな」

 

「大パレード!あたしも見たーい!!」

 

「お前参加する側だろ」

 

最初に幻想曲(ファンタジア)と聞いた時は何のことか分からなかったが、改めて説明を聞いてその興味が一気に湧いたらしい。客側として見たいと色めき立つルーシィだが、ほとんどの魔導士がパレードに参加する側だ。

 

「あれ?ウォーレンじゃん!久しぶり!」

 

「よ、久しぶりだなシエル」

 

すると出店で買いまくったらしい食べ物を抱えながらシエルがその場に戻ってきた。「どんだけ買ったの!?そして全部食べれるの!?」とルーシィからツッコミが入る程に大量だ。本当に今日のシエルはテンションが高い。

 

「何かシエル性格変わったか?妙に元気っつーか、いつもの落ち着きがないっつーか」

 

「ペルが10年クエスト達成したからもうすぐ帰ってくるって聞いてから、ずっとこの調子らしいぜ」

 

「ペルが!?成程な、そりゃシエルも嬉しそうなわけだ」

 

シエルのテンションの高さはウォーレンも一目見て気付いたらしい。理由を聞けばすぐさま納得するほどには、シエルと兄であるペルセウスの仲がどれだけ良好かも感じ取れる。普段のシエルからは想像できない様子に、微笑ましくさえ思えてくる。

 

「そう言えばルーシィ、もうすぐミスコン始まると思うけど、こんなとこにいていいの?」

 

「あ!そうだった!!ミス・フェアリーテイルコンテスト、早く行かなきゃ!!あたしの家賃ーー!!」

 

微笑ましくシエルを見ていたらそのシエルから忘れてはいけなかったコンテストについて問われて思い出し、開催場所であるギルドに全速力で走っていった。生活もかかってる。彼女も必死だ。

 

「ジュビア…ルーシィには負けられません…!」

 

「お前も出るのか…」

 

どうやらここにも参加者がいたようだ。十中八九グレイの心を動かすためだろう。そして恋敵(と一方的に思ってるだけ)であるルーシィに勝っていると証明するために。それを聞いたシエルはすぐさま動いた。

 

「ねえグレイ、誰が優勝するか賭けてみない?俺ルーシィに賭けるから、グレイはジュビアに賭けなよ」

 

「何でオレが賭ける奴までお前が決めてんの…?」

 

そんな大雑把なアシストをシエルが行っていることは、残念なことにジュビアは気づいていなかった。

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

新築された妖精の尻尾(フェアリーテイル)のギルド内にも、祭に相応しい装飾が施されており、新設されたライブステージの前には、ギルドに所属する魔導士のみならず、観客としてコンテストを見に来た人々が訪れている。そんな大勢の前で、堂々とタキシード身を包んで、襟首には大きな蝶ネクタイを着けた一人の魔導士が、マイクを片手に司会を進行している。

 

≪マグノリアの町民の皆さん、及び近隣の街の皆さん。え?このイベントを見る為に、死者の国から来たって人もいるの?終わったら墓に帰ってね≫

 

その司会の冗談に観客席から笑い声が響く。観客へのサービスも忘れない優れた精神だ。そんな司会進行、砂の魔導士マックスの声がギルド内に響いていく。

 

≪お待たせしました!我が妖精の尻尾(フェアリーテイル)の妖精たちによる美の競演!ミス・フェアリーテイルコンテスト開催でーす!!≫

 

瞬間、会場となったギルドは一気に歓声に包まれる。美の競演と言うだけあって、美人揃いの魔導士たちを見る為に観客は男性がほとんどだ。ステージ前まで来て近くで見ようと迫ってくる客もいる。そんな中でテーブル席に座りながら遠目でも観覧しているメンバーの一部に、出店で買った食べ物を咀嚼しているシエルやナツ、そして同じテーブルにはハッピー、グレイ、エルフマンが固まっていた。

 

「売り子もやってたり主催もしてたり、色々大変だよねマックス」

 

「つーか、お前ら興味ないんじゃないのかコレ…」

 

黙々と食べてるナツは言わずもがな、シエルも普段女性に過度な反応を示す様子が見られない。その上、まだ子供と言える年齢の彼はあまり美人コンテストと言うものも興味が無いかとグレイは思っていた。だが、その意見はシエル本人から否定される。

 

「俺だって、綺麗なお姉さんとか、可愛い女の子とか見かけたら振り向きもするよ?男だもん」

 

「うむ、漢だ」

 

「そう、なのか?」

 

あんまりイメージがぱっと浮かばない。あとエルフマンはただそれを言いたいだけだからグレイは敢えてスルーすることにした。そんな雑談をしながらも、トップバッターである女性が登壇してきた。

 

≪エントリーNo.1!異次元の胃袋を持つエキゾチックビューティ!カナ・アルベローナ!!≫

 

こげ茶色のロングウェーブヘアーで、露出の高い服装をした大酒呑みでもあるカナだ。いきなりレベルの高い美女が現れて観客もヒートアップしている。

 

≪さあ…魔法を使ったアピールタイムだ!!≫

 

司会のマックスの声と共に、手に出したタロットカードの束を魔法で自在に動かし、己の身体を包み隠していく。数秒間包まれた後に一気にカードがばらけると…。

 

≪水着に着替えたーー!!≫

 

元から露出が高かったが今度はさらに面積の狭い、ストライプ柄の水着姿へと変貌していた。更に言うと彼女がとっているポーズも色気を増長させている。これによってさらに観客も盛り上がっていく。

 

「50万…いいえ、酒代はいただいたわ…」

 

言い直す必要あったのか。

 

「いきなり色仕掛け…」

 

「まあ、カナだしな」

 

「漢だ」

 

「「女だよ」」

 

エルフマンちょっと黙ってようか。

 

≪エントリーNo.2!新加入ながらその実力はS級、雨も滴るいい女!ジュビア・ロクサー!!≫

 

続いての出番はジュビア。得意である水流(ウォーター)で自分の首から下を流れる水へと変えていき、自分の周りを水で包んでいく。その演出を見た観客たちは、その珍しさに釘付けとなる。そして水が彼女の姿を再び現した時には、水玉模様の水着姿へと変わっていた。

 

≪おおっ!水着が似合う演出を作り出したー!!≫

 

「グレイ様、見てますかー!」

 

「だってさ、グレイ様?」

 

「オレに聞くなよ…」

 

ニヤついた顔で詰め寄るシエルから顔を背けるが、何だかんだでジュビアには視線を向けている。その結果更にシエルの笑みが深くなった。

 

≪エントリーNo.3!ギルドが誇る看板娘!その美貌に大陸中が酔いしれた…!ミラジェーン!!≫

 

「待ってましたー!!」

「優勝候補ー!!」

「本物だぁ!!」

「本で見るより可愛いなぁ」

 

3番手にして登壇したのは言わずと知れた看板娘兼グラビア常連の優勝候補。笑顔を浮かべて手を振るだけで、観客たちの声援がここに来て更なる盛り上がりを見せている。

 

≪さあ、アピールタイムだ!!≫

 

「私…変身の魔法が得意なんで、変身しまーす」

 

待ちに待ったミラジェーンのアピールタイム。彼女はどんな素晴らしいものを見せてくれるのか、観客たちの期待も最高潮に高まっている。

 

 

 

 

「顔だけハッピー!あい!」

 

瞬間、空気が凍り付いた。文字通りミラジェーンの可愛らしい顔のみを喋る青いネコのハッピーに変えて物真似を披露したことによって、思っていたものとかけ離れたアピールに、最高潮に盛り上がっていた観客のテンションは一気に下がる。ついでにマックスも固まっていた。しかもこれだけに終わらず…。

 

「顔だけガジルくん!」

 

最近加入した元ファントムのコワモテ、ガジルの顔にも変身したことで更に空気は凍り付き、何かを吹き出す音が二か所から発生した。一か所は変身のネタにされたガジル本人。彼もあまりこういうコンテストに興味を示さないかと思いきや、ちゃっかり来ていた。それがまさか自分の顔をネタにされるとは思いもよらなかっただろう。そしてもう一か所はと言うと…。

 

「ふっくっくっくっく…!み、ミラの身体の、上が、が、ガジルって、ひ、卑怯だ…!!」

 

「あははははっ!!」

 

「喜んでんのお前らだけだぞ…」

 

「姉ちゃん…」

 

シエル(ここ)だった。グラビアを飾る抜群のプロポーションを持つ女性の頭部が、明らかに肉食獣のような男と言う、あまりにもアンバランスな奇人を目にしたせいでドツボにはまり、机を叩いて突っ伏しながら笑っていた。ついでにハッピーも腹を抱えて大笑いしている。何がそんなに面白かったのか、苦笑いを浮かべながらグレイが呟く中、隣のナツは変わらず黙々と咀嚼しており、姉の醜態を垣間見た(エルフマン)はショックで空いた口が塞がらなかった。

 

優勝候補が思わぬ形で自滅した。その事実に舞台袖で見ていた一人の少女がほくそ笑んでいたことは会場の誰も知らない。

 

≪エントリーNo.4!最早説明不要の妖精女王(ティターニア)!!エルザ・スカーレット!!≫

 

「キター!!」

「エルザー!!」

「かっこいいーーっ!!」

妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の女!!」

 

気を取り直してお次にきたのは、鎧に身を包んだ妖精女王(ティターニア)・エルザ。美と剛を兼ね備えた彼女の登場に、盛り下がっていた会場の空気は再びアップ。さすがの人気と言える。

 

「エルザ大丈夫かな…」

 

「肝心な時に緊張しちゃうもんね…」

 

以前の演劇の際のエルザを知っているシエルたちは正直不安だった。本番に弱いタイプである彼女が、前回同様観客が多くいるこの舞台で満足なアピールが出来るのか。

 

「私のとっておきの換装を見せてやろう」

 

だが以外にもエルザはいつも通りで落ち着いている様子。そして宣言と共に彼女の鎧が光と共に剥がれていき、収まった時には鎧姿とは違う、ある衣装を纏った姿となっていた。それは…。

 

 

 

 

 

 

黒を基調とした西洋形式の硬派とも見れるものと、少女らしさのあどけないものが加わった有名なファッションジャンル。ゴシック&ロリータ。縮めて…。

 

「まさかの『ゴスロリ』!!?」

 

鎧姿が基調の凛とした女性が、大人らしさと子供らしさを兼ね備えた可愛らしい服装に身を包むというギャップに、今まで以上に会場は湧きたった。その反応にも満足したのかエルザも勝利の笑みを浮かべている。楽園の塔の一件以来、彼女もキャラが変わったようだ。いい意味で。

 

「こ、これは…何つーか…」

 

「漢、だ…」

 

「正直、予想もしてなかった分、胸に刺さった…」

 

今まで平静を保っていたシエルたちも、これには耐えられなかった。今までのエルザを知ってる分、その破壊力は計り知れない。この後に続く参加者にとってかなりのプレッシャーだと思われる。

 

≪エントリーNo.5!小さな妖精!キューティ&インテリジェンス!レビィ・マクガーデン!!≫

 

「『立体文字(ソリッドスクリプト)』!!」

 

続くレビィのアピールは、魔法で指文字を描くことで、その文字にちなんだ様々な効果を発揮させる魔法・『立体文字(ソリッドスクリプト)』を連続で発動。SNOW()BUTTERFLY()METAL(金属)FLOWER()を自分の周りに出してアピールした。小柄で可愛らしい容姿に明るい笑顔も相まって感情からの反応もいい。

 

「「いいぞー!レビィー!!」」

 

約二名からの声援が特に大きいが、それもご愛敬。

 

≪エントリーNo.6!西部からのセクシースナイパー!ビスカ・ムーラン!!≫

 

黄緑色のロングヘアーで銃器の換装魔法である銃士(ザ・ガンナー)の使い手・ビスカ。手に持った4枚のコインを空中に投げて換装魔法でライフルを装備。そして照準を定めると銃弾を一発。それだけで4枚のコインは全て同じ中央を撃ち抜かれていた。見事な神業とも言える銃の腕に、一際歓声も大きく上がる。

 

「か、可愛い…!!」

 

約一名別の反応が見られるが、それもご愛敬。

 

≪エントリーNo.7!我らがスーパールーキー!!≫

 

「お、来たか!?」

 

コンテストもいよいよ佳境。残すところはあと一人となり、最初の紹介文のフレーズだけで、誰の出番なのかを察したシエルの反応も強い。

 

≪その輝きは星霊の導きか…!ルーシィ・ハート…≫

「だーー!!ラストネームは言っちゃダメーー!!」

 

「何だ?」

「可愛いなあの娘…」

 

遂に登場したのは、何故かチアガールの服装を着ているルーシィだ。だが紹介文を言い終わる前に彼女が飛び出してきたことで、戸惑いを覚える観客も多い。ハートフィリア財閥(コンツェルン)の令嬢であることがバレたら賞金が貰えなくなってしまうことを危惧しての事らしいが、気にし過ぎのような気がする。

 

「頑張れー!ルーシィー!!」

 

「妙に肩を持つけど、そんなに楽しみだったのか?」

 

「だってさ…魔法を使うってことは、星霊と一緒にアピールするって事だよ?見逃せないじゃん」

 

「それが本音か…」

 

やけにルーシィを支持していると思ったら狙いは星霊だったか、と聞いてきたグレイは納得した。この事を本人は知ってるのだろうか。多分知ってたとしても、家賃確保の為に同じことをしてただろう。

 

≪さあ、アピールタイムだ!!≫

 

「えーと…あたし、星霊たちとチアダンスをしまーす!」

 

どうやらそのアピールの為に衣装もチアガールにしていたようだ。どの星霊と共にするかまでは分からないが、観客たちは可愛らしい少女のチアダンスに期待が高まっている。掴みは良さそうだ。シエルもワクワクしながら彼女のアピールを待っている。

 

 

 

 

「エントリーNo.8」

 

どこからか突如聞こえた聞き覚えのない女性の声と台詞に、登壇しているマックスとルーシィ、更には会場にいる全員が困惑にどよめいた。まだアピールタイムが済んでいないルーシィは、突如中断されたことに若干苛立っている。すると、ステージの幕から、一人の女性が現れた。

 

「妖精とは私の事。美とは私の事。そう…全ては私の事…」

 

その女性は薄い茶色の髪を左側で纏め、眼鏡をかけており、右手に持ったカフの付いた扇子で口元を隠しながら、上品な立ち振る舞いを意識しながら歩んでくる。

 

「優勝はこの私、『エバーグリーン』で決定~♡ハ~イ、くだらないコンテストは終了で~す♡」

 

『え~~~!?』

 

突如乱入してきた女性、『エバーグリーン』によって中止を宣言されたコンテスト。ルーシィと共に、観客からも思わぬ展開で驚愕の声が響き渡る。だが、違う反応を示す者たちがいた。妖精の尻尾(フェアリーテイル)に所属する魔導士たちだ。彼女もまた妖精の尻尾(フェアリーテイル)に所属する魔導士であり、長い間留守にしていた彼女が帰還したことに反応している。

 

「ちょっと、邪魔しないでよ!あたし…生活がかかってるんだからね!!」

 

「ルーシィ!そいつの目を見るなっ!!」

 

「え!?」

 

グレイが注意を叫ぶのも空しく、ルーシィは意図を把握できずにその場で固まる。そしてエバーグリーンがかけていた眼鏡を外してルーシィの方へと向いた。

 

「なぁに?このガキ」

 

彼女の目を見たルーシィは、その瞬間衣服とともに体を石にされてしまう。神話上に存在する蛇の怪物・メデューサを彷彿とされる石化の目だ。突如起きた事態に会場も戸惑いを隠せず、アピールなのかと疑問を上げる声も出てくる。だが、これは決してアピールなどではない。

 

≪まずいぞ…!お客さんは早く逃げて!!≫

 

マイク越しのマックスの声に事態を把握した観客たちは、魔導士を残して全員ギルドから避難を始めた。無関係の観客たちへの二次被害はこれで抑えられるが、彼女の行ったことに、誰もが黙ってはいられない。

 

「何をする、エバーグリーン!!祭りを台無しにする気か!?」

 

「お祭りには余興がつきものでしょう?」

 

怒号を上げるマカロフに対し、エバーグリーンはステージにあった天幕を上げる。そこから現れたものたちに、全員が絶句した。

 

 

 

 

 

ルーシィの他にもコンテストに参加していた6人の女性たち全員が、ルーシィと同様の石像になってしまった姿だった。S級と呼ばれたミラジェーンやエルザまでもが被害に遭っている。

 

「バカタレが!今すぐ元に戻さんかいっ!!」

 

その惨状にさらに怒りを増長させるマカロフの言葉の直後、ステージに雷が一筋落ちてきた。落雷と共にその姿を現したのは、マカロフの孫にしてS級魔導士。黄色い短髪に特徴的なヘッドフォンを身に着けた男、ラクサスだった。

 

「よォ…妖精の尻尾(フェアリーテイル)のヤロウども…祭りはこれからだぜ…」

 

「ラクサス!!」

 

突如として現れたラクサス。そして他にもう二人新たな乱入者が現れたことにシエルは気付く。一人は黄緑色の長い髪で、左右のてっぺんから稲妻方のアンテナのように一つずつ伸びている美青年。もう一人は口元以外を兜で覆っており、出した舌には黒の妖精の尻尾(フェアリーテイル)の紋章がついているラクサスよりも体躯が大きい男で、周りには小さいトーテムポールの人形が5つ浮遊している。

 

「『フリード』に『ビックスロー』!?ラクサス親衛隊・『雷神衆』が揃い踏み…!!」

 

それぞれの名と、エバーグリーンも含めたチームの名を叫びながら、今目の前にある事実を受け入れるのに精一杯だった。普段は不在であることが多い彼らが今この時に集い、何をしようとしているのか…。

 

「遊ぼうぜ…ジジイ…」

 

「バカなことはよさんか!まだ幻想曲(ファンタジア)の準備も残っとるんじゃ。今すぐ皆を元に戻せ!」

 

幻想曲(ファンタジア)は夜だよな?何人生き残れるかねぇ…」

 

言葉と共に、石像となったルーシィの頭上から雷が降り落ちてくる。マカロフの制止の声も聞かず、その雷は落とされた。

 

 

 

ルーシィの真横に、ギリギリ当たらない床を貫いて。その光景を見て、怒りを滲ませるもの、恐怖を感じる者に、魔導士たちが二分された。ルーシィの石像の肩に腕を回しながら、ラクサスはさらに続ける。

 

「この女たちは人質にいただく。ルールを破れば一人ずつ砕いていくぞ。言ったろ?余興だと」

 

「冗談で済む遊びとそうはいかぬものがあるぞ…ラクサス…!」

 

「勿論、オレは本気だよ」

 

祖父と孫が睨み合い、仲間の命に関わる範疇を超えた遊びの是非をぶつけ合う。そして今まで口を開かなかった雷神衆の二人が、ここに来て言葉を発する。

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強は誰なのかを、ハッキリさせようじゃないか」

 

「―つう遊びだよ」

『アソビーアソビー』

 

フリードの言葉に続くように挑発的な物言いをするビックスロー。そして周りに飛ぶ人形たちも意志があるのか彼の言葉を反芻している。

 

「ルールは簡単。最後に残ったものが勝者。

 

 

 

 

 

『バトル・オブ・フェアリーテイル』!」

 

ラクサスが告げた遊び。『バトル・オブ・フェアリーテイル』という題名を聞いた瞬間、一つの机が炎によって吹き飛ばされる。その発生源を全員が知っていた。

 

「いいんじゃねえの?分かりやすくて。燃えてきたぞ!」

 

ここに来て復活を遂げた火竜(サラマンダー)。ナツ・ドラグニルが不敵な笑みを浮かべてそのゲームに賛同してきた。




おまけ風次回予告

ナツ「バトル・オブ・フェアリーテイルか~。ラクサスもいいこと考えるじゃねえか!」

シエル「どこかだよ!女の子たちを石にして、無理矢理仲間同士で戦わせて、いつもの喧嘩とは訳が違う!」

ナツ「ん?何も違わねえじゃんか。そりゃあ、ちょっとやりすぎじゃねえかな?って思わないこともないれどよ」

シエル「いやいや、明らかにやりすぎなんだって…!こういうところ、長所なのか短所なのか…」

次回『友の為に友を討て』

シエル「絶対許さない…ラクサス!俺たちで倒しに行こう、ナツ!!」

ナツ「ちょっと待て!何かオレ…外に出られねえんだけどぉ!?」

シエル「……へ?」
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