とうとう放送開始されましたね!投稿時間が過ぎる頃にはもう1話放送まで1時間を切っているんですね…。録画してからゆっくり見なきゃ…w
まあ、僕は地方暮らしなんで放送されるのは金曜深夜なんですがねぇ…。
いや放送されるだけマシか…。FAIRY TAILやってた東京系なんて映りもしないし…。地方民は辛いぜ!!
突然だが諸君は、週刊ソーサラーと言う雑誌をご存じだろうか?
毎週水曜日に発売され、新しい魔法商品やホットなギルドの紹介、美人魔導士のグラビアなどで人気を博する魔法専門誌だ。
そんな週刊ソーサラー、略して『週ソラ』にてこの度、
「バッチリ、エビ」
「ヤバイ…今日のあたし、ちょっとカワイイかも…!」
星霊魔導士のルーシィだ。ミス・フェアリーテイルコンテストで二位を勝ち取った彼女は、自身を大勢にアピールするために、いつにも増して身支度に気合を入れていた。いつもとは違うファッションに、ヘアスタイルも変えて魅力的に映る様に。背中から蟹の足を六本生やしたスタイリストの服装とサングラスをかけている男性―――髪型を自在に変えられる蟹座の星霊である『キャンサー』が腕を振るった甲斐もあって、その出来栄えは自分自身も惚れ惚れするほどだ。
「ようやく初の出番って事で、いつも以上に張り切った、エビ…!」
「何の事かは分かんないけどありがとね、キャンサー!」
若干涙ぐみながら両手の鋏を構えてポーズを決めるキャンサーに苦笑しながらも感謝を伝えるルーシィ。そして腰かけていた椅子から立ち上がって意気込みを叫んだ。絶対に取材で大きく取り上げてもらい、大陸中に己の存在をアピールしてみせると…!
時に…キャンサーが蟹座の星霊でありながら、語尾が同じ甲殻類のライバル的存在の「エビ」であることに疑問を抱いた方。安心してください。その考えは正常です。
────────────────────────────────────────
「取材?」
「そう、週ソラの記者が今日来るんだって。ミラが言ってたよ」
カウンター席で自然と席が隣り合う位置に着いたシエルとペルセウスの兄弟。シエルは看板娘であるミラジェーンから聞いた、今日ギルドを訪問する予定である雑誌の記者の話を期待と歓喜が入り混じった表情で兄に報告する。楽しみだ、と言う感情を表に出して笑みを浮かべる姿は微笑ましく見えるが、生憎今のペルセウスにそれを感じる余裕はなかった。
「俺今日はもう帰る…」
「待って待って待って!判断が早すぎるって!!」
そそくさと置いておいた荷物を抱えてカウンターを立ち、ギルドを出ようとする兄の腕を引いてそれを止める。
「俺が取材嫌いなのは知っているだろ?記者が来ると分かって大人しくしていると思うか?」
「でも週ソラだよ!?他ならともかくあの週ソラ!ずっと憧れてた雑誌なんだよ!」
週刊ソーサラーはシエル自身もよく好んで読んでいる雑誌だ。その雑誌に自分が乗る可能性があると考えただけで張り切ると言うもの。だがそれで自分も受けるという理由は存在していない。
「雑誌と言うものは、個々人の情報が漏れなく暴露されるものだ!プロフィールから出自、住所、お気に入りの店、最近ハマっているものから何まで全部だ!」
「さすがに偏見持ち過ぎじゃない?」
物凄い極論を大声で主張するペルセウスに、カウンターで仕事をしているミラジェーンもさすがに苦笑いを隠せない。だが一理はある。シエルもそれは理解しているが、これはただ憧れの雑誌に出れるという夢を叶える為だけのものではなかった。
「兄さんの気持ちも分かるよ。けどこのまま避け続けたって、どこかで兄さんの事は漏れる…。『幻の魔導士』って呼ばれてること、知ってるでしょ…?」
弟の言葉を聞いてペルセウスの表情が歪む。意図的に自分の事を赤裸々に公表されるのを避けているだけでは、もう収まり切れない。自分でも理解していることだ。
「それに、俺はもう兄さんに守られるだけの存在じゃないよ」
その一言で兄の目が見開かれた。それは彼が抱いていた懸念を払拭させる、その為の言葉。自分を掴まえているシエルの手をそっと離させてペルセウスは元居た席へと座り直した。
「そうだな、シエルは強くなった。そのご褒美に俺も付き合うとしよう」
その返答に、シエルは顔に満面の笑みを浮かべて喜ぶ。弟の望みを叶えられるのなら、兄としては喜ばしいものだと、改めて実感していた。
「Oh――――!!
兄弟の一悶着が落ち着いた瞬間、ギルドの出入口から突如テンションの高い男の声が響いた。目を向けてみると一本角のヘルメットを彷彿とさせる、てっぺんだけが逆立った丸い髪型。額にサングラスを着けており、肩からはカメラ―撮影用の
「ヤッベ…本物だ!クール、
出入り口近くに立っていたエルザ、そしておしゃれなファッションに身を包んでいるルーシィ目がけて、膝から勢いよくスライディングして近づき、両腕を前に掲げて大きく上下しながら興奮の声を上げている。物凄くテンションが高い。
「あの人が週ソラの記者…なのかな?」
「…やっぱ帰ろうかな…」
何とか保ってくれていたモチベーションが再び下がりそうな気配を漂わせるペルセウス。勿論必死にシエルは止めた。
「すまないな、少々散らかっている所で」
「ノープロブレムッ!!こーゆー自然体を期待してたんですヨ!!」
上がりまくっているテンションそのままに週ソラの記者――名は『ジェイソン』と言うらしい――による取材が始まった。近くにいたエルザにまずは照準を定め、カメラに彼女の姿を写していく。
「アタシ、ルーシィって言いまーす♡エルザちゃんとはお友達でぇ~」
「二、三質問に答えてくれないかい?」
「構わないが…」
「(スルー!?)」
何やらジェイソンにアピールを始めたルーシィであったが、当の本人には聞こえなかったようだ。エルザの撮影を一通り終え、彼女にインタビューを決行する。思ってもみなかった塩対応にルーシィは愕然となった。
「ルーシィは何やってるんだ…?」
「あ~…色々必死なんだよ、きっと…」
知り合って間もないペルセウスには解らないルーシィの心情、葛藤を何となく察したシエル。困惑する兄に対して、苦笑を浮かべながら適当に弁明した。
「換装できる鎧は全部でいくつあるんです?」
「100種類以上だ」
「
「バニーガールだな」
「バ…バニー!!?」
この答えにはジェイソンだけでなく耳を澄ませていたシエルも驚愕した。本人曰く「あの耳がカワイイ」とのこと。だがそれはそれとして…。
「鎧じゃないよねそれ!?」
「言ってやるな、エルザはそーゆー奴だ」
「COOOOOOOOOOL!!!」
思わず叫んだシエルとは対称に、冷静に弟をさとす兄。そして記者のこの男はテンションがさらに上がって両腕を更にシェイクさせている。彼の脳内には映ったのだろう。エルザのバニーガール姿が。
「好きな食べ物は?」
「チーズケーキとスフレは外せないな」
エルザへの質問はさらに続いていく。近くにいたはずのルーシィには目もくれていない。自分の知名度はこんなものなのかと、悔しくはあるが納得できない訳でもないので、尚の事歯がゆい。
「ぷふ」
「あんたに笑われたくないわ!!」
その様子を近くで見ていた青猫のハッピーがバカにするように笑みを一つ。だが知名度で言えば恐らく自分以下と思われる彼に笑われるのはとてつもなく心外だ。だが、そんな彼女に非情な現実が襲い掛かる。
「オーー!!ハッピー!君は何故、青いんだい!?」
「ネコだからです」
「負けた!!」
まさかのハッピー以下だった。信じがたい現実に近くにあった机に前のめりで倒れこむ。だがハッピーへの質問を終えたジェイソンは、何かに気付いたようにルーシィの方へと勢いよく顔を向けた。ようやく自分の番だ、と愛想笑いではあるが「ニコっ」とルーシィが笑みを向ける。
「グレイだー!!本物のグレイがいるーーーー!!!」
「ぎゃふん!!」
だがしかし彼女の視界に映ったのはルーシィの奥のテーブル席にいるグレイだった。一つの対象に目を向けると周りが見えないらしいジェイソンに、ルーシィは哀れ突き飛ばされた。
「何だお前?」
「ほら…雑誌の記者ですよ」
グレイの前の席に座っていて、彼に説明をしたのはジュビアだ。ちゃっかり彼の近くでよく共にしている。元
「グレイ!何故君はすぐ服を脱ぐんだい!?」
「脱がねえよ!!人を変態みてーに!!」
「グレイ様下ーーー!!」
問われた質問に心外と言わんばかりに机に乗り上げて抗議を叫ぶグレイだったが、下半身に纏っていたのは下着のみだった。説得力ゼロの為、案の定顔を真っ赤にしたジュビアに指摘された。
「なんかあっつーい。あたしも脱いじゃおっかなー」
「…ルーシィは何を…」
「言わないであげて、あれでも真剣なんだよきっと…」
若干兄が引き気味になっているのだが一応フォローはかけておく。彼女も必死なのだ。懸命にアピールをしているだけ、そうそれだけのはずだ。
「だぁーーーらぁーーーっ!!!記者ってのはどいつだーーー!!!」
「きゃあー!?」
そんなルーシィの背後から怒り心頭の状態で、近くのテーブルを卓袱台返ししながら怒号を上げたのは、怒りを炎に変える
「ナツ!!
国中に広まる程噂となっているナツを見れたことで興奮が更にヒートアップ状態。興奮しすぎて舌を噛んでしまうほどだ。よっぽど会いたかったのだろう。
「やいやい!いっつもオレの事悪く書きやがって!!」
「YES!!」
「オレが何か壊したとか壊したとか壊したとか!!!」
「
会話が成立していないだとか、双方ツッコミどころ満載だとか、もうそんな一言じゃ片付かないぐらいのカオスな会話だ。ただ言えることがあるとするなら一つだけ挙げておこう。
週ソラが記したナツの数々の暴挙はすべて事実である。
「ヤッベ…本物だ…!!超カッケェ!!」
自社他社問わず様々な記事に取り上げられてきたナツにとうとう会うことが出来た。あまりにも感動して、ジェイソンは今、自分が記者ではなくナツと言う魔導士のファンの一人として動いた。緊張に手を震わせながら、顔に喜びの笑みを浮かべながら、ナツに向けて右手を差し出す。
「あ…握手してください!!」
「うっせぇ!!!」
「COOOOOOOOOOL!!」
だがナツはあろうことかジェイソンを殴り飛ばしてしまった。あまりの勢いに時計回り錐もみ回転するジェイソン。そしてそのまま床を転げまわりながら、手に持つ手帳とペンを使って今の出来事を記した。
「ヤッベ!カッコよすぎ!!さすが、ヒーロー!!!『こんな
握手を求めただけで思いっきり左頬を殴られたのに、それにすら感動して記録していく。これがプロと言うものなのか。シエルは魔導士でもない一般人よりのはずであるジェイソンに戦慄していた。
「バカとも言える気がするが…」
戦慄を覚えている弟に、兄の冷静な指摘が入った。
「あ…あの…記者さん?あたしに質問とか…」
「あ!エルフマンだー!
「ああん…」
すぐさまジェイソンは次の人物に照準を当てて駆け出していった。その度にルーシィがスルーされているのを見ると、なんだか段々可哀想になってくる。しかしジェイソンは一向にルーシィには気づかず、次々と注目している魔導士たちにインタビューをしていく。
「エルフマン!あなたにとって漢とは!?」
「その答えは…漢だ!」
「
訳分からん。漢とは何かという質問にそのまま答えたエルフマンも、それに興奮するジェイソンも。
「チームシャドウ・ギア!三角関係って本当!?」
「?」
「「ノーコメントだっ!!」」
「ヤッベ!サイッコーー!!」
次に質問したのはレビィをリーダーとした三人一組チーム、シャドウ・ギア。だがこの質問はレビィが意図が分からず首を傾げている間に男二人が叫びながら回答した。どうやら心を抉られる質問だったらしい。
「カナ!今度、グラビア出てよー!!」
「いいからここ座って呑め!!」
次は食事中だったカナだ。と言うよりこの場合は質問ではなくオファーだったが。ついでに言えば自分の隣のテーブル席に座らせようとしているカナ、今彼一応仕事中だからそういう誘いはどうかと思う。酔っているからとは言え…。
「マスター!!最近新しくなったことによるギルドの抱負を!!」
「あ…えーと…『愛と正義を胸に日々精進』…」
嘘くせぇ。思いっきり緊張しているのか頓珍漢なことを口走るマスター・マカロフ。今更抱負を聞かれても他に良いことが浮かばなかったというのも含まれていそうだ。
「チーム雷神衆!ラクサスがいなくなったって聞いたけど、もしかして解散!?」
「いや…」
「んなわけねえだろ?」
「ラクサスの分まで頑張りまーす♡」
ラクサス親衛隊である雷神衆。ラクサスが抜けたことで存続するかどうか危ぶまれていたようだが、本人たちはむしろ奮起しているようだ。いつでもラクサスが戻ってきた際に傍にいれる実力を持てるように。
「ラキー!!イメチェンしたの!?」
「次のミスコンは入賞狙うから!」
メガネをかけた紫髪の女性ラキ。彼女は以前までポニーテールだったのだが、髪を切ってショートボブにイメチェンをしたことで印象が大きく変わったらしい。男たちの視線を釘付けにしたこともあるとか。ちなみに今のジェイソンもその一人だ。
「お二人とも!ご無沙汰です!」
「でっかくなったなお前ー!」
「お手柔らかに頼むぜ、おい?」
「勿論ですよ!!」
そしてギルド内でもベテランの魔導士、マカオとワカバはジェイソンが若手時代の時から顔見知りのようだ。二人並んでいる姿をあらゆる方向からカメラで写真に収めていく。だが、次々と取材を受ける者たちが増えていくことで、色んな意味で限界を迎えている人物がいた。
「うわーん!全然あたしになんか構ってくれない~!!」
折角目を惹くためにオシャレもして、キャンサーに頼んでこれ以上ない程の出来栄えに仕上げてもらったというのに、これでは骨折り損だ。その場で膝を折って俯くルーシィに、陰が差しているようにも見える。ここまで哀れな目に遭うとはだれが予想しただろう…。
「そーだ、忘れるとこだった!今回の取材で、絶対におさえておきたい魔導士がいるんですよ!」
「ほー?誰の事だ?」
思い出したように目の前のマカオ達に話を振ってくるジェイソン。もしや自分か?と一瞬期待したルーシィだが、あそこまでアピールして全然靡かなかった様子を見るとどうせ違うだろうと諦めムードを漂わせている。
「その人は、最近ギルドに入った新人で…!」
最近入った。確かに数か月ほど経つが、自分が加入したのは割と最近だ。
「けれども、色んな場所で
噂。色々と尾ひれがついてはいるが、確かにルーシィは多数噂が存在している。
「他の人には滅多に見られない珍しい魔法を使ってて…!」
これも当てはまる。星霊魔法は今まで出会った中でも数人ほどしか彼女に心当たりがない。
「なーんと極めつけには!あのナツやエルザともよく
ここまでくれば最早確定だ。ナツとはほぼ常に行動していると言っても過言じゃないし、エルザも含めて自分も最強チームの一員だ。むしろこれを聞いて他に候補がいるなら誰がいるのだと言わんばかりに。これは猛アピールのチャンス!ルーシィはすぐさま行動に移した。立ち上がってジェイソンの背後から輝かしい笑顔と声で近づいていく。
「はいはーい!!それ、あたしのことでー…!!」
「名前はずばり!!シエルゥ!!」
「ズコーーーーーー!!!」
だがその名を聞いた瞬間ルーシィはジェイソンの傍を横切る形で床を滑った。
「はーい、シエルはここでーす!」
「!
ルーシィを哀れに思いながらも、名を呼ばれた本人はカウンター席からジェイソンに呼びかけた。それを聞いて顔を向けるや否やジェイソンは更に興奮しながらシエルたちのいるカウンター席に駆け寄っていく。それを見ながらルーシィは涙を流していた。またも自分がスルーされた。だが考えてもみれば…。
「まあ…うん…何となくこうなると思ってた…」
涙を流しながら呟いた言葉を拾う者は誰もいなかった。予測はしていたけれど、それでもどこか期待していた。夢ぐらい持ったっていいじゃないか、と思わずにいられない。
「こうなったら…やるしかない…!恥ずかしいけど、アレやるしかない!!」
シエル、そして傍にいた兄のペルセウスがインタビューを受けているのを一瞥した後、ルーシィは決意を秘めた表情を浮かべて衣裳部屋へと駆け出していった。
────────────────────────────────────────
さて、ここでシエルたちの取材風景の方を見てみよう。興奮冷めやらぬ様子でシエルたちのいるカウンター席に近づいてきたジェイソン。「
「君にはいくつも聞きたいことがあるんだ!!」
「答えられる範囲でよければ」
「じゃあ早速…!!?」
笑みを浮かべながら受ける気満々のシエルに質問をしようとしたジェイソンだが、ふと隣に座っているシエルによく似た青年を目にしてジェイソンは固まった。それに対して所在なさげに目を逸らした青年を改めてよく見るジェイソン。そして、記憶に見たことあるその人物を理解した瞬間、彼の停止した思考が再起動した。
「ペェー!?ペッペペペペペッペッペッペ!!ペルセゥウーーースッ!!?」
そして天井を仰ぎ見るほど体を仰け反らせて絶叫し、これでもかと言うほど両腕を上下に動かしまくる。今までの中でも最高潮と言えるハイテンションぶりにペルセウスはもとよりシエルまでもが呆然としてジェイソンの姿を凝視する。
だがそれも無理はない。今までどの雑誌の取材も断り、世間に表立って出る事のなかった幻の魔導士。会社に資料として写真だけなら存在していたが、どのギルドに在籍しているのか、経歴はどういうものか。そう言った個人の情報を絶対に公開はしなかった存在が目の前にいる。それを認識したら少なからず感情が揺れ動かさずにはいられないだろう。普段からテンションが高いジェイソンのような人物なら尚更だ。
「あ、あの!幻の魔導士として、雑誌界では色んな意味で有名な!ペルセウス!!?」
「…ああ、そうだが…」
「超!COOOOOOOOOOL!!!
どうやらシエルの懸念通り、避けていても明かされる情報は割とあるようだ。目立たない様に行動を続けていても、逆にそれがミステリアスなキャラとして噂がどんどん広まっていく。現にルーシィがペルセウスの事を知っていたのもその噂からだし。実在していた幻の魔導士に、まさかこんなところで会えるとは。未だ興奮が冷めないジェイソンだったが、隣り合って座る少年と青年を見比べて、ある憶測が浮かび上がる。
「あれ?そう言えば二人って…どこか似ているような気がするけど…」
「実は兄弟なんだ、俺たち」
「兄弟!?ブラザー!!?幻の魔導士と!スーパーリトルルーキーが!まさかの、ブ!ラ!ザ!クゥオーーール!!」
まだ質問もほぼ始まっていないのに明かされる情報が目玉級のものばかり。最早彼のテンションは鰻が川どころか滝を登っているレベルで上がりまくっている。だがいつまでもこのままでは長くなりそうだ。
「盛り上がるのはいいけど、取材は?」
「あーっとごめん!!あんまりにもビッ
「誰が上手い事言えと…」
「じゃあ気を取り直して、折角だから君たち兄弟に、個別、共通でいくつか聞かせてもらってもいいかな!?」
シエルは元から乗り気だ。今にどんなことを聞かれるかワクワクしている様子。それを見てペルセウスも改めて覚悟を決めることにした。答えられる範囲で、と言う条件を付けてファルシー兄弟へのインタビューが始まった。
「まずシエル!天気の魔法を使うって聞いたけど、一番好きな天気は?」
「やっぱり晴れかな。日向ぼっこしてると暖かくて気持ちいんだ~」
「Oh!
「いや?特に手は加えてないけど…多分生まれつき」
「ワオ!
「神器の換装魔法だ」
「神器…神?」
「大昔に神が実際に使っていた武器の事だよ」
「スケールが超ビッグ!!COOOOOOOOOOL!!」
何だかんだでペルセウスも律儀だ。問われた内容に細かく一つずつ回答していく。そしてその度にジェイソンがテンションを上げて叫ぶのにもそろそろ慣れてきた。
「兄弟の仲は?」
「強くて頼れる自慢の兄さん!」
「努力家で兄想いな理想の弟」
「まさかの即答!しかも同時!!逆に直してほしいと思う所は?」
「いつも俺の方を優先させるから、たまには自分の事も大事にしてほしいかな」
「それを言うならお前もだぞ?あと、俺の事を神格化しているところは、何とかならないかと思ってる…」
「仲良すぎかよっ!!
問題どころか妙に良すぎる兄弟の仲を垣間見るやり取りにツッコミながらも興奮してペンを持つ手を止めないジェイソン。ヒートアップする感情のままに更に続いていく。
「シエルは
「聞くまでもないでしょ?」
「やっぱね!じゃあじゃあ、最初にした悪戯ってどんなのか覚えてる?」
「えーっと、ギルドに初めて来たのが3年ぐらい前で…その数日後に、あそこにいるマカオが飲んでいた酒を、空のコップと入れ替えたのが始まり」
「…あったなそんなこと…」
シエルが答えた最初の悪戯に反応したのは、被害者のマカオだ。何杯も飲んで出来上がっていたところを、もう一杯飲んでいたはずのコップにあった酒が空になっていたことに困惑し、酔いが覚めた事を思い出した。それが一つの狙いでもあったのだが。
「ちなみに、今までやった悪戯の中で、シエル的にはどれが一番面白かった?」
「そうだな…。あ、割と最近なんだけど…」
そう言ってシエルは荷物が入った袋を開いて漁ると、一枚の紙を取り出した。折りたたまれたそれを開くと…。
「ナツがエルザのケーキをつまみ食いしてさ。それをエルザに報告した後にしばかれたナツが一番だった!」
「あれテメーの仕業かぁ!!!」
楽園の塔の騒動があったアカネビーチからの帰路の事。リーダスに描いてもらった、エルザが見ていない間に彼女が大事にとっておいたショートケーキをつまんでいるナツの絵を見せながら、当時の光景を思い出して笑っている。被害者となったナツは笑い事じゃなかったので抗議の声が上がったが、その声はエルザが怒りの圧を放って強制的に黙らせた。
「次はペルセウス!魔導士としてはどれくらい長いの!?」
「物心ついた時には初歩的な魔法は見ただけで使えてた…と聞いたことはある」
「
「簡単な魔力弾、物体浮遊、調合、あとはそうだな…珍しいやつなら解呪魔法なんてのも…」
「ワーオ!COOOOOOOOOOL!!」
続いて聞かされたペルセウスの扱う魔法には、何度目にもなる絶叫を出させた。神器の換装、だけでも凄まじいと言うのに他にも様々な魔法を扱える。その事実に改めて彼が天に愛されたと言える存在であることが伺える。一方で、彼が提示した魔法の中に、心当たりを感じたエルザが、少し前に起きた出来事に関して納得していたのは、また別の話。
「色々聞いてきたけど、最後の質問!二人共に聞きたいことを思い切って聞いてもいいかな!?」
「もうこの際ドンと来いだよ!」
「内容によるがな」
どうやらペルセウスも、もう取材に関しての嫌悪感はないに等しい。どのような質問が来るかにもよるが、順調に進んで終わりを迎えそうだ。しかし…。
「
その瞬間、シエルの顔が衝撃を受けたように引き攣り、ギルド内にも同様の感覚が走る。あれほどまで騒がしかったギルドの中があっという間に静まり返ってしまった。一部、唐突に静かになった様子のギルドに困惑している者もいるが、大半は言葉を失っている。
「…えっ…あれ?もしかして、タブーだった?」
そしてその空気に困惑しているのはジェイソンも同じだった。そんなつもりはなかったし、年頃の若者は大比率で恋愛の話題は興味を持つもの。だがそれがギルドを静まり返るような話題になるとは思ってもみなかった。聞いてはいけないことだったのかと、謝罪しようとするジェイソン。それに対してシエルも口を開こうとするが…。
「いや…そんな事ない。変な気を遣わせてすまないな」
「…そ、そう…?」
ギルドの中同様に口を噤んでいたペルセウスがそれを真っ先に否定した。先程とは違ってどこか恐る恐ると言う様子のジェイソンに、ペルセウスは質問の内容を確認しながら答えた。
「好みの女性…だったな。優しくて元気で、笑顔が似合う…そして家族想いな子…かな」
悲し気に笑みを浮かべながら告げた答えに、隣に座るシエルは兄から目を逸らした。近くにいる魔導士たちも、複雑な感情を込めた目でペルセウスの方を見ている。
そんな中で特に、ミラジェーンとエルフマン、そしてナツとハッピーが特に悲しそうな表情を浮かべていた。
「素敵な女性像だね。詳しく聞きたいところだけど、それはまた保留にしておくよ」
「すまないな…」
「いやいや、それはこちらもだよ」
記者としても個人としても気になるのは本音だ。だが、本人の表情を見てそれを追求したいとは思えない。記者のジェイソンは真実を知るよりも、彼の想いを優先することにした。それは開けるわけにはいかないパンドラの箱のようだと、感じたから。
「気を取り直して、シエルはどうかな?答えたくないならそれでもいいけど」
先程の兄の様子を見て少々探りを入れながらではあるが弟にも同様の疑問を投げかける。シエルの方はと言うと、ペルセウスのように悲しげな表情ではなく、悩んでいるような表情を浮かべている。
「俺は…う~ん、どうかな~?そりゃ可愛い子とか綺麗な人とか見かけたら目で追う事もあるけど…恋愛に発展するかどうかと言われたら、微妙かな…」
「そうなのかい?あまり興味がない、とか?」
「ないわけじゃない、と思う…。他の人たちの恋愛とかは分かるし、見ていて面白いと感じたりもするけど、いざ自分がその立場になるかと問われると…まだよく分かんない…」
さり気なく人の恋路を面白いとぶっちゃけたシエルの答えに、まだまだこれからと言った様子を感じたジェイソン。答えになったかは定かではないが、現状ではこれが最適解だろう。だが、シエルは思い出したように手を打って彼に告げた。
「あ!恋愛とは別になると思うけど、一緒にいて楽しい女の子ならいるよ?」
「本当かい!?それはどんな子!?」
「ルーシィって言うんだけど…あれ、ルーシィ?」
この際流れに乗っかってルーシィへの興味を向けさせる行動に出ることにした。しかし肝心のルーシィがギルド内のどこにも見当たらなくなっていたことにようやく彼は気付く。誰か見た者はいないか、と尋ねようとしたその時だった。
「みんなー!注目~♡あたし歌いまーす!!!」
「ええーーーっ!!?」
探していたルーシィがギルドの奥にあるステージの上にいた。が、問題はその格好だ。ピンク色のレオタードを身に纏って同じ色のうさみみカチューシャを頭に。首元には赤い蝶ネクタイ。そして脚には網タイツ。俗にいうバニーガールの服装でギルド内全員の注目を集めていた。話題に出していた少女が突然の奇行に走ったことにより、シエルが真っ先に悲鳴に似た絶叫を上げる。
「バ、バニーガール!!?もしかして、彼女がさっき言ってたルーシィ!?」
「え、いや、あの、その…」
答えづらい。もしこれでYESと答えた際に、何かがまかり間違って「シエルの好みは年上のバニーガール」なんて不名誉なレッテルを貼られてしまっては色々な意味で立ち直れない。
「…ルーシィはな…」
「俺が聞きたい、ホントに何してんの?」
兄の言葉を遮ってまでシエルはこの困惑を早口で告げた。背水の陣さながらの窮地に陥っているシエルの事など露知らず、ジェイソンが己の名を呼んだことでついに自分に意識を向けてくれたと認識したルーシィは心の中でほくそ笑んだ。ちなみになぜバニーガールをチョイスしたかと言うと、エルザの質問で聞いたバニーガールに過剰な反応を示していたからである。
このチャンスを無駄にはしない。記者も含めて会場を魅了すれば、とうとう自分の時代が訪れる!驚愕している仲間たちを前に存分にアピールを開始しようと動き出したその時だった。
「歌ならオレだ!!シュビドゥバーー!!!」
「きゃあ!?」
「「ガジルーー!!?」」
「「またお前かァーー!!!」」
「うぉあーーー!!キッターー!!
いつの間にか白統一のスーツと黒いサングラスで、ギターを両手に持ってかき鳴らしながらルーシィを突き飛ばして現れたガジルが、ルーシィが集めた注目を全てかっさらった。雷神衆はガジルの奇行に驚愕し、過去に似たものを見た者たちからは絶叫が木霊し、ジェイソンは元
《正しい
ハーモニカを一つ吹いた後に、ギターを鳴らしながら突如謎の弾き語りを開始するガジル。一部を除く全員が絶句しているにも関わらず、ガジルは続けていく。
《それってつまり…バカは正しいって事だろ?》
言ってることは謎過ぎるし、ギターの音は下手くそだし、一体何を見せられてるんだろう…。絶句している者達の中で、ペルセウスはそう思わずにはいられなかった。
《おい相棒、聞こえるかい?オレの魂の詩が…》
「痺れまくりビシビシだぜェーーーー!!!」
その中で唯一感動した様子のジェイソンが叫んだ。大丈夫だろうか、こいつの感性。そう思わずにはいられない。
「相変わらず音楽関係はグダグダだなぁ…。服装はカッコいいのに」
「え?」
おい
「うっせぇ!ガジル!!」
シエルの発言に現実逃避をしていたペルセウスは、ナツの怒号によって現実へと引き戻された。怒号と共に出入口の近くまで殴り飛ばされ、その衝撃で服がボロボロになったガジルが殴った張本人を睨みつける。
「下手な歌うたってんじゃねぇ!!オレはこいつに用があんだよ!!」
「まだ歌ってねえ!!歌わせやがれ、
それを発端に、ギルド内でナツとガジルの喧嘩…もといガチバトルが始まってしまった。まだ取材中という事でミラジェーンが止めようとしたが、ジェイソンは逆に目の前で始まったバトルに再び興奮し、その一瞬一瞬をカメラに収め始めた。
「あっちゃー…」
こうなってはもうやるとこまでやらせるしかないかもしれない。最早諦めの境地となったシエルたち兄弟に、トボトボと影のオーラを纏いながらルーシィが近づいてきた。ちなみに格好はまだバニーのままだ。
「ねえ…二人とも…あたしって、魅力ないのかしら…?」
涙を流しながら尋ねてきたルーシィに、どう答えるべきか互いに目配せして迷う素振りを見せた後、その答えを提示することにした。
「ルーシィに無いのは魅力じゃなくて…」
「運…じゃねーか…?」
「…運…かぁ…」
考えてみれば、今日これまでのルーシィがそれだけアピールしても気付かれず、ようやく目にしてもらったと思えば注目を横取りされ、あまつさえタイミングが色々と噛み合わない。カナに後で占ってもらう事に決めたルーシィなのであった。
ちなみにその後、改めてルーシィは取材を受けることに成功。後日発売された週ソラに、小さくだが掲載されていた。ただ、その週ソラが発売された後、またも
────────────────────────────────────────
フィオーレ王国の中に存在する自然の魔境の一つ。鬱蒼と生い茂る無数の木々。樹海と称されるその地域にもしっかりと名前が記されている。その名を「ワース樹海」。
その樹海の端から少し離れた場所に、一つの孤立した集落が存在する。その内の一軒の建物の中で、街に遠出した時に買った土産の内の一つ・週刊ソーサラーを輝かしい笑顔を浮かべて読んでいる少女が一人いた。
「わぁ…!スゴイなぁ~」
一枚一枚のページに写る者たちは世間から見れば騒がせて迷惑をかけるギルドに見えるだろう。だが少女は違った。自分では想像もできない冒険をしていて、想像もできない地に赴き、そして想像もできない魔法を駆使している者達ばかり。彼女にとって、その者達は憧れだった。
特に以前から一番注目しているのは、白い鱗柄のマフラーを首に巻いた、桜色の髪の青年だ。だが今回はそれだけではなかった。
「さっきから何読んでるの?」
すると、少女に向けて声をかけてくる存在がいた。少女はまだ幼い外見をしているが、声をかけた存在は彼女よりもさらに目線を下に向けるほどに小さい。
「あ、うん。今週号の週ソラ、
「ああ…アンタがよく話に出してる…」
一度表紙に写る妖精を象った紋章を刻んだ魔導士たちを見せて、高揚しながら勧めてくる少女に、声をかけた者は納得していた。以前からそのギルドの話は聞いていたから。
「実はね、今回載ってた特集の中に…あった、ほら!」
そう言って少女が見せたのは、水色がかった銀色の髪をした青年と少年の兄弟。兄の方は長いサラサラの髪を縛っており、弟は短めで左目の上に二筋の金色のメッシュが入っている。そして兄の方は口に弧を描いてこちらに目を向けており、弟の方は左手にピースサインを作って歯を見せた笑みを浮かべている。
「この人、私とほとんど歳が変わらないのに、スゴイ魔法を使って活躍してるんだって!スゴイよね!!」
「ふ~ん?私には、生意気なガキにしか見えないけど」
随分手厳しい。相棒と言えるその者に少女は苦笑いを向けることしかできなかった。だが、少女にとってはこのギルドは、そしてそこに属する者たちは雲の上のような憧れの存在だ。誰に何と言われようと、それを曲げるつもりはない。
「シエルさん、かぁ…それにナツさんやエルザさん…。
上を見上げなら少女が言葉に紡いだ細やかな願い。
だが、その願いは遠くない未来に叶う事となる…。
おまけ風次回予告
ルーシィ「さっきから随分機嫌がいいけど、何かあったの?」
シエル「ふっふっふ~、実はね…今度兄さんと二人で依頼に行くんだけど…その行先が何と!『クロッカス』なんだよ!!」
ルーシィ「『クロッカス』…って!王都クロッカス!?花咲く都の!?」
シエル「そう!兄さんに誘われて、王都に行くことになったんだよ!今から楽しみだな~!!」
次回『花咲く都に迷い子二人』
ルーシィ「けど王都ってすっごく広いんでしょ?迷ったりしないかしら?」
シエル「さすがに14にもなって迷ったりしないよ!地図で確認したりすれば済むんだし!」
ルーシィ「…あ、これ、お約束ってやつ…なのかしら…?」