FAIRY TAIL ~天に愛されし魔導士~   作:屋田光一

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エデンズゼロのアニメ一話を見ました。SEとかノリとか、所々でフェアリーテイルを思い出させる部分が存在していてちょっと感動しました。(笑)
あとシキ役の寺島さんって、こんな声も出るんだな~ってちょっと意外に感じたり。(笑)

そして次回についてですが、多分今日の昼頃更新予定のキャラ設定の後書き辺りに詳細を書かせてもらいます。色々と頑張らなきゃいけないのでちょっと緊張すらしてます。(笑)


第43話 花咲く都に迷い子二人

フィオーレ王国のほぼ中心に位置する首都・クロッカス。

 

周囲を山々に囲まれた場所に存在するその都市は、フィオーレの中でも最大規模の広さを有する、まさに国の中心地。街の至る所には生垣、街路樹問わずに咲き誇る花々が人々の視界を潤し、その香りは人々の嗅覚を癒す。またの名を『花咲く都』。

 

石畳で舗装された道、建物、アーチの橋。立ち並ぶ店はフィオーレの中心地だけあって、他の街では見られない珍しいものや、多くの人々が存在し、全てに至るまで際限なく行き交っていく。ここを見て周るだけでも一日を簡単に費やしてしまえるほどに、広大で、濃密な街。それがこの王都なのだ。

 

そんな王都の一角に、水色がかった銀色で、左目の上に金のメッシュが入った短い髪をそよ風に揺らし、両手に地図を広げた小柄の少年が一人、迷いなく歩を進めている町の人々とは違って、ゆったりとその足を動かしていた。

 

しかし、しばらく歩を進めていたその少年は、ふとその足を止め、地図から視線を外して前方に戻す。そして左右それぞれに首を動かして辺りを見渡し、再び地図に戻して、しばし硬直した。その表情には、困惑と焦燥、混乱が入り交っている。それは何故か。

 

「…ヤバイ…今どこにいるか全っ然わかんない…!!」

 

妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士、シエル・ファルシー14歳。王都クロッカスにて現在、迷子であった。

 

そもそも何故王都で迷子になっているのか。それは前日の妖精の尻尾(フェアリーテイル)での出来事にまで遡る。

 

その発端は依頼板(リクエストボード)に張られていた一枚の依頼書を持ってきた、シエルの兄であるペルセウスからの誘いだ。「この依頼を二人で受けないか?」と尋ねながら差し出された依頼書を見て、シエルは驚愕していた。

 

『依頼主の場所…クロッカス!?あの王都!?』

 

フィオーレ王国に住む者なら大半は知っている大都会とも言うべき土地だ。数年前までこのような場所に行くことすら現実離れしていたシエルにとって、これは滅多にない機会と言っていい。依頼と言う名目でそんな夢にまで見た場所に行けると言う事実に彼のテンションは大盛り上がりだ。

 

移動距離が非常に長いため、その日、半日をかけてクロッカスへの移動。王都の中にある宿に荷物を置いてから依頼を受けて、終わらせたのが夕刻だ。依頼内容はイベント用に使われる庭園(それだけでも相当な広さ)の花の手入れを手伝ってほしいと言うもので、ミストルティンで植物を操れるペルセウスと、天候魔法(ウェザーズ)で日光操作、雨による水やりが行えるシエルにとっては時間をかけるものではなかったので早々に終わらせることが出来た。

 

想像よりも早くに済ませることが出来たために、とっていた宿で一泊し、帰る前に王都内を観光することにした兄弟。当初は二人一緒に散策していた。だが、今この場にいるのは弟のみ。はぐれてしまったのだ。しかしこのような不測の事態が起きることは想定していたため、兄弟間で取り決めをしていた。

 

『はぐれてしまった際は、一度宿泊していた宿の前に向かう』と。

 

宿の外観も覚えている。近くには数軒花屋があったことも目印になる。だからこそそこに一度向かえば兄と合流することも容易…。

 

「そう思っていた時期が俺にもありました…」

 

街の中心に聳え立つ王宮――『華灯宮メルクリアス』――の敷地前に存在する庭園の生垣の前に座りながらシエルは項垂れて呟いた。

 

ルーシィやミラジェーンから「王都は凄く広いらしいから迷わないように気を付ける事」と念を押され、14歳にもなって地図もあるのに迷ったりはしない、などと返答していた昨日の自分に風廻り(ホワルウィンド)(シャフト)を叩き込んでやりたい気分だ。最悪地図を読めば花屋が密集している地区に向かえる、今の自分の場所を把握できる、等という考えが甘かった。

 

花咲く都などと呼ばれている場所において花屋なんて、王都の民家とほぼ五分五分に近い頻度で点在しているのだから、実のところ何の目印にもならない。その事実に迷ってから気付くことになるとは誰が予想できたか…。

 

更に言えば…兄とはぐれた理由と言うのが、露天商に置かれていたマグノリアにはまだ発売されていない小説の最新刊が陳列していて、王都の凄さを実感するとともに、その本に目を奪われて立ち止まってしまったのが原因と言う、迷子になる子供の行動原理と同じなのだからより一層気分は暗くなる。

 

「今頃兄さんは必死に俺の事探してるのか…それとも宿の前について一向に現れない俺をもどかしく思ってるのか…どっちかだろうな…」

 

何回したか分からない溜息を再び吐きながら少年は再び項垂れる。自分が浮かれ過ぎていたことが原因で現在地すらわからなくなってしまうとは思いもしなかった。このまま自分は兄やギルドの仲間が待つ場所に戻れなくなってしまうのだろうか?

 

思考が段々悪い方へと向かっていったシエルの背後から、物音が突如聞こえたのはその時だった。普段から少しでも判断を間違えれば生死にかかわるような現場を潜ってきたために、その場をすぐに離れて音がした背後へと振り向いて警戒の態勢をとる。動物だろうか?それともこんな街の真ん中に魔物の類が入り込んできたのか?色々と可能性を探りながら揺れ動く生垣の一部に視線を向けていると、その正体は明かされた。

 

「ぷはっ!出られた?」

 

「へ…?」

「ん…?」

 

思わず呆けた声を発した。人間だ。それもシエルと歳が変わらないような若い少女。頭のみを出していて全貌は分からないが、翡翠色の長い髪を後ろに丸めて縛りまとめた髪型をした可愛らしい顔立ちをした少女だ。まさか自分と同じぐらいの年の女の子が生垣の中から出てくるだなんて、と呆然としてしまっている。

 

「あなた、何をしてるの?」

 

「いや…それ俺のセリフなんだけど…」

 

自分の前で警戒態勢をしているシエルに対して首を傾げながら尋ねてくる。だが、シエルからすれば彼女の方が何しているんだと言いたい。王都に住んでいる子なのだろうか。

 

「生垣の中から出てくるなんて…かくれんぼでもしてたの?」

 

「あ…うん、そう、かくれんぼ。一人でだけど…」

 

何故か視線を外して曖昧気味に答える少女の姿を見て、彼女に向けるシエルの目線は怪訝なものへと変わった。確実に嘘だ。何か誤魔化してる。だが初対面の少女に対してそんな尋問をする時間も意味もないのでそれ以上は聞かないことにした。

 

「そういうあなたは?」

 

「俺は…観光に。けどその、道が分からなくなっちゃって…」

 

逆に尋ねてきた質問に、若干答えるのを渋る。だが誤魔化したところで何にもならないので正直に答えた。すると…。

 

「あ、迷子か!」

 

パッと顔を明るくして容赦なく言い放ったその言葉の刃はシエルの心に突き刺さった。多分悪気は無かったのだろう。それにしたってストレート過ぎやしないだろうか。事実だけれども。

 

「けどしょーがないじゃん…こんな広いトコ来たの初めてだし…」

 

不貞腐れながら呟いた言葉を聞きながら、シエルが手に持っていた地図に少女は気付く。そう言えば先程観光と言っていたような…と思い出した少女は生垣から出てきてどこに行きたいのかを尋ねてくる。

 

先程まで生垣で隠れていた全貌が明かされたが、茶色いフード付きのローブでほぼ全身を覆い隠しているという、一般の少女からはかけ離れた服装だ。妙な服装をしているな、と言う感想もそこそこにシエルは地図を広げて兄と宿泊していた宿を指し示す。

 

「成程、そこだったら…」

 

「え、分かるの!?」

 

どうやらこの少女はクロッカスに住んでいる少女のようだ。現地の住民であるなら土地勘もある。これは幸運だったかもしれない。と、喜んだのも束の間だった。

 

「あれ…?えっと…」

 

キョロキョロと周りを見渡してもう一度地図を確認する。何度かそれを繰り返したのち、恥じらうようにはにかんで彼女は口を開いた。

 

「ここどこだろ?」

 

「お前も迷ったんかい!!」

 

目を剥いて口を半開きしながらシエルは叫んだ。現地民(かは定かではないが)と邂逅できたと思いきや彼女も実は今の場所が分からない状態だったようだ。迷子二人が揃ったところで今の現状を打開できるわけがない、むしろ悪化する。どうしたものかと溜息混じりに地図を見ながら困り果てていると、少女は少し考える素振りを見せて、何かを思いついたように顔を上げた。

 

「じゃあ、観光しましょう!」

 

「え?」

 

突然の提案にシエルは面食らった。何故?今?この状況で?

 

「ここでじっとしてたり闇雲に宿を探したりしてたら勿体ないもの!だったら、街を見て周って楽しみながら、分かる道が見つかったらそこに向かえばいいの!いい考えでしょ?」

 

「な、なる…ほど?」

 

詳細を聞いて一理あるとは感じた。彼女の言うとおりだ。迷子になってフラフラと街を回っても見つからず、合流することに意識を向けていて観光する余裕もなかった。だが本来はぐれなければ兄と二人で見て周っていたのだ。楽観的のように見えるが、折角の王都だ。このままただ時間を潰すと言うのも気が引ける。

 

「私も見てみたいものが沢山あるの!一緒に行きましょう!」

 

「え、ちょっと!?一緒にって…君も!?」

 

シエルの反応を肯定と受け取った少女は徐に、シエルの地図を持っていない方の手を取って引っ張っていく。人が行き交う通りへとされるがままに引かれて、少年少女の奇妙な出会いを切っ掛けとした王都観光が始まった。

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

最初は少女に引っ張られるだけで戸惑っていたシエルであったが、王都の中にある魔法用の小道具を始めとして、書物や花などの露店、さらに街の至る所で目にする魔法の大道芸などを見ているうちに、彼もまた目についたものを少女に伝えて共にする、と言うパターンが増えてきた。やはり物珍しいものを目にすれば、彼はそちらの方へと興味を惹かれる。

 

「さすがは王都だな~。見て回るだけでもこんなに楽しいだなんて」

 

「私も!王都がこんなに賑わっているなんて、想像以上だった!」

 

「あれ?君、王都の外から来たの?」

 

「ううん、私は普段お…っ!!」

 

すると普通の雑談をしていたはずなのに突然口元を手で押さえて顔を背ける。度々こうだ。話の途中で顔が強張ったり、何かを言いかけて飲み込んだり、言ってしまえば怪しい挙動が目立つ。

 

「お?」

 

「お、お!お家の中で過ごすことが多いから!あんまり外に出ないの!」

 

不思議な家庭もあるんだな~と、挙動不審になってる少女の様子は隅に置いといて口に出しておいた。納得したわけではないがあんまり詮索しない方がいいだろう。観光自体は楽しめているため文句がある訳でもない。

 

「(けど女の子と二人で街を歩くだなんて、今までの中では無かったなぁ…)」

 

ほとんど自分と背丈も変わらない少女(ローブを被ってなぜか姿を隠しているが)が、自分と共に観光をする光景は今までになかった。年が割と近い女性ならギルドにも大勢いるが、男女合わせても最年少である自分には近い年の少女の存在は稀有とも言える。ふと、思い出したようにシエルは隣を歩く少女に声をかける。

 

「そう言えばさ、俺達まだ名前も教え合ってなかったよね?」

 

「えっ…」

 

すると何故か少女の表情が強張った。またか。今度は名前を聞いただけで。名乗ることすら不都合なのだろうかと訝しんだが、いつまでも「君」などと呼ぶのもどうなのかと言う話だ。こればかりは聞かせてもらおう。

 

「俺はシエル。妖精の尻尾(フェアリーテイル)って言う魔導士ギルドの一員だよ」

 

「え、妖精の尻尾(フェアリーテイル)!?あなたって魔導士だったの!?」

 

「あ、そう言えばそれ言ってなかったっけ」

 

考えても見れば自己紹介もしていないのに一緒に観光していたのか自分たちは。今更ながら無防備すぎやしないだろうか、二人揃って。

 

「私、あんまり魔導士ギルドって詳しくないけれど、あなたのところはよく聞いたことがあるの」

 

「そうなんだ!」

 

それを聞くと少し嬉しさが込み上げてくる。自分が所属しているギルドが王都でも評判と言われている事実。そこに所属する一人としては鼻が高い。

 

「『いつも何かを壊したり、被害を出したり、迷惑も大きくかけている荒くれ集団』だってへい…家の人たちが言ってたよ!」

 

前言撤回。申し訳なくなってきた。衣服を脱ぎ捨てて裸になるやつとか、あっちこっちで女性をナンパするやつとか、経費とか言って酒場の酒を飲み干しまくるやつとか、あと行く先々で物を壊すわ物を燃やすわ物を壊すわと繰り返すやつとかの姿が脳裏に浮かび上がる。広まってると言っても悪い意味のようだ。自分もその中にカウントされているのだろうか、解せぬ。

 

あとまた何か言いかけて訂正したようだが、そこもあえて気にしないことにする。

 

「私よりも年下なのにあなたって凄いのね」

 

「あ、俺外見で下っぽく見られるけど、一応14なんだ」

 

「え、同い年!!?」

 

背丈がほとんど変わらないこともあって自分よりも年下なのでは?と思っていたらしい。同い年、という事は彼女も14歳なのだろう。近いとは思っていたが同じとは。

 

「男性ってもっと大きい人ばかりと思ってた…。あ、でもお父様は私より小さいからそうでもない…?」

 

独り言のようにぶつぶつと呟く少女。確かにシエルの周りにもそれなりに背丈が高い男性陣が揃っている。最年長であるマスター・マカロフは子供よりもさらに低いが、巨人化(ジャイアント)を使えば全人類最長と言えるだろうか。いやそれは反則か。

 

「それで、君の名前は?」

 

終始独り言を続けていた少女が、シエルの問いで我に返った。目を泳がせて「えっと…その…」と口ごもって、誤魔化そうとしているのがよく分かる。だがせめて名前だけでも聞いておかなければずっと妙な空気に襲われるし、何かと不便だ。しばらくしどろもどろになっている彼女の表情を半目で見ながら黙していたシエルに、何か閃いた様子で名を告げた。

 

「『メラル』!そう、メラルって言うの!」

 

「メラル…」

 

本名…なのだろうか?正直先程までの反応で疑ってしまうのも無理はない。名を反芻したシエルに対して、ぎこちない笑みを浮かべながら頷いている。真偽はともかく当初の予定通り互いの名を教え合ったのだから、これで良しとしておこう。

 

「じゃ、次はどうしようか、メラル」

 

「え、ええ…そうね…」

 

何か目についたものの中で候補は無いか辺りを見渡すメラル。すると、目に止まったのか視線が一点に定まる。その視線の先にシエルも目を向けると、アイスクリームの露店が目に映った。店の前の看板には「クロッカス限定ハニードロップ発売中!」と記されている。

 

ハニー―蜂蜜―と聞いてシエルは思い出した。このクロッカスの近くには養蜂場が存在していることを。無数の花が咲き誇るクロッカスの近場に蜜蜂の生息域を作ることで、クロッカス中の花の蜜から作られた蜂蜜を効率よく納品できる仕組みとなっているわけだ。王都に点在しているスイーツの店ではその蜂蜜を使ったメニューが豊富だったと記憶している。

 

「ハニードロップかぁ…そう言えば腹減ってきたな~」

 

「それじゃあ決まりね!」

 

シエルが呟いた一言に反応して、メラルは目を輝かせながらシエルの手を引いて駆け寄っていく。大半の女子がスイーツに目がないことは無類のスイーツ好きであるエルザを代表として知っていたが、彼女も例に漏れないようだ。店の前まで辿り着いた二人を目にし、店主と思われる男性が声をかけてきた。

 

「いらっしゃい!どの味にするんだ?」

 

「ハニードロップ味を二つお願いします!」

 

嬉々として味の指定を伝えるメラルの横で、財布を出そうと荷物袋を漁りながらシエルはふと疑問が浮かんだ。そう言えば、今まで行ったところはほとんど金がかかる場所ではなかったような…?

 

「メラル、今更なんだけど…お金あるの?」

 

「え?」

 

とぼけた表情でシエルの方へと向き直したメラル。その表情は「勿論持ってる」と言う肯定の意味でも、「持っていない」と言う焦りの顔でもない。そもそも「何を言っているの?」と言ったような売買を知らない者がする顔であった。それを理解した瞬間自分の顔が引きつるのを自覚した。なんてこった。大体王都の中に存在する裕福な家庭のものではないかとあたりをつけていたのだが、まさかの世間知らずでもあったとは。

 

仕方ない。ここは彼女の分まで自分が負担するしかない。そう決めて店主が告げた値段の分を財布から出そうとした瞬間、彼女自身から待ったがかかった。

 

「ごめんなさい、そう言う決まりだったのを知らなくて…私が何とかするから、シエルはちょっと待っててくれる?」

 

「え?何とかって、どうやって…?」

 

所持金もないのにどうするつもりなのか?「いいからいいから」と何故か店から少し離れた場所で待機させられることに。

 

すると店主の元へと戻ったメラルが手招きで彼に近づくよう願い出る。そして、周りから見えないように被っていたフードを取ると、店主は途端に驚愕の表情を浮かべる。これだけで終わらない。口元に人差し指を近づけて静かにさせると、両手を合掌させて何かを小声で頼み込む。そして一分もしないうち…。

 

「お待たせ!はい、どうぞ」

 

「あ…うん、ありがと…」

 

一切金を払わずハニードロップ味のアイスを二人分持ってきて片方をシエルへと差し出しながらメラルが戻ってきた。色々と気になるところ…と言うかツッコミどころが満載なのだが、聞いたところでどうせ話してくれないだろう。シエルは色々考えるのをやめた。

 

 

 

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その後も時々地図を確認しながら王都を巡っていた二人。ふと、目に映った広大な空き地に術式が記されているのを見たシエルが声を上げたことで、隣の少女も同じ方向に目を向けた。

 

「『超大型レジャースポット建設予定地』…?」

 

そう書かれていた術式の中には、まだ土台だけではあるがおおまかに印が刻まれている部分や、完成予定地図などが記されている。数年後には完成して多くの客で賑わうことになるのだろうか?

 

「ああ。大きいプールや水族館を建てる予定だって聞いたことがあるわ」

 

「そうなの?」

 

囲んでいる術式にはそこまで細かいところは書かれていなかったのだが、彼女は知っているようだ。街の住人たちにっては周知の事なのだろうか?

 

と、ここでシエルは一つの可能性に気付いた。建設予定地という事で大きく開かれた敷地。そして手に持っている地図は割と最近のものを記している。そこで予測をつけてシエルは地図を広げて目当てとなるはずの部分を探し出した。そして…。

 

「あった!ここだ!地図の中で一番大きく書かれた空白!」

 

念の為に空白の周りの建物や道などと照らし合わせても確かに合致している。そしてそこから約束していた宿との距離を測ると…ここからまっすぐ行く先にある広場を抜ければほぼ目と鼻の先の位置だった。

 

「しかも割と近い!よかった~!これで兄さんと合流できる!」

 

「よかったね、シエル!」

 

地図を掲げながら安堵するように叫ぶシエルに、ここまで付き添ってもらったメラルも同様に喜んでくれている。考えてみれば、最初に迷ったときにメラルと会わなければ今も尚迷っていたか、心細い気分を抱いていた可能性がある。そう考えると彼女には随分救われた。

 

「メラル、ありがとう。ここまで一緒にいてくれて、すごく助かったよ!」

 

そのお礼の言葉を言われ、メラルは目を見開いた。改めて礼を告げられるとは思ってもみなかったと言える。純粋な感謝の気持ちを向けられて、彼女は何だかむず痒い感覚を覚えた。

 

「そんな、私こそ…一緒にいてくれたから、すごく楽しかったし…それに…」

 

だが、彼女の次の言葉をシエルは聞くことが出来なかった。

 

 

 

 

「きゃああーーーっ!!?」

 

道の先ある広場の方向から、女性の悲鳴と何かの破壊音が聞こえ、遮られたからである。それを耳にした二人は揃って広場の方へと顔を向けると、そこから十数人の男たちが遠距離用の魔法を無作為に放ちながら暴れていた。

 

「どけどけ!オラァどきやがれぇ!!」

「邪魔すんじゃねェ!ぶっ殺すぞ!!」

 

何やら大量に物が入った袋を一人一つずつ持ちながら、後方に見える王国の軍から逃げている様子だ。数人の男たちの露出した肌に、所々山の形を模した紋章が刻まれているのが見える。ギルドの魔導士だ。そして民間人に危害を加え軍に追われている、という事は…。

 

「闇ギルドか!?」

 

そう叫んだシエルの言葉に、メラルが息を呑む。彼女は力を持たない一般人。その反応は当然と言える。本来ならば一刻も早く避難するべきであったのだが、それを行うには遅すぎた。闇ギルドの男の内の一人がシエルたちを目につけ、その顔を醜悪な笑みで歪める。標的にされた。

 

「てめーら!ガキどもを囲め!!」

『おう!!』

 

筆頭格と思われる男の指示に迷いなく男たちが動き、シエルとメラル、子供二人はあっという間に逃げ道を絶たれた。今までこのような危機に立ち会ったことのないメラルは恐怖で体を震わせながらフードを深く被り直している。

 

「軍のてめーら!!これ以上動くんじゃねえ!でねーとこのガキ二人の命はねーぞ!?」

 

逃げ遅れてしまった子供二人を人質に取られてしまい、追いかけていた軍の兵士たちは思わず足を止めてしまう。一般人を、それも小さい子供たちを巻き込んでしまったことに対しての動揺、そして悔恨を露わにしている。

 

「運が悪かったな。坊主と嬢ちゃんでデート中だったか?悪ィがそれも終わりだ、軍の奴らが見えなくなるまで着いてきてもらうぞ?」

 

「ひっ!?」

 

囲んでいるうちの男一人の声を聞いてメラルがさらに恐怖に引き攣った声を漏らす。そして今更ながらに彼女は後悔していた。家の外に出てしまったことを、悠長に観光を楽しんだことを、大人たちの忠告を無視してしまったことを。こんなことになるのなら、ずっと閉じこもっているんだったと、強く後悔し、負の感情で埋め尽くされる。

 

目に涙が浮かび、歯が震えて打ち鳴らされ、体中の震えが止まらない。こんな恐怖を体験したことはない。もうどうしようもないのか。このまま闇ギルドと言う恐ろしい者たちに連れていかれてしまうのか…?

 

「メラル」

 

その恐怖に支配された感情を一声で和らげてくれたのは、同じように危機的状況にいる筈の少年だった。

 

「俺が合図をしたら後方にいる兵士さんたちの元まで走るんだ」

 

「…え…?」

 

一瞬その言葉の意味が理解できなかった。小声で呟かれたそれの意味が、そして兵士が前方だけでなく、後方にいると何故分かるのか?だが、彼女はその疑問を口にする余裕は無かった。

 

「別れの挨拶にしては随分過激になるけど、俺も今日すごく楽しかったよ。もしまた会えたら今度は仲間たちにも会わせてあげる」

 

「で、でも…」

 

彼は怖くないのだろうか?今の危機よりも次回の話をしている彼に、どこか異質な雰囲気を感じさせる。いくら彼が魔導士とは言え、自分と同じ年、同じ背丈の少年である彼に、何とか出来るのだろうか?

 

「大丈夫だよ。俺を信じてくれ」

 

不敵な笑みを見せて告げる少年に、彼女の震えは既に止まっていた。恐怖は消えていない。だが不思議と、先程と比べて十分に和らいだように思う。

 

「おい、さっきからコソコソ何話してやがるんだよ?」

 

すると小声で話をしている子供二人を目につけた一人の男がライフルの銃口をシエルに向けて脅しをかける。それを見たメラルが再び息を呑むのに対して、シエルの表情は変わらない。むしろ余裕と告げるような笑みのままだ。

 

「あ?何笑ってんだこのガキ…!」

 

男はそのままライフルの引き金に指をかけて撃とうとする。だが、それが撃ち込まれることはなかった。

 

「ちょうどいいや。新技の実験体ぐらいにはなってもらおうかな…?」

 

ぼそっと呟いたその言葉を聞いたのは、メラルと、シエルに銃口を向けている男のみ。何のことか分からずに呆けている間に、それは実行された。

 

落雷(サンダー)気象転纏(スタイルチェンジ)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雷光(ライトニング)』…!」

 

小さい雷の魔力を右手に集めてそれを握り潰すと、その魔力がシエルの身体を包み込む。そしてその変化に誰も気付く間もなく、男の持っていたライフルを弾き、顎目掛けて膝蹴りを食らわせて男を気絶させた。

 

人質にしていたはずの子供からの予想外の奇襲を理解する間もなく、後方を囲んでいた魔導士二人にシエルは一瞬で近づくと一人は左手で顔面を殴り飛ばし、もう一人には鳩尾に右脚の蹴りを叩き込んだ。

 

「今だ、走れ!!」

 

何が起きているのか理解できずにいるメラルにその合図だけを送ると、彼女は開いた道を縫って一気に駆け出した。今はとにかく彼が言ったとおりにするべきだと本能に言い聞かせる。

 

「なっ!?ま、待ちやがれ!!」

 

ようやく思考が追い付いた男たちがメラルを追いかけようと駆け出すが、先頭に立っていた男の正面に、雷の光を纏ったシエルが突如現れてその足を止める。

 

「眠ってろ」

 

告げるや否や男の体中に拳のラッシュを叩き込み、最後の一突きで後ろにいる集団へと突き飛ばす。時間にして僅か10秒足らず。たった一人の少年を相手に、形勢を逆転されてしまった。

 

「な、何だこのガキは!?」

「速過ぎて目が追えねぇ…!」

 

ただの子供と思っていたのに一気に4人もの戦力を失った。雷のような速さと鋭さを持つ実力を見せるシエルに、闇ギルドたちはただただ動揺を隠せない。

 

一方でシエルは体に感じている感覚を確認していた。右手を握って開くを繰り返し、先程の攻撃の感覚を思い出す。

 

「まだまだと言ったとこだけど、体感速度の高速化も大分馴染んできたみたいだ。いずれはズレ0秒で動けるようにしなきゃな」

 

シエルが使用した魔法『雷光(ライトニング)』――。

実はこの技にはモチーフがある。シエルが楽園の塔で対峙し、圧倒的な力を見せつけてきた天体魔法の使い手、ジェラール。彼が使う技の一つ・流星(ミーティア)をヒントにして、似たような戦法を確立するために編み出した技だ。

 

自身の感覚と敏捷を高速化、これによって相手に攻撃、防御両方を実施させる前に物理的な打撃を打ち込むことが出来れば、更に有利な戦いが出来る。更にこの技は流星(ミーティア)とは違う、この技のみの特性がある。

 

「くそっ!どきやがれ!!」

 

腕に魔力を込めて打ち込もうとする男の攻撃を容易く躱して懐に潜り込み、胸の部分に掌底を打ち込むと、男の身体に数瞬雷が迸る。物理攻撃に雷属性を付加(エンチャント)できるのだ。純粋な物理攻撃が効かずとも、与えられる有効打が増えるという事になる。

 

「さ~て…まだまだ練習に付き合ってもらうぜ?それが嫌なら軍に自首するんだな」

 

「ふ、ふざけんな!オレたち『無音の丘(サイレントヒル)』がてめーみたいなガキ一人に潰されてたまっかよぉ!!」

 

シエルが告げた忠告…もとい挑発に、筆頭格である男が怒りの声を上げる。引け腰になっていた他の面々に奮起する形で大の男が小さい子供一人に複数人でかかっていく。だが、彼らは気付くべきだった。彼の左頬に刻まれている紋章が、闇ギルドなんざ関係ねぇと言わんばかりのとんでも集団ばかりのギルドのものであることを。

 

 

 

沸き立つ一般の観衆、唖然とする王国軍が見守る中、闇ギルド『無音の丘(サイレントヒル)』はたった一人の少年魔導士によって一人残らず気絶させられた。

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

「シエル!何やってるんだこんなところで!」

 

「ご、ごめん兄さん…道、外れちゃったみたいで…」

 

軍に闇ギルドの者たちを預け、観衆となっていた住民たちに囲まれていると、騒ぎを聞きつけたペルセウスが場にやってきて、はぐれていた弟を発見し意図しない形での合流となった。

 

「しかも聞けば、闇ギルドの一団相手に一人で戦ったそうだな!さすがに無茶が過ぎるぞ!怪我はないのか!?何か妙なものを食らってないか!?」

 

「だ、大丈夫だよ!何一つ攻撃は当たってないから!!」

 

シエルの身体を隅々まで確認して心配しまくる兄の姿を困惑気味に宥める。予想はしていたが相当心配をかけさせてしまったようだ。何度も辺りを捜索しては宿に戻るを繰り返し、あまつさえ神器による合図さえ王都内で飛ばそうとも考えていたそうだ。色々な意味で合流できて本当に良かったとシエルは思う。

 

「残念だが、満足に観光する時間は無さそうだ。そろそろ帰らないとギルドに戻る時には日が暮れちまう」

 

「そうなの?じゃあ急がないとね!」

 

少しばかり落胆の表情で告げたペルセウス。恐らく弟をがっかりさせてしまうだろうと覚悟して言ったその言葉に、意外にもシエルは素直に従った。あんまりにもあっさりなので「本当にいいのか?」と思わず聞き返すほどにだ。

 

「実は、迷ってる最中に、王都を満喫したんだ。兄さんを置いてけぼりにしちゃった感じで申し訳ないんだけど…」

 

いつの間に。素直にそう思った。だが同時に彼が幸せそうならば、それもまた悪くないと結論付けた。表情からは不満と感じる部分も見当たらないし、良しとしておこう。

 

「そうか、それならいい。んじゃ帰るとしよう。土産ならついでで買っておいたから心配もいらん」

 

「兄さんもちゃっかり見て周ってるじゃ~ん!」

 

軽口を叩き合いながら帰路の道へと着こうとしている二人。その二人を遠くから見ている一人の少女にシエルは気付く。その表情はどこか寂しげなものを抱えているように見える。それを見たシエルは右手を挙げて大きく数回手を振った。

 

「…!!」

 

それだけで少女は顔を明るくして、シエル同様に大きく手を振った。たったそれだけだが、十分だろう。きっとまた会える。彼女はそう信じて隣り合って歩く兄弟の背を見送った。それを望むように笑みを浮かべながら。

 

すると、自分の身体に突如浮遊感を感じた。突然の事に驚愕すると、その原因と言える人物からの声がかかった。

 

「見つけましたぞ。全く、お転婆にも困ったものです」

 

「あ…ご、ごめんなさい…」

 

周りの兵士とは違う鎧甲冑に身を包んだ大柄の男性だ。鼻は妙に高く、髪型はボリュームがあってキノコの一種を彷彿とさせる。その男性は少女メラルを丁重に、かつやや無遠慮に片手で抱き上げている。周りの兵士から「た、隊長…!?」と驚愕と共に呼ばれているため、それなりに高い地位にいるようだ。

 

「お父上も心配為されています。もうお戻りになってください」

 

「…はい…」

 

苦笑を浮かべながらも肯定の返事を示した彼女に満足したのか、彼女を下ろして地に足をつけさせる。「帰還するぞ」と言う男性の指示に兵士たちが応え、彼等もまた帰路についていく。少女も兵士たちに着いていくように歩を共にする。

 

「此度の王都巡回、随分と楽しまれたようですな?」

 

「ええ、今までお話にしか聞かなかったものを実際にこの目で見れて、とても幸せな時間でした」

 

実際彼女が体験したこの観光、とてもいい経験となった。街の人たちの声を聞き、その暮らしを見て、どのような者たちが生きているのか、そしてどのようなものに人が惹かれるのか。それら全てを自らの肌で経験することが出来た。これ以上にない貴重なものだろう。

 

そして、そんな時間を共に過ごすことが出来たあの少年との思い出も…。

 

 

 

 

「ねえ、『アルカディオス』?妖精の尻尾(フェアリーテイル)のシエルって知ってる?」

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

王都から馬車。そして近場の街で降りてから汽車に乗り換えて帰路についているペルセウスとシエルの兄弟。規則的に揺れ動く汽車の座席に座りながらうたた寝している弟の姿を見て、兄の頬は緩んでいた。王都でいい思い出が出来たようで何よりだ、と彼自身も安堵している。しばらくは起こすべきではないと、ずっとそのままの時間を過ごしていた。

 

《間もなく、アカリファ~。アカリファに到着いたします。お降りのお客様は、お忘れ物のございませんよう、ご注意ください》

 

車掌のアナウンスを聞いて、ペルセウスは動き出した。忘れ物がないように荷物を纏めながら未だ夢の中にいる弟に声をかける。

 

「シエル、そろそろ起きろ。もうすぐ降りるぞ」

 

「ん…?もう着いたの、マグノリア…?」

 

ギルドホームが存在する街にもう着いたのかと寝ぼけまなこで返事するシエルに、ペルセウスは含み笑いを浮かべて返した。「降りればわかる」と。

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

『アカリファ』――。

フィオーレ王国でも名の知れた商業ギルド『LOVE&LOCKY』の本部が存在する街だ。街自体はさほど大きくないが、そのギルドの存在があるおかげか、様々な者たちが町の内外から訪れ、商業界の中心を担っている。

 

現時刻は既に夕方。そろそろ帰るべきと言えるこの時間帯に、何故立ち寄ったのか?その疑問に答えるようにペルセウスは語り始めた。

 

「シエルは、俺に放浪癖がつき始めているって話を聞いたことあるか?」

 

「ああ…マスターがぼやいてたことがあるよ。昔はそうじゃなかったのにって。それが?」

 

「実は依頼で街の外に出ていると、色んな人や場所から様々な情報をもらうことがある。俺が扱う神器の事から…厄介な闇ギルドの事についてまで…」

 

それを聞いてシエルは納得した。依頼で旅に出てから神器の数が増えたり、評議員の依頼で闇ギルドの殲滅を行ったりするための情報を仕入れていたり。これまで兄がギルド外で行っていた行為の一端に、今自分も関わっているのだ。

 

「そして汽車に乗る前、アカリファの商業ギルドにとある武装集団が押し寄せてきたという情報を耳にした。更に噂を聞いてみると、闇ギルドの一つだってことまで」

 

「ここでも闇ギルドが!?」

 

王都で大規模に略奪を行った無音の丘(サイレントヒル)に続いて、この街にまでその被害が及んでいる。闇ギルドにいい思い出がない彼ら兄弟にとって、この事態は見過ごせない。

 

「じゃあ、その闇ギルドの奴ら…」

 

「ああ、とっちめてやるとしよう」

 

本来であればギルド間抗争禁止条約によって闇ギルドとの争いも禁止対象となっている。だが、今回のように被害が出ようとしているときには不可抗力として主張が可能だ。結論を定めた二人が商業ギルドまでもう少しと言ったところまで進むと、予想もしなかった光景が広がっていた。

 

 

 

「もう大丈夫です!」

「安心してくださいー」

「隊長!何人か逃走しました!!」

 

「「あれ…?」」

 

闇ギルドによって占拠されているはずの商業ギルド「LOVE&LOCKY」は、既に助けられていた。入り口前で人質になったと思われるギルド員を介抱する者や、捕らえた闇ギルド員たちを見張っているものなどに分かれている軍隊の兵士が密集している。

 

「どーなってるの…?」

 

呆けた表情でうわ言を告げるシエル。状況を整理するために、街の者たちや軍の者たちに話を聞けないだろうか。そう考えたペルセウスがギルドの中にいる軍に聞きに行った後、シエルも街の人たちに話を聞くことにした。すると…。

 

「闇ギルドを相手に果敢に立ち向かった女の子がいたんだ!」

「その人のお陰で、私たちも助かったのよ!」

「あ、君妖精の尻尾(フェアリーテイル)!?君と同じギルドの魔導士だったんだ!」

 

このような話を聞いた。どうやら知っている内の誰かが既に解決したらしい。もしかして近くにいるのだろうかと見渡していると、いた。思いっきり知っている人物が。だが、それは色々な意味で意外な人物だった。

 

金色の髪を右側でサイドテールに纏めた少女。彼にとって交友も深い星霊魔導士。

 

「ルーシィ!?」

 

「え、シエル?あんた何でここに!!」

 

「それはこっちの…」

 

互いになぜここにいるのか意外と言える反応を示す二人。よく見ると、ルーシィともう一人、やけにくたびれた身なりをしている、ルーシィのものよりも濃い金色の髪と濃く蓄えた髭が特徴的の男性も見える。シエルは知らないのだが、彼はジュード・ハートフィリア。ルーシィの父であり、ハートフィリア財閥(コンツェルン)の代表()()()人物だ。

 

「ルーシィ!無事かーっ!?」

「どーしたんだ一体ー!!」

「あれ!?シエルもいるよー!?」

 

「何か突然賑やかになった…!!」

 

そして状況を整理するよりも先に、アカリファの街の入り口から轟音と地響きを鳴らしながら近づいてくる一行の姿があった。ナツを筆頭に、シエルとルーシィたちが加わっている最強チームの面々だ。どうやらシエルとペルセウスがいない中でも仕事に向かおうとしていた時に、突如ルーシィが飛び出したそうだ。

 

と言うかこれどこかで見たような構図なのだが…どこだっただろうか?その時は自分も含まれていたような…?と考えているのをひとまず置いておいて。

 

「成程、闇ギルドによって占拠された商業ギルドを助けたのはお前だったのか、ルーシィ」

 

「ペルさんまで!?」

 

軍からの事情説明を終えて戻ってきたペルセウスが言葉と共に近づいてくる。意図せずに最強チームが勢揃いとなった。一人で闇ギルドを相手に圧倒したという事実にエルザが驚愕と関心を向けていると、ルーシィは困ったように後ろにいる父親へと目を向ける。そんな娘に対して、ジュードは一つだけ頷いた。もう誰かに縛られる必要はない。自分の道を歩んで行けばいい。そんなメッセージを込めて。

 

「元気でね、お父さん…」

 

右手を掲げて甲に刻まれた紋章を見せて、その言葉を告げて仲間と共に去っていく。父はそんな娘の背中を、優し気に見送った。

 

「しかし、ペル達も来ていたとはな、依頼はいいのか?」

「そっちは昨日のうちに片付いた」

「それよりもルーシィだよ、何かあったの?」

「わっかんねーんだよ、どーしたんだ、急に?」

「何でもなーいの!」

「何でもねー訳ねーだろ!」

「仕事キャンセルしちゃったんだよー!」

「ごめんね~!」

 

夕焼けのアカリファを共に歩みながら話に花を咲かせる一行。楽しく、賑やかで、そして優しい仲間たちに囲まれた娘の姿に、彼はまた己が愚かだったことに気付かされた。これからは変わっていこう。ギルドという家族を見つけて、前向きに変われた娘のように。

 

 

 

 

「(それにしても、『裸の包帯男(ネイキッドマミー)』か…)」

 

一方で、ペルセウスは胸中で今回の事件について振り返っていた。王都で騒いでいた無音の丘(サイレントヒル)。アカリファの裸の包帯男(ネイキッドマミー)。どちらも闇ギルドであるが、それ以外にもある共通点が存在していた。そして、他にも活動が活発になっているギルドには、上記二つのギルドと同じ部分がある。その共通点は…。

 

 

 

 

 

 

「(全部、『六魔将軍(オラシオンセイス)』の傘下…。奴等…何を企んでやがる…?)」

 

今までの闇ギルドたちは、精々下っ端と言わざるを得ない。本当に恐ろしい者たちが、彼らの上に存在しているのだ。その内の一つであるその者たちが関与していないとは思えない。

 

 

 

六魔将軍(オラシオンセイス)』―――。

六つの祈りを冠した者たち。その祈りの為に何を為そうと言うのか…。

 

 

 

 

 

 

 

「聴こえるぞ…。時代の変わる音、目を開ける音、始まりの音…。光崩し…!」

 

 

 

 

 

闇の絶対支配者・六つの悪しき祈りが、光を押し潰さんとしていた…。




おまけ風次回予告

ミラジェーン「闇ギルドクイーズ!闇ギルドたちの頂点に立っている三つのギルドを纏めて?」

シエル「はい!『バラム同盟』!!」

ミラジェーン「正解!!じゃあ、その中でも規模だけを見れば一番少ないのは?」

シエル「『六魔将軍(オラシオンセイス)』!!」

ミラジェーン「またまた正解!それじゃあ『六魔将軍(オラシオンセイス)』の傘下に入っているギルドは全部でいくつ?」

シエル「…えっ!?」

次回『バラム同盟』

シエル「数えたことも無い…一体いくつなんだろ…?答えは?」

ミラジェーン「正解は、『増えたり減ったりしてるので不明!』でした♪」

シエル「んなもん分かるかぁーーっ!!」
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