長かったような短かったようなGWももう終わりですね…。翌日から仕事だぁ…。
そしてタイトルがウェンディの事を示しているのに、肝心の本人が名前しか出ていない現実…。書いている本人が言う事じゃないけど、次回までウェンディがいないの寂しい!!
「くそっ、あいつらは!?」
「消えちまったみてーだ……」
「んだとコラー!!」
その内の一人であるナツは
「ウェンディ……」
そして、同様にウェンディを連れ攫われたシャルルは、悲嘆の表情を浮かべて彼女の名を呟く。理由も分からないまま一方的に連れて行かれたショックは、計り知れない。
そして彼女を連れ攫われ、ショックを受けている者がもう一人。彼女と最も歳が近い少年は、自分の力が一切通用せず、大切だと感じさせる少女を守れなかったという自責に苛まれ、涙を流して俯いている。すぐ傍にいる兄は、弟が深く悲しんでいる様子を見つめることしかできない。
「完全にやられた……」
「あいつら強すぎるよ……」
たったの6人。しかしその一人一人があまりにも規格外で、更に言えば先程の戦いで本格的に対峙したのは4人。一人はウェンディを連れ攫う事と最後のトドメ以外では手を出しておらず、あと一人に至ってはずっと寝ていて参加すらしていない。にも関わらず圧倒された。想定以上の魔力だったと連合軍側に後悔が募る。
更に言えば、頼りにしていたクリスティーナまで破壊されたのは大打撃と言える。
「あの心が覗けると言う女が言っていた。ワシらの作戦が全部分かったとな」
心が覗ける女―――エンジェルから聞いた話を共有するジュラ。彼女が従えていた二体の小人が変身した一夜から、クリスティーナの事を知り、そして事前に破壊を行ったのだろう。その時点で既に先手を打たれていたことになる。
「あの……
「それなら心配ない」
爆撃艇を操作する操縦士がいたと推測して、心配になったルーシィが尋ねるが、その心配は杞憂であることが
「ジュラさんも無事で良かった」
「いや、危うい所だった」
エンジェルによって倒されたと聞いたジュラが、こうしてこの場に立っていられる姿を見てリオンがそう声をかけるが、そのジュラは身体全体に細かな傷が入っている。本来であれば動くだけでその怪我が響くだろう。
「今は一夜殿の“痛み止めの
遅れて到着したのか、いつの間にかいた全身傷だらけの一夜がポーズを決めて既に姿を消した
「
「あんたボロボロじゃねーか!!」
ちなみにコピーされた直後、エンジェルによってボコボコにされた一夜がトイレで気絶しているところを、ペルセウスが見つけたらしい。この場にいる誰よりも身も服もボロボロなのに威勢は人一倍だ。
「これしきの怪我何でもない!みなさんにも、私の痛み止めの
グレイからのツッコミに強がって返答する一夜は、すぐさまジュラにも使用した魔法の香りが詰まった瓶の栓を開ける。その匂いを嗅ぐだけで六魔に受けた傷や痛みが徐々に和らいでいく。
『さすが先生!!』
「また呼び方変わった!?」
一体何パターン用意されているのか。もう一つ疑問を上げれば、トライメンズはどうやってその時の呼び名を同時に呼ぶことが出来ているのだろうか。
「ペルさんは大丈夫だったの?倒し損ねたって聞きましたけど……」
「攻撃手段が、一夜に化けて
一方で無傷の様子のペルセウス。話を聞いたルーシィたちによれば、彼もジュラ共々倒されてもおかしくなかったかもしれない。だが彼にはコピー化した一夜の攻撃は効かなかった。その理由は、ペルセウスが普段から首につけているあるものによるのだと言う。
そう言ってルーシィに見せたのは、白地に赤い一つの丸が描かれた独特の模様をしたCの字形に湾曲した、玉から尾が出たような形の謎の飾り。この場にいる者たちはよく知らないが、東洋ではよく見られる“勾玉”と言う飾りである。
「こう見えてもれっきとした神器の一つだ。銘を『
「やさ……か……何て?」
全然聞いたことがない上に言い辛い名前の神器に、ルーシィだけでなく連合軍のほとんどが全くピンと来ていない。名前のインパクトが強い上に難解過ぎて流しそうになったが、説明によるとこれを装備している間は常に魔力を消費するが、状態異常を引き起こしたり能力を著しく低下させる魔法の効果を一切遮断することが出来るものらしい。
他の神器の特性に違わずペルセウスのみが装備でき、彼以外では持つだけで魔力を大きく消費してしまう。反則級の性能をしているが、普段からこれを装備していることで魔力消費に耐えるためのギプスの代わりにもなるらしい。
「ペルセウス殿があの攻撃に何とも無かったのは、そのためだったか」
「だが効果が及ぶのは俺一人。ジュラさんへの被害は、残念ながら防げなかった」
エンジェルと一手のみ交戦をした後、ジュラに応急処置を施し、一夜の目が覚めるのを待っていたため、これ程時間がかかってしまったようだ。治療効果を施せる神器があればもっと早く駆け付けられたのだが、生憎まだ彼は手に入れていない。
「あいつら~……よくもウェンディとハッピーを……!」
痛み止めの効果が出たのか、苛立ちを抑えず
「全くもう……少しは落ち着きなさいよ」
一対二枚の白い翼を背中から生やした白ネコのシャルルが、呆れるような視線を向けながら空中を浮遊していた。
「羽?」
「ネコが飛んでる……」
「これは
羽を生やして空を飛ぶネコ。確かに物凄く珍しく、人によっては見た事すらないと思うのがほとんどだろう。しかし
「やっぱり同じ種族みたいだな。ハッピーも同じものを使うぞ?」
「ああ、かぶってる」
「何ですって!?」
「自分が驚いてるじゃないの……」
得意気に説明してたのに「かぶってる」などと言われて物凄く心外そうな表情だ。しかしここまでハッピーとの共通点が多いとやはり無関係とは思えない。似たような種族が他にいて、共通した魔法が元から使える。そう断定してもいい程にだ。
「とにかく、ウェンディとオスネコの事は心配ですけど、闇雲に突っ込んでも勝てる相手じゃないって分かったでしょ?」
「シャルル殿の言う通りだ。敵は予想以上に強い」
シャルル、そしてジュラの告げた言葉に、全員が納得せざるを得ない。たった今その強さをその身で実感させられたのだから。そして、闇雲に奴等を探してはいられない理由がもう一つ。
シャルルが指し示した先にいたのは、先程コブラが操る毒蛇に嚙まれた右腕を抑えて、苦悶の表情を浮かべているエルザ。目に見えて分かる程紫色に変色しており徐々にそれが広がっていく。コブラが言っていたように毒が回っているのだ。
一夜が漂わせている痛み止めの
「シエル、あんたの
「あれは傷や疲労、魔力の回復力を増加させることは出来るけど、毒のような体調不良を起こすものには効かないんだ……」
一夜以外に治癒の魔法を扱えるシエルなら治せないかと尋ねるルーシィだが、本人が言った通り
「しっかりしろ、エルザ!」
「どうしよう……!」
彼女の身を案じて仲間たちが近づく。するとエルザはあることを思いつき、すぐさま行動に移った。
「ルーシィ……すまん……ベルトを借りる……」
ルーシィが付けていたスカートのベルトを掴んで引っこ抜き、その拍子で彼女が付けていたスカートがずり落ちる。突然起きた出来事にルーシィは悲鳴を上げ、トライメンズの3人はそんなルーシィの下半身に視線を向ける。
「見るな!!」
そして勿論激怒してスカートを両手で押さえたルーシィによって蹴り飛ばされた。そしてエルザはルーシィから借りた(というか無理に引き抜いた)ベルトでまだ毒が回っていない部分から、右腕を固く縛る。何をするつもりなのか。それに対して答えた彼女に、誰もが衝撃を受けた。
「このままでは戦えん……。斬り落とせ」
地に座り、口に布を噛み、右腕を伸ばして迷いなく告げる。毒で苦しみ戦う事も出来ぬまま死にゆくぐらいなら、腕一つを犠牲にしてでも生き延び、戦うと言う覚悟を決めた。しかし、それは他の者たちには、特に同じギルドの仲間としては簡単に見過ごせるようなことではない。
「バカなこと言ってんじゃねえ!」
「頼む……誰か……!」
エルザは本気だ。仲間が止めようと声をかけるも、その決定を覆すことは難しい。エルザが自分の前に突き刺していた剣を、覚悟を決めて手に取るものが出てくる。
「分かった。オレがやろう」
「リオン、やめろ!!」
「やれ……!」
「よせ!!」
彼女の言に従い、剣を持って右腕に狙いを定めるリオンを、グレイが遮って止めようとする。今自分たちはエルザを失う訳にはいかない。腕を失えば思うように戦えないかもしれないが、命を落とした際はその戦力自体が消失してしまう。彼女の覚悟に応え、そしてこの状況を打破するためにも……。
「シエル、
「に、兄さん!?」
断固としてエルザの腕を斬ることに反対する妖精の中で、唯一ペルセウスだけが彼女の意を汲んで同意する。そして斬り落とした後に出血を減らし、かつ傷口を瞬時に塞ぐための
「そんな……ペルさんまで!?」
「ダメだ!そんなことをしなくても他に方法が!」
「エルザ殿の意思だ……!」
他のギルドの者たちにも意見が二分される。
意見が対立し口論が続く。そしてその間にも、リオンはエルザの元へと近づき、彼女が望むようにその右腕を断ち斬らんがため、両手で握りしめたその剣を振り下ろす。
「エルザッ!!」
悲鳴を交えたシエルの声と同時に、その音は響いた。それは剣によって斬られた肉の音ではなく、氷を砕いたような音。リオンとエルザの間に割り込んできたグレイが、氷で包んだ己の手で、その剣を受け止めた音だった。
「貴様はこの女の命より、腕の方が大事か?」
「他に方法があるかもしれねえだろ?短絡的に考えるなよ」
片方を非情だと、片方を甘いと断じる者もいるだろう。しかし彼らの意思はどちらかに傾くことはない。そしてその間にも、最早意識を保つ事さえ限界に達したエルザが、その場に倒れこんでしまった。
「まずいよ……このままじゃ毒が体中に回って……!」
「何か……何か方法は……!!」
このまま放っておいてはいずれエルザにも限界が来る。今この場には解毒の魔法を使える者はいない。万事休すか……そう誰もが思った時だった。
「ウェンディなら助けられるわ」
その言葉に全員がシャルルの方に振り向いた。ブレインによって連れ攫われたウェンディならば、エルザを助けられる。確かに彼女はそう言ったのだ。
「今は仲間同士で争ってる場合じゃないでしょ。力を合わせてウェンディを救うの。ついでにオスネコも」
「あの小さい
「凄いな……」
そう言えば彼女は、戦う力はもっていないが、サポート特化の魔法はいっぱい使えると自分で言っていた。まさかその中に解毒の魔法が加わっているとは。だがシャルルから明かされたのはそれだけじゃない。
「解毒だけじゃないわ。解熱や
「
「な、何か……私のアイデンティティーが脅かされているような……」
特に痛み止めなんてさっき自分も披露したばかりだ。それに比べたら治癒力と魔力の回復や欠損部分の即時修復が出来るシエルや、それよりもさらに上位の治癒魔法が使えるらしいウェンディの方が遥かに優秀だと錯覚を覚える。一夜現在29歳。自分の半分ぐらいの年の子供に劣っているのではと激しい危機感を感じていた。
それはそれとして疑問も浮かぶ。治癒魔法は現在
「あの娘は天空の
そして明かされたのはそれ以上の真実だった。ナツ、ガジル、そして特例ではあるがラクサス。この三人に次ぐ、更なる
特に、自分と同じ系統の魔法を扱うナツは、一番衝撃的だっただろう。
「詳しい話は後!ってゆーか、これ以上話す事は無いけど。今私たちに必要なのはウェンディよ。そして目的は分からないけど、あいつ等もウェンディを必要としてる」
そうなればやるべきことは自然と導き出せる。
目的は決まった。不和が発生していた連合軍の意思は、遂にここで一つとなった。
「おっし!行くぞォ!!!」
『オオッ!!!』
ナツの号令と共に腕を掲げて応える連合軍。その中に含まれている少年は、より一層これから行う事に関してやる気を見せていた。
「ウェンディ……絶対に助けてみせるから……!!」
細かい場所はまだ特定できない。しかし囚われているはずの彼女の身を案じ、その目に闘志を燃やしていた。
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連合軍は一度、数組に分かれ分散してウェンディを探すことにした。動けないエルザの近くにはヒビキとルーシィ。それから捜索班にナツ、シエル、グレイ、シャルルの組。リオンとシェリーのペア。一夜にイヴとレンの組。そしてペルセウスとジュラの強力コンビ。
その中でシエルたちは、
「天空の
「空気」
走りながら徐に尋ねるナツ。それに対して実に簡素な答えで返すシャルル。美味いのか?と聞かれても彼女自身もピンと来ていないらしい。炎や鉄と比べると、どこにでもあるありふれたものだからか、あまり食べるという想像がつかない。
「それ、酸素と違うのか?」
「二酸化炭素も含まれるのかな?」
今この場に本人がいない為それを確かめることもできない。だが周りに魔力を補給するためのものがいくらでもあると言うのはこの上ない利点と言える。
「あの娘、あんたに会えるかもしれないってこの作戦に志願したの」
「オレ?」
「同じ
「ウェンディも……ナツと同じ……!?」
シャルルの話を聞いてシエルも驚いた。そう言えばこの前、ガジルも同じ境遇だったと聞いた気がする。
ナツたちを始めとした
しかしある日を境に、イグニールはナツの前から姿を消した。どこに行ったのか何も告げないまま、何日待っても帰って来ず、探しに行ったが見つからず。目撃情報が無いか街に行って尋ねても「ドラゴンなんていない」と笑われてバカにされて、時には偽物の情報を掴まされることもあった。
そんなイグニールが姿を消した日と言うのが、X777年7月7日。今から7年前の話である。ガジルに滅竜魔法を教えたドラゴン『鉄竜メタリカーナ』も、同じ日にガジルの前から姿を消した。同じ年の同じ日に、人間に魔法を教えていたドラゴンが姿を消した……。もしそれが、二頭だけではないとしたら?
ウェンディに魔法を教えたドラゴン『天竜グランディーネ』もまた……7年前の同じ日に姿を消していたとしたら……?
「7年前……ドラゴンたちが姿を消した……何かが起きていた……?」
シエルは実際にドラゴンを見た訳ではない。だが、ナツから聞いたドラゴンの話を疑ったことはない。最初こそ、本の中でしか読んだことのないドラゴンに会うどころか、拾われて育てられたと聞いた時は信じられなかった。しかし、懐かしむような、純粋に当時の感動を語り、時折寂しそうな笑みを浮かべるナツを見て、彼は本当にそのドラゴンの事が好きなんだという事が伝わってきた。
だから再びイグニールに会いたいと願うナツに、少しでも助けになれるのならその協力を惜しむつもりはない。そしてナツたち3人の
「そう言えば、ラクサスも滅竜魔法を使えるんだっけ?」
「ああ、じーさん言ってたな。けど、
ラクサスも雷の滅竜魔法を扱うが、彼の場合はナツ達とは違う。幼い頃に父のイワンによって滅竜魔法を使えるようになる
「ラクサス……滅竜魔法の
何を思ったのか反芻したナツは、余所見していたことによってちょうどアーチ状に伸びた大木の根に顔面から激突して仰向けに倒れこんだ。「大丈夫か!?」とシエルが声をかけてナツの元に駆け寄ると、彼は痛みをこらえるものではなく、何かを思い出しかけているような表情を浮かべていた。
「何か……ラクサスの話を聞いた時、どっかで聞いたことある気がした……」
そう呟いたナツの言葉に、シエルは軽く目を見開いた。今の言葉はどういう意味なのか。シエルはそれを聞こうとしたが、それはシャルルの驚愕の声で遮られた。
「な……何コレ!?」
その声に反応した全員が視線を移すと、世にも奇妙な光景が目に映った。すぐ目の前に存在する樹海の木々が、葉も幹も黒く変色している。そしてそれがここから確認できないほど奥にまで広がっている。周りには同じように黒い靄が漂っていて、正直気持ち悪いと思わざるを得ない。
「ニルヴァーナの影響だって言ってたよな。『ザトー』兄さん」
「ぎゃほー!あまりに凄まじい魔法なもんで、大地が死んでいくってなァ。『ガトー』兄さん」
その二つの声は彼らの後方から聞こえてきた。『ガトー』と呼ばれた男は、薄い黄緑色のモミジのような髪型で、てっぺんのみが妙に逆立って伸びている。更に耳はやけに大きく広がっていて、大きく角ばった鼻にギルドの紋章が入っている。一方の『ザトー』と呼ばれた男は、黒に近い紫色のアフロに紋章が入っており、先が尖っている耳に、目元にはサングラス。口に金歯、顎はケツアゴ。両者共に大柄な体をしていた。
「誰だ!?」
「みんな!周り見て!!」
グレイが後ろの二人に気を取られていると、シエルはあることに気付いた。先程まで気配も感じなかった周りに、突如何人もの魔導士が現れた。色はバラバラだが似たデザインのジャケットと、妙に顔立ちがサルに見えることが共通点。そして何よりジャケットに刻まれている紋章がどれも同じ。しかも最初に現れた巨漢二人と同じものだ。
「ちょ……ちょっとぉ……!囲まれてるわよ!!」
茂みから現れたり、木々の上に乗っていたり、サルの鳴き真似と動きで興奮した様子でこちらを取り囲んでいた。
「ニルヴァーナの影響だってな」
「さっき言ったぜ、ガトー兄さん」
「そうだったかい?ザトー兄さん」
「うほぉ!!サルだ!サルが二匹いんぞオイ!!」
何故か二人とも互いを“兄さん”と呼んでいるリーダー格と思われる二人の男を目にし、ナツは何故か妙にテンションを上げだした。わざわざサルの真似をして。
「こいつら
「オオ!もう一匹増えたー!!」
もう一匹……否もう一人スキンヘッドのサル顔魔導士が、怒り心頭の様子でこちらを指さしている。奴等は闇ギルド
その内の逃げた一部の一人が、このスキンヘッドの男である。
「
「ぎゃほおっ!!遊ぼうぜぇ」
リーダーであるガトーとザトーがこちらに拳を向けて戦闘態勢を見せる。どうやら
「やられた……!敵は6人だけじゃなかったのね……!」
多勢に無勢。六魔のみなら数的有利を利用できていたのに、今度は逆の立場となった。それもこちらは戦える魔導士3人に対し、明らかに十倍以上の差が存在する。しかし、シャルル以外に焦る者はいなかった。むしろその逆だ。
「丁度良かった、運がいい……!」
「はぁ!?」
挑発的な笑みを浮かべて言い放つシエルに、シャルルは彼の正気を疑う。だが残り二人もシエルと同じだった。
「全くだ」
「ウホホッ!運がいいウホー!!」
「何言ってんのよアンタ達!早く突破して逃げないと!!」
「逃げる必要がどこにあんのさ?」
焦りを孕んで3人に告げるシャルルに、自信満々に返しながら、シエルは右手に展開した雷の魔力を握り潰す。そして体全体に雷の魔力を纏わせた。そしてナツとグレイも、それぞれ片手に炎と氷を纏い、周りの奴等に対して戦闘態勢を整える。
「折角向こうから出てきてくれたんだ」
「奴等の拠点の場所を聞き出す」
「待ってろよ、ハッピー!ウェンディ!」
その口ぶりを聞いていた
「なめやがってクソガキが……」
「
「何で二回言うんだ!!」
「ぎゃほほ、終わりだぞテメーら」
その言葉を皮切りに、
「何なのよ……
数の不利を全くもって気にしていない妖精たちに、唯一戦う力を持っていない彼女はただただ戦慄することしかできなかった。
────────────────────────────────────────
そして、傘下闇ギルドの襲撃を受けているのはシエルたちだけではなかった。
「
一人の男が号令を出すとともに、一斉に武器や魔法を携えて二人の男に向かって駆けだしていく。その数は百に及ぶ。しかし、相手があまりにも悪すぎた。
「岩鉄壁!!」
「行け、グレイプニル!!」
神器使いが操るは橙の炎を灯した鎖。彼の意のままに宙を動くそれは近づいてくるものを縛り上げて炎に包み、時として激しくしなり闇の者たちを吹き飛ばしていく。
あまりにも次元が違う。魔導士の中でも規格外の強さを持つ二人の魔導士に、
「ば、バカな……!我ら
指示と激励を飛ばしていた男は、次々と気絶した者の山を築いていく二人の魔導士に対して、戦意を喪失していた。三つの闇ギルドを同時に相手して、たった二人にそれを圧倒されるなど、考えてもいなかった。
「さて、残るは一人……」
「ひっ!!」
「覚悟はいいか?」
そしていつの間にか自分以外の全員を倒されたことに気付いたその男。最早彼に安寧の選択肢は用意されていなかった。
おまけ風次回予告
シエル「天空の
ナツ「そうか?そんなに多かったっけ?」
シエル「まず俺が使う天候魔法。少し前に戦ったジェラールの天体魔法。それから兄さんも天に愛されし魔導士なんて呼ばれてて、結構よく聞くんだよね…」
ナツ「あ、そういやオレも聞いたぞ!聖テン大魔道もその一つだよな!」
シエル「それは“テン”違いだよ…」
次回『ウェンディ救出戦線』
ナツ「ん?違うのか?じゃあテントウは?トクテンは?マグノリアテンとか…そうだ、テン丼はどうだ!?」
シエル「ここまで色々ズレてると俺がテンを仰ぎたくなるよ…」