それでも文字数そこまで多くないと言う…。
それと、今回の話を読んで「あれ?ニルヴァーナの〇って〇〇じゃなかったっけ?誤字?」って思われる箇所がありますが、誤字ではありません。本作の仕様です。
その理由は…まあ、勘のいい方はすぐ気づくでしょう。←
黒き光の柱を立ち昇らせるニルヴァーナへと向かっている一団の中に、一際実力者が集っているのは、やはりこの者たちだろう。
「なんと…!?ニルヴァーナとは人々の性格を変える魔法だと言うのか!?」
「その通り…デスヨ」
黒光の元へと駆け足で向かいながら、ペルセウスとジュラの二人はホットアイからニルヴァーナに関する仔細を聞かされた。封印が解かれた際に立ち昇る黒い光。それを浴びた者は光と闇の狭間で揺れ動いている時、強制的に本来とは反対の属性にしてしまう事を。だがそれは同時に、ホットアイ自身が今どの様な状態であったかの説明も兼ねている。
「するとお前も、光と闇の狭間にいたって事か?」
「お金を稼ぐ為とはいえ…ちょっぴりいけない事してる気持ちありました…デスヨ」
「随分調子よく聞こえるぞ、それ…」
悪事を働いていたことは確かだが、善の心に目覚めた瞬間これである。咎めるべきなのか否か迷うところだが、ホットアイは憑き物が落ちたように晴れやかな表情を浮かべて言葉を続ける。
「生き別れになった弟の為…!弟を探す為にお金が欲しかった…デスヨ」
「…俺も人の事を言えないな…。弟を救う為に、何度手を汚してきたか…」
ペルセウスはホットアイに、思わぬ共通点を見出していた。弟がいる兄であること。そしてその弟の為に、悪事を行うことも厭わなかったこと。そして今、それに罪を感じ向き合おうとしていることも加わったと言える。
「あなたにも弟が?」
「この作戦に参加してる。体は小さいが、天気を変える魔法を駆使する魔導士だ」
「おお、言われてみれば面影がある…デスヨ」
つい先程まで対立していた者たちの会話とは到底思えないが、ニルヴァーナの事を差し引いても、大事にしている弟を持つ兄としてシンパシーを感じているのだろう。互いに笑みを浮かべながら弟の事を話題に出している様子の二人を見て、ジュラの表情も柔らかな笑みが浮かんでいる。
「ジュラ、あなたを見ていると、昔の事を思い出しマスネ」
「まさか…ワシがぬしの弟殿に似ているとでも?」
彼が弟と最後に会ったのがいつの頃かは分からないが、それなりに歳を重ねているジュラを見て弟の事を思い出すような部分があったのだろうか。まさかとは思いながらもジュラが聞くと、ホットアイは一つ笑みを零して微笑みながらその真相を語った。
「昔、弟と食べた
「野菜ーッ!!?」
「(こらえろ…!こらえるんだ、俺…っ!!)」
物凄くいい笑顔でまさかの真実を駆ったホットアイに思わずジュラの叫びが辺りに響く。思い出したのは弟本人ではなく弟との思い出の一つ。だがよりよってじゃがいも…ジュラのスキンヘッドを見て連想させられたものだった。思わぬ方向からの襲撃に、ペルセウスは吹き出しそうになったのを必死にこらえて口元を思いっきり引き攣らせている。ここで笑ってはジュラの威厳が台無しになってしまうと言う一心で。
「さあ!愛の為にブレインたちを止めるの…デスヨ」
「ウ…ウム…」
少々釈然としない雰囲気となったが、とにかくニルヴァーナを止めることが最優先。黒い光の元へと、三人は速さを上げて向かっていった。
────────────────────────────────────────
「私…来なきゃよかったかな…」
沈もうとしている夕日に照らされた樹海の中で点々としている切り立った岩場の一つに、一人の少女と一匹の白ネコが座していた。少女ウェンディは膝を折って座っており、今の状況となったことに対する後悔の言葉を零している。
「まーたそういう事言うの?ウェンディは」
「だって…」
「ネガティブな感情は闇に心を奪われちゃうのよ」
不安を漏らす少女を諫めるように、白ネコのシャルルが注意するが、その表情は優れない。思い出すのは先程交戦していた者たちの場から離れた時の光景。
「私…シエルさんたち置いて逃げちゃったでしょ?」
「あのままいても、奴らの格好の餌食だったからね」
エンジェルが呼び出したジェミニは、逃げ出していたウェンディを再び捕らえようと動いていた。真意を知ることは出来なかったものの、狙われていることを察していたシャルルは、シエルからの退避指示に即座に従った。結果、あの場からウェンディ達は逃げた形となってしまった。あのままいれば自分が危なかった。だからこそ余計に後ろ向きなことを考えてしまう。
「やっぱり私…」
「あのオスガキが言ってたでしょ。あんたがいなかったら、今もエルザは毒に苦しんで…いえ、それどころか死んでたわ。…あいつに同意するのは癪だけど…」
だが確かにウェンディが参加したことで、失いかけたエルザの命を救えたことは事実だ。彼女がいたからエルザを助けられた。自分たちを笑顔にしてくれた。シャルルにとっては非常に、ホント非常に不本意であるがあのシエルの言葉に同意せざるを得ない。
シャルルの言葉を聞き、シエルに励まされた時の言葉を脳裏に浮かべる。闇に襲われそうになった自分の心を助けてくれたシエル。とても暖かな気持ちになったし、感謝している。しかし同時に思い出すのは、ニルヴァーナの封印を解いたであろう自分の恩人に対して、怒りと憎悪を孕んだ叫びを発しながら攻撃を仕掛けてきたこと。
「…でもきっと、ニルヴァーナも見つからなかったよ…」
「それはどうかしらね」
ジェラールを復活させたことがニルヴァーナの封印が解除された要因の一つなのは確かだが、
ふと、シャルルは今回の事で感じていた疑問を彼女にまだ聞いていないことに気付いた。彼女自身がウェンディと初めて会ったのは6年前。その中でジェラールと言う人物の事を、ウェンディの口から聞いたことがないことを。
「ねえ、あのジェラールって何なの?昔助けられた恩人ってところはさっき聞いたけど、それ以外は私、ほとんど知らないわよね?」
「そうだね…話してなかったね…」
それはウェンディを育てたドラゴン・天竜グランディーネが姿を消した7年前。一人路頭に迷って、姿を消してしまったグランディーネの姿を探して、寂しくて泣きじゃくってばかりだった日々。
そんな時に出会い、助けてくれたのが旅の少年であったジェラール。もっとも、ジェラールも宛てのない旅の途中で、道に迷っていたらしい。出会った縁という事もあり、ウェンディとジェラールは一月程共に旅をしていた。
一人で路頭を迷っていたウェンディにとっては寂しさを紛らわしてくれる存在でもあり、食べ物をとってきてくれたり、気を配ってくれたり、優しくて頼りになる兄のような存在だった。
しかしある日の事。ジェラールは突如“アニマ”と言う謎の単語を発し、険しい表情を浮かべることが多くなった。そして数日もしないうちに、突如別れなければいけないことになった。このまま自分に着いていくのは危険だ。近くにギルドがあるからそこに預けていく。それを聞いて素直に応じることなく、ウェンディはジェラールと共にいることを懇願した。
「でも…結局私はギルドに預けられて…。それが
「で…ジェラールはどうなったの?」
「それきり会ってないの…」
忘れた事は無かった。あの時彼がいてくれたから、今自分はギルドにいることが出来ている。せめてもう一度会って、礼を言いたい。しかしその後に、噂でジェラールにそっくりな評議員の話や、最近では大事件を引き起こして大罪人になったという事も聞いた。到底信じられない。しかし、自分が憧れたナツやシエルのジェラールへの反応を見ると、本当の事なのかと現実を突きつけられているような気がしてしまう。
でも確かに、7年前に自分を助けてくれたときは、本当に優しい少年だった。
「ジェラール…私の事、覚えてないのかなぁ…?」
────────────────────────────────────────
ウェンディが追憶のジェラールに思いを馳せている頃、同時刻ではニルヴァーナの封印を解除して起動させた現在のジェラールが、ある人物と対面を果たしていた。
激しく立ち上る光の柱。それによって巻き起こる強風がその人物の髪を大きく棚引かせる。燃えるような緋色の長い髪。身体に纏う鎧姿。驚愕に目を見開いてこちらを見てくるその女性。
「ジェラール…おまえ…どうして…ここに…」
その女性エルザが、今目の前に存在するジェラールに問いかける。楽園の塔の暴発に巻き込まれ、その命を失ったのではないかと思われた。そんな彼が今こうして生きて目の前にいる。どのような心境で彼と言葉を交わせばいいのか分からないまま、彼女は尋ねることしかできなかった。
「わからない…」
だが、それは彼もまた同じだった。そう、分からない。分からないのだ…。
「エルザ…。エル、ザ…」
自身の名を呼ばれ、その呼び方にどこか違和感を感じる彼女。そして、次に告げられた言葉は、予想以上に、そして予想の範疇を遥かに超える衝撃となって彼女に襲い掛かった。
「その言葉しか覚えていないんだ…!」
「えっ…!?」
更なる驚愕にエルザが固まるのに対し、ジェラールは両手で頭を抱え、表情を苦悶に歪め、そして何かを求めるかのように、しかし力なく縋る様にして声を絞り出す。
「教えてくれないか…オレは誰なんだ…!?
楽園の塔で見せた狂気など微塵たりとも存在しない、純粋に己に関する物事を求める青年の懇願する姿を見て、エルザは両目に涙を浮かべながら彼の名を切なげに呟くことしかできなかった…。
────────────────────────────────────────
─────…ッ!…エ…ゥ!!おね……、…きてよ…シエ……!!
誰かが呼びかけている。多分、自分の事を。誰だ、仲間の内の誰かか。起きなきゃ。そうだ、起きなければ。やらなければいけないことが、残っているのだから。
まだ体中に痛みや倦怠感が残っている。瞼も重い。だが、この目で見なければ。己に呼びかけている何者かの存在を。
「っ…う、うう…っ?」
その一心で意識を覚醒させ、重たい瞼を微かに開く。黒一色に染まっていた視界に色が映りだす。シエルの視界に映った色は、ほとんどが青だ。他はオレンジが目立つが、オレンジの光に照らされた青が大半。その色は徐々に鮮明になっていき、ある者の形を形成していく。
「シエル!良かった、全然起きないからオイラ心配しちゃったよぉー!!」
ネコだ。二足歩行で人語を話す青いネコ。この特徴で当てはまるのは一匹しかいない。ルーシィと一緒にイカダで川を下ってしまったナツの相棒、ハッピーだ。
「……今、どうなってる…?」
「それが…オイラにもよく分かんなくて…」
どれだけの時間意識を失っていただろう。その間にも
「目が覚めたらシエルとヒビキ以外に誰もいなくなってるし、ヒビキは今も気絶したままで…ナツたち、無事だよね?」
「ナツなら、多分ルーシィと一緒だと思う。イカダが川を下って、一緒に流れてったけどあの二人なら大丈夫。それと、ウェンディとシャルルは、空から避難してもらった。もう一つ言うと、六魔を一人倒したぞ、ルーシィが」
「ええっ!?ちょっと待って、色々多くて頭追い付かないよ~!」
横になっていた体を上半身だけ起こしながら告げられたシエルの説明に、ハッピーは頭を抱えながら叫び出す。確かに少々情報が多いが、ハッピーが混乱しているのは別の理由だった。
「ルーシィが川を下って六魔を倒して、空から避難して…えっと、それからどうしたって!?ルーシィいつから人間やめちゃったの!?」
「俺がいつルーシィが『人間をやめるぞ宣言』したっつった?」
ルーシィが
「ん?…あれ…?」
「どうしたの?」
「ニルヴァーナの光…色が変わってねえか?」
ふと向けた視線に映ったニルヴァーナの光。少なくともエンジェルと戦いを繰り広げている間は黒だった光の柱。だが、今目の前に映った光の柱は、白い輝きになってた。黒から白。確かな変化。初期の段階から次の段階へと移ったことによるものなのか。
ニルヴァーナの方も気になるが取り敢えず、まだ気絶した状態のままであるヒビキに、這って近づいて
「ねえシエル、何か疲れてるように見えるけど、魔力は大丈夫?」
「気絶する前にも回復用に使っておいたから、多少は大丈夫だ。それにこれから、移動しながらまた回復すればいいし」
絶対に無理をしないようにしてほしい。せめてそう声をかけるだけでもしておかないと。そう決めてハッピーが意を決してシエルの名を呼ぼうとした、その時だった。
突如樹海全体に響くかのような轟音が起こり、光の柱が勢いよく増幅した。
「「なっ!なんだぁ!!?」」
シエルとハッピーの声が重なって響き、完全に意識がその光に移る。どう考えても異常な事態。これがニルヴァーナが復活した証左だというのか。
────────────────────────────────────────
そして樹海のどこから見ても明らかに感知できるこの異常事態。勿論、ペルセウスたちもまたそれを確認していた。
「ホットアイ殿、これは!?」
「まさかとは思うが…!」
「ええ、始まった、デスヨ!最終段階…ニルヴァーナの復活が…!!」
間に合わなかった、という事だろうか。とうとう復活を遂げてしまうニルヴァーナ。もはや止めることは不可能なのか。離れていても感じ取れる。更に大きくなった光の柱から、異質な魔力を。
そして、何かを感じとったのか、ホットアイは右手の指を二本、目元に近づけ、全てを見通す
「何か…巨大なものが出てくる…デスヨ…!!」
「巨大なもの…!?っ!!?」
その巨大なものは、突如場に立つ3人を地面諸共持ち上げ、元の大地よりも遥か上空へと至らしめた。それはまるで石のパイプ。しかし問題はその規模だ。3人の男…それも二人は巨漢で、それをあっさりと持ち上げられるほどに太く、長さに至っては樹海のあちこちを盛り上げ、そこら中の地面を崩壊させていくほど。しかも、一部分だけではない。光の柱を中心にするように、四方八方から同じように巨大な石のパイプが現れていく。
いや、これは最早パイプではない。明らかになった全貌をその目にして、自分たちを持ちあげたものの正体を知ることが出来た。
超巨大な建造物。円柱型の土台から、左右対称に4本ずつ。計8本もの巨大な脚が生えている。そして、今ペルセウスたちが乗っている場所の正体だ。
「な、何と…!」
「これが…こんなバカデケェのが、ニルヴァーナだって言うのか…!?」
古代人が作り出し、封印した超強力な破壊魔法。それがまさか超巨大な脚のある建造物であったとは。一体誰が予想できただろう。脚から落ちないように、石の隙間に手をかけながらその全貌を目にし、言葉を失っている。
「止められるのか、これ程の規模を持つ魔法を…」
「可能か不可能か。それは多分、あいつらの中には存在していない選択肢だろうな…」
突如呟いたペルセウスの言葉に、ジュラもホットアイも反応し、彼が向けている視線に、自分たちも向けてみる。自分たちのいる場所とは違う、別の足を勢いよく駆け上がっていく一団が見える。
「うおおおおおおおおおおおっ!!!」
雄叫びを上げながら先導する桜髪の青年の後ろを、黒髪の半裸の青年と、金髪の少女が追随する。ペルセウスには確信があった。自分と同じギルドに名を連ねる彼等なら、どんな困難も乗り越え、どんな窮地も脱する希望となると。
「俺達も行こう。どうやってこいつを止めるのか、からくりはこの中に必ずあるはず」
上へ上へと駆け上がる三人の様子を見て、ペルセウスは不敵な笑みを浮かべながら二人へと声をかける。それを聞いた二人も口元に笑みを浮かべて首肯し、共に脚を伝って上へと登り始める。時折登りづらい箇所がある場所は、互いに手を伸ばして補い合う。
「(仲間同士で助け合う…これこそが“愛”!…デスヨ)」
決して最後まで諦めない。希望は常に繋がっている。ニルヴァーナを食い止める為、希望のギルドは上へと駆け上がっていく。
────────────────────────────────────────
8本の巨大な石脚で支えられた巨大な建造物に、宙を駆けながら徐々に近づいていく。仲間たちもきっとあそこにいる。そう信じて迷わずに、一対二枚の白い翼を背中から顕現して一人の少年を運ぶ青ネコは、真っすぐにその場所へと向かっていた。
「こうして近づくとホントでっかいね…!」
「ただ善悪を反転させる魔法だとばかり思ってたんだが…何だってこんなものを…」
善と悪を入れ替える。それがニルヴァーナと言う魔法の特徴と考えていただけに、まるで移動するような脚の付いた巨大建造物だとは予想できなかった。そもそも予想できるわけもない。
そして外見から推測される予想通り、8本もの巨大な脚を動かして、巨大な建造物が移動を始めた。
「動いた!?」
「そりゃ脚があるからな」
小ボケとツッコミもそこそこに、二人はニルヴァーナへの距離を更に縮めていく。すると、巨大な脚の一本に、見覚えのある一団が目に映る。そしてその内の一人が今にも足から落下しそうになっていた。
「あ、ナツ!!」
やはり無事だった。よく見ればルーシィとグレイもいる。だが不調気味に顔色を悪くしてナツが今にも限界を迎えようとしている様子だ。脚を動かして移動するこの建造物を、乗り物だと認識したのだろう。
「ハッピーはナツを!俺の事は心配しないで!」
「アイサー!!」
シエルのその指示を聞いてハッピーは掴んでいたシエルの体を離し、同じタイミングで脚からの落下を開始したナツに全速力で向かっていく。そしてシエルは
そして情けない悲鳴を上げながら落下していくナツを颯爽と掴み、落下を防ぐとともにナツを空へと飛び立たせる。
「ハッピー!」
「あい!」
「ナイスキャッチ!」
「はぁ…ったく心臓に悪すぎるぜ…」
「ナツ!無事みたいだな!」
火竜を掴み飛翔する青ネコ、雲を操り宙を駆ける悪戯妖精。共に並んで飛行し、はぐれてしまっていた妖精たちが次々に合流を果たしていく。
「シエル、あんた動いて大丈夫なの!?」
雲に乗っている状態のシエルを見たルーシィがそう声をかける。恐らく少ない魔力の事を心配しての事だろう。そんな彼女を安心させるため、不敵に笑みをかけながらシエルは答えた。
「大丈夫!
「…ホントに大丈夫かしら…?」
「本人がああ言ってんだ。大丈夫なんだろ」
未だ怪訝の表情を浮かべるルーシィに、グレイがそう答える。そして、シエルの近くにナツたちが来たことを確認して、更に声を張って伝えた。
「お前らはそのまま上に行け!オレたちはそこにある穴から中に入ってみる!」
「おう!」
「よし来た!」
「アイサー!」
脚の付け根から人間が通り抜けられる四角い穴を指さして告げたグレイに答え、3人は土台沿いに一気に急上昇。そこから土台の上へと辿り着き、見えた景色に一瞬言葉を失った。
眼下に広がっていたのは、まるで街。それも何百年単位で劣化しており、所々が荒れて崩れている。
「『古代都市』…って言うべき場所だな、如何にも」
「い、意味分かんね…」
詳しく調べれば細かい年数や材質、都市を創った意味も判明できそうだ。隣で飛んでいるナツたちは首を傾げてばかりだが。
「ん…!?このニオイは…!!」
────────────────────────────────────────
古代都市と言える街の中心に、ひと際高い建造物が存在し、その最上階は祭壇のような造りとなっている。その空間の名は『王の間』。かつて古代人が住んでいたこの都市を、自らの意思で動かすことが出来る空間である。
そして既に、髑髏の杖を持つ白髪の男、ブレインによって最初の標的…光崩しの始まりの地である場所へと行進を開始している。杖を掲げてニルヴァーナに組み込まれている魔法のシステムを起動し、祭壇を包むようにして無数の機械的な紋様が取り囲み、祭壇の奥に辿り着くときには一番大きな魔法陣が出現する。
「進め!古代都市よ!!我が闇を光へと変えて!!」
高らかに告げるブレイン。その傍らで笑みを浮かべながら佇むコブラ。この先に待つ未来を見据え、期待に胸を躍らせるこの二人に、予想外の出来事が起こる。
前方上空から一つの光が灯ったと思いきや、一人の人間が炎を纏いながらこちらへと向かってくる。
「オレが止めてやるァアアアッ!!」
「う…うぬは…!」
ナツの炎を纏った拳が祭壇に展開された大きい魔法陣を破壊する。そしてすかさずブレイン目掛けて咆哮を放ち、祭壇を破壊しながら襲い掛かる。慌てて魔力の壁を展開するがそれでも押し切られそうになっている。
「コブラ!ここで暴れさせるな!!」
「おう!キュベリオス!!」
ブレインが指示を飛ばすと、コブラは相棒としている大蛇のキュベリオスに攻撃の指示を出し、咆哮を続けているナツを頭突きで叩き飛ばす。
「んなもの…全部オレが燃やして…!!」
そう言いながらもう一度咆哮を放とうとするナツだったが、それよりも先にコブラが動く。キュベリオスの尻尾に乗り、勢いよくナツの方へと飛ばしてもらうと、勢いそのままでナツに掌底を食らわせる。想像以上の威力にナツたちの身体が縦方向に何回か回転するも、ハッピーが
「サンキュー、ハッピー!この…!!」
すぐさま反撃に移ろうとするナツだったが、それは思わぬものを見たことによって止められた。コブラを乗せた状態で胴体から一対二枚の翼を広げたキュベリオスが、ハッピー同様に空中を飛んでいる姿である。
「ぬあ!!?」
「ヘビが飛んでるよ!!」
自分の事を棚に上げて大蛇が飛行している事実にただただ驚愕しているナツたち。思わぬところで空中での戦いに発展することになった。
「てめえ…オレの聴こえた話じゃ乗り物に弱いと言われてなかったか?」
「ハッピーは乗り物じゃねえ!!」
「そうだそうだー!!」
「成程…だから常に飛んでると言う訳か…」
行進を続けるニルヴァーナに立つことが出来ないから、飛行魔法を扱える
その様子を見ながらブレインは、これから起きるであろう戦いに参加せず傍観の姿勢を決め込んでいる。相手はたかが一人。コブラを相手にして勝てるような相手にも見えない。その為、自分がわざわざ出る理由はない。
そう決めつけていた。
「
「っ!?」
自身の後方からその声が響くまでは。
声に反応してすぐさま振り返ったが、既に遅かった。超速を誇る光の矢がブレインの身体にいくつも微細な穴を空け、傷を作る。
「ぐっ…ぅおおおおっ…!?」
思わぬ奇襲を受け、苦悶の声をあげる。痛みを堪えて前方を睨みつければ、そこにいたのはコブラと戦っている
「ブレイン!?くそっ!あの
接近していたのであれば自分の耳が拾うはず。だがコブラは目の前にいたナツの方に意識の大半を持っていかれ、シエルが王の間へと気付かれないうちに入り込んでいた音を拾うことが出来なかった。
「あれ、何でシエルがあそこに!?」
「あいつ、途中でいなくなったと思ったら…!」
ちなみにナツたちも突如ブレインへの攻撃を成功したシエルに驚きを隠せない。もしも作戦として伝えたら確実にコブラにバレる為、シエルは敢えて何も言わずにナツと別行動をとった。そしてナツの事だから絶対に真っすぐ攻め込み、コブラと激突することまで予測して。
「ようやく攻撃を当てたぞ。今度は相手してくれるよな?」
「小賢しい小童が…!!」
不敵な笑みを浮かべる
おまけ風次回予告
ナツ「やっぱ空飛ぶのって最高だよな~!ハッピーと一緒に飛んでると…こう、風になれるっつーの?なんかいいよな!」
シエル「その気持ちは分かるなぁ。
ナツ「いや…
シエル「何だよナツー。初披露した時はあんなに乗せてくれーって頼んでたのに」
次回『空と駆ける火竜と青猫』
ナツ「けどその後乗ったら酔っちまったし…あ、ダメだ思い出しただけで酔いが…!」
シエル「しょうがないなぁ。じゃあ
ナツ「おお!これなら酔わねー…わけもなか…った…!」