FAIRY TAIL ~天に愛されし魔導士~   作:屋田光一

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今回の話…書き終わった時間…0時9分…。

数分遅れでした…。終わり間際かなり走り書き状態だったのに…!

そして現在考案しているプロットだと、少なくとも今回含めてあと7話分あるんですよね…。絶対夏まで終わる気がしねぇー!!


それと、猛暑日と台風のダブルパンチで気候がバグっている今日この頃、どうか皆さんも体調などにはお気を付けください。バグの修正はうちの主人公に任せます。

シエル「そっちの世界に行けたらな」


第59話 ゼロ

突如耳に響いてきたその轟音。先程まで自分がいた王の間の真下から聞こえた来たその音に、思わずシエルは振り返った。何か手掛かりを知っているらしいウェンディの後を追い、彼女と合流しようと移動をしている矢先のことだった。

 

「今の音は…それに、王の間の下部分から煙も出てる…!」

 

記憶が正しければ、あそこにはまだ兄を始めとして仲間たちがまだ点在していた場所のはず。みんなは大丈夫だろうか。多少の不安は感じるが、ウェンディの方も気がかりだ。今自分ができるのは彼女のもとへと急ぐこと。

 

「兄さん…みんな…きっと無事だよな…?」

 

自分に言い聞かせるようにそう呟きながら、少年は都市を、建物の屋根を跳び移りながら移動を再開した。

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

王の間の地下空間。ホットアイからは六魔最後の一人であるミッドナイトがいる場所として教えられたその場所。しかしそこに仕掛けられていたのは大規模な爆発を引き起こす爆弾。明確な殺意を感じさせる罠が仕掛けられていた。

 

「うう…痛え…!」

 

しかし、爆発に巻き込まれたはずのナツたちは、薄暗い空間となったその部屋の中で痛みに悶えて横になっていた。意識を失っている者さえ、この場には確認できない。強いて言えば、ジュラのみがどこにも見当たらないというべきか。

 

「お前たち、大丈夫か…?」

 

「お、おお…生きてるみてぇだ…」

 

「あい」

 

声をかけたペルセウスに各々が返事をし、生存を確認する。それと同時に困惑していた。建物から衝撃も溢れ出すほどの大規模な爆発を受けて、命があることも奇跡だが、ほとんどそれによる外傷も感じられない。

 

「痛!」

 

すると起き上がろうと頭を上げたルーシィが、妙に低くなった天井に頭をぶつけて小さく悲鳴を上げる。生き埋めにされたのか?だが崩れた瓦礫に埋もれたというより、岩がドーム状の形となって自分たちを包み込んでいる、と言った方が正しい。

 

「これはまさか、ジュラさんの…!?」

 

そして、この岩のドームを作れる人物に、一人だけ心当たりがある。先程まで共にいた聖十(せいてん)の魔導士。しかし、ドームの中にはその姿が見当たらない。ならば外にいるのか。確認と脱出も兼ねて、ナツがドームの天井に鉄拳で罅を入れ、そこから上半身で突き破る。

 

そして、ナツが突き破った穴から出てきた一同が目にした光景に、絶句した。

 

ドームの中で危機を回避できた自分たちと違い、前方を固めた岩で遮るのみで済ませ、更には自分たちの方に爆発の余波が渡らないように両腕を広げてこちらを庇うような態勢をとった状態のジュラ。

 

あの爆発のほとんど受けたことにより、全身に傷や火傷がついて、激しく息を切らしている。一番最初に罠であることに気付き、即座に妖精の尻尾(フェアリーテイル)の者たちを守るために庇ったことは見てとれる。

 

「おっちゃ~~ん!!」

 

立つのもやっとであろう深刻なダメージを受けたジュラ。白目をむいて最早意識も保てそうにない。だが、後方からナツの叫びを聞いたジュラは、それに対して安堵した。

 

「元気がいいな…若い者は…」

 

自分よりも一回りほど年若い者たち。まだ、先の未来が存在している彼らは、このような場所で、このような散り方をするべきではない。未来ある若者を守り切ることが出来たことを認識したジュラは、そのまま後ろに倒れていく。

 

「無事で…よかっ…た…!」

 

「おっさん!」

「しっかりしてーー!!」

「ジュラーー!!」

 

倒れ行く年長者の姿を目にしながら彼に呼びかける妖精たち。それを見てペルセウスは後悔していた。仕掛けられた罠にジュラとほぼ同じタイミングで気づくことが出来たにも関わらず、彼と共に被害を最小限に抑えるための行動が出来なかった。

 

無敵の防御力を誇る盾・イージスの力を使えば無傷で全員を守れたかもしれない。だが、より早く状況を判断して動いたジュラが、彼も共に守ったことが逆に己の身を亡ぼす結果になってしまった。

 

「ジュラさん…すまないっ…!」

 

「くそーーー!!!」

 

悔し気に声を漏らすペルセウスと、抑えもせずに叫ぶナツ。連合軍で最大級の実力を誇る聖十大(せいてんだい)()(どう)のジュラは、思わぬ形で戦闘不能となってしまった。

 

「どうしよう…ひどいケガ…!」

 

「死ぬんじゃねえぞ、おっさん!!」

 

「シエルを別行動させたのは失敗だったか…」

 

姿勢を楽にさせて横にしたものの、やはり外傷はとてつもなく大きいように見える。シエルがいれば日光浴(サンライズ)慈雨(ヒールレイン)でこの傷も治せたが、彼は今ウェンディと同じ方向へと進行を続けている。思わぬところで痛手となって響いてきている。

 

「うう…さっきの念話…罠だったんだ…」

 

「あのデカブツが騙してたってことか?」

 

「けど、ニルヴァーナで性格が変わって味方になったのに、また裏切ることってあり得るの?」

 

王の間の真下へと誘導するように念話で知らせてきたのはホットアイ(リチャード)。愛を主張するようになり、ミッドナイトとの交戦も買って出た彼が、今更六魔側に寝返る可能性も低いが、なぜこのようなことになったのか。

 

「違う…あの念話はリチャードじゃねえ」

 

「どーゆーこった!?」

 

「違和感はあったんだ。どこかリチャードのように思えない部分が、な…」

 

ペルセウスが結論付けた真相は、あの念話がリチャード本人からのものではないということ。まず最初に、念話を繋げた際に彼はコードネームの方であるホットアイと名乗った。ミッドナイトと戦う際にコードネームは必要ないと、自分から告げたのにも関わらず。そして話し方にも、今までのリチャードが使っていた言葉遣いに差異を感じ、何よりも王の間のブレインを止めればニルヴァーナは止まると教えたリチャードから、別の方法が明かされたこと。

 

止める方法が見つかったことへの歓喜で見過ごしかけたが、思い返せば違和感が多すぎる。そして結果はジュラの損失だ。十中八九、リチャードの名を騙った何者かによる策謀だろう。

 

「あの居眠り野郎の仕業か!?」

 

「かもしれないし…別人物の声に変えての念話なんて高度な手法なら、ブレインの方が出来そうだ。存外しぶといぜ、あいつも…」

 

確証は得られないが、ほとんどブレインが元凶と考えても差し支えはないだろう。それに気付くことが出来れば止められたかもしれないと考えると、また後悔が募りだす。身じろぎ一つすらせずに眠り続けるジュラを、囲むようにしてその容態を見ていたペルセウスたちの耳に、突如その声は聞こえてきた。

 

「やれやれ…ブレインめ…最後の力を振り絞って、たった一人しか仕留められんとはな…」

 

頭の中にまで響いてくるような、人のものとは思えないその低い声。その声を聴いた瞬間、全員が警戒を強め、周囲を見渡し、声の出所を探る。

 

「あそこ!」

 

最初に気付いたのはハッピー。彼が指さした方向に全員が目を向けると、目の部分と思われる二つの光と、その間の下にもう一つ同じ光。その光によって照らされた姿に、全員が言葉を失った。

 

 

 

 

 

 

『え…?』

 

それは、人間の姿ではなかったから。というか、先端が髑髏の杖だった。

 

「情けない…六魔の恥さらしめ…」

 

同じような声が、一人でに宙を浮いている髑髏の杖から発せられる。声の主は間違いなくこの杖であることが分かる。ポカン…と言う擬音が聞こえそうな沈黙が妖精たちの間で流れる中、それも気にしない杖は浮遊しながらこちらに近づいてくる。

 

「まあ、ミッドナイトがいる限り我等に敗北はないが…貴様らくらいは私が片付けておこうか」

 

告げながら近づいてきたその杖に警戒しながらも、一同の心の声はある一言に統一されていた。

 

「杖が喋ったーーーーっ!!?」

 

「アンタだって喋ってるでしょ…ネコだけど」

 

その代表代弁をハッピーが絶叫と共に発する。しかし、杖同様に本来人の言葉をしゃべらないはずのネコがそれを代弁するのもどうかと、ルーシィからすかさず突っ込みが入った。

 

「ブレインが持ってた杖、だよな?まさか生きてるとは…」

 

「どーなってんだよ…?」

 

口に魔水晶(ラクリマ)がはめ込まれた杖を用いて、ブレインは魔法を使用していたのは記憶に新しいが、その杖がひとりでに動いて、言葉を発する生きた杖であることは、さすがに誰も予想することが出来なかった。どういう原理か、何者か、どのような目的でここに来たのか、何一つわかりはしないが、不気味に感じる声で高笑いをしながらその杖はこちらを見下している。

 

「オラオラオラオラオラオラオラ!!」

「ぐぽぽぽぽぽぽぽぽ!!」

 

すると、高笑いを続けていた髑髏の杖の持ち手部分をナツが掴むと、そのまま何度も地面に叩きつけ始めた。先程の不気味な声がやけに慌てた様子に聞こえるのを見ると、一応有効打のようだが、ルーシィからは何者かも分からないのに迂闊な行動をしたナツを咎めようとしている。

 

「このデケェ街止めろ!棒切れ!!」

 

「ぼ、棒切れとは失敬な!“棒”はまだ許すが、“切れ”とは何だ“切れ”とは!!」

 

ぞんざいな扱いの上に棒切れ呼ばわりされたことが心底不服だったらしい。気にするようなところも若干違うが、憤慨しながらその杖はナツに詰め寄ってきた。

 

「我が名は『クロドア』…。七人目の六魔将軍(オラシオンセイス)。貴様等を片付けるために眠りから覚め…」

「止~め~ろ~よ~!!」

「さめっさ、さめ…ちょっ、まだ話のと…ちゅ、ちょっと、聞いて!?」

 

気を取り直して自らのことを語ろうとする杖・『クロドア』は、ナツに再び地面に何度も叩きつけられることによって話を遮られる。随分人間味が溢れている言動である。

 

「あれ?六魔将軍(オラシオンセイス)って六人よね…?」

 

()魔将軍、って銘うってるし、確かに変だな…」

 

「七人だったら()魔将軍だもんね…」

 

「てか…杖が喋ってることは、もう置いといていいのか?」

 

一同が各々そのような感想を告げているように、色々と突っ込みどころが難しい存在である。

 

「ぬぇいっ!…凶暴な小僧め…」

 

ひとりでに動くことが出来るゆえか、ナツの手から勢いよく飛び出す要領で、ようやくクロドアは解放される。そして、爆発によって外に繋がる壁が崩壊したことによってできた穴から、外界の様子を見ているクロドアから更に言葉が発せられる。

 

「そろそろ奴等のギルドが見えてくる。早めにゴミを始末しとかんとな…」

 

「それって、化猫の宿(ケット・シェルター)!?」

 

ギルドという単語を聞いてルーシィが尋ねた。ブレインと交戦していたシエルやウェンディたちから聞いていた通りなら、狙われているギルドは化猫の宿(ケット・シェルター)のはず。

 

「その通り…まずはそこを潰さんことには始まらん…」

 

「どういう事だ?一体何の目的があって化猫の宿(ケット・シェルター)を狙う?」

 

「その昔…戦争を止める為にニルヴァーナを作った一族がいた。ニルビット族と呼ばれている奴等だ」

 

ニルビット族。その名はリチャードからも聞いたニルヴァーナを作り出した一族の名だ。かつては平和の象徴として作り出されたニルヴァーナ。それを作り、そして住み着いた一族。

 

しかし、ニルヴァーナは一族にとっても想像以上に危険な魔法であった。故に自らの手によってニルヴァーナを封印し、悪用されるのを恐れ、何十年、何百年とその封印を見守り続けた。

 

そのニルビット族の末裔のみで形成されたギルドこそが、化猫の宿(ケット・シェルター)である。

 

「奴等は再びニルヴァーナを封じる力を持っている。だから滅ぼさねばならん」

 

そして六魔にとってこれは見せしめでもある。中立を好んだニルビット族に戦争をさせる。ニルヴァーナの力で心を闇に染め、理由もない殺し合いをさせる。それが化猫の宿(ケット・シェルター)を最初の標的として選んだ理由…。

 

「止まりはせん…もう近いぞ…!化猫の宿(ケット・シェルター)!」

 

「ふざけんな!ゼッテー止めてやる!オォラァア!!」

 

勝手な言い分に業を煮やしたのか、怒りのままにナツが両手に炎を纏ってクロドアへと殴り掛かる。しかし、杖の体を活かして器用にその攻撃をよけ、逆に避けた勢いのまま一回転して、自分の先端部分を叩きつけて吹き飛ばす。

 

「ナツ!くそ…!」

 

先制攻撃をカウンターによって返され、転がっていったナツを一瞥し、グレイが両手を合わせて冷気をためていく。だがその隙をついてグレイの腹に頭突きを一発。後方へと飛ばされていくグレイに満足げな反応を示す。

 

「捕まえた!」

 

「うお~!?」

 

しかしその隙をつかれ、ナツに持ち手の部分を両手で捕まれる。やけに細身のおかげで躱されたり隙を突かれたりしているが、捕らえてしまえばこっちのもの。今のうちに袋叩きにしてしまおうとグレイが復帰して近づいていくが、その瞬間自在に体(棒の部分)を曲げられるクロドアが、グレイの顔面に頭突き。さらに次にナツに頭突き。押さえているのに滅茶苦茶暴れまくるクロドアにナツもグレイも振り回されている。

 

「ちゃんと押さえてろボケェ!!」

 

「ちゃんと避けやがれコラァ!!」

 

「はい、ファイトォ!!」

 

そして発展したのは何故か味方同士での喧嘩。審判気取りのクロドアのゴングでタイミングよくおっぱじまり、それを思い切りクロドアが煽るという構図が見事に出来上がる。

 

「あいつら、敵味方忘れてやがる…」

 

「何て醜い争い…」

 

傍目からその様子を窺っていたペルセウスとルーシィが、冷ややかで呆れたような目線を向けているにも関わらず、一向に喧嘩が収まる気配はない。

 

「ん?あいつどこ行った?」

 

「え?」

 

ふと視線を戻すと、ナツとグレイの喧嘩を煽っていたはずのクロドアの姿が消えていた。辺りを見渡すが姿が見当たらない。すると、ルーシィは自らの身体の異変を感じとった。主に後方の部分。確かめるために振り向いてみると…。

 

「ほう」

 

「きゃあああああああっ!!ヘンターイ!!」

 

いつの間にかルーシィのスカートを捲ってその中を確かめていた。勿論これに怒ったルーシィは殴り掛かるも、嘲笑混じりのクロドアにあっさりと躱されてしまう。

 

「小娘の下着など見ても萎えるわ」

 

「ひどっ!!」

 

しかも覗いた癖に評価は辛口。最低だ、いろんな意味で最低だこの杖…。

 

「いい加減大人しくしろ!」

 

好き勝手に暴れまわるクロドアに今度はペルセウスが魔力弾を撃ち放つ。しかし、先程同様身体をしならせてそれを次々と躱していき、ペルセウスにも頭突きを食らわせようと急接近する。

 

「ふははっ!甘い甘いわーーっ!!」

 

 

 

「グレイプニル」

 

「ぎょえーっ!!?」

 

だが一瞬。己に攻撃するために近づいてきた瞬間、橙の炎を纏った鎖がペルセウスの体を守るように現れ、クロドアを弾き飛ばす。そして、魔力操作で器用にクロドアの体に巻き付いていき、その熱量に混乱しながら慌てふためく髑髏の顔を掴んだ。

 

「ようやく捕まえた。随分暴れてくれたな」

 

「おっしゃ!ナイス、ペル!!」

 

「そのまま離すんじゃねぇぞ!!」

 

「絶対許さないからね、このエロ杖…!」

 

何とか優勢に進んでいたのに一気にピンチに陥るクロドア。肌も水分も無いはずの髑髏の顔から汗が噴き出してくる。一仕事終えた様子のペルセウスを筆頭に、悪い顔を浮かべて近づくナツとグレイ、羞恥で顔を赤くしながらも怒りを表すルーシィに距離を詰められてその焦りはさらに強くなる。

 

「お、おのれ…!伊達にブレインを圧倒するだけのことはあるな、堕天使…!」

 

「その名で呼ぶな。その頭蓋潰すぞ?おお?」

 

「あががががギブギブギブゥ…!!」

「コエーよ!?」

「何か、ちょっと前にも見たぞこの光景…?」

 

この作戦に参加してからというものの、聞きたくもない方の呼び名で示唆されることが多いからか、ペルセウスの機嫌は最悪の一言である。現に今もクロドアにそう呼ばれたために捕えている手に込めている力を強めて、骨だけになってる頭蓋を握り潰そうとする勢いだ。グレイはそれを見て数時間前の弟の方をぼんやり思い出したような気がした。

 

「てか…堕天使って、何…?」

 

「る、ルーシィ…!それを聞いちゃうんだ…すごいなぁ…!オイラには絶対に出来ないよ…命を懸けてでも聞こうとするだなんて滅多にできることじゃないよ…!」

 

「え、何!?滅茶苦茶怖いんだけど!聞きたいけどやっぱ聞きたくない!!」

 

素朴に思った疑問を口に出しただけなのにハッピーはまるで地獄の門を開けるか否かのような焦燥した雰囲気でルーシィに告げる。そのリアクションを見たことで、ルーシィは一気に恐怖心の方が勝って聞くに聞けない状態となった。

 

「む!?」

 

すると、ペルセウスに鷲摑みにされていたことで苦悶の表情(分かり辛いが)を浮かべていたクロドアが、痛みも忘れてある事実に気付き、その衝撃を受けていた。

 

「な…!?ろ、六魔が……!六魔が全滅!!?」

 

口に咥えた魔水晶(ラクリマ)に伝わったのは、信じがたい光景。レーサー、エンジェル、ホットアイ(リチャード)、コブラ、ミッドナイト、そしてブレイン。六人の闇の魔導士たちが、意識を失って倒れ伏す姿。

 

そう、六魔将軍(オラシオンセイス)が全員倒されたことが明かされたのだ。それを実感したクロドアの動揺は凄まじく、咥えていた魔水晶(ラクリマ)が零れ落ち、落下の勢いで粉砕しても気に留めることなく慌てふためいているほどに。

 

「い、いかん…いかんぞ…!あの方が来る…!!」

 

「あの方…!?」

 

そして呟いたその言葉に、ペルセウスは心当たりがあった。それは、自分がブレインを下した直後、彼自身が発していた言葉。

 

『ミッドナイトよ…後は頼む…!六魔は決して倒れてはならぬ…!!六つの祈りが消える時…あの方が…!!』

 

六つの祈りが消える時…つまりは六魔が全滅した時に現れると思われる『あの方』の存在。ブレインより上位の存在がいるのだろうかと予測はしていた。だが、問い詰める前にブレインが意識を失ったため、結局知ることが出来なかった。

 

「おい、あの方って…一体誰のことを言っている?」

 

「…ブレイン…奴にはもう一つの人格がある…!」

 

ペルセウスの質問に意外にも律義に答えだしたクロドアによると、司令塔であるブレインには普段とは別の人格が存在している。知識を好み“(ブレイン)”のコードネームを持つ表の顔と、破壊を好み“(ゼロ)”のコードネームを持つ裏の顔。あまりにも凶悪で強大な魔力のため、ブレイン自身がその存在を六つの鍵で封印した。

 

ブレインの顔に刻まれていた黒い線のような模様。それこそが、生体リンク魔法によってかけられていた鍵。ブレイン自身が倒れた時も、その顔の模様が一つ減っていたのがその証拠。六つの“魔”が崩れた時…“(ゼロ)”の人格が再び蘇る。

 

「『ゼロ』…か…」

 

「面白そーじゃねぇか!」

 

不吉なコードネーム。それを呟くペルセウスに対して、最後の最後に特大の敵が待ち受けていることに奮起するナツ。

 

 

 

そんな彼らのいる空間の壁が一部、突如前触れもなく崩壊した。反射的に崩壊した壁の方へと目を向ける一同。そして崩壊したことによって巻き起こった土煙にうっすらと映し出される影。

 

そして感じるのは、明らかに今までの六魔たちとは一線を画す、その魔力。

 

「(こっ…!こいつは…!!)」

 

「おっ…おかえりなさい!マスター・『ゼロ』!!」

 

ガタガタと震えながらも器用に頭を垂れて、マスター・ゼロという人物へと挨拶を叫ぶ。対してその男は悠然と歩を進めながらこちらに近づいてきて、頭を垂れている髑髏の杖に目を向けている。

 

「随分面白ェ事になってるな、クロドア。あのミッドナイトまでやられたのか?」

 

「はっ!も…申し訳ありませんっ!!」

 

厚顔無恥な態度をしていたクロドアがこれほどまで腰を低くしているその人物。表の顔を見せていた時は丁寧に落ち着いた様子で語っていたその男は、声こそ同じであれど、喋り方や佇まいは比にならないほど粗暴の印象を受ける。

 

「それにしても…久しいなァ、この感じ…。この肉体…この声…この魔力…。全てが懐かしい…」

 

もう長いこと活動していなかったらしい。噛みしめる様に己の肉体から魔力まで隅々実感し、拳を握り力を入れれば、腕の周りに雷の様に魔力が溢れ出していく。

 

「あとはオレがやる。下がってろ、クロドア」

 

「ははーっ!!」

 

簡単にそう告げながら、ブレインの身体をしたその男は、身に纏っていた白いコートを脱ぎ捨てる。そして魔力を開放すると、換装魔法の一種で何も纏っていたなかった上半身に、迷彩柄の軍服を模した衣装を纏う。

 

行動したのはそれだけ。ただそれだけなのに、妖精たちはその男の行動を十二分に警戒している。溢れ出ている魔力を感じるだけでわかる。この男は、今まで戦ったどの敵も、はるかに凌駕していると。

 

「小僧ども…随分とうちのギルドを食い散らかしてくれたなァ。マスターとして、オレがケジメをとらしてもらうぜ」

 

六魔将軍(オラシオンセイス)のギルドマスター・ゼロ。

こうして相対すると、ブレインと本当に同一人物なのか疑うほどに桁違いだ。

 

まず外見からして相違点がある。生体リンク魔法が解除されたために、顔にあった黒い線の模様は一切消えており、褐色だった肌も色白に、目に至っては充血したかのように真っ赤に染まっている。髪の色や長さは変わっていないようだが、全体的にうねりが加わっており、印象を大きく変えている。

 

そしてより違いを感じるのは、魔力をその場で解放しただけで、辺り一帯に地鳴りを起こす。量だけでもとてつもないことが分かるが、何よりその質にも着目すべきものがある。

 

「燃えてきたろ…ナツ…!?」

 

「こんな気持ち悪ィ魔力…初めてだ…!」

 

思わず体が震えてしまう。それほどに異質で膨大。マスターを名乗るほどに大きな実力を持っているのは確かであることが窺える。

 

「(まずい…このままじゃ…!)」

 

ジュラが倒れた今一番の実力者である青年は、ある一つの結論を瞬時に導き出した。そのことには誰も気づかず、ゼロは対峙している一同を見渡してから行動を判断した。

 

「そうだな…まずは、そこで寝っ転がってるボウズから消してやる」

 

何の躊躇いもなく、動くことすらできないジュラを最初の標的に決定した。その言動に一同の間に驚愕が走る。

 

「動けねえ相手に攻撃すんのかよてめぇは!!」

 

「動けるかどうかは大した問題じゃねェ。形あるものを壊すのが面白ェんだろうが!!」

 

そう告げながら右手に魔力を集めると、ジュラの方へと黒緑の波動を放つ。ブレインが出していたものと比ではないその魔法を、グレイが(シールド)で受け止めようとする。

 

 

 

 

 

 

その合間を、鏡の光沢を持った盾を構えたペルセウスが入り込み、ジュラとグレイの前方でその魔法を受け止める。

 

「ペル!?」

 

盾自体は破れない。神話上でも一度として壊れたことのない女神の盾・イージスの防御力は、彼の扱う神器の中でもダントツだ。しかし、問題は盾自体の破損はなくても、それを扱うペルセウス自身がその余波に耐えれるかどうかということ。大技でも何でもないはずのその魔法に抑え込まれ、盾を構えているペルセウスがどんどん後方へと押し込まれる。

 

攻撃を受け切った頃には、何とジュラが横になっているほんの数センチの位置まで、二人そろって押し出されていた。

 

「ほう?耐えきったか。これ程とはな、イージスの防御力…壊しがいがあるじゃねぇか…!」

 

今の少しだけの攻防だけでも、突きつけられた現実をルーシィはこの時感じ取っていた。あのペルセウスでさえ、このゼロに勝てるか否かは不明ということだ。ブレイン相手に圧倒出来ていた彼が攻撃一発を受けただけで、多くの魔力を消費している。今この場で戦える味方で一番強い彼がこれ程の苦戦を強いられるのだ。自分はおろか…ナツとグレイでも太刀打ちできるとは到底思えない…!

 

「お前ら…よく聞け…!」

 

すると、イージスを左手に持ち、もう片方の右手に海王の槍・トライデントを換装で装備したペルセウスがナツたちに向けて言葉を紡ぐ。

 

「今すぐジュラさんを連れて、ここから離れるんだ…!」

 

「でも、ゼロはどうするのさ!?」

 

全員がその言葉に驚愕しながら、代表としてハッピーが彼に向けてそう尋ねる。すると、覚悟を決めたような眼差しで、ペルセウスはゼロを睨みながら告げた。

 

「俺がゼロを食い止める…!その合間に、エルザに知らせるか、ジュラさんを回復して戦線に復帰させてくれ…!」

 

一人でゼロに立ち向かい、勝つための時間を稼ぐ。それが彼が思いついた最善の方法。しかし、それにナツたちが異論を唱えないわけもなく…。

 

「な、何言ってやがんだ!」

 

「お前ひとりにやらせるかペル!オレだってぶっ飛ばして…!!」

 

 

 

 

「今のこいつにお前らが敵うわけがねぇ!!それも分からねぇのか!!!」

 

しかしその異論も、普段では想像がつかないペルセウスの剣幕が、ナツとグレイの意見を封殺。言われた側ではないルーシィとハッピーもまた、それを見て表情に恐怖を浮かべている。

 

「賢明な判断だ、ペルセウス。確かにそれなら…()()可能性はある…」

 

一方で全くもって様子を変えないゼロが、感心した様にそう呟くが、その次の瞬間、歪んだ笑みを浮かべながら再び魔力を集わせていく。

 

「だが!それでみすみす逃がすわけがねぇだろ!?一人残らず破壊してやるよォ!!!」

 

その叫びとともに再び魔力の波動を放とうとするゼロに、ペルセウスは先んじてトライデントによる大波を起こす。それに対して真正面に波動を放てば、全てを飲み込もうとする高波はあっさりと貫かれ、再びペルセウスが持つ盾に襲い掛かる。

 

「ぐっ…!行け!!早くエルザかシエルたちのところへ!!」

 

その声で弾かれるように妖精たちが息をのみ、ルーシィとハッピーがまず先んじてジュラの体を起こそうとする。

 

「ナツ!グレイ!ペルさんの言うとおりに!!」

 

「早く~!!」

 

「っ…!くっそぉ…!!」

 

先に行動した二人の説得で、渋々、悔しげに表情を歪めながら、グレイがルーシィたちとともに避難を始める。

 

「ペル…!」

 

本当なら、倒すべき相手が目の前にいて逃げるなど、屈辱でしかない。しかし、再び攻撃を耐えきり、反撃に移ったペルセウスの攻撃を、何てことないように防ぐゼロの姿を見て、ナツは悟った。

 

今の自分では、ペルセウスの言うとおり、ゼロには敵わない…。

 

 

その事実が悔しくて、情けなくて、認めたくないのにそうせざるを得ない。余計に心の内にある炎を燻ぶらせていきながらも、ナツはゼロに立ち向かっていくペルセウスに向けて叫んだ。

 

「ペル!ゼッテー負けんじゃねぇぞ!!」

 

それが彼に対してナツができること。このままで終わるつもりは毛頭ない。エルザを連れてくるか、ジュラを回復させたときは、自分もゼロと戦う。敵うか否かではない。勝たなければいけない。それだけの為に、戦う。

 

「残念…逃がしちまったか…。まあいいや、テメェにはブレイン(この身体)を痛めつけられた借りがある。他のガキどもはテメェを片付けてからにしようか…!」

 

「お前なんかに…壊されてたまるかよ…!!」

 

そう告げると、ペルセウスはすぐさま行動に移った。イージスとトライデント、二つの神器を一度戻し、新たに別の神器を換装で呼び出す。それは槍だ。己の身の丈を優に超える長さだが、先程しまったトライデントよりは細く、紫に光る刺突部分と螺旋を描くようにうねる刃が先端についている。

 

「この槍の名は『グングニル』…!狙った獲物を必ず貫く必中の槍…!」

 

どれほどの攻撃も防ぐというのなら、防ぐことが出来ない攻撃で突破する。単純明快ではあるがこれ以上に理にかなった手法は現時点では思いつかない。

 

「グングニル…面白ェ…やってみろよ!!」

 

指先から螺旋状の波動を撃つゼロに対して、ペルセウスは手に握ったグングニルを投げつける。すると、槍はひとりでに動き迫りくる波動も貫いてゼロのもとへと真っすぐ向かっていく。高速で迫ってくるその槍を最小限の動きで身体を捻り、それを躱す。しかし、躱された方の槍は瞬時に方向を転換し、再びゼロのもとへと迫ってくる。

 

「なるほど、そういう性質か」

 

慌てるわけでもなく冷静な判断で、グングニルに向けて重力場を発生させる魔法を発動。するとゼロのもとに向かっていたグングニルは地に押し付けられ、その場から動かなくなる。躱しても迫ってくるのならば、動きを封じ込める。ブレインと記憶も魔法も共有しているゼロにとって、的確な状況の判断から即行動に移すなど児戯に等しい。

 

「おっと」

 

そしてグングニルに気をひかれている間への奇襲も読めていた。右手に炎を模した紅の剣。左手にブレインを斬り裂いた漆黒の剣を持ちながら素早い動きで連撃を加えようと迫ってくる。しかしそれを躱し、逆にペルセウスの腹に拳を打ち込むと、その体は風の前の紙切れの様に吹き飛んでいく。

 

しかしペルセウスは表情に苦悶を浮かべながらも諦めていない。新たに橙の炎を発する鎖を呼び出して、自分が飛ばされている延長線に伸びた状態で具現させる。そして、態勢を変えて脚をかけると、吹き飛ばされた勢いで鎖は形を変えていき、ゴムのようにしなっていく。

 

「ああ?」

 

それを見て訝しげな表情を浮かべながら首を傾げるゼロ。だが次の瞬間、勢いよく伸ばされたグレイプニルの反動で空中をペルセウスが猛スピードで飛んでいく。標的は勿論ゼロ。一般の者には目に留まらない速度だが、ゼロにとっては対処可能。すぐさま反撃のために腕を掲げようとする。

 

「ん!?」

 

しかし、その異常にゼロは気づいた。揚げようとしていた腕が、いつの間にか木の根のような植物に巻き付けられていることに。そして、少し離れたところには、その植物の原因である木の枝を模した杖が刺さっている。この程度であればすぐにでも引きちぎれるが、そのためのタイムロスが、命運を分ける。

 

「斬ッ!!」

「ぐおおっ!!?」

 

レーヴァテインとダーインスレイヴ。二つの神剣による交差の斬撃がゼロの体に刻まれる。更に、ダーインスレイヴはあらゆる魔法を斬り裂く剣だ。ゼロが発動していた魔法も、一時的に解除される。

 

「そして貫け…グングニル!!」

 

重力の魔法から解放された紫の槍が、ゼロの背後からその体を貫かんと突き刺さった。波の魔導士ならば身体ごと貫通して即死だが、バラム同盟の一角のマスターは、それではやはり倒しきれない。相当なダメージを与えたとは思うが、まだまだ余力は残っているようだ。自分の方は、かなり消耗が激しいというのに。

 

「くっはははは…!!オレとここまで渡り合えるとはな…やるじゃねェか…面白ェ…!」

 

「俺はちっとも面白くねぇがな…」

 

愉快そうに笑うゼロに対してペルセウスは忌々しげに吐き捨てる。破壊の権化ともいえるような奴に褒められたところで、感じるのは嫌悪感のみだ。そんな彼の胸中も考えもせず、再び笑みを浮かべながらゼロはその口を開きだす。

 

「時によォ…ブレインが研究していた魔法の中に、面白ェ魔法があったんだが、気にならねぇか?」

 

「知るか、お前なんかの口から出るなんて、まともじゃねぇだろ?」

 

「まあそう言うなよ…テメェにとっても悪いもんじゃねぇ…。『リミッター』って…知ってっか?」

 

リミッター。それは魔法が溢れているこの世界のみならず、様々な世界の人間や生き物に存在するもの。リミッター…つまりは制限。生き物が活動するにあたって、必要以上の力を発動できないように、本能に刻まれた本来の力を抑えるための機能だ。

 

このリミッターがあるからこそ、普段の日常生活で不自由なく行動を起こすことが可能であり、本来の完全な力を発生させた際に身体の神経が壊れてしまうのを防ぐブレーキにもなる。

 

ゼロが語るブレインが研究していた魔法というのは、そのリミッターに関することだった。

 

 

 

ずばり、リミッターを意図的に発動させなくする魔法である。

 

「身体がぶっ壊れるリスクを背負いながら、本来以上の力を発揮することが出来る。それによって、戦争に使う兵士の基礎能力を上げることが目的で開発したそうだ」

 

「……で、その魔法を、なんで今語った?」

 

「思ったより鈍いなぁテメェは…んなもん…答えは一つに決まってんだろ?」

 

その瞬間、ゼロから発せられる魔力の奔流が、さらに強くなるのを感じた。ブレインの開発した魔法は、ゼロも共有できる。つまり、今先程話したリミッターを発動させない魔法も…。

 

 

 

 

 

「『制御不全(アンチリミッター)』…発動…!!」

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

王の間からの脱出に成功したナツたちは、ジュラの体を抱えながら急ぎエルザたちの捜索に当たっていた。今はグレイがジュラの体を背負って、一歩一歩進んでいる。

 

「エルザー!シエルー!!どこーー!!?」

 

「おーい!!返事しろーーー!!」

 

声を張って呼びかけるがそれに応じる者たちは近くにいないらしい。こうしている間にもペルセウスはゼロとの激闘を繰り広げているというのに…時間だけが過ぎていくようでもどかしさを感じずにいられない。

 

「ハッピー!エルザたちはいた!?」

 

「誰も見つからないよー!!」

 

(エーラ)で空から捜索していたハッピーもまた、望みの者たちを見つけられずにいるらしい。どこに行ったのだろうか。急いで見つけなければいけないと再び捜索を始めようとした、その時だった。

 

王の間からひと際大きい轟音が起きたかと思えば、こちらに向かって、何かが飛んでくるのが視界に写る。

 

「な、何だ!?」

 

「何か飛び出してきたよ!?」

 

その中でも、一番視力が発達しているナツがその姿を認識すると同時に、表情に驚愕を移しながら、そこに向かって駆け出した。

 

「まさか…嘘だ…っ!!」

 

絶対に負けるなと、言ったのに。彼なら持ちこたえられると、思ったのに。突きつけられた現実は、自分たちが思い描いた理想を、嗤いながら壊していく。王の間のあった建物から飛び出したその人物…

 

 

 

 

 

 

 

全身を傷だらけにされ、意識を失ったペルセウスを受け止めたナツは、ただただその現実を受け止めることが出来なかった。

 

「ペ、ペル…!?」

「そんな…嘘、でしょ…!!?」

「ペルが…ボロボロに…!!」

 

遅れて合流してきたグレイたちも、目の前に写る惨状に理解が追い付いていない。それを理解するよりも早く、飛び出てきたペルセウスを追随するように降り立った影が、彼らをさらなる絶望へと叩き落す。

 

「ぇ…な、何、これ…!?」

 

その影の正体はゼロ。しかし、先程のゼロよりもさらに魔力を迸らせて、狂気に走ったような目を向けながらこちらを見下ろし、視線だけでこちら全滅させかねない圧を放ってきている。

 

「ちょうどよかった…壊した先にさらに壊しがいのある奴等が、目の前にいるとはなァ…!」

 

ペルセウスはすでに戦える状態じゃない。そして、目の前にはそんなペルセウスをここまでボロボロにしてしまうほどのゼロ。恐怖にかられながらも、絶望を感じながらも、ナツとグレイは、次に何をするべきなのか、理解していた。

 

「「うぉおおおおおっ!!」」

 

ゼロ(こいつ)を倒す。仲間をやられたのなら、その仇を討たねばならない。恐怖に打ち克った勇ある魔導士の姿…と言えば聞こえはよかっただろう。

 

 

 

 

 

 

 

そんな彼らを、全員まとめてゼロの魔力の波動が一撃で飲み込んだ。いくつもの建物がその余波のみで崩壊していく。地面はえぐれ、塵一つも残らないほどの圧倒的な威力。飲み込まれた妖精たちは、一人残らずその意識を奪い取られていた。

 

「…ああん?何だよ、思った以上に骨がねぇなァ。もう終わりかよ?」

 

ペルセウスが大いに楽しませてくれただけに、他の奴等の何と脆いことか。正直落胆を感じていたゼロは、途端に全身を襲い掛かる神経の痛みを感じて、理解した。

 

「そうか、制御不全(アンチリミッター)を解除し忘れてたからか」

 

リミッターを再びつけ、目の前に転がっている妖精たちを見下ろしながら、ゼロは思わずため息を吐いた。もう少し楽しませてくれるかと思った奴等があっさりとその意識を失ったことに、落胆せざるを得ない。

 

だがそうだ…意識は失ったが、形はまだそこに残ってる…。まだ…生きている…。

 

「そうだ…まだ死んでねえ…まだ死んでねえよなァガキどもォオオ!!だって形があるじゃねえかァ!!!」

 

そこから先は、最早言葉にするのも悍ましい、地獄だった。必死になって追いかけてきたクロドアが、最早再起も困難な状態となった魔導士たちを、衝動のままに破壊する様を見て、恐怖に引き攣った声を上げるほどに。

 

 

 

破壊。それこそが、ゼロの存在意義。

 

その二文字の衝動の餌食となった妖精たちは、ただただゼロのおもちゃとして、いたぶられていくのだった…。




おまけ風次回予告

シエル「青い天馬(ブルーペガサス)でちょっと思い出したんだけどさ…呪歌(ララバイ)の事件で会ったカゲって、今どうしてるんだろ?」

エルザ「カゲ?何故青い天馬(ブルーペガサス)で思い出したんだ?」

シエル「ほら…あそこのマスターに、何かやけに気に入られたみたいでさぁ…釈放されてたとしたら、もしかしてホントに天馬に入ってるのかなぁ…って思って…」

エルザ「そうだったのか!?知らなかったな…。まあ、カゲならきっとうまくやることだろう」

シエル「だと良いけどね…。一夜たちにちょっと聞いてみようかな?」

次回『天馬から妖精たちへ』

エルザ「一夜たちに、か…。都合が悪ければ私が聞きに行こうか?」

シエル「…そんな震えてるエルザを行かせるわけにもいかないよ…」

エルザ「…すまん…」
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