そして二話分の長さと言いましたが、文字数まさかの3万字超えです。ビックリしましたよ…前後編わけるべき?とか考えたぐらいに…。お時間があるときにどうかお読みください…。
あとすっかり設定忘れてましたが、現時点を以ってアンケートを終了といたします。たくさんのご投票、ありがとうございました!
結果は次回予告にて発表とします!
物語の舞台となっているフィオーレ王国。この世界では、魔法が人々の生活に根付いている。
だがしかし…今回お見せするのはとても不気味な魔法。この魔法が出ている間、あなたの意識はあなたの身体を離れ…魔法の中へと、入っていく…。
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マグノリアに襲撃を仕掛けてきた科学者ダフネ、そしてドラゴノイドの騒動が収束した翌日。ギルド
「おはようございます」
「あ、おはよう!ウェンディ…おお!」
ギルドに足を踏み入れ、一番近いテーブルに座ってエルザと雑談をしていたルーシィに向けてウェンディが挨拶をすると、振り向きながら返したルーシィは、彼女の姿を目にして驚くと同時に感嘆の声をあげた。
服装は、彼女がギルドに来た日と同じく緑のワンピースに近いものだ。だが特筆すべきは彼女の藍色の髪の部分。サラサラとしたきれいな長い髪を、いつもとは違って、左右てっぺんにそれぞれ赤い髪留めを用いて二つくくりに…ツインテールに仕上げていた。昨日までの彼女とはさらに打って変わった異なる印象を与えている。
「いつもと髪型変えたんだ!うん、こっちも似合ってるよ!」
「ありがとうございます」
ルーシィに褒められたウェンディが、照れくさそうに、でも嬉しそうにはにかんでお礼を返す。エルザも今のウェンディの髪型も似合うという感想を抱いたが、ツインテールを作っている赤い髪留めを見て、彼女は昨日の明け方の事を思い出した。
「もしやそれは、昨日シエルがプレゼントしたものか?」
「そうなんです!折角なので、早速つけてみました」
「オスガキにしては、悪くないものとは思ったけど、やけに気に入ったようなのよね…」
「へぇ~、シエルがねぇ~!」
シエルがウェンディのために用意し、プレゼントしたもの。それが今彼女がつけている赤い髪留めだ。プレゼントした翌日…渡したのが明け方だったためにタイムラグがあったものの、つけてみたところ、彼女自身も大いに気にいる出来栄えに仕上げられたようだ。
シエルからプレゼントされたことと、それを身につけていることを知ったルーシィが分かりやすく口元に弧を浮かべているが、それが何を意味しているのかまではウェンディは分からない。
「何よその顔。このコに変な影響与えないでくれる?」
「そんなつもりもないわよ!」
そんなルーシィの顔を見て何を思ったか、目を細めながら謎の忠告を告げるシャルル。まるで今のルーシィの表情がウェンディに悪影響を与えると言っているかのような言葉に、思わずルーシィがツッコミを入れる。「それはともかく…」と咳ばらいをしながらルーシィは再びウェンディへと視線を戻す。
「シエルにはもう見せたの?」
「いえ、まだです。これから改めてお礼を言おうと…」
「じゃ、今からでも行ってきたら?あそこにいるの、見えるでしょ?」
ルーシィがそう言いながら指をさした方向は
「ちょっと…余計な事しないでくれないかしら?」
ウェンディがシエルの元へと向かって行った直後、翼を出してルーシィの近くへと飛行しながら近づき、ルーシィに再びジトリとしたような目を向けながらそう告げる。それを聞いたルーシィは、一瞬どういう事かと考えが過るがすぐさま納得した。ウェンディの相棒と言う立場にいるシャルルにとって、少なくとも現時点でのシエルは彼女に近づかせたくない存在だ。彼の第一印象が何よりシャルルにその考えを固定させている。
「そりゃあ、確かにシエルってイタズラ好きだし、人をおちょくるようなことも言ってくるけど、悪い子ではないのよ?」
「だとしても、どうも気に食わないのよ、あいつ」
彼女なりにフォローはしてみるが、肝心のシャルルの返答は素っ気ないものだ。腕を組んでそっぽを向きながら、視界に入ったウェンディとシエルの様子を見て、顔をさらにしかめながら、間に割って入るつもりかそのまま二人の元へと飛びながら向かって行った。
「ウェンディとは仲良くなれたみたいだけど、シャルルは一筋縄じゃ行かなさそうね」
「何、同じ時を過ごしていれば、おのずと壁もなくなるさ」
これからシエルの片思いが実るには、意中の相手であるウェンディよりも、シャルルとの間にある壁の存在が彼にとっての難関になるだろう。今から待ち受けているであろう前途に、ルーシィは思わず苦笑を浮かべる。対照的に、エルザはゆっくりと今後を考えているような返答をした。
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「シエル、おはよう!」
「ああウェンディ…おは…!?」
昨日の明け方に自分がウェンディへとプレゼントした赤い髪留めを用いて、ツインテールに髪型を変えている姿。その姿があまりにも愛らしく魅力的で、頬が真っ赤に染まり、息も呑みこむほどだ。その様子を見て、ウェンディは今の自分の髪に気付いたことへの反応と解釈し、はにかむように笑みを浮かべながらこう言った。
「プレゼント、ありがとう!早速つけてみたんだけど、どう?変じゃないかな?」
「あ、えっ、と、はい!とっても、似合ってマス!」
両手を止めている髪のてっぺん近くまで掲げながら尋ねた言葉に、しどろもどろになりながらもシエルは答えた。だが何故か微妙に片言で敬語交じりになっている奇妙な言動に、ウェンディの頭の上に疑問符が浮かぶ。
だがこうなるのも無理はない。今のシエルは『自分がプレゼントしてくれた髪留めを早速使ってくれているうえに、今までとは違う髪型をこちらに見せてくれている』と言う、本人からすれば喜びで打ち震えて延々とその衝動を叫びたいとさえ思える出来事だ。改めて思う。本当に贈ってよかったと。
何とか気持ちを落ち着かせたシエルが髪留めをつけたことで違和感を感じたりしていないかどうか聞いてみると、特に問題はなさそうだと返答も帰ってくる。更に安心した。プレゼント贈りは大成功と言っていい。
「そう言えば、何か依頼は見つかったの?」
「ああ、そうだね…。いくつか候補はあるんだけど、まだ絞り切れてなくて」
「やっぱりスゴイなぁシエルは…。私、まだ全然お仕事できていないよ…」
不甲斐ない。まさにその言葉に尽きると言わんばかりに溜息を吐きながら嘆くウェンディを見たシエルは、これを逆に好機ととらえる。頭の上に電球のエフェクトが見えるような閃きが、脳裏に浮かんだ。
「じゃ、じゃあ!俺と一緒に行かない!?最初のうちは誰かの依頼に同行して、経験をつけていくもんだし!!」
さり気無くウェンディとの仕事を取り付けようとする。共にしていけばより彼女と親しい間柄になれる。少々打算もありきであったが、ウェンディを支えたいという気持ちも本当だ。シエルからの提案にウェンディは驚きを見せながらも、そのお言葉に甘えようと返事しようとする、が…。
「やめておきなさい、ウェンディ」
「シャルル?」
シエルたち二人の間に割り込むような形で言葉を挟みながら、白い翼で飛行しながらシャルルは告げた。思わぬ存在からの思わぬ言葉に思わず何故かと聞き返すと、細くした目をシエルに向けながら答える。
「このオスガキのことだから、そこらの盗賊とか山賊を相手にイタズラと称して甚振る光景とか見せられるわよ、きっと」
「俺の事なんだと思ってんの!?」
何やら言いがかりに近いような偏見を持たれている気がする。さすがのシエルもこれには抗議の声をあげずにはいられなかった。だが「ニルヴァーナの時、アンタ自分が闇ギルドの奴に何したか忘れたの?」とジト目そのままに告げられれば、思いっきり心当たりのあるシエルは二の句が告げなくなった。そりゃそうだ。
「シャルル、シエルは確かにイタズラが好きみたいだけど、私たちの事をちゃんと考えてくれているのは間違いないと思うよ?」
「どうかしらね」
何も言い返せなくなったシエルの代わりに、ウェンディが窘めるようにシャルルに注意する。だが、シャルルは取り付く島もなさそうな態度のままだ。やはりまだまだ信用が足りていない。先は長そうだと、シエルは乾いた笑いで視線を
「…ん?あれは…」
すると、ボードの端の方に、妙な依頼書が貼ってあることにシエルは気づいた。思わずそこに注視して近くまで移動すると、気になったのか、ウェンディとシャルルも同様の依頼書に目を向ける。その依頼書にはこう書かれていた。
『この文字の意味を解いてください。解けたら50万
「って、50万!?」
「文字の意味を解いたら50万って…スゴイね!」
「何だか胡散臭いわね…」
「確かに、一見簡単そうに思えるけど…あまり都合がいいわけでもなさそうだよ」
文字の意味を解くだけで50万もの報酬。それだけを聞くと簡単な割に超お得と言える依頼。もしくは誰かのイタズラとして貼り出されたもの、と言う認識のどちらかになるだろう。だが、シエルはその依頼書から50万の価値を彷彿とさせる要素を一つ見つけていた。
黒塗りにされた書面に白い文字。そして、中央に大きく書かれた逆三角形の上二つの角には大きな目。中央には全くもって見慣れていない文字の一文。全体的に不気味な印象を思わせる。
その中の、逆三角形の中央に書かれた文字の一文が、シエルが見つけた鍵である。
「これ、古代文字だよ。しかも恐らく、数がそれほど多くなかった当時の部族が使っていたものだ」
「え、分かるの!?」
「古代文字について書かれた本を、昔読んだことがあるんだ。これも確か読んだことある気がするんだけど…何だったかな…?」
「何々?古代文字って聞こえたけど」
「やけに騒々しいな…」
「おお!50万だってよ!スゲーな!」
「あい!」
話を耳にして気になったのか、最強チームとして行動している魔導士たちが次々と集まっている。声を発しはしなかったが、グレイやペルセウスも含めてだ。
「う~ん、ギルドの書庫の中にあった、かな?俺、ちょっと探してみるよ」
「あ、あたしも手伝おっか?」
「大丈夫。ちょっとした記憶から探す方が早いから」
そう言ってシエルはテーブルから離れて書庫の方へと足を向ける。成り行きでルーシィの隣に近づいたグレイが身を乗り出して依頼書の古代文字を見ると、途端に顔をしかめた。
「見つけたとしても読めんのか、これ?」
「少しでも手掛かりがあればきっと…っ!?」
グレイの言葉に返そうとしたルーシィが彼の方に目を向けた途端、彼女の口元は引き攣って顔を青ざめさせた。その様子にグレイが怪訝な表情を浮かべているが、彼女はそれどころではない。何故なら…。
「(グレイ様に近づきすぎ…!やっぱりルーシィは恋敵…!?)」
「何か、また盛大な勘違いをされてる気が…!」
結果的にグレイと距離が近かったことにより、音もなく近づいてきていたジュビアがルーシィを怨嗟のこもった目で睨みつけていた。こんな目を向けられたら、本人じゃなくてもビビる。
「なあ、横に書いてあるのは現代語訳じゃないのか?」
「あ、そうですね、こっちは読めるみたいです」
「ホントか!?どれどれ…?」
依頼書をよく見てみると、右側には、中央に書かれている一分の現代語訳が書かれているそうだ。ペルセウスがそれに気付いて指摘すれば、ウェンディとナツも、それに気付いて注視してみれば確かに読めるように書かれた状態で単語が記されている。
「ああ、それ迂闊に読まない方がいいよ。古代文字って大抵その言葉を告げるだけで色んな魔法の効果が発揮されるから…」
「何々?『ウゴ、デル、ラスチ、ボロカニア』…だぁーっ!全然分かんねーっ!!」
「全く聞いてないわよ、あいつ…」
「迂闊に読むなっつったろバカぁ!!」
書庫に向かおうとしているシエルからの忠告を右から左に受け流し、口に出してそのまま読んだはいいが意味が分からずに騒ぐナツ。シャルルの呆れたような声とシエルの怒号を皮切りに、依頼書の近くにいた者たちの身体が、突如虹色に輝き始めた。
「何だありゃ?」
「最近の若いもんはスゲーな~。日頃から輝いて見えるとは思っちゃいたが、虹が出てくるほど輝くのか」
「それ、なんか違うだろ」
マカオとワカバのおっさんたちによるジョークはともかく。何やら虹の光を発した者たちは皆一様に呆けたような表情を浮かべながら固まっている。
そして、依頼書に記されていた
「っ…!さ、寒い…!何これ…体の中が異様に寒いぃ…!!」
と、両腕で身体を抱えて震わせながら、青ざめた顔でグレイが言葉にした。だが彼は氷の造形魔導士。寒さなどへっちゃらのはずだ。
「な…何か…重てぇ…!何か胸の辺りが非常に重てぇ…!こ、腰にくる…!!」
次に異常を告げ始めたのはルーシィ。だが、何やら普段の彼女と比べて声のトーンが低いし、口調もどこか荒い。胸の辺りが重い、と言うのは多分いつもの事のはずだが…?
「うっ!?な、何でしょう…?お腹の中が凄く熱い…!?まるでマグマのような…?」
今度はナツ。全身から汗が出てき始めて、両手で腹部を押さえている。腹部の中…つまり普段から食べたり、魔法として放出する炎の事だろう。だが、炎の熱さなど彼から見れば日常茶飯事のはず。
「ん?あれ、何だ雨漏りか?やけに雨粒が降ってくんな?」
すると今度はジュビアの上空だけ局地的な雨が降り始め、彼女のいる位置に、次々とギルドの屋根から雨漏りが落ちる。確かに彼女は以前高すぎる魔力が原因で雨女になっていたことがあるが、今では制御が出来ていたはずだ。しかも、彼女の上空のみなんて、妙に器用な真似、どうやって…。
「な、何?この感じ…随分空気の流れが伝わってくるような…なんか、モヤモヤするって言うか…」
少し離れた位置にいたシエルも、どこか様子がおかしい。顔をしかめながら手をこすったり顔に手を置いたりしている。だがそれと同時に何か違和感を感じたのか「ん?」と声を漏らして恐る恐る両手をその目に移す。
「あ、あれ?何か、いつもよりも視線が低いような…声も随分高い…って!?」
次に言葉を発したのはシャルル。首を動かしながらキョロキョロと視線を動かし、声に異常を感じたのか手(前足)を首の部分までもっていくと、肉球のついた己の手を見て驚愕を露わにしている。
「え、え?私、いつの間にこんなに背が高く…?でも、声は低い!?どういう事!?」
そしてペルセウス。普段の彼から想像もつかない弱気な印象を感じさせる表情と少しばかり高くなった声に、自分自身で何やら混乱しているようだ。
「どうなってんだ?なんか全員妙な感じになってるが…」
「一体何を騒いでいる!!」
突如異常な反応を示し始めた魔導士たち。それに対してただただ混乱しているマカオの言葉に被せるかのように、凛としたような口調で場を収めようとしている存在がいた。
机の上で仁王立ちをしながら表情をキリっとさせている青ネコ・ハッピーだった。何か、エルザみたいなセリフと佇まいなのだが…当のエルザはと言うと…。
「わぁ~!ナツ、見て見て~!」
「え、いや、あの…?」
「ん?何だよハッピー?」
「オイラの胸にカッチョイイおっぱいが二つ付いてるよ~!ほら、ほら!」
どこか子供らしい喋り方でナツの元へと駆け寄り、どこか困惑した様子のナツと、何故か反応したジュビアの前で、鎧を脱いだ普段着の姿のまま両手で自分の胸を持ち上げて披露している。ある意味男性陣にはご褒美だ。
「やめんかぁー!!」
それになぜか腹を立ててエルザ目掛けて飛び蹴りを放つハッピー。しかし、瞬時に鎧姿に戻ったエルザの甲冑にぶつかったことで、エルザにはノーダメージ、ハッピーのみが固い鎧の餌食となってしまうだけとなった。
何なんだこのネコ型体型は。と言うかこれはネコそのもの。自分は換装をした覚えなどないのに。と言った言葉が、落ち込んでいる様子のハッピーの口から出てくる。
「お、俺もいつの間にか…ネコになってる…!手に肉球、耳が頭の上、毛が真っ白で、更には尻尾!!どーしよ兄さん!これ、どうなってるの!?」
「え、シャルルってお兄さんがいたの?」
そしてもう一匹のネコであるシャルルも、何やら自分がネコではなかったかのような口ぶりで今の自分の状況を口にしている。そして、ペルセウスの方に向けて叫んだ“兄さん”と言う言葉に、シャルルに兄がいたことにどこか驚いた様子で尋ねてみれば、彼女とは別の存在がそれに返答をした。
「何言ってんの?いるわけないじゃない」
そう答えたのは、どこか憮然とした表情を浮かべ、何故か口調が女らしくなっているシエルだ。「てか、何で私は人間っぽい体になってんのよ?と言うか…イヤなやつと妙に似ているような…」とブツブツと呟きながら自分の手足をまじまじと見ている。それを視界に入れたシャルルは、まるで雷に撃たれたような衝撃の光景を目の当たりにしたかのような表情を浮かべる。
「お、俺ーーっ!?」
「へ?」
「は?」
シエルへと指さしながら叫んだシャルルに、同時に呆けたような声を発するファルシー兄弟。当人たちも、外野から見ている者たちも、何が起こっているのかさっぱり分からない状態である。
「これ一体どーなってんのよ!?なんだかとっても寒いー!!」
「寒いのですか、グレイ様!?逆にジュビアは今とっても熱いんです!ジュビアが暖めてさしあげます!!」
「は!?え、ちょっと何言ってんのアンタ!?」
更に状況はカオスを極める。何を血迷ったのか熱がっているナツが、寒がっているグレイを熱してあげようと両手を広げて近づいていく。謎の身の危険を感じたグレイが逃げ回って、傍から見ているルーシィの顔が青ざめている。ホントに何がどうなっているのやら。
と、さらに混迷を極めようとしていたこの状況を落ち着かせる…と言うか判明させる一言がハッピーから告げられた。
「まだ気付かぬのか!?私たちの心と体が…入れ替わっている!!」
『…えええぇぇぇっ!!?』
そこでようやく状況が少しばかり理解できた。心と体の入れ替わり。だから先程から普段とは違う奇妙な言動が続いていたわけだ。その事実をはっきりと宣言したハッピーにジュビアがすかさず近づいて確認をとろうとする。
「どういう事だ、ハッピー!?」
「私はエルザだ!!」
「ハッピーはオイラだよ~!ジュビアヒドイよー!!」
「あー、もううるさい!アンタは黙っててオスネコ!」
思わず外見通りの人物の名を呼んだジュビアが、ハッピーが入っているらしいエルザから抗議の声を受ける。だがこのままだと話が進まないと判断したのか、シエルが彼女を黙らせる。口調から察するにシャルルだろうか。
「と、とにかくまずは、状況を整理しよう!誰が、誰の体に入っているのか、確認しないと!」
まずするべき確認をとるために、シャルル…の中にいる事が分かったシエルが即座に冷静に対応を始める。その甲斐あってか、ひとまずは誰が誰と入れ替わっているのかを特定することが出来た。内訳は以下の通りだ。
シエル と シャルル
ナツ と ジュビア
グレイ と ルーシィ
ペルセウス と ウェンディ
ハッピー と エルザ
「まさか…私があろうことか、ハッピーと入れ替わってしまうとは…!」
「何で『あろうことか』なんだよ~!」
内訳を整理して説明を終えたシャルル…否、シエルがギルド中にそれを周知させると、さすがに予想外だったのか衝撃が走り、驚愕の声を上げさせる。そして改めて事実を確認したハッピー…否、エルザが項垂れながら告げた言葉はエルザ…もといハッピーにショックを与えることになった…。
何だか、誰かの体に入った誰かが行動するたびに、色々な意味で消耗している気がする…。
「おい!」
「どうしたのシャルル…じゃなくて、シエル、だっけ?」
「あ、ううん、何でもない、大丈夫…」
「冗談じゃないわよ!何でよりによってオスガキと入れ替わっちゃったわけ!?てか、何をどうしたら心と体が入れ替わるのよ!」
「…何やってんだシャルル?」
「いや、今はシエルだから」
「登れない…!」
「じゃあ最初から言え!!」
小さいネコの体になってしまった宿命か。テーブルの上に乗ることも出来ずにただ体力を消耗するだけだった。
そして、先程まで囲っていた依頼書に記された中央の一文に目を通せば、突如彼によみがえってきた記憶と、確かに合致した。
「思い出した!これは『古代ウンペラー語』…!ってことは、言語魔法の一つ『チェンジリング』のせいだ!」
『チェンジリング!?』
『チェンジリング』―――。
この魔法は、ある呪文を読み上げると、その周囲にいた人々の人格が入れ替わってしまう。依頼書に書いてあったのは、まさしくそのチェンジリングを発動させるための呪文だった。
「こう言った言語魔法は、呪文を直接口に出さなければ効果は発揮しないんだ。けど、ついさっき…」
「おい、今お前がナツなんだよな?」
「あ、ああ」
「テメェ!何てことしやがった!!しかもシエルから言われた矢先だったのに!!」
「知るか!依頼書ちょっと読んでみただけじゃねーか!!つーか雨の音うるせーんだよ!!」
「それこそ知るか!!」
ナツとグレイの喧嘩などギルドの中では日常茶飯事なのだが、今傍から見ればルーシィとジュビアが思い切り暴言を叫びながら喧嘩をしている図だ。前者よりもやけに怖い気がする、と入れ替わっていない組は恐々としている。
「あの…あたしは、こっちの方が遥かに怖いんですけど…」
と、寒さ以外の理由でも顔を青ざめた様子の
「恋敵ィ…!!何故ジュビアがナツさんで、ルーシィがグレイ様と入れ替わったの…!?今グレイ様の体にルーシィが、ルーシィの体にグレイ様が…心と体もグレイ様と一心同体になれるなら、ジュビアの方が大歓迎だったのに…!!恋敵、恋敵、恋敵ィイ……!!!」
先日のドラゴノイドの一件でダフネに向けていた怒りを軽く超えるような超高熱の炎を身体から発し、グレイの体を独占しているルーシィに向けて延々と呪詛の如き恨み節をブツブツと呟いている
「オスガキ!他に何か思い出せないの!?元に戻る方法とか!!」
「う~ん…確か、人格は入れ替わるけど、魔法はその身体が使っている物が適用される、とか…あと…」
「あと!?」
「何、一体どうしたの?」
「…思い出した…てか、思い出してしまった…!」
まるで思い出してはいけなかったこと。元に戻す方法どころか、入れ替わっている者たちを地獄に叩き落とす現実を、思い出してしまったのだ。
「30分…!」
「30分?30分経てば戻れるの?」
「違う…!この魔法は30分以内に呪文を解除しないと…
未来永劫、元に戻ることはない…なんて説が、あったっていう記述…」
誰もがその事実に絶望を示した。何故そんな迷惑な記述や事実ばかりが明かされるのか、そもそも何て迷惑な魔法なのか。
「あ、あれから何分経った!?」
「16分。あと14分ね」
「ちょ、既に半分切ってるじゃないの!!」
説明を聞いてすぐさま、ミラジェーンに時間を聞いてみれば残り時間が半分も過ぎていることにさらに焦りが助長される。思わず
「シエルー!思い出せ!なんかあっただろ、元に戻る方法ぉー!!」
「そ、そんなこと言われてもぉ~!!」
「ちょっと!私の体に乱暴しないで!!」
中身は違うとはいえ、自分の体がぐらぐら揺らされ首が上下にガタガタしている光景はいやだったらしい
「何じゃ、やけに騒々しい」
するとギルドの入り口から、ずっと外出していたらしいマスター・マカロフが、今しがたギルドに帰ってきた。今までどこに行っていたのかと言うと、昨日起きていたドラゴノイドの一件について、評議院に報告するために出かけていたらしい。
「ふむう、なるほどのぅ…チェンジリングか…」
「元に戻る方法はないのですか?」
「う~む、なんせ古代魔法じゃからのう。そんな昔の事はワシもよう…知らん!」
チェンジリングの事についてはさすがと言うか、マスター・マカロフも知っていた。だが残念なことにそんな彼をもってしても元に戻る方法は知らないという。更なる絶望となって被害者に重くのしかかってくる。
「なんてこった!ええい、こうなったら!!」
「いやーー!!ちょっと、それだけはやめてぇーーっ!!」
絶望に耐えられなかったのか、身につけている服を脱ごうと裾に手をかける
「…あれ?そう言えば…今私はペルさんの体になってるんだよね?」
「そうね…それが何?」
すると
「私と今入れ替わってるはずのペルさんは?さっきから声も反応もないみたいだけど…」
そこで近くにいた者たちも気付いた。そう言えば。藍色の髪をツインテールにした少女の体に入っているはずの神器使いは、今どうしているのだろう?チェンジリングが発動してから全然反応が返ってきていない。周囲を見渡せば小柄の少女の姿となった兄を、いち早く
「いるわけない…いるわけナイ…イルワケ、ナイ…」
何故か誰よりも絶望した様子で、ギルドの隅っこで体育座りをしながら同じ言葉をブツブツと呟いている。その時誰もがこう思った。
『一体何があった!!?』
思わず目にした全員が心に思ったセリフを叫び、絶望する兄の様子から何かに気付いた弟がすぐさま声をあげる。
「そうか!入れ替わったことに気付いていない状態で、俺の体に入っているシャルルが『兄なんているわけない』って口にしたのを聞いて、大きなショックを受けたんだ!」
「それかなり前のセリフよね!?今までずーっとあそこでうずくまってたわけ!?」
入れ替わったすぐ後に聞いた
「な、なるほど…体が入れ替わる魔法か。シエルたちも、俺もその魔法の影響を知らずに受けていたという事だな」
「知らずに受けたというか、あるバカのせいでね」
あの後シャルルの体をした弟が必死に慰めて説明をしたことでどうにか持ち直した
「何かしらの違和感とかはない?大丈夫?」
「視界が大きく下がって少々混乱はするが、あとは特にないな。強いて言うなら体が凄く軽くなったのと、時折体のどこからか風が吹き出るくらいか」
「言った傍からスカート捲れてるわよ!?」
「ペルさん、隠してぇ!!」
兄の前方にいた
「ウェンディは天空魔法で風が出るから、それで風も出てくるんだね。あ、そっか!」
「は、ハッピー!?何を…!!」
何かに気付いた様子の
「面白そうだな~!やってみよ~っと!!換装~!」
するとエルザ本来の魔法を使えると認識した
「どじゃ~ん!」
スク水に足ヒレ、魚モチーフの髪留めでツインテールにした髪型。手には釣り竿とバケツ。色々ゴッチャゴチャになった格好で完了していた。
『おお!これはこれで…!』
「やめろぉー-!!」
マニアックな格好だがそれはそれで男性陣からの受けがいい。だが
「な、何という事だ…S級魔導士としてのプライドが…!!」
「いや、そもそもこんな格好をストックしてる時点でプライドもへったくれもないだろ…」
「あれぇ?おかしいな~カッコいい鎧にするつもりだったのに」
四つん這いになって涙を浮かべながら、あまりの不甲斐なさにショックを受けている
「魔法は確かに入れ替わってるみたいだけど…」
「使い手の中身が違うから、みんな中途半端になっちゃうのか…」
これまでの様子を見ていた
「おお!成程、空を飛ぶというのはこんな感じか」
などと話していたら
「シエルも今はシャルルの体だから、もしかして飛べるんじゃない?」
「そ、そっか!他の魔法は俺の体じゃ使えなかったけど、
「お~~?何か行けそうな気がしてきた~~!!」
これはもしかしたら?と言う半ば期待の眼差しを受けながら集中を続けると、その甲斐があったのか白ネコの背中から見事に一対二枚の翼が現れた。それに周りが思わず歓声を上げる。
が、その翼は、本人がやるよりも随分小さかった。
「出た!けど、なんかちっちぇ!!」
「卵から孵ったばかりの頃のシャルルみたい…」
「と、とにかく羽は出せた…あとは飛ぶのみ!」
そして「とう!」と思い切り両脚を踏み込んでジャンプをすれば、その身体は地に落ちることなく、ギルドの天井を目指してその身体を羽ばたかせる。これにも周りからの歓声が上がったが…。
『遅っ!?』
推定秒速1cm。思い切り羽をパタパタと羽ばたかせて徐々に徐々にと空へと飛んでいくが、未だに近くにいるウェンディの体をした兄の背も追い越せていないほどに遅すぎる。
そして数人ほどの背の高さに到達したところで、力と魔力の限界だったのか
「な、なんてこった…!これじゃあウェンディや兄さんを運んで戦いの助けになることもできやしないじゃないか…!!」
「ああ…まあ、あんなスピードじゃあねぇ…」
テーブルの上で四つん這いになりながら嘆きの言葉を呟く
「俺も、どちらかと言うとサポート寄りになってしまうのか…」
基本ケガや病気の治療や、能力を上げる魔法を使うウェンディ。中にいるペルセウスは、逆に扱ったことのない魔法だ。どう戦いに貢献すればいいのかため息を吐きながら呟くと、その
「あ、一応一つだけ。天竜の咆哮って攻撃技も使えますよ」
「咆哮…ブレスか。ナツの火竜の咆哮みたいなものだよな」
つい最近で身につけた攻撃魔法について教えれば、すぐさま実践に移る
「こんな感じか?スゥー……天竜の咆哮!!」
短く深く息を吸い込んで、ナツが放ってくる咆哮の動きを思い出しながらやってみると、小さい口から勢いよく白い竜巻が放出。だが予想に反して、少し前に
「あ、やべ」
『ギルド壊すなぁッ!!』
予想もしなかった特大威力の咆哮とその損害に、本人も少しばかりたじろぎ、周りの者たちは思わず声をそろえて叫んだ。
「う〜ん、これは加減や調節がモノを言いそうだな…」
「いや、そんな冷静に分析してる場合なの?てかこれってそう言う問題なの?」
「本物の私が使うより、威力が…」
「き、気にしちゃダメだよ!ほら、兄さん天才型だから!」
本物である自分を簡単に遥かに凌駕し、あまつさえ加減や調節が肝などと呟いている
「と言うか、こんな事をしている場合じゃ無いぞ!もう時間がない!」
「一体どうしたら…はぁ…」
「ちょっとルーシィ!グレイ様の体で遊ばないで…ひゃあっ!火がぁ!」
「あんたも口から出ちゃってんじゃない…もうやだこんなの…!」
グレイの体で遊んでいると勘違いした
「ルーちゃん、私に任せて!」
その声と共に、ギルドの入り口にかかったのは、3人の人影。比較的大柄の影が両端に、中心には小柄の影。
「お、お前たちは…!」
妙なリアクションをとりながらその3人組に声をかける
「レビィちゃん…!」
その中心にいた小柄の影、水色のショーヘアーの少女、レビィ・マクガーデンが笑みを浮かべてルーシィに目配せをしている。
「オレ達チーム・シャドウギアが来たからには必ず元に戻してやるぜ!」
「ああ、安心しな!という訳で…」
「「頼むぜレビィ!!」」
「いや結局のとこレビィ一人でやるんじゃねーか!」
両端にいたチームメンバーのドロイとジェットが、自信満々と言った様子で堂々と告げはしたが、実際手を尽くすのはレビィ一人だ。思わず
「ありがとう、レビィちゃん!」
「ルーちゃんの為だもん、頑張る!ルーちゃんの小説、絶対読者第一号になりたいから」
レビィはルーシィが書いている小説を楽しみにしている人物の一人だ。読者第一号になりたいと願い出てきたのも彼女。そんな彼女の力になれるならと、この呪文の解除に名乗り出た。
「で、どうするんだ?」
「私、古代文字ちょっと詳しいんだ。だから、まずはこの依頼書の文字を調べてみる」
「時間がねぇ、間に合うのか?」
手持ちの本をいくつか取り出し、ものを読む速さを何倍にも引き上げる魔法アイテム『風詠みの眼鏡』をかけて、解読に移りだす。残り十数分と言う短い時間でうまくいくかどうか懸念はあるが…。
「とにかく!この場はレビィに任せよう!」
餅は餅屋。より専門的な分野に精通しているレビィでなければ解除は難しいだろう。任せる他にないと
「何故私は魚を…!」
「美味しいよ?」
自覚がなかったのか気付かぬ内に魚を咥えてしまったことに盛大に落ち込む
それはともかく、早速本を開きながら文字の解読を開始するレビィ。残る時間は約10分。いつの間にか現れていたプルーがどっからかプラカードを出して示している。読んだだけで魔法が発動する言語魔法を口に出して大丈夫なのか懸念があるが、こういった魔法は直接そのまま読みあげでもしない限りは発動もしないので大丈夫だそうだ。
「うおおっ!?何だこりゃ!?」
「ど、どうした、ナツ!?」
突如妙な声をあげた
「見ろ!何か分かんねぇけど、左手が取れちまった!!」
「キャアーーーーーッ!!?」
何と左手の手首から先が消えており、ドロッとした水がそこから溢れ出ていて、残っている右手で取れている左手を持って示している。自分の体の緊急事態にまるでモスキート音のような高い声が
「ちょっと!?アンタ一体何したのよ!?」
「分かんねぇ!なんか感覚おかしいな~って思って見たら取れてた!」
「何がどうしたらそうなる!?」
あまりにも予想外で場合によっては規制がかかりそうな光景に、
「あ、もしかしてジュビアの魔法の影響かもしれません。ジュビア、体を水にすることが出来ますから、くっつけようと思えばくっつくと思います」
「え、そうなのか?…おお、ホントだ、戻ったぞ!」
ジュビアの魔法の特性である
「全く人騒がせなんだから…」
「おい見てみろグレイ…じゃなくてルーシィ!」
ひとまず解決したと
「今度は右手が消えた~」
「イヤァーーー!!」
何かしらの感覚を掴んだのか、今度は自発的に右手を手首から外して見せる。更に…。
「足も~!」
「ひえ~~!?」
両脚が水になって溶けたような状態で見せつける。その間も不気味な笑みを浮かべながら
「ウハハハハ!スゲーなこれ!!足がないのに動けるぞ!しかも早えー!!」
「人の体で遊ぶなー!!」
そして挙句の果てには水に変化した下半身をそのままにギルド内を駆け回る。その影響か、ギルド内の床が水浸しになっている。本人は面白がっているが傍から見たら軽くホラーだ。
「ナツさん、もうやめてください!ジュビアの体を好き勝手にしていいのはグレイ様だけって決まってるんですぅ!!」
「やめろその言い方!何かイヤだ!!」
一見自分の体でやりたい放題されているのを咎めているように見えるが、最後の一文のせいで微妙にその気持ちが伝わってこない。結局のところ、
「いいな~ナツ、楽しそう~!よーし、オイラももう一回換…」
「だからやめんか…!!」
すると、一通り本を読み終えたレビィが、依頼書に再び目を通した。もしかして何かわかったのだろうか?期待を込めて
「…わかんない…!」
なんてこった。あのレビィですら方法が掴めないというのか。入れ替わってしまったほとんどの者たちに落胆の空気がどんよりと漂う。
「そうか…私はこれから先“妙な羽の生えたネコ”として生きていくのか…」
「俺に至っては“満足に飛ぶことも出来ない喋るネコ”だよ…」
「オイラは妙じゃないよ!」
「満足に飛べないのはアンタの落ち度でしょうが…」
希望が断たれた一同に既に諦めムードが漂っている。特にネコになった二人の絶望感は言葉に形容することも出来ない。
「…ええいっ!!」
「だからやめてよぉ!!」
「どうやら、お困りのようだな」
そんな一同の耳に、またも入り口の方向からその声は聞こえてきた。全員が視線を入り口に向けると、先程同様に三人の人影が映る。だが、今回は左端が大柄な以外は一般的な大きさの人影だ。
「お、お前たちは…!!」
「この反応、さっきもしてましたけど、何ででしょうか…?」
「ああ、お約束って奴だそうだ」
シャドウギアの時と同じような大げさリアクションをしている
「そんな小娘と違って、私たちの方が何倍も役に立つわよ?」
「その通り!オレたちに任せりゃ、ちょちょいのちょいだぜ!」
『チョイダゼ、チョイダゼー』
眼鏡をかけた女性エバーグリーン。鉄仮面のような兜を被ったビックスロー。そして、中心にて仁王立ちしている黄緑髪の男フリード。チーム雷神衆もまた、依頼から帰ってきたところでの登場だ。
「話は概ね理解している。お前たちにかけられた魔法の解除、雷神衆が引き受けた!」
「な、何だと!?」
「こいつはオレたちが先に名乗り出たんだ!横取りすんな!」
「いや実際力になってんのはレビィだけだろ…」
決め顔で堂々と告げたフリードに対して、先に解除を行っていたシャドウギアのジェットとドロイが抗議の声をあげる。だが
「おいおい、おめーら忘れたとは言わせねーぜ?」
「うちらのリーダーであるフリードは術式魔法のスペシャリスト。言語魔法にも勿論精通しているのよ?」
フリードの扱う術式魔法。そのほとんどが古代ローグ文字と呼ばれる昔に使われた文字を扱う事で効力を発揮するもの。それをより扱うフリードの古代文字の知識は、確かにレビィと比べて勝るとも劣らない。今回の魔法の解除にもうってつけの人物だ。
「…けどそれってつまり…」
だが
「つーことで…」
「お願いね、フリード!」
「任せておけ」
「やっぱ
シャドウギアも雷神衆も頭脳派であるリーダーに丸投げである。戦力が増えたのは確かに心強いが他の奴らが何ともまあ図々しいと言わざるを得ない。
「おいそろそろ腹括った方がいいぞ?あと8分だ」
「ちょっ、シャレにならないわよっ!?もうアンタたち二人でとっとと調べて、とっとと解除させなさい!それでいいわよね!?てかやれ!!!」
「「は、はい!」」
マカオからの残り時間アナウンスを聞いた
「くそっ、同じ
「おうよ、ジェット!」
すると、何を思ったのかシャドウギア所属の二人がいそいそと何かを準備し始める。そして数十秒後にはそれぞれ少し違う意匠の学生服を纏った二人が、それぞれ片方が扇子を片手に、もう片方が太鼓を肩から抱えて構える。
「「フレー!フレー!レ・ビ・イ!!」」
「何すんのかと思ったらタダの応援要員かよ…」
調べることに不向きな二人がとった行動。レビィの応援である。だがこれ、場合によっては寧ろ邪魔にならないだろうか?
レビィとフリード。それぞれ風詠みの眼鏡で書物に目を通しながら依頼書に書かれた文字の解析を行っている姿を、ギルドに入ってきた一人の人物が目にし、数秒ほど立ち止まっていたことは誰も気付かなかった。
「もしずっとこのまんまだったらどうするよ?」
「ん?どうって何だよ?」
二人が解析を続けている間待機することしかできない入れ替わり組。突如
「この先この状態のまんま、仕事に行くつもりかよ?」
「そりゃ、元に戻んなかったらそうするしかねーだろ?ま、この身体結構おもしれーし、悪くないかもしんねーな」
「ジュビアにとっては悪いですよ!!」
どうやら
「オイラもナツと同じかな~。だって、黙ってれば見た目じゃ分かんない訳だからね」
「お、おい!!」
そして
「そーゆー問題じゃないでしょ!このすっとこネコ!あたしは絶対そんなのイヤ…!」
「グレイ…じゃなかったルーシィ、それマジでキモイぞ…」
「あたしだって!好きでこんなの口から出してるわけじゃないわよっ!!」
比較的楽観的に考えていた
「つーかみんなさあ…仕事に行くとしても、もっとヤバい問題がある事、気付いてない?」
『へ?』
その言葉の皮切りは
「シャルルの体に入った俺でさえ、現状これが精一杯なんだよ?兄さんはまだしも、まともに攻撃魔法を扱えない状態になっているみんなが、満足に仕事ができると思う?」
その言葉を耳にした瞬間、ほぼ全員が絶句した。まともに体の持ち主の魔法を扱えているのは
遊び半分も混じったとはいえ、ふとした拍子で身体の一部が水となって取れるナツや、口から氷を吐き出すだけで造形のセンスがいまいちなルーシィ、同様に火がダダ洩れになってるジュビア、換装が残念な装備しか身につけられないハッピーに、星霊の召喚などやったことが無いグレイ、そして検証はしていないが、シャルルやウェンディも天気の操作や神器の換装が上手くできると思えない。
つまり総評…。
『
どうやらこれで全員理解したようだ。役に立たない上に物凄くかっこ悪い。最大戦力が本家よりもパワーアップしているウェンディ(inペルセウス限定)とかどんな悪夢だ。
「やばい!確かにそう言われりゃ、かなりやばい!!」
「何故今の今までそんな単純な事に気付かなかったのだぁ!?やはりネコになってしまったせいかぁ…!?」
これまでジュビアの特性で楽観的になっていたナツも、ようやく事態の重さを把握したらしい。そしてこの現実に気付けなかった己の不甲斐なさを
「あの、エルザ?一番最初に気付いた俺も、ネコなんですけど…?」
「そりゃ、私とオスネコとじゃ頭の出来が違うもの。当然よ」
「ヒドイよー!シャルルにそんなこと言われるのもショックだけど、入れ替わってからのエルザは一々トゲがあるよー!うわぁ~ん!!」
遠回しに自分の頭脳をバカにされた
多分、元の体の癖で飛んで出ていこうとしたけど、エルザの体じゃ羽が出なくてそのまま転んだのだろう。
「さて、オスネコは放っておいて…こっちはどうなってるのかしら?」
「ちょうどいい。今しがた判明したところだ」
『おおっ!!』
「この古代文字は『ここに永遠の入れ替わりを以って幸せをもたらす』と言う意味で記されているのだ」
「おお、スゴイ!…ん?
何だろう、すごく嫌な予感がする。フリードの解説を聞いて、他の誰よりも早く
「うん!つまりこの魔法で入れ替わった人たちが、永遠に幸せに暮らせますって意味なの!!はぁ~!解けて良かったぁ!!」
「苦労した甲斐があったな」
やり切ったような表情で互いを称えあうレビィとフリード。凄く達成感溢れる光景だ…だけど…!!
「…二人とも…魔法の解き方は…?」
「…え?」
「ん?」
「俺たちが求めているのは元に戻す方法だよ!てか、何だその一文の意味はぁ!!」
「それじゃこのままでいろって意味じゃねーかぁ!!」
思わず
「これじゃあ、依頼書の言葉の意味が分かっただけですよ、レビィさん…」
「あ、ホントだ!どうしよう!!」
「迂闊だった。オレたちとしたことが…!」
「ホントにそう思ってる?わざとじゃないよね?」
「求められているのは魔法の解き方…。裏の意味を持った言葉を見つけるのを優先的に考えるべきか」
「そうだね、よし、気を取り直して!」
結局はほぼ振出しに戻った。改めて調べ始めたレビィとフリードに再び応援団の声が上がる。
「「フレー!フレー!レ・ビ・イ!!」」
「負けるな!負けるな!フ・リー・ド!」
『マケルナ、マケルナー』
「何か一人追加されてんぞ…。かえってうざくねーか、あの応援チーム?」
「いや、気合が入っていいと思うぜ!オレも参加してぇぐれーだ!」
「やめなさいよ、余計に暑苦しいから…」
トーテムポールのような魂を入れた人形と共に、何故かシャドウギアに混じってフリードの応援に入るビックスロー。声援が追加されて邪魔になりそうなものだが、エルフマンにだけは好印象のようだ。むしろビックスロー同様に混ざりたそうにしている。
「ああ、もうどうしよう!このままだと俺も、今までの食生活が変わっちゃうのかな!?肉中心だったのが、ハッピーみたいに魚中心に!?そもそも食えるかなぁ!?」
「どーでもいいわよそんなこと!ついでに言うと、魚は嫌いよ私は!」
色々精神が擦り切れたようで何故か食生活の事を考え始める
「えっ…?」
「…ちょ、ちょっと、やめてその…仲間を見つけたみたいな顔すんの…」
謎のシンパシーを見つけて心安らぐ錯覚に陥ってる間にも時間は残酷に過ぎていく。
「こりゃマジでやべぇ!1分切った!!」
「さっきからテメェなんか楽しんでねーか!?ああ!!?」
「そ、そんな事ないって…」
プルーと一緒に紙に書かれた“あと1分”を見せつけてくるマカオに、
「フレー!フレー!レ・ビ・イ!頑張れ!頑張れ!フ・リー・ド!くぅ〜燃えるぅ!」
「あいつ似合いすぎだ…」
「暑っ苦しいわ…」
そして結局エルフマンもレビィたちの応援団に混じって応援を始めた。普段の格好や恰幅も相まって全く違和感なく溶け込んでいる。
「おや?まーだやっとるのか?」
すると再びマスター・マカロフが、騒然としているホールの中に現れて声をかける。それを見た一同は一縷の望みをかけて聞くことにした。
「マスター!他に思い出せることは、本当に何もないのでしょうか?このままじゃジュビアたちは…!!」
「う~む…お、そうじゃ!一つ思い出したぞ!!」
「この魔法を解くときは、確か一組ずつしか解けないんじゃ。いっぺんに全員を戻すのは無理だったはずじゃ!」
「なぁにぃ!?」
「どれだけ正確かわかんねーけど、多分あと40秒!」
「多分って何だ多分って!!」
ここにきてとんでもない障壁だ。元に戻す組が一組ずつだとは。時間に余裕があるならまだしも、もう一分を切った段階じゃ、数にも限りがある。
「どのペアが最初だ!?」
「とーぜんオレたちだ!!なぁジュビア!?」
「は、はい!」
「そうはいかないわ!オスガキの体から一刻も離れなきゃ!!」
「俺もネコのままは勘弁!!」
「何言ってんの!最初はあたしたちよ!!」
「いや!俺たちが先だ、これは譲れん!来たばっかりのウェンディが可哀想だろ!」
「えっ!?わ、私は…その…」
「待て!私がずっとこのままだと
「オイラはどっちでもいいよ~」
戻れるのが一組ずつだと分かった瞬間我先戻ろうと躍起になって言い争う。何と醜い。人間追いつめられると、こうまで怖く醜くなるのか…。
「あ、あの…!」
すると、オドオドとしながらも
「私は…私はシエルとシャルルのペアが最初がいいと思います!」
『…え…?』
一瞬凍り付くギルド内。そしてそのすぐ後に、入れ替わり組を中心に驚愕の声が上がった。
「う、ウェンディ!?」
「ペルさん、ごめんなさい…それでも私は、一番の友達であるシャルル達に、不自由な思いをさせたくなくて…それで…!」
「っ!ウェンディ、アンタ…!」
少しばかり涙を潤ませながらそう告げる
自分だって元の体に戻りたいという思いはあるはずなのに、友たちの事を優先する彼女の姿勢に、
「そうだな、それがいい。俺が間違っていたよ。自分よりも大切な人を優先させる。その心こそが正しいんだよな」
「ペルさん…」
「俺もウェンディに賛成だ。最初はシエル達だ。俺たちは後回しで良い」
自分の事を優先的に考えてしまったことを悔い、大切な友や弟を優先させて自分たちを犠牲にするその言葉に、場にいる全員が言葉を失った。何と清らかで、気高き心の持ち主たちだろう。そして多数決方式で言えば、これで最初に戻れるのはシエルとシャルルと言うことになる。
「そんなこと聞いてやすやすと戻れるかぁ!最初は兄さんとウェンディだ!それでいいよね、シャルル!?」
「あったりまえよ!アンタたちを絶対戻してやるんだからぁ!!」
「「あれーーーーーー!!?」」
まあ、当の本人たちがそれで納得すればの話だが。最早分かり切った結果だっただろう。胸をうたれる自己犠牲の言葉を耳にして平気でいられるような薄情者ではない。大切に思う友や家族の為に優先させられた二人もまた最初の候補を変えた。
「何言ってるんだ!俺たちの覚悟を無駄にする気か!?」
「兄さんたちを差し置いて戻ったら色々と居たたまれないよ!」
そして始まる再口論。先程の醜い言い争いとは違い、最初の権利を譲り合うという、どう反応していいのか分からない。
「…決めました…!」
「え、おい?ジュビア…?」
すると、このやり取りをずっと見ていた
「ジュビアは最初のペアを、グレイ様たちにすることを主張します!」
「おいーっ!!?」
当たってしまった嫌な予感。ジュビアの事だからやっぱりグレイ主体にものを考えてしまうだろうと、何となく察することが出来てしまった
「早まんじゃねぇジュビア!お前だって元に戻りてぇだろ!?」
「確かに戻りたくないと言ったら嘘になります…!でもそれ以上に!これ以上グレイ様がルーシィに独占されているのを見たくないんです!!それにグレイ様の為ならば、ジュビアはこの命を捧げることも出来る!!」
「重てぇよ!?あとオレの顔でそのセリフ言うのやめてくれぇ!!?」
数分前までジュビアの体で好き勝手やって彼女を困らせていたのとは完全に真逆になっている。ナツはようやく心の底から理解した。この女は、グレイの為ならばどんな苦難も乗り越え、甘んじる女だと。恐ろしや。
「15秒切ったよー?」
「あー!!分かった!」
と、このタイミングでついにレビィからその声が上がった。フリードと時折討論しながらようやく固められたもののようだ。…誰も気付かなかったが、何やら机の前にいる人物が一人増えている気がする。
「12!11!」
「レビィちゃん!フリード!」
「ようやくだがついに解けた。解説するとだな…」
「説明は後にして!早く!!」
解説を始めようとするフリードだが、一刻を争う為に
「9!8!ぐほぉ!?」
「鬱陶しいから黙ってろ」
いつの間にか机の前にいた人物であるガジルが、カウントダウンをしているマカオを鉄竜棍で殴り飛ばした。何人かが心の中で「ナイス!」と言っていたのは他の誰も知らない。
「よし、レビィ!」
「分かった、行くわよ!」
残り時間はわずか。レビィは依頼書の近くに手を置きながら、その呪文を唱えた。
「『アルボロヤ、テスラ、ルギ、ゴウ』!!」
言葉だけを聞くと、意味も分からないように聞こえる言葉の羅列。だが彼女がそれを唱えた瞬間、依頼書を中心に虹色の光が辺りを照らし、入れ替わった者たちの体を包み込む。呪文も一度だけじゃなく、何度も唱えることで、場にいる全員を元に戻そうと声を張り上げる。
そして、虹色の光が収まった後、場にいる者たちが呆然としながら立っている中、確かな変化を感じた者たちがいた。
「あ、元に戻った!!」
「オレもだ!やれやれ…」
その声をあげたのはルーシィとグレイのペア。どうやら彼らはうまく戻れた様子だ。ルーシィは喜びをあらわにし、グレイは九死に一生を得たことで一息ついている…が、入れ替わっていた時同様に、口から氷の欠片が零れ落ちた。入れ替わった後遺症は残ってるみたいだ。
「レビィちゃん、ありがとう!フリードも!!」
「やったぁ!」
「うむ」
喜びのあまり、レビィの元に駆け寄って抱擁するルーシィ。そして同時に、どうやって元に戻せたのかを聞くと、レビィは解説を始めた。
「言葉そのものに意味はなかったの。逆さ読みをやってみたんだ」
「今よりも古代は文字が少なかった。だから、色んな意味を伝える際に、別の効力を発揮するように作られていたのだ」
「そう!だから、呪文を逆さまに読んでみたら、魔法が解けたってわけ!」
合間に
「ちょっと待て!?オレたちは解けてねーぞ!?」
「「えーっ!!?」」
と思いきやジュビア…ナツの叫んだ言葉が、彼女たちに衝撃を与えた。解けてない?つまりまだ入れ替わったままだという事だ。
「私もだ!ネコのままだぞ!!」
「オイラはどっちでもいいけどね」
更にはエルザとハッピーもまた入れ替わったままのようだ。未だハッピーの姿であることに愕然としているエルザと、尚も楽観的なハッピー。何故?
「グレイ様ー!良かった、ルーシィから解放されたようで!ジュビアは安心しました!」
「ちょ、ナツの顔と声でそんなセリフ言うな!ちょっと気持ち悪ィ!!」
「きもっ!!?」
そしてナツがジュビアのままと言う事は当然
「どうやら僅かの差だな。残りは制限時間に間に合わなかったってことだ」
「そそそそんなぁ!?どーすりゃいーんだよぉ!!?レビィ、もっかいやってくれ!!」
「あ、あれ?何か、微妙に間違えちゃった…かも…」
ワカバが告げた言葉を聞いた
「文字が少ないうえに、イントネーションを変えることで更に別の意味に変えているのも古代文字の特徴だ。どうやら、その微妙な違いも今回の呪文にあったのだろう」
「じゃあ、オレたちずっとこのままかよ!!」
「グレイ様に嫌われぁ!火も止まらないし、もういやぁ~!!」
「悪夢だ!悪夢以外の何物でもな~い!!」
「オイラはどっちでもいいけどね~!」
続けざまに告げたガジルの解説に更に一同から嘆きの声があがる。約一名を除いて絶望を抱えたような雰囲気を漂わせている中、これまでずっと言葉を発さなかった残りの組達もとうとう口を開いた。
「視線が元に…」
「戻ってる…?」
そう口にしたのは、ギルドで人間年少組のシエルとウェンディだ。その言葉を耳にした一同は「視線が元に戻ってる」と言う言葉の意味を瞬時に理解した。それはつまり入れ替わりから戻ったという事だ。
「シエルやウェンディたちも、元に戻れたってことか?」
「何ィ!?じゃあ何でオレたちだけが…!!」
「やっぱり、時間制限か?」
すぐさま理解して声を出したグレイの言葉、それに続くように嘆いたり呟いたりしている周りの様子を見て、当人たちも元に戻れたことを理解したようだ。「やったぁー!!」と互いに喜んで手を取り合う。
「良かった!元に戻れた!」
「うん!一時はどうなるかと…」
だが、そこまで告げたところで、何故か二人の笑顔は固まった。その奇妙な様子にほぼ全員が首を傾げてみていると…。
「な…!」
「何で…!」
「「何で(俺/私)が目の前にーーっ!!?」」
『今度はそっちかぁーい!!』
二人の叫びに全員が察した。どうやら本当の意味では元に戻れていなかったらしい。いつの間にか人格の位置がシャッフルされ、
「って、ちょっと待て!?じゃあ、あいつらと入れ替わってた方は…?」
気になってグレイが、彼らと入れ替わっていたペルセウスとシャルルの方へと視線を移すと…。
明らかに絶望しているというオーラを抱えた当人たちの姿が見えた。あ、これ向こうもそれぞれ戻れないままになってるわこれ…。
「少女の次はネコか…やっぱ俺、将来マトモな死に方しねぇのかな…」
「オスガキから解放されたと思ったら、何で今度は
「既に入れ替わった者たちの間で更に入れ替わり?ふむ…どうやらこの呪文、まだ隠されている意味があるようだな…」
虚ろとなった目でブツブツと呟く
「えっと…何かやけに詳しくなってない?ガジル…」
「……ん?」
すると、名を呼ばれた本人は若干のタイムラグを挟んで、こちらに反応を示した。まるで、今呼ばれたのが自分ではないことを表すように。
「はぁ?何言ってんだよチビ。つーか、何だかさっきから前髪がうぜぇな…」
すると、レビィの後方からやけに口調が荒くなったフリードが声をかけてきた。それを見たレビィとルーシィは、あまりの衝撃に口元が引き攣るのを自覚した。そしてフリードもまた、レビィたち…正確にはガジルの姿を見た瞬間、その表情を固め、目を見開く。
「え、おい…何でそこにオレが…!?」
「…そういう事か。オレとガジルも入れ替わったらしいな」
「「ええーーーーーっ!!?」」
またもイヤな予感が当たってしまった。どうやら先程レビィが唱えてしまった呪文が、予想もつかない効果を生んでしまったらしい。
「ふざけんなテメェ!オレの体返しやがれ!この前髪うぜぇんだよ!!」
「そうしたいところだが、これはもう一度方法を探すしかない。…ふむ、これが他人の体…
「何でそんなに冷静なの…?」
困惑している
だが、混沌はこれに留まらなかった…。
「まあまあ、他にも何か方法があるじゃろ…ん?」
「何だか…私背が縮んでない?…あ!」
「ええ!?まさかミラさんとマスターも!!?」
カウンターに胡坐をかいて座っているミラジェーンと、珍しく混乱しているマカロフ。この二人もまさかの入れ替わりの対象に。
「マジかよ!他の奴らまで入れ替わってんのか!?…ん?何だか体が酒くせぇ…?」
「おっかしいわねぇ~、酒が飲みにく…ってえ!?私がビックスロー!?飲みにくかったのって…そーゆーこと!!?」
ビックスローとカナも…。
「漢は諦めが肝心だぞ!ナツ!って、何だこのやけに高い声は?視界も妙だな…?は!?」
「ちょっと!?何で私がエルフマン!?ぜ、全然美しくない…!!」
エルフマンとエバーグリーンも…。
「おい、ドロイ…あっ!?」
「あ?何だよジェット…うぁっ!?」
「「オレたち入れ替わってんぞ!!?」」
「おいおい、こりゃ更にややこしくなって…ゲホッゲホッ!何でオレタバコ吸ってんだ!?」
「ん?って、マカオ!?もしかしてオレたちも入れ替わってんのか!?」
ドロいとジェット、マカオとワカバもどうやら入れ替わってしまったようだ。ただこういうのも失礼だが、この二組が変わったところで大して変わらない気がする。
「か、カオスだ…!それ以外の何物でもない…!!」
げんなりとした表情を浮かべて呟く
「シエル…不甲斐なくなった兄を、どうか許してくれ…。せめて…せめてお前を抱えて戦いの助けになれるよう、努力するから…!!」
「兄さん!?そんな後ろの方に前向きに取り組む発言やめてーっ!?」
最早戻ることを諦めたような発言を口にする兄に対して心の底から溢れ出たような叫びをあげる弟。だが、口から出てきたその声を聞いた瞬間、
「えっ…そう言えば冷静になって考えてみると…今、俺はウェンディの体の中にいるってことだよな…?それってつまり…ウェンディの体が、俺自身の意思で動かせているってこと…!?」
意中の少女と距離を縮めるどころか、その少女の体と入れ替わるというトンデモ体験が現在進行している事実に今頃実感を抱えた彼は、色々と脳内の許容量が抑えられなくなっていき、顔に集中した熱がオーバーヒートを起こして煙が噴出。そしてそのまま仰向けに倒れてしまった。
「ええー-っ!?し、シエル!?みんな大変!!シエルが急に倒れましたーー!!」
近くにいた
「これはまた夢のよーなナイスバディ!!」
「きゃああっ!!レビィ、フリード、なんとかしてぇーー!!」
そんな中、妙に張り切ってグラビアポーズをとる
「…もう…お手上げ、です…」
「わぁーい!みんな入れ替わったよぉ!面白ーい!!」
「喜んでる場合じゃねーっ!!」
乾いた笑いと同時に呟いたレビィの言葉。そしてこの混沌とした状況で唯一嬉しそうな
────────────────────────────────────────
この魔法は決して、空想の中だけに存在するものではない。彼らが暮らす日常のすぐ隣で、ほんの少しバランスが崩れた魔法。
この世に存在する魔法の中には、まだまだ明かされていない不気味な魔法が存在している…。
てなわけで…また次回お楽しみに…。
おまけ風次回予告
シエル「…あれ?何かいつの間にか元に戻ってる?」
ウェンディ「色々と大変だったよね。ペルさん、背が高いから視界にあんまり慣れなかったよ…」
シエル「俺もシャルルの体、慣れる気がしないや…。慣れると言えば、仕事の方は大丈夫?ウェンディ」
ウェンディ「そのことなんだけどね。そろそろ外の町での仕事もやってみたいなって思うの」
シエル「外の町か…いいかもしれないね!」
次回『ウェンディ、初めての大仕事!?』
ウェンディ「それでね、ミラさんから早速外の町での仕事をもらったの!」
シエル「よかったじゃん!どんな依頼なの?」
ウェンディ「えっと…『ありがとうございます』…?」
シエル「…ん…?その喋り方は…!!」