FAIRY TAIL ~天に愛されし魔導士~   作:屋田光一

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久々に余裕をもって投稿できました。忙しい時期も抜けたので、これからはちゃんと更新できていけるといいな…。

コロナのワクチンを3回目の接種も完了したので、多分体調不良をおこして明日の返信がより遅くなるかもしれません。まあ、普段書いてくれている方々以外あまりいないので、少しずつ返していくかもですが。(汗)

それと、GWの時期ぐらいを予定に、前後編に分けていた第71話 ウェンディ、初めての大仕事!?を統合させようかと考えています。当時の前書きとかもその時に多分違う形で残す、かも?


第88話 合流せよ、妖精たち

未だ止むことのない兵士たちの歓声を耳に拾いながら、ネコ二匹も加えてシエルたちは再びペルセウスの捜索を再開している。どこにいるのか見当もまだついてはいないが、ペルセウスが起こしていたと思われる爆発音が鳴っていた場所へと向かう。

 

「何か、大変な事になってきたね…」

 

「王国軍によるエクシードへの攻撃…人間とエクシードによる戦争の火蓋が切って落とされたことになる…」

 

「私たちには関係のない事よ。どっちもどっちだし…勝手にやってればいいのよ!」

 

エクシード側にかかりきりになっている間に、急ぎペルセウスと合流して滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)の二人の救出。自分たちがするべきことは変わらない。自分たちに仇なす王国とエクシードが争ったところで、結果的につぶし合いをすることに繋がるから放っておく、と言うのがシャルルの意思らしい。

 

城内の通路を走りながら目的となる人物の姿を探すも、その目印にもなっていた城内の破壊音はやはり一切聞こえない。圧倒的な力を保持するペルセウスに限って、王国軍にやられたとは考えられないが、何があったのかと心配になる。

 

「あたしたち、ちゃんとペルさんに近づけているのかしら…?」

 

十数分前から途絶えている手掛かりを元にしているが故に、ルーシィは不安を感じずにはいられない。シエルも同感と感じているが、今はとにかく動かない事には始まらない。止めることなく足を動かし続けて、その青年の姿を探し続ける。

 

 

 

 

 

 

だがその行く手を阻むように、シエルたちのすぐ前方に一本の槍が飛んできて突き刺さり、その衝撃で彼らを吹き飛ばした。

 

「西塔の地下…あるいは散々暴れてくれたペルセウスとの合流。二つのうちどちらかに動くと睨んでいたぞ」

 

そう言葉を発しながら近づいてきた人物を目にし、シエルたちは顔を顰めた。いち早くこちらの動きを察知していたエルザが一個小隊を引き連れて追い付き、こちらをここで阻もうとしている。

 

「もう!あたしたちに興味無くしたんじゃないの!?」

 

エクシードと対峙するための準備でもしていて隙だらけならば、と思っていたのに、こちらを逃がす気は一切無さそうな様子だ。面倒なことこの上ない。ルーシィが思わず叫んだ内容に同意を示そうとシエルは顔をあげる。だが、あげた時に目に映ったのは、自分たちの目の前に突き刺さったままのエルザの槍が、突如光に包まれた光景。それに声をあげるよりも先に、その槍から爆発が発生し、再びシエルたちは吹き飛ばされる。

 

少年も少女もネコたちも、満足に戦う力を奮えない状況下で、最早抗う手段は残されていない。目の前に立ちはだかる最強格の武力を有するエルザに対抗できる者は、今この場に存在しない。

 

「これをまともに食らってまだ生きているとはな。だが、これで終わりだ」

 

突き刺さっていた槍を石床から引き抜き、彼女は一番近くに倒れているシエルに狙いを定める。ルーシィがそれを見てやめるように懇願するが、口元を吊り上げながらこちらに狙いを定めるエルザに止まる様子はない。もう少しだったのに。こんなところで自分の命は尽き果ててしまうのか。悔しげに表情を歪めながらシエルが彼女を睨むも、エルザの方は一切感情を揺るがせない。そしてその槍をシエルに突き刺そうとした瞬間。

 

「やめろーーっ!!」

 

(エーラ)を背中から出してハッピーが飛び上がり、突如動いたことで虚を突かれたエルザの腹部に激突。そのままハッピーと共に壁に背中から激突し、その拍子で離した手から槍が床に落ちると、先程同様に爆発を発生させ、床を破壊。その際に出来た穴からシエルたちは下の階層へと落下する。

 

悲鳴を上げながらも、気力を振り絞ったことで意識が飛びかけているハッピーの元にルーシィが近づいていき、彼の身体を抱える。近くではシエルもシャルルの身を案じて距離を詰めたが、下の方に見えた床への激突に身構え、一同は固く目を瞑る。

 

 

 

 

 

だが、石床に叩きつけられそうな位置まで近づいた瞬間、その場から青い魔法陣が浮かび上がり、勢いよく水が噴射。噴水の如く打ち上げられた水に落下の衝撃は押し返され、まるで水のベットのようなその上で彼らの落下は止まった。

 

「た、助かった…?」

 

シャルルが呆然とした声で呟くと、ある方向から一人分の足音が聞こえてくる。思わずその方向に全員が顔を向けると、途端にその表情は明るいものになる。

 

 

 

 

「シエル…だよな…?」

 

「兄さん!!」

「ペルさん!!」

 

何故か面食らったように固まった表情のままの、探し人・ペルセウスの姿があった。右手には、噴水を発生させた元となる水を操る槍、トライデントが握られている。

 

「そうか、魔水晶(ラクリマ)から元に戻れたんだな!良かった、本当に…!」

 

「え?」

 

探していた人物を見つけられたことに安堵していたシエルたちは、同様の表情に変わったペルセウスに言われた言葉を聞いて、思わず首を傾げた。魔水晶(ラクリマ)から戻れた?何の事だろう。噴水の勢いを少しずつ弱めて自分たちを降ろしながら告げた言葉に対しての反応に、ペルセウスの方も何やら困惑を示している。

 

「俺…魔水晶(ラクリマ)にされてないよ、兄さん?」

 

「……え?」

 

「理由は分かんないけど、アニマに吸い込まれずにアースランドに残って…そう言えば、兄さんも無事だったの?何でなのか分からない?それにどうして兄さんは魔法が…」

 

どうやらペルセウスはやはりと言うべきか、シエルは未だに魔水晶(ラクリマ)にされたままの状態だと誤解していたらしい。シエルもシエルで、兄が無事だったのを確認するまで、彼も魔水晶(ラクリマ)の状態にされていると思い込んでいたのだが。

 

兄弟揃って魔水晶(ラクリマ)にされなかったことに何か理由があるのでは?と考えてはみたものの浮かばない。兄なら何か知っているかもと聞いてみたが、その質問の答えが出る前に、何かに気付いたシャルルがその話題を切った。

 

「あんたたち、悠長に喋ってる暇はなさそうよ…」

 

そのシャルルの言葉を聞いて全員が彼女の向いている方向に目を向ける。早くも追いついて来たらしいエルザが率いる一個小隊の兵士たちが、こちらに…正確にはペルセウスの姿を見て一気に警戒心を高めて槍を構えていた。

 

「合流される前に仕留めておきたかったが…厄介な事になった…」

 

先程までの余裕そうな表情は引っ込み、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべて、ペルセウスの方を睨みつけている。その後ブツブツと「大層な口を叩いておいて結局放っておくとは、何をしているんだあの引きこもりめ…!」などと言った呪詛のような何かを自分にしか聞こえないような声量で延々と続けており、周りの兵士に意図せず恐怖を植え付ける。

 

彼女の記憶の中で、人智を超えたバケモノじみた魔法を使いこちらを圧倒するペルセウスの姿はまだ鮮明に残っている。そんな彼を、抹殺するように言われている彼の仲間と合流させてしまったことは最大級の痛手と言っていい。

 

「あの様子だと、エドラスのシエルはしばらく出てこれないみたいだな。好都合」

 

右手に握りしめる水を操る槍の矛先をエルザたちに向けながら、ペルセウスは戦闘の態勢に入る。自分を追撃する途中で戻っていったことと、エルザの様子から、エドシエルが再びこちらにすぐ戻ってくる線は薄そうだと判断する。

 

「話は長くなりそうだ。一度ここを切り抜けてから、色々と情報を交換する必要がある」

 

「今、俺たち魔法が使えないから、兄さんに任せるよ。それと、西塔の地下にウェンディたちが捕まってるから、そこに向かう道中で話も聞く」

 

「脱獄したのはあいつらじゃなかったのか…了解だ」

 

詳しい話はあとで聞くとして、今この状況を打破するために必要な項目だけは簡潔的に伝え、ペルセウスは弟が伝えたその状況を胸にしまい込む。こちらへの敵意を感じ取った王国軍の兵士たちに、一気に緊張が走り出す。

 

「エルザ隊長ー!!」

 

すると、シエルたちの後方。エルザたちがいる通路の反対側から、その声と共にもう一つ一個小隊が応援なのか駆けつけてくる。

 

「挟まれた!?」

 

「まずいわ…!このままじゃ巻き込まれるわよ!?」

 

これが単騎であれば、どの方向から来てもペルセウスは余裕で突破できただろう。しかし今この場には傷つけるわけにはいかない仲間たちが周囲に存在する。仲間を助けるための応援として合流は果たしたが、結局足枷となっていることにシエルは表情を歪める。

 

「ペルセウスと共にいる者たちは絶対逃がすな!」

 

挟み撃ちを狙えるという事ですぐさま指示を飛ばすエルザ。ペルセウスの動きを少しでも抑えられればこちらが有利に進める状況に持っていけるという思惑も込めてある。だが…。

 

「そ、それが、敵はそいつらだけじゃ…!」

 

焦燥を浮かべて何かを伝えようとした隊長格の兵士。だが次の瞬間、周り諸共床から飛び出してきた氷の柱によって突き飛ばされる。その影響で辺り一帯に冷気が流れ込み、エルザと他の兵士、シエルたちも含めてその顔を驚愕に染め上げる。

 

「いや、問題なさそうだ…」

 

ただ唯一、ペルセウスだけはその状況を起こした要因を、すぐさま理解した。流れ込んだ冷気は霧のようにあたりに充満する。そしてその霧の向こう…あとから来た兵士たちの後ろから二つの人影がこちらに向かってきていた。

 

「おいコラてめえら。そいつら、ウチのギルドのモンだと知っててやってんのか?」

 

「ギルドの仲間に手を出した者たちを、私たちは決して許さんぞ」

 

その人影は、こちらを警戒して槍を構えた兵士を前にしても一歩も引かず、片方が手をかざせば向けられた兵士が氷の中に閉じ込められ、もう片方は右手に持つ剣をもって兵士の槍を斬り、その意識を刈り取る。

 

その言葉と声、そして魔法を見聞きし、理解したシエルたちの表情は、驚愕から歓喜へと変わっていく。

 

「てめえら全員、オレ達の敵ってことになるからよォ…妖精の尻尾(フェアリーテイル)のな!!」

 

氷の魔法を扱うは短い黒髪と垂れ目が印象的な、上半身裸の青年グレイ・フルバスター。

 

直剣を手に持つは緋色の長い髪をおろし、鎧を身に纏った凛とした女性エルザ・スカーレット。

 

「グレイ!」

「エルザ!」

 

両者とも自分たちの知る、アースランドに存在する妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士。頼もしき仲間の登場に、シエルとルーシィが表情に喜びを浮かべながら仲間の名を呼んだ。

 

「な、何だ!?エルザ様がもう一人…!?」

「あっちは、グレイ・()()()()()か…!?」

「違う!そこのペルセウスと同じ、アースランドの者どもだ!」

 

こちらに歯向かうように現れたその二人を、兵士たちは困惑しながらも見定めて、その正体を突き止める。魔戦部隊の隊長と同じ容姿の女性と、エドラスにも存在するギルドのメンバーの一人に酷似した者たちとはまた別の存在。異世界側の人間である事を、即座に判断している。そして自分と同じ顔をした女性の登場に、敵側であるエドエルザも、少なからず動揺を露わにしていた。

 

「グレイ!エルザ!いいタイミングで来てくれた!他のみんなは!?」

 

「いや、いねぇよ。()()()()()()だ」

 

「はっ?」

 

何やらペルセウスが彼ら以外の仲間の所在を聞いているが、グレイたちは自分たちだけだと伝えるとペルセウスの目が困惑で見開かれる。話が見えない為シエルとルーシィは尚の事だ。

 

「他のみんなはまだ見つかっていない。今私たちも探しているところだ」

 

「そう言う事だ。っつーわけで…」

 

エルザも加わって自分たちの状況を伝えるが、悠長に話している余裕もない。グレイは再び手を合わせて己の魔力を集わせていく。そして狙いはシエルたちを挟んだ向こうにいる兵士たちに向けられる。

 

「オレたちの仲間は…魔水晶(ラクリマ)にされた仲間はどこにいるんだ!ア!?」

 

床を伝って再び鋭い氷山を作り出すグレイ。攻撃を覚っていたペルセウスはシエルたちを瞬時に抱えて横に避難。驚愕に固まっている兵士たちのみを一気に吹き飛ばす。

 

だが唯一グレイの攻撃を跳躍して躱していたエドエルザが、天井を足場に空中からグレイ目掛けて貫こうと飛び掛かる。グレイはそれに一瞬驚愕を見せるも、間に入ったこちらのエルザが剣でその一撃を受け止める。

 

一瞬の静寂。その直後、辺りにとてつもない魔力の奔流が風となって周囲に吹き荒れる。

 

「エルザ対エルザ…!?」

 

片や王国の中で最強格と言われる女隊長、もう片方はギルドの中でも最強の女魔導士。共にエルザの名を持つ者同士の激突。激戦になることは今からでも察することは出来る。

 

「エルザ、加勢は!?」

 

「不要だ!この私は、私が相手をする!」

 

一度エドエルザさえも圧倒したペルセウスがそう尋ねるが、他ならないエルザがそれを拒否。自分と同じ顔と同じ名前の存在が、自分の仲間を傷つけていたことに思う事があったのだろう。それを聞いたペルセウスは特に反論もせず、シエルたちの方へと目を向ける。

 

「よし、俺たちは他のみんなを探すぞ。ナツたちは西塔の地下だったな?」

 

「うん!」

 

「じゃあ、早いとこ向かうぞ!道中でオレたちの話もする!!」

 

ひとまずはエドエルザの相手をエルザに任せ、シエルたちはペルセウスたちも加えて今度こそナツとウェンディの救出へと向かいだす。それを確認したエルザは、鍔迫り合いに発展していたもう一人の自分と一度距離をとる。

 

「まさか自分に邪魔されるとはな」

 

「妙な気分だな」

 

同じエルザでありながら妖精女王(ティターニア)と妖精狩り。相対する関係に立った二人のエルザの激突が始まった。

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

「それで、まずは…兄さんはどうやってエドラス(ここ)に?」

 

西塔の地下目掛けて移動を開始しているシエルたち。両手首に付けられていた餅のような拘束具は、既にグレイが凍らせて壊してくれたおかげで解けている。そして道すがらまず最初に聞いたのはペルセウスの話だ。王城内で暴れまわっていたことは理解していたが、どうして無事だったのかまでは聞けていない。

 

「まず一つ言うと、俺の場合は大体予測がついている。アニマが発動した際に、俺が吸い込まれないように守ってくれた神器のおかげだ」

 

「神器が!?」

 

ペルセウスもまた、アースランドに取り残されたうちの一人。気付いた時には街も人も何もかもが消えていて、それがすぐに異常な事態であることは理解していた。そしてそのすぐ後、ミストガンにエドラスへと送ってもらったのだという。

 

それとは別として、アニマによって他のみんなが吸い込まれてから、換装でずっと呼び出せない神器が存在していることに気付いた。

 

「八尺瓊勾玉だ。アニマにまで効くとは驚いたが、その代わりしばらくは呼び出せなくなっちまった」

 

「まさか、あのアニマを状態異常と認識したってこと!?」

 

毒や体調不良を引き起こす魔法を自動的に遮断することが出来る神器・八尺瓊勾玉。その作用は、なんとアニマによる吸収、及び魔水晶(ラクリマ)に変える魔力化(マジカライズ)の効果を、状態異常とみなし、ペルセウスに及ばないよう遮断したようだ。

 

だが、神器と言えど万能とは言えず、許容量を超えるほどの魔力を遮断していくと、勾玉は破壊される。換装で呼び出せる武器が破損、または破壊された際には、魔導士のストック空間で修復されるまでは換装を使っても顕現することが出来ない。これはエルザの魔法も同様だ。故に、今のペルセウスは常に換装で出していたその勾玉を、今はつけていない状態なのだ。

 

「ミストガンからは、滅竜魔法の(特殊な)魔力を持つナツたち、エドラスから来たハッピーとシャルル、そしてあいつ自身が無事を確認したルーシィ以外は、みんな吸収されたと聞いていた。だから驚いたよ。シエルがルーシィたちと一緒にいたのは」

 

シエルの姿を見てやたらと驚いた反応をしていたのは、そう言った理由があったからかと、納得した。だが何故シエルまでもがアニマの影響を受けなかったのかまでは、結局のところ兄にも見当がつかないらしい。

 

「じゃあグレイとエルザは?二人も魔水晶(ラクリマ)にされてたはずだけど、どうして?」

 

「王都の広場に、デカい魔水晶(ラクリマ)があっただろ?」

 

「まさか…あれが!?」

 

次話題に出たのはグレイとエルザのこと。シエルたちの特殊な例を除いて、他の者たちは魔水晶(ラクリマ)にされているはずだった。そしてその推測は正しく、広場で厳重に警備されていた巨大魔水晶(ラクリマ)の一部。あれがそのグレイとエルザの分だったらしい。

 

「だが、まさかあのスケールでたったの二人か。いや…戦力を鑑みれば、相応のデカさだったとも言えるか」

 

その魔水晶(ラクリマ)の規模はペルセウスも目にしていたようで、十人ぐらいはこれで一気に解放されるだろうと思いきや、まさかの二人。ギルドにいた魔導士や街の人たちの事も考えると本体は相当巨大…しかも桁違いの魔力を有しているマカロフやギルダーツもいるのだ。あの二人、一個人分だけで広場の分といい勝負するんじゃないだろうか?

 

だが一つ気になるのは、魔水晶(ラクリマ)にされた者たちを元に戻す方法だ。何の手掛かりも無かった状態で、どうやって戻せたのだろうとハッピーが質問すると、グレイはその答えを代わりに応えた。

 

「ガジルが来たんだ」

 

「ええっ!?」

「あ、そっか!あいつも滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)だった!」

 

ナツたちと同じ滅竜魔導士(ドラゴンスレイヤー)であるガジル。彼もまた吸収されずにアースランドに残っていた。今にして思えば、滅竜魔法の特殊な魔力が関係しているという時点で考えつくべきだった盲点である。今の今まで何で気付けなかったんだろうと、シエルは少しばかりショックを受けた。

 

「そんで、俺と一緒にガジルも送られたんだ。王都までは一緒にいたんだが、魔水晶(ラクリマ)にされたグレイたちを戻す隙を作るために、俺が王城内を暴れまわってたってわけだ」

 

「ここに来るまで見てきたが、ひでぇ有様になってたぜ。どんだけ暴れたんだよ…」

 

私怨のままに暴れまわっていた惨状を目の当たりにして、グレイは引き気味にペルセウスの行動を理解したそうだ。ある意味引き付けるには最適ではあるが、それにしたってやりすぎの一言である。

 

「てか…あいつ何で自分はコッチに来ないわけ?」

 

「アースランドでやらなきゃいけないことが残っているらしく、そっちを達成したらすぐに向かうと言ってた。だが、日数を鑑みると、相当苦戦してるみたいだ」

 

ミストガンの事についてルーシィが尋ねると、ペルセウスがそう答えてきた。先程から不思議に思っていたが、ペルセウスはやけにミストガンに関して理解が深い気がする。こっちでは教えてもらえなかったことも、彼本人から伝えられているらしいし。

 

『私の任務は失敗した…!ペルと約束した日数さえ、稼ぐことも出来なかった…!』

 

「(そう言えばミストガン…兄さんと交流もありそうな口ぶりだったな…)」

 

ふと思い出したミストガンから呟かれた兄の事。あれを考えると、兄とミストガンは、自分も知らない交友関係が存在しているという事だろうか?同じS級だから、というのも理由としては弱い。それだったら今頃、エルザやギルダーツともミストガンは仲がいいはずだ。

 

「こっちの世界じゃ滅竜魔法は色んな役割を果たすらしくてな。魔水晶(ラクリマ)にされたみんなを元に戻すことが出来るんだよ」

 

「本当!?」

「そっか、それで…!」

 

そしてここで魔水晶(ラクリマ)を元に戻す方法も判明した。だからガジルがグレイたちを元に戻すことが出来たのか、と納得もした。滅竜魔法をどのように使ったのかまでは定かではないが、これは貴重な情報である。

 

「オイラ、みんなの魔水晶(ラクリマ)どこにあるか知ってるよ!」

 

「何ッ!?」

「マジか!ハッピー!?」

 

そして更に次なる情報が。ハッピーとシャルルは、切り取られる前の、本体と言える更に巨大な魔水晶(ラクリマ)を見つけていた。詳細は彼らも話さなかったが、王都の遥か上空。エクシードが住む国、エクスタリアが存在する浮遊する島とほぼ同じ高度に存在するもう一つの浮遊する島。その島全てを埋めるほどの大きさで、巨大な魔水晶(ラクリマ)が存在している。

 

その魔水晶(ラクリマ)を探すため、今ガジルは駆けつけた王国兵を相手に街中で暴れているそうだ。

 

「ガジルを魔水晶(ラクリマ)のところまで連れて行けるか?」

 

「ガジルならみんなの魔水晶(ラクリマ)を元に戻せるんだね?」

 

滅竜魔法を用いることで元に戻せるのであればナツやウェンディでも可能のはず。だが今彼らは囚われの身だ。どのみち助け出す必要があるから、ガジルに先んじて魔水晶(ラクリマ)を元に戻してもらった方が有効的だ。

 

「わかった!オイラがガジルをあそこに連れていく!!」

 

(エーラ)を背中に出して飛行し、ガジルのいる王都へと向かい始める。大丈夫なのか。ルーシィからはそんな不安を思わせる言葉が発せられる。

 

「大丈夫よ」

 

だが、そんな不安を吹き飛ばすように、シャルルが真剣な面持ちで答える。信頼の現れ。これまでハッピーを邪険にして来たシャルルがここまで言い切るのだ。だったら更に長い間ハッピーと仲間であった自分たちも、大丈夫と信じる他ない。

 

「そう言えば…ルーシィに兄さん、グレイ、エルザ、そしてガジル。みんなどうして、エドラスでは魔法が使えているの?俺とウェンディたちはさっぱりだったのに」

 

再びウェンディたちを助け出すために進み始めた一行。その道中でシエルが気になっていたもう一つの疑問を尋ねる。エドラスではアースランドと色々なものが異なる。空気中に存在する魔力があまりにも希薄なため、魔法が使えなくなってしまっている。だが、ミストガンに送られたルーシィ、ペルセウスとガジル。魔水晶(ラクリマ)から元に戻ったグレイとエルザはいつも通りに魔法が使えるのだ。その違いは何故なのか。

 

「まさか…シエル、こいつを貰わなかったのか?」

 

「…何それ?」

 

すると目を見開いて、ペルセウスが懐から小瓶を取り出した。その中には、ほぼ瓶一杯に入れられた小粒の赤い丸薬。正直に言って、初めて見たものだ。

 

「『エクスボール』と言って、こっちの世界でも魔法が使えるようになる薬ってところだ。俺とガジルは、この瓶をミストガンから貰ったんだ」

 

「んで、オレとエルザもガジルからこいつを貰った。ルーシィも魔法使えるなら、ミストガンから貰ってるんじゃねーのか?」

 

「あ……そう言えば、来る前になんか飲まされたような…」

 

ペルセウスの話に続くように、グレイも同じような『エクスボール』の入った小瓶を取り出して示す。そしてそれを見たルーシィは、ほぼ一方的に話を伝えられたことですっかり頭から抜けて…と言うか気にすることもなかったらしいが、朧気に残っていた記憶から確か何かを口に投げ入れられたことを思い出した。

 

「ルーシィが言ってた何か飲まされたもの…これの事だったんだね…」

 

「そ、そんなに重要なものだったなんて…」

 

一言ぐらいで済ませたものだったため、シエルも気付くことが出来なかった。まあ、ペルセウスやガジルと違って瓶ごと渡されたんじゃなく、一粒だけを口に投げ入れられただけなのではどのみち解決策になどならなかっただろうが…。

 

「過ぎたことを考えても仕方ない。ひとまずこいつを飲むんだ。これでお前の魔法も復活するはず」

 

一度立ち止まって手渡されたそれを、シエルは掌に置いて少しばかり凝視する。この小さな薬一つの有無が、このエドラスにおける自分の戦いを左右していた。こちらに来てから、己の無力を味合わされた数日。正直言って、相当悔しかった。

 

だがここからは、もう何もできない自分ではない。3年にわたって習得、研鑽を続けてきた己の魔法。それが今、再び使えるようになるのだ。その事実を噛みしめて、シエルは自分の口の中にその丸薬を放り込み、一気に飲みこんだ。

 

「!!ん~~~~……!!」

 

その丸薬を呑みこみ、体に取り込んだ瞬間、己の中に枯渇していた力が湧き出てくる感覚を覚えた。今まではどこか抜け落ちたような、何か一つぽっかりと穴が開いたような感覚をどこか否めなかった。

 

だがそんな虚無感は、エクスボールを一つ入れただけでだんだん満たされていく。己に空いていた穴を埋め尽くすように魔力が埋まっていく感覚を覚える。

 

「シエル…?」

 

突如頭を俯かせて両拳を握り、力むような態勢をとった少年にルーシィが心配になって声をかける。そして次の瞬間…。

 

「うぉおおおおおっ!!!」

 

体の奥底から湧き上がったものを放出するように、小さな身体から出たとは思えない大声を張り上げる。それに呼応してか、西塔付近の上空に突如として暗雲が集い、そこからいくつもの落雷が囲むようにして落ちた。

 

シエルの大声と、同じタイミングで起きた落雷に、ルーシィがおっかなびっくりと言う反応で後ずさり、グレイとシャルルも多少驚いたのか目を見張ってシエルを見る。唯一、兄であるペルセウスが復活を実感した歓喜する弟の胸中を察して、笑みを浮かべていた。

 

「これこれ…この感覚だ!よっしゃ!完全復活!もう何も怖くねえっ!!」

 

どこかフラグのように聞こえるが、実際シエルはようやく周りにいる仲間たちと堂々と肩を並べて戦えることを実感している。そう思えば無理もないだろう。どんな敵が立ちふさがっても、ウェンディたちを絶対に助けられると、自信に満ち溢れていた。

 

「久々に頼むぞ!乗雲(クラウィド)!!」

 

前まで出来ていたいつもの感覚で手をかざし、シエルは今この場にいる人数分の大きさで乗ることが出来る白い雲を顕現する。そして我先にと飛び乗りながら、シエルは声を張って仲間に告げた。

 

「これ以上は時間も惜しい!これで一気にウェンディたちの元まで突っ切るよ!!」

 

「おし!」

「うん!」

「おう!」

 

シエルの復活により、複数人を乗せて早く移動できる乗雲(クラウィド)を用いて先に進む時間を大幅に短縮しようという狙いだ。各々が返事するとともに雲の上へと乗ってくる。全員乗ったことを確認したシエルは、早速発進する。久々の為にスピードの調整に気を遣ってもいたが、すぐさま感覚を取り戻して全員が耐えれるぐらいの最高速度で進んでいく。

 

「(今助けに行くわよ…ウェンディ…!!)」

 

同じように雲に乗りながら、未だ囚われている相棒の少女を案じて、シャルルは心の中で彼女の無事を願った。

 

 

 

────────────────────────────────────────

 

 

 

雲に乗って猛スピードで駆けていき、一気に西塔の地下に差し掛かる一行。現在実行されている重大な作戦、コードETDを続行させるには滅竜魔法は必要不可欠。何が起きてもいいように警備をしている兵士も大勢だ。突破しようとしてくる魔導士たちを食い止めようと、奥の方から数十人はいると思われる兵士たちが雪崩れ込むようにこちらへと迫ってくる。

 

「ここは通すな!」

「コードETDの為の魔力は、何人たりとも奪わせぬ!」

「ここで食い止めるぞぉ!」

 

兵士たちの言動から察するに、この先に捕えられているナツとウェンディがいると見て間違いないはず。そうと決まれば…シエルは操る雲を止めるどころかスピードもそのままにして緑色の竜巻の魔力を練り上げていく。続くようにペルセウスは換装で橙の炎を纏った鎖を呼び出し、グレイは右拳と左掌を合わせて、それぞれ構えると…。

 

『邪魔だぁ!!』

 

横に巡る竜巻、橙の炎が螺旋を描いて合わさり、その外側を無数のつららが追随した脅威の攻撃が、縮地足を発動しようとした兵士たちを容赦なく薙ぎ払う。紙切れの如く吹き飛んでいく兵士たちと、それらを作り上げた怒りの顔を浮かべる男たちの様相を見ながらルーシィは色んな意味で戦慄していた。とんでもない力を見せてくれるこの魔導士たちが味方で、心底よかったと。

 

魔法を使用できるようになった今、アースランドの魔導士たちは数ばかりを揃えている程度の兵士たちでは、足止めもままならない強大な戦力となっていた。

 

「あ、あの扉!!」

 

「きっとあそこね!」

 

飛ばされていく兵士には目もくれずシエルの雲で突き進んでいくと、最奥に縦に長い扉が一つあるのが見えた。恐らくここが奥の部屋。そしてこの先にナツとウェンディが囚われているはず。

 

「どりゃあ!!」

 

雲のスピードを少しずつ下げて、タイミングよくシエルが足を突き出して扉を蹴破る。そして開かれた扉の先の空間に、目的としていた者たちは確かにいた。

 

「ナツ!!」

「「ウェンディ!!」」

 

竜の紋章のようなものが刻まれた石板が二つ。その石板にもたれかかるように桜髪の青年と藍髪の少女が、憔悴しきった表情を浮かべたまま眠るように気を失っていた。雲を解除し、シエルとシャルルはウェンディの元に、ルーシィはナツの元にすぐさま駆け寄る。遅れてグレイとペルセウスも近づいた。

 

「ウェンディ!大丈夫!?しっかりして!!」

 

もたれかかった少女の体を少しだけ起こし、シエルは焦りを見せながら必死に彼女に声をかける。息はある。だが魔力を大幅に取られたのだろう。相当消耗していることは目に見えて分かった。

 

「ナツ!起きて、ナツ!!」

 

「二人とも意識がねぇ…」

 

「クソッ!!」

 

どれほど魔力を抜き取られたのか。必死な呼びかけも全く耳に届かず眠り続ける二人の様子に、ペルセウスもグレイも表情を歪めている。

 

「ごめんね…!ごめんね、ウェンディ…!!」

 

守ると決めたのに、危険な目に遭わせてしまった。何もかもままならず、友であり相棒でもあるシャルルは、気を失っている彼女にもたれかかるようにしながら涙混じりに謝罪を叫ぶ。シエル自身も、もう少しだけでも早く到着できていればと、後悔の念が湧き上がっている。

 

「おいナツ!!いつまで寝てんだ、いい加減起きろ、コノヤロー!!」

 

「ちょ、ちょっとグレイ…!」

 

「扱いの差が…」

 

シエルとシャルルが目を覚まさないウェンディを丁重に扱っているのとは対照的に、両肩を掴んで何度も前後に揺さぶってナツを無理矢理起こそうとするグレイ。同様に気絶してしまっているのに対応の違いが露骨すぎる…。

 

「シエル、ルーシィ。取り敢えずエクスボールを飲ませておくんだ。魔法を使えるようにできるこの薬なら、枯渇した魔力も補えるはず」

 

「成程…!分かった!!」

「は、はい!!」

 

ペルセウスがそれぞれに丸薬を投げ渡し、ルーシィがナツに、シエルがウェンディにそれを飲ませようとする。飲み込みやすいように、シエルは豪雨(スコール)を少量出して掌に水を貯め、エクスボールと一緒にウェンディの口の中に流し込む。

 

「ッ!ゴホッ!コホッケホッ!!」

 

飲み込んで体の中に取り入れられた瞬間、意識が戻り始めたのかウェンディが咳き込みだした。ほぼ同じタイミングで飲み込んだナツも、同様に。

 

「ウェンディ!」

「大丈夫?意識は!?」

 

シャルルとシエルが、それぞれウェンディに呼びかける。すると閉じていた目がうっすらと開いて、その目に二人の姿を映した。

 

「っ…シャルル…シエル…みんな…!」

 

そして少々かすれた声で、目に映した相棒と少年、後方にいる仲間の姿を認識する。無理はしないように。そう二人が呼びかける中、後ろから、何かの轟音が聞こえた。

 

「な、ナツ…!?」

 

「ぐっ…!と、止めねぇと…!!」

 

右拳を床に叩きつけ、復活した魔法による炎がそこから燃え上がる。近くにいるルーシィがそれに怪訝の反応を示すが、ナツには今、彼女の姿が見えていない。

 

「んがぁあぁあぁあぁあ!!!」

 

天井目掛けて吠えるように雄叫びをあげ、それと共に勢いよく炎が口から放射される。復活の狼煙のようにも見えるが、ナツの様子からはとてもそうには見えない。

 

「うぉおーーーっ!!!」

 

「ナツ!!」

「おいてめぇ!!」

 

そしてそのまま勢いよく叫ぶと共に出口へと駆け出していく。止めるとは何のことだ。一体何を知ったのか。その答えは仰向けになっていた態勢を起こそうと、シエルに支えられているウェンディの口から明らかにされた。

 

「動いて大丈夫なの?」

 

「うん…それより、大変なの…!ギルドのみんなが…!」

 

心配の声を向けるシエルにも、不安そうな視線を向けるシャルルにも、まず伝えなければいけないと体に鞭を打って、ウェンディはその脅威を伝えた。

 

「王国軍は…エクスタリアを破壊するために…巨大魔水晶(ラクリマ)を激突させるつもりなの…!」

 

巨大魔水晶(ラクリマ)…つまり、ギルドとマグノリアに在していた者たちの、命。それを、反乱を起こした対象であるエクシード達の国にぶつける。そうなれば何が起こるのか、すぐに全員が理解できた。

 

「私たち妖精の尻尾(フェアリーテイル)の仲間を…爆弾代わりに使うつもりなんだ!!」

 

涙を浮かべながら、自分たちの魔力を抽出した老人から聞いたその企みを伝えるウェンディ。衝撃が強すぎる王国軍の目的に、シエルも、シャルルも、誰もが言葉を失っていた。

 

 

 

ただ一人…。

 

「(あの、クズ国王……!一体…どこまでっ…!!)」

 

歯を食いしばり、顔を俯かせ、目から一切の光を無くした神器使いは、傍若無人の国王への殺意を、より一層膨らませていた。




おまけ風次回予告

シエル「グレイにエルザにガジル。俺たち以外にも、ギルドの仲間がどんどんエドラスでの戦いに参戦していくね。不利ばっかだと思ってたけど、希望が見えてきた!」

グレイ「最初のうちはオレも混乱してたけどな。ガジルが二人いたりとか」

シエル「ガジルが二人…?あ、ひょっとしてエドラスのガジル?」

グレイ「ああ。妙に真面目そうな…喋り方も丁寧っぽい感じだったぞ。あそこまで違うんだな…」

シエル「真面目なガジル…イメージ浮かばないなぁ…」

次回『エドラス王都総力戦!』

グレイ「そういやエドラスにはオレもいるのか?」

シエル「うん、いたよ。何十枚も服を重ね着して、ジュビアにメロメロで、リオンとジュビアを巡ってアピール対決してる、みたいな」

グレイ「そいつはきっとオレじゃなくて別のそっくりさんだったんじゃねーか…?」
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