ポップスとジャズが響く時 作:まみま
主人公はダリルとイオを見た上で大した参考にせずに作ったキャラです!ただ後々乗る機体はザクとかサイコ・ザクの予定なんで、サンボルガンダムファンの方にはもうしわけない!
愛のために死ぬ者。信仰のために死ぬ者。そして……生きるために死ぬ者。
僕は3番目だ。生きるためには戦わなくてはいけないし、戦うのならばいずれは死ななければいけない。遅いか早いかの違いだけなんだ。僕らの頭上を廻る死神がいつか僕を選び、そして僕は殺される。
「それが今日でなければ、それだけでいい」
冷たい引き金を引いた。ライフリングによって回転を与えられた鉛は、静かに敵の膝を貫いた。そして仲間を案じて集まってきた敵の頭も。最後に膝を撃ち抜かれた彼を終わらせてやる。
両脚を失ったあの日から、僕は引き金の重さなんてものを忘れ去っていた。それもしょうがないのだろう。
「生きるためだ」
「ほんとに?」
不意に後ろから聞こえてきたのは若い女の声。腰から拳銃を構えながら振り向くと、そこにいたのはエプロンドレスを着た綺麗な女だった。しかし、足跡も息遣いも衣擦れも聞こえなかった。この周りを固めている味方からも敵が抜けたなんていう報告はない。
「誰だ」
「誰だって言われたら答えないこともないけど〜、私は束さんだよ! ぶいぶい!」
「名前なんてどうでもいい! 何者なのかを聞いている!」
ふざけた態度を取る束と名乗る女に拳銃を向けたまま詰め寄る。
こいつはなんだ? なんのためにここにいる? どうやってここにきた?
疑問に包まれる僕を他所に、女は僕の義足を見つめていた。
「君が義足のスナイパー、でいいんだよね?」
「それがどうした?」
「率直に聞くよ? 君はここから逃げたい?」
予想外な存在からの予想外の言葉。僕はきっと目を丸くしていた。
静寂に痺れを切らしたように、女が再び口を開く。
「ここ以外の平和な場所で、人を殺したりなんかしないで生きられる。そんな場所に行きたい?」
「……当たり前だ。僕だって好きでここにいるんじゃない」
「じゃあなんでこんなところにいるの?」
「馬鹿にしているのか!? 僕は義足のガキだ! ここを抜け出したって、仕事も身寄りもない! そこらで野垂れ死ぬのがオチだ! それくらいなら僕はここで戦って生きてやる!」
「なるほどなるほど……」
顎に手を当てる女。なんなんだこいつは? まさかこの戦場までそんな格好でアンケートを取りに来た訳でもあるまい。もしそんな馬鹿らしいことをしていたのなら、誰よりも先に僕が殺してやる。
「じゃ、行こっか?」
「……は?」
間抜けな声を出すが早いか、僕の意識は暗闇に落ちていた。ガスか、それとも頭を殴られでもしたのか、何にせよあの女は許さない……
「あっ! 起きたね!」
目が覚めた。どれくらい眠っていたのかはわからない。目の前には真っ白な天井と、いけすかないあの女の顔があった。反射的に突き出した右腕を掴んで止められ、女はそのまま笑顔を浮かべる。
「ようこそ! 束さんのラボへ! 歓迎するよ、ダーレス! ダーレスだからだーくんかな?」
「……状況が飲み込めない」
「そんなの決まってるじゃないか! この天才の束さんが君をあそこから拐ってきてあげたのさ! あ! この部屋はだーくんの自由に使っていいからね!」
胸を張る女。
「……ふざけるな。僕を1人拐ってきて何をするつもりだ? 尋問や拷問なら好きにやれ! だが同情は許さない! 戦場からガキを1人連れてきて、ベッドに寝かせて部屋を与えて、慈善家にもなったつもりか? お前1人がどれだけ動いたってあそこは何も変わりはしない。今だって、誰かが殺して殺されている! 僕1人に平和を与えたって、世界は何も変わりはしない!」
女は浮かべた笑みを無表情へと変え、今も尚掴んだままの腕を握りしめると、そのまま潰れてしまいそうになる。
およそ女のものとは思えない握力だ。
「じゃあ、言い方を変えてあげよう……君は私のモルモットだ。足がなく、戦闘センスがあり、身寄りのない男。君が最も都合が良かったから私は君を連れてきた」
「……何をするためだ」
「
僕のような田舎者でも知らないわけがない。宇宙開発を目的とした女にしか動かせないマルチフォーム・スーツ。今では軍事利用を禁じられ、競技用へと成り下がった哀れな機械だ。……まて、確かアレの開発者の名は……
「そう! この私がISの開発者の篠ノ之束さんだよ〜! ほら握手! サインもしてあげよっか?」
「……悪夢だ」
「残念、現実だよ! そして君は束さんのモルモットとして、男性IS操縦者の研究に協力するの! どうせいつかはあそこで死んでた命なんだし、問題ないでしょ?」
「はぁ……勝手にしろ……」
「ほんと? じゃあまず試作型を装備してもらうから足だして!」
そういいながら女が取り出したのは、一対の赤い義足だった。見た目からして、僕の使っている簡素なものとは比較にならないほどの出来なのだろう。
女はいくつかの器具を使って僕の義足を取り外し、赤い義足を付ける。
「その義足がISなのか」
「そう! ご名答だね!」
「だが義足にするくらいで男がISを使えるのか?」
「もちろんさ! 君の知る通り、男はISに乗れない。しかしそれは男に適性がないからじゃなくて、極端に低いからなんだ! だからこうして義足自体をISとして、神経の一つ一つすら繋げて肉体との癒着を強めることで男でも使うことができるのさ!」
しかしまだ疑問がある。その程度の実験ならばどこぞの人権無視の科学者がやっている筈だという疑問が。
「あ、当然そこらの凡人じゃできないことだよ! 束さんの天才的頭脳があってこそこの理論は成り立つのさ! ほら完了、立ち上がってみて!」
促されるままに立ち上がると、確かにこれは今までのものとはわけが違う。指の一本までが僕の意思通りに動いて、地面についている足の裏には冷たい感覚がある。まるで……まるで、俺の足が帰ってきたかのようだ。
「おお……」
「ね、凄いでしょ!」
「確かにこれは凄い……束、って言ったな」
「うんそうだよ! 天才の束さん!」
「……実験、強力しよう。好きに使えばいい」
「もとよりそのつもりさ! でもね、ありがとう!」