Fate/abnormalize   作:Zinc3125

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拙い文章ですが、なにとぞよろしくお願いします。



幕開け

10年前、災害があった。死んだ者は多く、また、極東一の繁栄を見せていた街はもはや見る影はなかった。

 されど。敢えて誤解を恐れずに言うならば、死んだ人間と違って、生き残った人間はなお、歩まなければならない。

 

ある者は敬愛する人のため。

ある者は尋ね人を探すため。

ある者は未来のため。

ある者は世界を変えるため。

ある者は仲間を救うため。

ある者は自らを守るため。

ある者は野望のため。

ある者は名声を求めて。

 

それぞれ、道を歩んだ。

 

そして、今、2036年。災害の地、規制線を越えて彼らは相見える。

 

 「あれから十年、第二次関東大震災の被災者に黙とうがささげられます…」

 ノイズ交じりの声でラジオは話す。

 東京。この街はかつて、そう呼ばれていた。コンクリートジャングルに代わって、本当にジャングルに覆われたその街には、人は当然いない。

 「結局のところ、何があれほどまでに被害を拡大させたのでしょうか…」

 「…インターネットでは陰謀論や、今に至るまで東京には悪魔が出るという都市伝説も流れていましたが…」

 ふいに、ラジオの音が止まる。見ると、髪を金に染め、サングラスをかけたラッパー風の男と古の巫女装束に身を包んだ妙齢の女性がいた。

 「陰謀論かあ…。それだったらどんだけ楽だったか」

 男は苦笑しながら話す。

 「私は事情を知りませんが、心中お察しします」

 巫女は何か、魔法陣のようなものを書いている。

 「ルーラー、準備の方はどうや?」

 「ちょうど終わりました」

 「ほな、いい刻限や。そろそろ始めよか」

 ルーラーは頷き、何かを唱え始める。同時に魔法陣が輝き始め、唱え終わると同時に、そこには三足の烏がいた。

 「いいですか?参加者の方、赤い痣を持っているはずです、を見つけてここまでお連れするのですよ」

 烏は一鳴きして、お辞儀をしたのち窓から飛び立つ。

 「さて」

 男はルーラーの方をちらりと見る。彼女はまた頷く。

 「聖杯戦争の」

 「始まりや」

 

 烏は、海に沈みかけた街、かつては品川と呼ばれた、に降り立つ。それは、あたりを見回し、そして崩れた教会に一人、茶髪の男性がいることを確認する。年のほどは、十代後半くらいだろうか。しかし、その雰囲気は重大にしてはあまりにも疲れ、老いたものを醸し出している。

 「ここが…旧東京…」

 その瞳は、どこか懐かしげな色と同時に、何か切迫したものも感じさせる。

 「本当に…変わり果ててしまってるんだな…。昔茲に住んでいたなんて信じられないよ」

 彼は風景をしばらく眺めていたが、ぽつりと突然呟く。

 「ここのどこかに、”ミサ”がいるのか…?それから、手のひらのこの赤い痣はなんだろう?」

 確かに彼の右手には歪んだ天秤のような痣が見える。

 カサリ、という音が後ろに響く。彼は思わず後ろを振り向くと、いつの間に近づいていたのだろう、三足の烏がそこにいた。

 『其は尋ね人を見つけることを切望するか』

 烏は、そう話す。男は面くらい、そして少し逡巡したのち、真っ直ぐに烏を見て答える。

 「…ああ。僕はミサを見つけ出さなければならない。ならば、その力を貸してもらおう!」

 彼は烏へ手を広げる。

 『されば、名を名乗れ』

 「僕は、ライト。黒夜来人だ」

 烏は頷く。

 『ここに契約はなされた』

 瞬間、烏は羽ばたき、黒い羽が舞い散り、光が満ちる。

 ライトは思わず手で顔を覆う。

 「な、なんだ?」

 光が晴れたとき、そこには一人の女性がたたずんでいた。彼女は黒く長い髪に、司祭服に帽子という奇妙ないでたちをしていた。

 「…ふふ。助けを求める子羊の声、確かに聞き届けました」

 「なっ、あなたは、一体…」

 彼は烏を探すが、もうその姿はない。代わって、女性が答える。

 「私は”キャスター”。あなたを勝利に導き、そして―――」

 「この世界に数多いる迷える子羊を救うもの」

 彼女は右手を差し出す。ライトは、訳のわからないなりに手を握り返す。

 「ああ、よろしく頼む。…といっても、何が何だかわからないのだけど…」

 キャスターは首をかしげるが、どうやらライトの言っていることを理解したらしい。

 「ならば、監督役のところに向かいつつ、事情を話しましょうか」

 「わかった」

 「それでは、よろしくお願いしますね。私のマスター」

 そういって、彼女は優し気な笑顔を浮かべるのだった。

 

 烏は、かつて秋葉原と呼ばれた町の廃ビルの一角に降り立つ。半開きになった扉からは黒髪に薄汚れたジャンパーの少年が黄昏ていた。彼の頬は、赤く染まっている。

 少年は、どうやらすぐに烏に気づいたらしい。差し込む夕日と共に佇む烏を鬱陶しげに見る。

 「なんだ?餌でも欲しいのか?」

 「其は願いをかなえることを望むか?」

 しばしの沈黙。しばらくして、少年はフッと笑う。

 「そうだな、俺たちをここではないどこかに連れて行ってくれ。そのためにはなんだってするさ」

 彼は赤い、花のような紋様の痣を掲げる。その言葉は重い。過去を変えるため。未来を変えるため。あるいは今を変えるため。何よりも仲間のため、それは発せられる。

 「さすれば、名を名乗れ」

 「俺は、」

 彼は一拍置く。

 「俺の名前は暁だ」

 ガシャンと、窓ガラスが割れる。黒い羽と共に吹きすさぶ風。同時に、”彼”が飛び込むように現れ、ソファーにいつの間にか座り込んでいた。

 「ああ…これはひどい」

 その、女魔導士のような紫の服をした黒人の男は呆れたような声で言った。

 「ですが、このような場所こそが私には相応しいのでしょう」

 周りを見回して、彼は話す。アカツキは、しかしこの怪しい風体の男に臆することなく話しかける。

 「あんたは、とりあえず俺の協力者ってことでいいんだな?なら、名前を教えてくれ」

 「まあ、そう焦らずに。とりあえず、一緒にゆっくり考えましょう。というか、私死んでから四半世紀もたってないのに召喚されるって、どういうことですか?」

 かれは、どこかおどけた様子で話す。アカツキは疑問の色を一瞬出すが、しかしまた、交渉時の顔に戻る。

 「まあ、そんな怖い顔をしないで。おいおい話しますから…」

 韜晦するような物言い。

 「ああ、でも。名前は教えておきますか」

 

 「私はライダー。あなた達のような者の英雄だ。だから、」

 ライダーは周囲に散乱した、かつて人だったものを見渡す。

 「相性は最高だ。違うかい?」

 アカツキは理解する。彼こそが此度の戦争を戦い抜く英雄だ。彼は、しっかりとライダーが笑顔で差し出した右手を握り返した。

 

 

 秋葉原は、また別の場所。赤い服にポニーテールの少女が瓦礫の山を漁っていた。

 「何よ、つまらないわね」

 本当に何の気なしに周囲を漁っていただけらしい。烏はそんな彼女をしばらく見ていたが、意を決したかのように口を開く。

 『叶えたい願いはあるか』

 「変わった鳥ね。不思議なこともあるモノだわ」

 動じる様子はない。

 「願い?そんなモノあってもなくてもどうでもいいでしょ」

 つれない態度である。烏は、そのまま立ち去ろうとする。その時、少女は思う。仮に、烏を放っておいて、そうしたなら他のものが願いを叶えるのでは?

 彼女は烏を捕まえる。

 「そうね、相応しくない人間が自分勝手な願いを口に出すのは許容できないわね」

 「どんな願いもかなえられる。それを手にしていいのは私だけよ」

 彼女は烏に顔を近づけて言い聞かせる。

 『されば、名を名乗れ』

 「アリスよ。苗字も必要?」

 烏は満足げに頷き、それを聞くとするりと彼女の手をすり抜け、飛び去って行く。彼女は慌てて追いかけるが、今度は間に合わない。彼女は少しだけ失望するが、しかし気を取り直し周囲を見回す。

 「我が名はバーサーカー」

 突然、クラクションと共に声が響き、壊れた車から男が出てくる。

 「欺瞞に満ちているな、いつの世も」

 筋骨隆々の手錠を嵌めた男。いつからそこにいたかわからない男を、アリスはしかしじっくりと見る。

 「不正、欺瞞、誤魔化し…」

 男は相も変わらず、欺瞞や誤魔化しなどとつぶやいている。

 「ちょっと期待外れって感じだけど…。いいわ、あなたを使ってあげる」

 一応は及第点らしい。

 「騙り、偽り、貴様もその一つだ…」

 だが、男はそんなことを意に介する様子はない。

 「我が宿願は一つ。すなわち…」

 「興味ないの、そういうの」

 アリスは気怠げに言う。彼女は代わりに右手を掲げる。

 「私は、貴方に命令する。あなたは」

 赤い、本のような形の痣が光輝いた。

 

 所変わって、東京は上野。男たちが緊張した面持ちで、鼠色の上質なスーツに身を包んだ壮年の男性と、ロケットランチャーやら、ハンドガンやら、果ては小型の戦車など物々しい武器と、それから奇妙な魔法陣を見ていた。

 「第二次関東大震災はいいチャンスだった」

 壮年の男性は部下と思しき男たちに対して口を開く。

 「静かなマントルは一斉に動いた」

 「…地震だけにね。文字通り世界が動いたわけだ。はっはっはっ」

 乾いた声で笑う。それと同時に部下も笑いで、賛同の意を示す。その笑いの引きが、場に緊張感をもたらす。

 「だが、我々はチャンスをものにできなかった。震災に隠された神秘はそれこそ、世界を覆しかねないものだった。…我々は時代に取り残されてしまったらしい」

 男は手を広げる。

 「だから、我々は兵器として英霊を召喚し、そして究極の力を手に入れる…。準備は終わっているな?」

 部下の一人が箱を持ってきて、開く。何かの設計図と思しき紙を取り出し、魔法陣の中心に置く。

 男は魔法陣を前にして言葉を発し始める。

 「素に銀と鉄。礎に石と契約の大公。降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ…」

 儀式は粛々と進み、男の目が爛々と光りだす。このままいけば、彼らの言うところの英霊とやらが召喚されるのだろう。男も、部下もそれを疑う様子は微塵ほども感じられない。

 『召喚するに及ばず』

 静寂は外部者の声によって破られる。その場にいた全員が、思わず声の方を見る。

 そこには、あの三本足の烏がいた。それを見て、懐に手を突っ込んだ部下たちを男は手で制する。

 「召喚するには及ばないとは、どういうことだ?」

 静かに尋ねる。

 『言葉の通り。私が代わりに召喚しよう』

 男は少し逡巡する。客観的に見て、烏は邪魔をしに来たようにしか見えない。されば、ここで排除するのが正解なのだろう。

 けれども、戯れに烏に召喚をやらせてみても面白いかもしれない。使い魔とは言え所詮は畜生。殺すことは簡単だろう。男は、やってみろ、と烏に答えた。

 『なれば、名前を名乗れ』

 男はニヤリと笑う。

 「私は志村敏三。『最高のビジネスチャンス』が欲しい」

 「こんなものでなく、巨大で、混沌として、一心不乱の絶望を齎すビジネスチャンスが、私は欲しい」

 なんとも、人間らしく、尊大で傲慢な願い。

 『承知した』

 烏は夕空に飛び上がっていき、見えなくなった。慌てた様子で、男たちが烏を撃ち始めるが、しかし全く当たっている様子はない。

 当たらない?

 違う、撃った銃弾が何者かに迎撃されているのだ。男たちはそう考えた。しかし、実際に起こっていたのはもっとドラスティックな事態だった。

 

 空から星が落ちてきたのだ。

 

 星は、周囲のビル、戦車、数多の”塵”を穿つ。同時に志村の携帯電話に着信が入る。

 「もしもし。こちら四菱重工の志村ですが」

 『アンナヘイキハ、ジダイニトリノコサレタゴミダ』

 無機質な声。

 「名前を名乗ってもらおうか」

 志村は動ずることなく問い返す。

 『ソンナワカリキッタコトヲキクナ』

 機械質な声は答える

 『ワタシハランサー。オマエノサーヴァントニシテキュウキョクノヘイキダ』

志村は、三つ、四角が並んだ右手を空に向かって振る。

 「私が手を振っているのが見えているかね?」

 『モチロンダ』

 男はネクタイを強く締める。

 「ならば、交渉だ。『プレイス・オヴ・ネゴシエーション』に乗り込むぞ」

 彼は歩き出す。

 それを追うように、一筋の流れ星が天を割いた。

 

 

 吉祥寺駅前に、何か大きなトランクを持った水夫服の少年が一人いた。顔立ちから見るに、日本人ではないらしい。

 「うーん、よくわからんけどここらへんで召喚してみるか」

 彼は志村と同じような魔法陣を書き始める。

 「よし、できた!」

 書き終えると、彼はトランクから石辺やら木片やらを取り出して、それぞれ見ていくが、どれも違うといったように首を振る。

彼が最終的に取り出したのは黄ばんだ本だった。本に『Lord of Light』と書かれているのを見て、彼は目を輝かせる。

「これなら、トロイア戦争や円卓の英雄をも超えるやつが来てくれるはずだぜ」

普通の魔術師が聞いたら頭が沸いていると取られかねない行動である。しかし、彼は本を円陣の中心に置いて、これまた志村と同じような呪文を唱え始めるが。

『其は強い願いを持つか?』

頭上から烏が尋ねる。

「うおっ、なんだお前?」

烏は彼の質問には答えず、中空で佇んでいる。彼はそれを不思議そうに見ていたが、やがて口を開く。

「うーん。ロードとか先生からはヤベー儀式だから情報を集めろとか、余裕があれば英霊を連れて帰ってこいとか言っていたけど、そんな難しい話、俺わかんないしなあ」

彼は首をしばらくひねっていたが、何かを思いついたように手を叩く。

「そうだ、俺も男だからさ、恋人の一人でも欲しいかなーって」

烏はしばらく黙っていたが、口をやがて開く。

『…名前を名乗れ』

「キリエ、キリエ・ホワイトリバーだ。魔術協会は伝承科の人間で…」

一陣の風と共に黒い羽が舞い散る。彼は思わず目を手で覆う。目を開けたとき、そこには”彼女”がそこにいた。

「お前は…?」

目の前にいたのは青く輝く剣を持ち、白亜の鎧に黒いバイザー、それからブレードアンテナを側頭部からはやした女性だった。

「応えよう。私はお前のサーヴァント。クラスはセイバーだ」

その声は凛として、力強い。だが、キリエはその声の中に悲しみとも後悔とも取れない、しかし物すごい暗いものを感じ取った。彼は、当然目の前の女性の氏素性などは一切知らない。

けれども、そんなものを抱えた人間を放っておくのは何か違うと思うのだ。錨のような模様が浮かび上がった右手で、女性を指さす。

「決めた。俺はお前のヒーローになる!」

何がどうなって、そんな言葉が出たのかはわからない。何ともバカげた小学生並みの宣言。

それを聞いて、セイバーは心底驚いたような顔になるが、しかし同時に薄く笑む。

「私の願いを聞いて、なお、そう言えるならば大したものだ。私の願いは」

「そんなことより、お前の名前を教えてくれ。あと、飯でも食いに行こうぜ。それから」

「私の話を聞いてくれ」

少女は呆れたような声色で、少年に返した。

 

 

実のところ、あと数人ほど烏は参加者を呼びに行っている。だが、彼らの動向をここに記すには少々紙幅が足りない。

いずれにせよ、確かなのは。

 

戦争の幕開けは近いということだ。

 




セッション中ではサーヴァントの基礎ステータスと令呪の画数が開示されます。
今回はPCキャラのセイバー、ランサー、ライダー、キャスター、バーサーカーのステータスを乗せておきたく存じます。

セイバー(令呪二画)
筋力:A++
耐久:A++
敏捷:B
魔力:B
幸運:A
体力:65

ランサー(令呪二画)
筋力:EX
耐久:A++
敏捷:A++
魔力:D
幸運:D
体力:50

ライダー(令呪三画)
筋力:A
耐久:A
敏捷:E
魔力:D
幸運:D
体力:25

キャスター(令呪二画)
筋力:C
耐久:A+
敏捷:A
魔力:A+
幸運:C
体力:45

バーサーカー(令呪零画)
筋力:B
耐久:A
敏捷:C
魔力:B
幸運:B
体力:35

ステータスに関しては俄かが馬鹿言っていると、笑っていただけると幸いです。
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