Fate/abnormalize   作:Zinc3125

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ライダーの服装は東方Projectのパチュリー・ノーレッジ。キリエの格好は東方旧作の北白河ちゆりをイメージしています。


一日目 夜:明治神宮

 ライダーは、この状況に驚いていた。彼が生まれ落ちたのは、1971年、最早世界を救った程度では英雄が生まれない時代だった。それにも拘らず、彼は死して英霊となり、しかも十年たたない間に召喚されるとは!

「マスターは悪くない」

 寧ろ、上出来の部類だとすら思う。アカツキと名乗る少年は、かつて自らの部下にして、また、自らを英雄と称えた人々に近いように思われる。実際、性格も相性もいい。

 だが、それだけでは勝てないというのが戦争というもの。彼の戦争はいつであっても、常に様々な意味で物資不足であった。それゆえ、例えばゲリラや使い捨てられる兵器などによって相手を疲弊させることがまず重要なこととして挙げられる。そして、正面からの戦闘を徹底して避けること。この二つの戦略の組み合わせによって、己より強大な相手から主導権を奪取することを目指すべきであり、実際彼はそうして生きながらえてきたのだが...。

「こんなところで、いきなり悪鬼にぶち当たるとは」

 目の前にいるのは、尋常ならざるステータスをした女性。アカツキ曰く、その力はあたかも、小さな点から太陽光線のように力強く発されていらしい。

 とりあえず、ここは何とか危機を脱しなければならないだろう。

「初めまして…私は怪しいものではないですよ」

「と、紫色の女魔導士っぽい服を着た黒人のゲイがこっちに話してきてるわけだけども、どうすればいいと思う、セイバー?」

 目の前の緑色のジャケットの女性は呆れたように首を振る。対応を見るに、ここは、何とか押し切れるかもしれない。

「ここは日本。せっかくだから、唯一知っている日本語のあいさつを使おう」

 ライダーは敢えてぼけてみる

「俺、日本語わからないんだけど。ギリシャ語と英語しかできない」

「『ETCカードを挿入してください』腐るほど聞いたからな、詳しいんだ」

「話を聞いてくれ」

 目の前の水夫服の少年は、当惑したようだ。

 「私の気分がわかっただろう」

 セイバーは嘆息する。とりあえずは、会話においてはこちらが主導権を握れたようで、思わず得意げな顔になる。セイバーは胡乱な目をしてライダーを見る。

「それと、お前はバーサーカーか?」

「ライダーです」

 生前の所業を考えると、バーサーカー適正はそこそこ、というか下手するとそちらの方が高いレベルでありそうだが、ここで嘘をついてもしょうがないだろう。素直に答える。

 セイバーは、ライダーを睨みつける。

「暗殺をさせるなら、もっとうまくやるべきだな。私のマスターを狙っている人間を表に出さなければ…どうなるかわかっているな?」

 ライダーは残念そうな顔をしながら、手を上げる。草むらから、ハンドガンを構えたアカツキが出てくる。

「ねえ、ライダー。あれは何を言っているの?」

 どうやら、ライダーの発言は彼のマスターにとっても理解しがたいことであったらしい。

「日本車に乗るといつも言いますよ?違うんですか?」

 

「少なくとも、俺は言わない」

 その掛け合いは、さながら名コメディアンの掛け合いのようなものがある。キリエはそれを訳のわからないなりに、面白そうに眺めていたが、セイバーは首を横に振る。

「聖杯戦争はいつから三流芸人の園遊会になったんだ?」

「三流芸人とは失敬な!声が出なくなるようなものを見せてあげますよ」

「そうではない」

 「ところでさ」

いくら何でも、話が進まなさすぎることに流石に危機感を覚えたのか、キリエは話の流れを斬ってライダーに話しかける。

「ライダーって、もしかして同郷?あと、なんていうか…同じゲームの匂いというか、そんなものを感じる」

ライダーは首をかしげながら、それがやけに嵌っているのが何とも言えない気分にさせるのだが、彼の問いに答える。

「ノーコメントだ」

「そっかあ」

 どうにも、靄をつかむような感覚。しかし、それはライダーのマスター、アカツキにとっても同じだったようだ。

「ねえ、ライダー。セイバーと、そのマスターは何て言っているの?」

 キリエが日本語を話せないように、アカツキは英語を理解できない。なんとも、やりづらい話である。過去の戦争では、この辺りどうであったのだろうか、とライダーは思いつつ、アカツキに今の会話の内容を話す。

「ふーん、こっちのことをわざわざ知ろうとしているんだ?」

 彼は、恐らくこちらの言葉をわかるであろうセイバーに、ライダーを通さずにハッキリ言い放つ。

「そっちのマスターに伝えてほしい。俺は日本人だ。後、やるか、やらないか。それを教えてくれ」

「マスター!?」

 ライダーの制止にも彼は止まらない。

「お互いに知らないほうがやりやすいと思う」

 彼は銃を構える。未だ、撃鉄を引いてこそいないが、実質的な宣戦布告といってもいいだろう。セイバーも同時に服を脱ぎ棄てるが、しかしキリエの合図により、舌打ちしつつも、とりあえずは構えを解く。

「ライダーに問う。ライダーとしては戦う意思はあるか?」

「いやあ、まさかまさか。率直に言って、負けてしまいますね」

 これはまごうことなき本音である。戦うとしたら、御しやすい相手と組んで戦うか、あるいはセイバーが別の相手と戦っているところを思いきり横から殴りつけることができる場合くらいだろう。

「多分、マスターは飽くまでも、ここで戦うのかなァと質問しているだけなんですよ」

 それを聞いても、セイバーは戦いたそうにしていたが、とりあえずは引き下がってくれたようだ。

「セイバー、悪いな」

「別にいい。サーヴァントはマスターの意思に従うものだからな」

 そうは言いつつも、明らかに不満そうである。

「ところで、ライダー。手を組まないか?」

 マスターとセイバーには意思の齟齬がある。なれば、分断することは可能かもしれない、そう思ってライダーは慎重に言葉を紡ぐ。

「目的と期間を教えてもらえますか?」

「後、お金もだな」

 キリエは、逡巡してセイバーに何事かを話しかける。だが、彼女は手を振るばかりだ。これは、やはり彼の考えに従うということなのだろうか?

「うーん、セイバーはちょっと特殊でさ。抑止の守護者としての側面があるらしいんだ」

「なんです?それは」

 曰く、人類の種の存続のために召喚される”掃除屋”。滅びを回避するため、原因を根こそぎ滅ぼす、始末番。ろくでもない存在ではある。

「…まあ、私は守護者の中でもちょっと面倒な立ち位置なのだが」

セイバーはいつの間にか、煙草を吹かしている。だが、彼らが召喚されるというのは、それ相応の理由があるということだ。

「多分、この戦争には裏がある。それこそ、人類を滅ぼしかねない何かが。とりあえず、それを排除するまでってことでどうだぜ?」

「すまないが、スケールが大きすぎて判断に困る。というか、全然話が分からん!」

 彼は一国の命運をかけて戦ったことは確かにある。だが、その時だって国を背負って動向という意識は薄かったように思うし、ましてや人類全体に関してどうこうという思想はない。それに、戦争が終わった後は責任逃れすらしたのだ。

「正直、手を組めないですね」

「キリエ、一つ言っておくと私もこの男と手を組むのは推奨しない。…何というか、人間臭いというか、妙なにおいがする」

 ライダーは目を細める。単なるタカ派の猪突猛進ガールかと思ったら、そうでもないらしい。飽くまで、彼女自身が脅威というよりは、彼女のスキルや宝具が面倒だという認識だが。

 キリエは、しかし、まだあきらめる様子ではない。ライダーを切り崩せないならば、マスターからということで方針転換する。

「あんまり、こういう話は好きじゃないんだけどさ。金なら何とかなると思う」

「どうするのさ、とアカツキは聞いてますね」

 通訳としてライダーを通す。彼は一瞬、あえて誤解を持たせるような訳し方や、あるいはダイレクトに嘘の役を伝えようかと思ったが、セイバーがいる以上、それは困難だろう。

「魔術師の家ってさ、まあ結構金を持っていることが多いわけで。うちで、寝食の場所は提供できるだろ」

「何人くらい用意できる?とのことです」

 何人か。アカツキにとっては実は結構な死活問題だが、キリエはこれをどの程度受け止められるか。

「うーん。十人とかなら困るけど、一人二人なら何とかなる、と思うぜ」

 アカツキはライダーからそれを聞いて首を振る。

「それじゃ、全然足りないらしいです」

 全然足りない。キリエは意外そうに考えるが、引き下がる。多分、ここで深く考えておいた方が、後々のことを考えるとよかったのだが、後悔先に立たず。

「それに、セイバーとライダーが反対しているのに、無理に同盟組んでもいいことはないよ、とのことです」

「うーん、そっかあ」

 これで、終わりだろうとライダーは思う。こちらから彼らに求めるものはないし、また向うだってそれは同じだろう。セイバー陣営の内情が多少分かった時点で有益と思っておくべきなのだろう。

 

「ああ、丁度いいところに」

 涼やかな声。見ると、巫女装束の女性、ルーラーがいた。彼女は肩に烏を乗せ、一方でタブレットを持つというアンバランスな格好だが、しかしそれが妙に似合っている。

「お二人に頼みたいことがありまして」

「なんでしょうか?」

「未だにこちらに連絡してきていないサーヴァントの組がありましてね。見つけたら、こちらに話してくれませんか?」

ライダーは目を細める。

「どの陣営ですか?」

「アサシンとアーチャーですね」

 偏見なのかもしれないが、ライダーは三騎士というのにあまり、いい印象を持っていない。強力で、それで割と正義よりのものが多いイメージがある。要は、反りが合わないのだ。

 それに比べたらアサシンは、搦め手上等、汚れ仕事も気にしない暗殺者だ。仮に子供ならば、なお上出来だ。積極的に探して、できることならば同盟を組みたい。

「見た目の特徴はありますか?」

「…特には。ただ、霊基盤には九つ英霊の存在が確認されていますね」

「九つ?」

 誰かが、ぽつりとつぶやく。かつての戦争では八騎、可能性としては14騎まで召喚される可能性があるという。それに比べて、何とも中途半端な数である。

「それは貴女を間違ってカウント…しても、なお八騎か」

 セイバーが煙草を草むらに捨てる。それを見て、ルーラーはあまりいい顔こそしないが、説明を始める。

「私はカウントしませんよ。一つはアヴェンジャー。もう一つは、未確認のクラス…とりあえずは降臨者と呼称します」

「あっ、アヴェンジャーなら会ったぜ」

 ルーラーの目が変わる。

「その時、…倒した感じではありませんね」

 此方の伝達ミスです、と言って彼女は頭を下げる。それを見て、蚊帳の外に置かれていたアカツキが口を開く。

「よく分かんないんだけどさ、そいつらと仮にあったらどうすればいいの?」

 ルーラーは、真顔になりピシャリと言い放つ。

「彼らは所詮、戦争を外部から乱す不届き者。必ずや排除してください。こちらから褒章も出しましょう」

 曰く、正規に召喚されたサーヴァントではなく、また聖杯自身が召喚したそれには見えないのだという。ルーラーの考えでは彼らは本来いてはいけないモノであり、そして彼女自身やセイバーが召喚された理由の一つでもあると考えている。

「彼らは人の世を乱すもの…。抹殺するのが当然でしょう」

「あー、ご高説のところ一ついいだろうか?」

「なんでしょうか?」

「我々は彼らの姿形を知らない。…せめて、何か情報をもらえないだろうか?」

 極端な話、向うは既にこちらを知っていて、だまし討ちを狙っている可能性すらあるのだ。それは、ここにいる誰しもが望む展開ではないだろう。

 けれども、ルーラーの反応は芳しくない。

「一応使い魔にも探させているのですが…。なかなか見つからないんですよね」

だからこそ、あなた方に依頼しているという面はあるのですが、と肩をすくめる。

「ただ、アヴェンジャーの真名はわかっています」

「ほう?」

「真名は阿弖流為・オルタ、あるいはこう言いましょうか」

 

「悪路王、と」

 

 ルーラー曰く、実は聖杯戦争は十年ほど前東京で行われており、その時のセイバーが阿弖流為だったのだという。

「ですが、戦争は何らかの要因によって中断、唯一残ったセイバーも変質したということです。…彼らが何を企んでいるかはわかりませんが、早急に討伐してくださいね」

「…他に、何か情報はあるか?」

 セイバーはまた煙草を吸い始める。すでに、箱のうち半分はいっていそうな勢いだ。

「…いえ。特には」

「それならば、我々は早速、相手の首を取りに行こう」

 彼女はジャケットを翻し、すでに暗くなりつつあるというのに神社とは別の方に歩き出す。

「ええと…。ルーラー、ライダー、それからアカツキ。何か、セイバーはすごい苛立ってたというか、緊張してたみたいで…。正直、失礼だったと思う。ごめんなさい」

「別にいいよ」

 アカツキは何でもないことかのように許す。あれでガラが悪いというならば、アカツキやライダーの仲間は、文字通り悪鬼羅刹の類になってしまうだろう。

「あと、一つお願いしてもいいかな?」

 キリエはライトの人探しの件について話し出す。

「それは金がないと動けないかな」

 キリエは少し悩んだうえで、青銅の鏃を手渡す。

「イタケ―のバシレウスの触媒と言って俺以外の魔術師に売れば、めちゃくちゃ高く売れるはず。後、何かあったら連絡してほしいぜ。飯と寝場所はなんとかして準備するから」

「いいの?こんな大切そうなもの?」

 アカツキの問いに彼は笑って返す。まあ、セイバーを召喚した以上、もう必要ないものかもしれないが、大胆を通り越して、流石に金銭感覚に疎すぎる気もする。

「ありがとう、いい人なんだね」

「照れるなあ。じゃあ、俺はセイバーを追っかけなければならないから。じゃあ、またな」

そういって、彼もセイバーを追っかけてどこかへと去っていく。

 

「なあ、ライダー。金持ってのはほんとに居るんだな」

 どこか、宇宙人を見たかのようにアカツキは語り掛ける。それを見て、ライダーはどこか苦い顔になる。とはいえ、それはセイバー陣営への嫌悪感が含まれているというより、どこか自らの若いころの過ちを見ているかのようだ。

「ライダー、どうしたの?」

「いえね。あのマスターは、まあどうでもいいんですよ。問題はあのセイバー」

 彼はポケットから何かを取り出す。どうやら、何かの吸入器らしい。

「あれは単純に若いからかもしれませんが、狂気にも似た苛烈さというか、妥協をしなさそうな感じが面倒だ」

「ふうん?それでどうするのさ」

 上手いこと、どこかで潰れてくれればいいが、それを期待するのはライダーの戦術眼が許さないし、そもそも虫が良すぎるだろう。

「なに、簡単なことですよ。それ以上の狂気で以て、相手を喰らえば良い」

 狂気にも飲まれず、また根本が狂うのではなく、狂気それそのものを自らの力として取り込む。ある意味では、最も冒涜的で、そして強い精神の在り方だろう。

「…そうかい。俺はよくわかんないけど、とりあえずライダーの言うことには従うよ」

「感謝します。我がマスター、アカツキ」

 ライダーは吸入器を鼻に押し当て、その煙を思いきり吸った。

 




 アヴェンジャーと、あともう一クラス、セッション時とは別のサーヴァントに差し替えています。セッション時のアヴェンジャーのステータスは、今回のあとがき以外で出しづらいので、中途半端な形ではありますが、ここに記します。

クラス:アヴェンジャー(セッション時)

真名:丑御前
身の丈3mを超える巨人

ステータス

筋力:A
耐久:A++
敏捷:D
魔力:C
幸運:D
体力:50

クラススキル

復讐者

忘却補正:C
人は忘れる生き物だが、復讐者は決して忘れない。人から愛されず、拒絶された鬼の定めである。
ゲーム的には”同盟を組んでいない場合、自分の筋力・耐久・敏捷・魔力・幸運を2ランク上げて扱う”効果。

自己回復(魔力)

保有スキル

万客塵芥殲滅す河の陣(破壊工作):B+
かつての死闘の地、隅田川の再現。
ゲーム的には"移動フェイズで現在地のエリアで陣地を作成出来る。陣地内では物理防御と魔術防御時、補正値3を得る。その日が雨、雪あるいは攻撃した者が日本人の場合、追加で+2を得る"効果。

悪烈なる病魔:B
病魔としての牛鬼の力が現れたもの。
ゲーム的には"物理攻撃時+5。かつ、攻撃によってダメージを与えた相手に「疫病」状態を付与する"効果

疫病:交戦フェイズ時に疫病状態にある場合、ターン終了時に、ステータスの耐久補正値と同値のダメージを受ける(固定)。これによってHPが1未満になることは無い。
この効果は交戦フェイズ終了時、あるいはHPが1になった時に解除される。

宝具

我、鬼神也(種別、対軍):B+
700人の大群を相手に大量の犠牲者を出した鬼の所業。

戦闘フェイズ開始時、自身に2ターンの間【鬼神】状態を付与。
1.自身に混沌・悪・天・魔性状態を付与する。
2.前衛に自身のマスターが居る場合は後衛に戻し、交戦フェイズ中相手はアヴェンジャーだけを攻撃対象とする
3.相手前衛に同盟を組んでいる者がいる場合、相手前衛全てに攻撃する。
4.この効果は交戦フェイズ終了時に終了する
5.天候を雨にする。

制作者のコメント

FGOのように源頼光の別側面ってわけではないですが、弟という設定は準拠しています。
隅田川とかに関しては、伝承で30mを超える巨体となって、頼光と戦ったことから。
普通に育てられた頼光や、まっとうに育ててくれなかった一般の人々を恨んだ結果アヴェンジャーになったと解釈しています。

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