その出会いは奇跡のようなものでした。【完結】 作: 白黒魂粉
「こういうシチュエーションなら普通なら『はい分かりました』と返すんだろうけど…」
俺は東風谷の方を向きながらそう切り出す。
「……すまない東風谷。俺は……まだ、お前と付き合うことは出来ない」
そう…おれは彼女と付き合う訳にはいかないのだ。
「本当にすまない…!嫌ってくれてもいい。軽蔑してくれてもいい…それでも……君とは付き合えない……幸せになる事は…出来ない…!!」
断る理由は無いのだろう。
だが、俺に彼女の手をとることは出来ない。
俺という……【桜田優也】という名の人間に、幸せになる権利はない。
それは俺が幼少期の頃から決まった決定事項であり、それを覆すことは
今の俺には不可能なのだ。
「……詳しく…聞かせて貰えませんか?」
東風谷がそう言ってくれた。
彼女の顔を直視できない………罪悪感から来るものだった。
俺に勇気をだして告白してくれた彼女を俺は二度も振ったのだ、彼女に深い傷を負わせたに違いないのだろう。
だが、彼女に話せば少しは楽になるのかもしれない……
焦燥した俺の心は癒しを求める程に麻痺してしまっていて、正常な判断も下させないまま…俺は口を開くのだった……
「……俺が小学生に入る前の頃だ……」
◇
……あれは、確か俺がちょうど施設を抜けた時の話しだろう。
俺の母親が、新しい婚約相手を俺に紹介したのだ。
そいつの名前は桜田優成。
見かけは優しそうな人で、彼にも一人連れ子がいた。
その連れ子の子は俺の姉にあたる人物で名前が美咲…っていう名前だったんだ。
彼女はとても明るく、それでいて年もそこそこ離れてたことあって大人の様に振る舞う人だった。
その美咲さんとは直ぐに仲良くなる事ができた。
再婚して俺は直ぐに以前の街を出ることになった。
桜田優成の家に引っ越すことになったんだ。
今住んでいる家がその桜田邸だ。
俺は新しい家庭で優しい人達に囲まれているんだと思った。
だが、実際は違ったんだ。
桜田優成……俺の新しい父親は…自分の子供を一度殺していた。
気がついてしまったのは再婚から1年が過ぎた頃……小学1年の時だった……。
ふとした好奇心から父親の部屋に入った時に、彼の計画手帳なる物を見てしまったのだ。
その事を彼は直ぐに察知し、俺に詰め寄ってきたことでそれが確かなものだと言うことを悟った。
そして彼が俺の母に近付いた理由も本人が俺に教えてくれたんだ。
『君の母さんと結婚したのはね……君のような連れ子をこの手にかける為なんだよ……。』
ってな。
怖かったよ、母親に言っても聞き入れてくれない。
聞き入れる訳もなかった…寧ろ静かな人形の様な子供が急に騒ぎ出すようになったと煙たがられる始末だ。
俺には美咲さんだけが頼りだった… 俺は毎日いつでも美咲さんと一緒に行動した。
恐怖で気が狂いそうな毎日だった…
だが、ある日の事だ。
俺はふとした事で、優成の殺害の証拠を見つけたのだ。
その証拠にて、奴は自身の子供だけでなく、その妻もその手にかけたことが分かった。
俺は直ぐに警察に通報し、奴は捕まった。
捕まる間際に奴からは
『お前が幸せになることはないからな…!父親を売る餓鬼なんて……さっさと始末しておけば良かったんだ…!!お前も母親も…俺が刑務所を出た時……俺は真っ先にお前を殺しにやってくるからな!!』
そう言われた。
その言葉だけは今も鮮明に覚えている。
母親はそれ以降精神を病んでしまった。それとは対照的に美咲さんはどこか吹っ切れたような態度を見せるようになっていた。
かくいう俺も、どこか落ち着ける様になっていた……
そして……小学1年の俺は、自分の父親を警察に売ったクソ野郎と、
そんな理由で俺は誰とも関わることが出来ずに孤立することとなった。
中学でこの学校に入った理由というのもそれが原因だ。
再スタートという意味も込めていたんだ。
それに……
◇
「それに……?」
「東風谷。今年なんだ…やつが出所するの」
「え……嘘ですよね……?」
「本当の話だ。残念なことに証拠の数が少ないこともあってか奴の刑期は短めになっている。」
そう、幸せになる事はできない。
俺が彼女と付き合ってしまえば、彼女にも危険が及んでしまうのだから。
「東風谷。お前には危険な目にあって欲しくない。だからこそ…俺はお前とは付き合えないんだ。」
すまない…そう言い残して、俺は屋上を去るのだった。
夜風が冷たく、俺に当たった。
急に重くなるやん…そう思うでしょ?
俺も思った。
桜田青年の人生濃すぎるよね。
幼少期で3回苗字が変わって
親が殺人鬼で、それを逮捕して恨まれて
挙句その性で虐められるっていう……。
幼少期〜少年期にかけて暗すぎる……
まぁ次回は明るめになります。
それじゃね!