その出会いは奇跡のようなものでした。【完結】 作: 白黒魂粉
桜田誘拐編ラストです!
「……歩けますか?」
東風谷に支えて貰いながら、なんとか地下室の階段を登りきる。
そろそろ動きにも慣れてきたな…
そう思い、俺は東風谷の支えをやめてもらって自身だけでたった。
「……よし、もう大丈夫だな」
「…もう慣れたんですか?」
東風谷が驚いた様子で尋ねてきたので俺は笑って
「まぁ、運動神経はいい方だからな……こんなのはすぐ治るさ」
と返した。
「あれ?音がしたと思ったら……」
突然リビングのドアが開いて、そこから声がした。
声の主は言わずもがな美咲さんだ。
手にはスタンガンとムチを構えていて、特にスタンガンの方が既に
バチバチと音を立てていた。
「美咲さん、俺は家を出ていくよ」
「はぁ?させる訳ないでしょ…?」
「どうして?」
「じゃあ優也は鳥を飼う時に逃げないようにゲージに入れないの?
……それと同じよ」
……俺はペットって訳なのか……?
そんなことを考えてると、東風谷が口を開いた…
「ふざけないでください!!先輩は……貴方のペットではないです!」
その声に美咲さんは少し驚いた表情を見せたのだが、直ぐに
余裕の表情に戻って
「……だから何?少なくとも貴方には関係ないでしょう…東風谷さん?」
「…………!!」
こんな状況でも煽れるのか…美咲さんはやはり怖いな。
まぁでも……
「少なくとも油断もしてない俺にそんな武器は通用しない
……もうやめにしないか?美咲さん…」
そういうと美咲さんは下に俯いてクククと笑っている様子だった…。
「通用しない……?馬鹿ねぇ…優也に当たらないならそっちの東風谷さんを狙うだけなのよ?」
そう言ってムチをしならせて東風谷の方へと飛ばす……!
「危ない…!!」
咄嗟に東風谷の肩を抱き、ムチの攻撃の盾になる。
「……ッッ!」
とんでもない痛みだ…でも……
「この程度……舐めてもらったら困るよ…!」
「相変わらず打たれ強いわね……でもまだまだ…!!」
すぐさま第2第3のムチが俺の体を襲う。
動かしたての俺の体はそれを受ける事に生気が減り、意識が飛んでいくのを感じた。
(守るだけじゃダメだ……!なんとか懐に潜り込まないと……!!)
そうしようにもまずはムチを何とかしなければならない……!
そう思いながら、じわじわと距離を近づけて行く…
「先輩!危ないです!」
背中を押される…何があった…?!
咄嗟のことに判断が少し遅れたが、直ぐに状況判断に移る。
足元には水……と言っても水滴のような物がいくつかみえる。
「あ……危なかった…すまん東風谷!」
そう言って意識を美咲さんに移した俺は滑り込むかのように一気に廊下を疾走する…!
このまま勢いをつけて殴り掛かれば……!!
そんな思いを胸に俺は遂に美咲さんの目の前まで走り込むことに成功する。
そして拳を強く握りしめた俺は…その拳をそのまま彼女の眉間に目掛けて振り抜いた…!!
しかし、その拳は意図も容易くかわされてしまう……
「…そんなパンチで終わるなら簡単すぎるよね?」
そんなことを囁きながら、美咲さんは冷静な態度で俺の体にスタンガンの電流を喰らわせた。
「……がっ………!ぐっ…………う……」
意識が完全に堕ちていく……
東風谷…せめて……彼女だけでも無事に返さなければ……!!
崩れゆく意識の中で、俺は必死にそう願った。
願うしかなかったのだ……その願いが叶えられたどうか、それは俺の知ることではなかった……
◇
「先輩!」
そんな……あの美咲っていう人、想像してるよりも格段に強い……!
彼女がこちらを向く。
「…次は……貴方よ?」
そう言いながら、廊下をジリジリと進み私との距離を徐々に詰めてきていた。
「……逃げないの?」
確かに後ろに下がって距離を取らないと行けないのだろう……それでも
……それでも私は…!
「えぇ…、逃げてたら……先輩を…助けられませんから!!」
その時、意識を失っていた先輩の身体から緑の光が発生したーー!
「…なっ?!なによこれ!?」
どうやらその光は彼女にも確認できるらしく、どこか焦っている様子だった。
……隙が生まれた。
これが恐らく最初で最後のチャンスだろう…!!
私は駆け出す。
なんとか一撃を入れて無力化出来ればそれでいい……!
そうして私は彼女目掛けて飛び蹴りを喰らわせた。
「……しまっ……ッ…?!」
その衝撃に彼女は後方に吹っ飛び、その反動で所持している武器も手から離れる。
そのまま壁に衝突し、彼女が起き上がるような気配はしなくなった。
「はぁ……はぁ…先輩……」
スタンガンをすかさず回収し、急いで先輩の安否を確認する。
彼は意識を失っているらしく、どれだけ呼びかけても反応はなかった。
頬を叩いて起こそうとするが、それでも彼の目は閉じたままだ……
「…とにかく、一旦ここから離れないと……」
そう思い私は先輩の肩を支え、玄関の方へと歩き始める。
「……!あなたは…」
玄関の前に1人の男性が立っていた。
彼はこちらをジッと見つけて、ため息をつく
「ふぅ……なんだ、終わりか」
「……どういうことですか」
「何、美咲がやられたんならこの茶番も終わりだなって事だ。」
「……?どういうことですか?貴方は私達の前に立ちはだかるのではないのですか?」
「しないよそんなこと。俺はもうお前らの前に現れたりはしない」
それに……と付け加えるかのように付け足して
「復讐心とかはない……と言ったら嘘になるが、俺はもうそいつに
対してそこまでの執着はない。
それと神様のお気に入りに手を出せる程肝は座っちゃいないからな」
「だから……そいつのことは頼むわ。一応元親の俺から神様へのお願いって奴だ。
今を持って桜田優也は俺の子じゃ無くなった。
そいつは絶縁だ。」
それだけ言い捨てて、彼……桜田優成は私を横切って美咲の方へと歩いて行った。
それを見た私は直ぐに先輩を支え直して歩き始める。
そして…………私は今度こそ…桜田の家から脱出した。
次回…お楽しみに!