「グレモリー先輩、『レーティングゲーム』ってなんだ?」
「『レーティングゲーム』は私たち悪魔の間で人気のゲームよ。お互いの眷属を戦わせる。リアルチェスと思ってくれていいわ。色々と条件を付けて戦う場合もあるわ」
「なるほど……」
「今回は投降するかどちらかの眷属が全滅するまで続くわ」
一誠は放課後、オカ研でリアスから『レーティングゲーム』のついての説明を受けていた。目の前の悪魔ライザーと戦うに当たって、ルールを知ろうとしたのだ。
「それとグレモリー先輩。戦うに当たって俺から条件があるんだが」
「条件?何かしら?」
「あのアホ男を倒せたら1億円、払ってくれ」
「ふ、ふざけんな!一誠!」
一樹が一誠の提示した条件に怒りを露にした。そもそも一樹は一誠が『原作』に関わるのすら嫌がっていた。
(『原作』が崩壊するじゃないか!!?)
『原作』を知り、それをなぞって自分の都合のいいように改変していた一樹にとって一誠が『白龍皇』なのはイレギャラーなのだ。
出来るなら今すぐに一誠を亡き者にしてやりたかった。しかし『白龍皇』が居なくなれば今後の『原作』にどう影響するか予想が出来ない。
それに一誠の実力が自分より大きく離れていたので倒せる自信がなかった。
「いいわ、1億ね。ただし、負けるようなら貴方は私の奴隷になってもらうから!」
「ああ、いいぜ。そうだ。どうせなら書面で残そうぜ」
「そうね。後から口約束なんて信用出来ないから」
一誠とリアスはお互いの条件を書いた紙を『二枚』用意した。それを一枚ずつ持って約束が破れないようにした。
(負けるとは思えないけど、負けても『白龍皇』を自由に出来る!一先ずカズキの安全は確保出来るわ)
リアスはほくそ笑んだ。負ける気はないが、もし負けた場合には一誠を自由に出来る。そうなれば二天龍の戦いをさせずに済むからだ。
リアスから見ても一誠と一樹の実力は離れている。それを埋めるには時間がどうしても必要だった。
これで時間は十分に稼げる。
「それじゃ俺はこれで」
「ええ」
「そうだ。返すの忘れていた」
一誠は何かを思い出したように懐から女性物の下着を取り出した。それに反応したのは意外な人物だった。
「それは……」
「悪いな銀髪メイドさん。手癖が悪いもので」
下着はグレイフィアの物だった。グレイフィアは自分の胸を触りブラをしていないの確認した。朝、確かに着けたはずのものだ。
一誠からブラを取り返して、部屋から出て行った。そしてしばらくしてから戻ってきた。
「失礼しました。お嬢様」
「き、気にしていないわ」
「それじゃ今度こそ」
一誠はそれだけ言ってオカ研の部室を後にした。部屋の中は異様な沈黙が支配していた。
▲▲▲
この日、一誠は朝から不機嫌な気分になっていた。それは目の前のリアスたちに原因があった。ライザーと言う男とレーティングゲームをする事になり、一誠はリアスにある契約を持ちかけたのだった。
「グレモリー先輩。何しに来た?」
「もちろん、修行をするから貴方にも参加してもらうためよ」
「確かに俺は昨日、先輩とあのライザーとか言う男と戦う事に関しては契約を結んだ。だが、一緒に修行なんてお断りだ!」
一誠はライザーと戦うに当たって、リスト契約を交わしていた。それは『ライザーを倒した際にはリアスは一誠に1億円を支払う事、もし負けた場合は一誠は一生リアスの奴隷として奉仕する事』だ。
リアスの総資産なら1億は問題は無かったし、もし負ければライザーと結婚する事になるが白龍皇を自由に出来るのでそこは我慢した。
「どうしてよ!連携とか確認しておかないと当日、大変でしょ!」
「はっきり言って!10日で強くなれると思っているのか!?」
リアスがライザーとのレーティングゲームをするに当たって、準備期間として10日ほど時間が与えられた。
しかし一誠からすれば10日はあまりにも短すぎた。
(こんなの黙って負けろって言っているようなものだ)
10日と言うのはリアスの父が定めたルールの一つだ。これは一樹の事を考えての事だ。時間を与え過ぎれば赤龍帝は強くなる。
しかし短くては周りから何か言われるのではないかと思い、10日にしたのだ。だが、リアスたちとってこれはありがたい事だった。
リアス、朱乃、祐斗、小猫はある程度の時間、一緒に居たので連携には問題なかった。問題は最近、眷属になった一樹とアーシアの二人だ。
戦える一樹に対してアーシアは自衛の手段を思ってはいなかった。彼女は回復役でしかないのだ。
そのためアーシアを守りながら戦うフォーメイションを新たに覚えなくてはならなかったのだ。
そこでリアスは山奥の別荘での修行をする事にした。そこで一緒に戦う一誠をこうして誘いにきたのだ。
「そもそも俺は10日で強くはなれないから」
「それでも一緒に来るべきでしょ!」
「お断りだと言っている。しつこい女はモテないぞ?入学してから彼氏一人出来ていない先輩に恋愛うんぬん言っても仕方ないか!」
「なんですって!?」
リアスは一誠の一言に顔を真っ赤にして憤慨していた。貴族として産まれた自分に自由恋愛など夢だった。
しかし一樹の存在がその全てを否定してくれたのがリアスは嬉しかったのだ。だから自分のためでもあるが、一樹への好感度を上げる意味でもレーティングゲームで負ける訳にはいかなかった。
リアスは怒りながら眷族たちとどこかへ行ってしまった。リアスは文句を言いたかったが、時間を無駄に出来なかったので堪えて目的地に向かった。
「さて、俺も修行するかな」
『10日では強くなれないのではないのですか?先ほどイッセーが言ったばかりではないですか』
「そうだな。アルビオン。だけどな、身体を鍛えるのと知識を付けるのだとまったく違う意味だろ?」
『確かに……』
身体を鍛えて強くなるのと知識を知って強くなるのでは意味合いがまったく違う。確かに一誠が10日みっちり鍛えた所で伸びはしない。
それは一誠の成長限界に来ていたからだ。ここ半年、あまり力が伸びていない事に一誠は気がついていた。
これ以上のレベルアップには実戦を経験しないと上がらないと考えていた。しかし近くに一誠と同レベルの相手がいないので修行が出来ないでいた。
『それでどうするのですか?イッセーの知り合いにでも頼るのですか?』
「生憎、俺の知り合いに俺と渡り合える奴はいない。そもそも俺の知り合いは全員一般人だぞ。俺が本気で殴った時点でポックリあの世に送ってしまうわ」
『では、どうするのですか?』
「居るだろ。修行相手が、『白龍皇の光翼』の中に!」
『まさか!!?』
「ああ、そのまさかだよ。歴代の白龍皇に俺の修行相手になってもらう!」
一誠の修行相手を『白龍皇の光翼』の中に居る歴代の宿主と考えていた。自分より長い間、白龍皇であったなら経験豊富だろう。
一誠はベッドの上で横になり、リラックスしていた。目を閉じ瞑想を始めた。
(アレイザードで何度もやったからな。お手のものだ。意識を自分の身体の奥へと送るイメージだ。境界線の向こう側)
一誠はゆっくりと自分の意識を精神の奥へと潜って行った。かつて、異世界で何度もやった瞑想をした。
そして目を開けるとそこは真っ白な空間だった。
「よく来たな。今代の白龍皇」
一誠が声の方向へ顔を向けるとそこにはダークグレイの髪をした青年が笑顔で立っていた。