一誠は真っ白な空間でダークグレイの髪をした青年に声を掛けられた。一誠はどこか警戒していた。
(この男、強いな!勝てる気がしない……)
一誠は一瞬で目の前の青年が自分より強い事を見抜いた。戦う意思は感じられないが、それでも勝てる気がしなかったのだ。
「初めまして、今代の白龍皇。俺はヴァーリ。先代の白龍皇だ」
「あんたが、そうなのか?」
「ああ、そうだ。それにしても目覚めてそんなに経っていないのにここに来るとは驚いたよ」
「瞑想は昔、散々やったからな。師匠から集中力が足りないと言われてな」
異世界アレイザードで修行している時に一誠は師匠から『集中力がなっていない!』と散々怒られていた。そこで瞑想を中心とする修行をさせられていた。
そのおかげか、今の一誠は5秒で瞑想する事が出来るまでになっていた。
「なるほど。それで?どうして、ここまで来たんだ?悪魔のフェニックスと戦うのだろう?油を売ってていいのか?」
「戦うために来たんだ。ヴァーリ先輩、俺に魔法について教えてくれないか?」
「魔法を?使う訳でもないのにか?」
「ああ」
ヴァーリはこれまでの一誠の戦いから魔法による中距離戦より身体を使った近接戦を主体としたスタイルだと思っていた。
それだと言うのに魔法について教えて欲しいとはどうかと思っていた。
「魔法なら異世界で知っているのではないのか?」
「ああ。だけど、アレイザードとこっちの魔法が同じものだと言えないだろ」
「確かにな」
世界が違うのだ。魔法も同じものだとは限らない。例えアレイザードの魔法の対処法を知っていたとしてもこちらの世界の魔法にそれが通じる可能性は限りなく低いものだろう。
「それであの連中は一体何者なんだ?」
「ああ、彼らか……」
一誠は先ほどからフードを着た者たちが気になっていた。近くによれば何か小声でブツブツと言っているようだったが、小声過ぎて聞こえなかった。
「彼らは『覇龍』……ジャガーノートドライブの犠牲者だ」
「犠牲者?」
「彼らは負の感情に囚われている。その魂はずっとこの中で居るのさ」
「開放出来ないのか?」
「やり方が分からないんだ」
ヴァーリはお手上げと言わんばかりに肩をくすめた。彼らは死んだ瞬間からここに居る。何をする訳でもなく、ただ居るのだ。
「喋れないのか?」
「出来るかも知れないがおススメはしないな」
「そうか。ならヴァーリ先輩、魔法について教えてもらえるか?」
「ああ。まずはこれだ」
「なっ!?」
ヴァーリは一誠に向けて魔弾を放った。しかし一誠は間一髪の所で回避した。着弾した魔弾は巨大な爆発を起こして、爆風や振動が遅れてやってきた。
「いきなりなんだ?」
「君の場合、実践形式の方がいいだろ?」
「分かってらっしゃる。ならその胸、お借りしますよ!先輩!!」
「来い。後輩の実力、見せて貰おうか!」
そこから一誠とヴァーリの魔法対策と言う名の実践訓練が始まった。ヴァーリは魔弾を放ち、それを一誠が回避してヴァーリの懐に潜り込み殴りつけた。
しかし魔法障壁に拳が阻まれてヴァーリには届かなかった。一誠は高速で移動して様々な方向から攻撃を繰り返した。
ヴァーリもまた一誠の動きに対応した魔法障壁を展開した。戦闘経験で言えばヴァーリの方が断然上だった。
「流石だな!先輩!」
「お前も中々だぞ!後輩!」
「だけど、まだまだ!!」
「そうでなくては困る!」
二人は似たもの同士――-戦闘凶だ。戦闘に最高の快楽を得ていた。
(全力を出せる相手が居るのは最高だ!!)
一誠はヴァーリ相手に全力で戦ったいた。一誠が本気で人間に攻撃すれば一撃ポックリあの世に行かせてしまう可能性が高かった。
しかし相手は歴代最強の白龍皇のヴァーリなのだ。逆に手加減しては失礼と言うものだ。だからこそ、一誠は今出せる全力でぶつかっていた。
「最高だよ!先輩!!俺とここまでやり合える奴は出会った事が無いからな!」
「そうか。強者との出会いはいいものだ。自分の事がよく分かる」
「ああ。だからより強くなろうと思う」
「高い壁は登り我意があると言うものだ」
「分かるよ!俺にも超えたい男が居るんだ!!」
鳳沢暁月。異世界アレイザードで出会った尊敬出来る最高の兄貴分。一誠の道標にして超える目標。いつか越える日を考えて一誠はアレイザードから戻っても修行を欠かさなかった。
だから今の一誠が居るのだ。
「もっと教えてくれよ。先輩!」
「ああ。かかって来い!」
そこから一誠はヴァーリから魔法について教わった。
▲▲▲
「はぁ……はぁ……はぁ……勝てる気がしないぜ」
「目覚めて数ヶ月の白龍皇には負けないさ」
「なぁヴァーリ先輩」
「なんだ?イッセー」
「歴代の魂の開放は出来ないのか?」
一誠はヴァーリとの修行の最中にずっとその事を考えていた。囚われている歴代の宿主の魂。いくら死んだとは言え、ずっとここに居るのはどうかと思ったのだ。
それに対してヴァーリは首を左右に振った。
「どうすれば、この魂たちを開放出来るのか。俺には分からないんだ。それに歴代の誰もそんな事は出来ないかった。だからこそ、あんな状態なのさ」
「そうか。なら俺流でやらせてもらうぜ」
「どうする気だ?」
「こうするのさ!」
一誠は近くに座っていた歴代の宿主を殴り飛ばした。これにはヴァーリも開いた口が塞がらなかった。
(何を考えているんだ!?)
ヴァーリの驚きを他所に殴られた歴代の宿主がゆっくりと立ち上がった。
「憎い憎い憎い憎い憎い!!」
「発狂しているよ」
「どうするつもりだ?」
「俺はそれほど器用じゃないんですね」
一誠は確かに器用ではない。だが、考えなしに行動はしない。これも一誠だからこそのやり方なのだ。
正面から相手を見て、受け止める。怒りも憎しみも絶望も相手のありとあらゆる感情を真正面からバカ真面目に。
不敵に笑って、戦いの全てを楽しむのであった。
「まったく……とんでもない宿主に出会ったな。アルビオン」
「そうですね。ですが、そこが面白い」
「確かにな。まだまだ伸び代があるのはいい事だ」
「ええ。退屈しないのは私も望む所ですから」
ヴァーリはアルビオンと一誠と歴代の宿主との戦いを眺めていた。剣を使う者も居れば、魔法を使う者もいる。
一誠と同じ肉弾戦をする者もいる。宿主の数だけ戦い方がある。一誠にとってはいい修行相手であろう。
(まったく最高だ!!)
これからは修行相手に困らない事に一誠は最高に興奮していた。しかしここはあくまで精神世界でしかない。
知識はつけられても肉体はまったく成長しないのだ。それでも一誠にとってはいい修行場所になりつつあった。
「おら!どんどん行くぞ!!」
一誠は次々と歴代の宿主と戦い、知識を蓄えていった。一誠は時間が許す限り戦い続けた。
▲▲▲
「イッセー。見舞いにきたぞ」
「イッセーでも風邪になるんだな」
「俺は人間だぞ」
「「いや、鬼畜超人だ!!」」
一誠は歴代の宿主と戦い続けた結果、高熱を出してしまい学校を休んでしまった。そんな一誠の見舞いには悪友の二人、松田と元浜だ。
「そう言えば、オカ研全員も休んでいるんだぜ」
「リアスお姉さまと朱乃お姉さまに会えないなんてついてないぜ」
「そうか……無駄な事を」
今も修行している一樹たちの努力が無駄に終わる事に少しだけ残酷な笑みを浮かべていた。
そしてついにレーティングゲーム当日の夜を迎えるのだった。