旧校舎の廊下を一誠はオカ研の部室に向かって歩いていた。時間は生徒はおろか教師すら帰った深夜11時30分だ。
あまり明かりの付いていない薄暗い廊下を一誠は迷う事無く進んでいた。氣を感じれらる一誠にとってこの程度の暗闇で躓いたりはしない。
そしてオカ研の部室へと入った。
「どうも~……」
「着たわね」
「それはもちろん。1億が掛かっているんで」
オカ研の部室に入るなりリアスが一誠に睨みを利かせた。そんな睨みなど軽く受け流して一誠は誰も座っていないソファーにドスっと座った。
それに関して誰もなにも言わなかった。言っても無駄だと学習したからだ。
「それで例のゲームはいつ始めるんだ?」
「深夜0時ちょうどよ」
「まったく悪魔のあんた達は夜型かもしれないが、俺は人間の昼型なんだぞ。時間を考慮してもらいぜ」
「五月蝿いぞ!一誠。お前のためにするんじゃないんだから考慮する訳ないだろ!」
一誠の文句に一樹が食って掛かった。その顔は10日前まで無かった自信に満ち溢れた顔をしていた。
この10日は一樹主導の下、最適なトレーニングを行って確実に皆、力を付けた。特に連携に関しては完璧と言えるほどだった。
『原作』を知っている一樹は未来のフォーメンションを想定してリアスたちと修行したのだ。
「多少は力を付けたようだな?」
「ふん!前までの俺じゃないんだよ!お前の力なんて必要ないかもしれないな!」
「ふ~ん……まあ、俺は勝手にやらせてもらう」
「精々足を引っ張らない事だな!」
一樹は一誠の事を見下していた。今の一樹は『原作の一誠』よりも実力は上だった。一樹はリアスの眷属になる前から身体を鍛えていた。
しかしそれは一般人より多少強い程度でしかない。異世界で実践を経験した一誠の敵ではない。
「お嬢様。準備は宜しいでしょうか?」
「グレイフィア。ええ、全員揃っているわ」
「移動の前にサーゼクス様からお話があるようで」
「お兄様から!?」
リアスはグレイフィアから聞かされた人物の名に驚き大声を出してしまった。口元を押さえて、きせ込み気を取り直した。
すると部屋の中にリアスと同じ紅髪を持った男性が入ってきた。
「やあ、皆今夜は頑張ってね」
「お兄様。態々お越しいただいて申し訳ありません」
「なに、これから奮闘する妹と眷属たちを鼓舞しに来ただけだよ」
「そうですか……」
「はははははっ!!」
「な、なに!?」
リアスがサーゼクスと話していると笑い声が聞こえてきた。視線を向けてみるとそこには一誠が居た。腹を抱えて笑っていた。
「人間の皮を被った悪魔という言葉はあるが、まさか悪魔の皮を被った化け物がいるとは驚きだ!ははははっはっ!」
「貴方、いい加減にしなさい!!」
「いいんだよ、リアス」
「で、ですが……」
怒るリアスをサーゼクスは止めた。そしてリアスより一歩、一誠に近づいた。
「初めまして、私はサーゼクス・ルシファー。リアスの兄だ」
「兵藤一誠だ。悪魔の王様」
一誠の挑発的な挨拶にサーゼクスはニコやかに受け流した。しかし内心ではサーゼクスは一誠を警戒していた。
(彼の中に何かを感じる……この感じ、どこかで?)
一誠の中から感じる気配にどこか懐かしさを感じるサーゼクスだった。しかしその懐かしさが何なのかが思い出せないでいた。
「リアスに眷属の皆、レーティングゲームを頑張ってくれ。応援しているよ」
「ありがとうございます。お兄様!」
「もう少ししたらゲームが始まるからそれまで休んでいるといい。行こうかグレイフィア」
「はい。サーゼクス様」
サーゼクスはグレイフィアとオカ研部室を後にした。
▲▲▲
「それにしても中々面白い少年だね、彼は」
「そうですね。しかし彼は我々に何かを隠しているようでした」
「それは私も感じたよ」
一誠の秘密。それがリアスが一誠を助っ人にした理由だとサーゼクスは考えている。でなければ、一般人の彼をゲームに参加させる訳がない。
「出来る限り彼の先祖について調べましたが、魔法使いなど裏の世界との接触は認められませんでした」
「そうか……だが、彼には実践経験があるように感じられた」
サーゼクスは一誠が人外との接触がない事に疑問に思っていた。直積会ってみて、感じられた。一誠は実践を経験しているのを。
それもこのレーティングゲームではっきりとするだろうとサーゼクスは考えていた。
「お待たせしまた。父上」
「おお、サーゼクス。来たか」
サーゼクスは今回の非公式のレーティングゲームの観覧席にやってきた。先に来ていた、自分の父に頭を下げた。
魔王になったとはいえ家族の礼儀を忘れてはいない。
「これはサーゼクス様。ご機嫌麗しゅう」
「ええ、皆さんもお変わりないようで」
「今宵は存分に楽しませてもらいますよ」
サーゼクスに挨拶してきたのはグレモリーとフェニックスと縁のある悪魔たちだ。今日のレーティングゲームを見に来たのだ。
最近は大きな戦いがない分、レーティングゲームを楽しむ悪魔たちが増えた。
「今回は非公式ではあるが、リアス姫のデビュー戦ですな」
「そうですな。眷属に赤龍帝がいるとか」
「それは面白いゲームになりそうですな!」
「なら賭けますか?私はフェニックスに100で」
「それはないですよ。いくらリアス姫と言えど、まだフェニックスには勝てないのですから」
(好き勝手に言ってくれる……)
好き勝手に言う彼らに怒りを抑えたサーゼクスはスクリーンを見た。そこにはリアスたちが今か今かと殺気立っていた。
「あれは……誰だ?」
「赤龍帝と同じ顔だな。双子か?」
「確か人間の弟が参加するとか」
「人間風情がレーティングゲームに参加とは……間抜けめ」
悪魔たちは一誠に口々に罵倒を始めた。
「サーゼクス。彼が赤龍帝の弟か?」
「はい。ライザー君が彼の参加を求めてきたので。リアスへのハンデとして参加を許可しました」
「あまり身内に甘いと示しが付かないぞ?」
「分かっています」
本来は自分がグレモリーの当主になるはずだったのに。妹にそれを押し付けている自分が出来る事をするつもりのサーゼクスはゲームの開始を待った。
▲▲▲
『それではリアス・グレモリー様とライザー・フェニックス様のレーティングゲームを開始します』
「さて、みんな!いよいよ!」
「「「「「はい!部長!」」」」」
グレイフィアのアナウンスを聞き、グレモリー眷属はやる気十分だった。この日のために修行してきた。
全てはライザーを倒すために。勝利してリアスの未来を勝ち取るために。短い期間だったが、出来る最大限の事をしてきたグレモリー眷属。
「カズキ。あなたには期待しているわ。ライザーに目に物を見せてやりましょう!」
「はい!任せてください!部長!!」
「―――悪いがそれは無理だ」
「へ?ぐっ!?」
リアスが一樹を鼓舞しているといきなり一誠が一樹の後頭部を掴み、そのまま机へ叩き付けて、気絶させた。
「まずは一匹……次!」
「がはっ!?」
次に朱乃の腹に強めのグーパンを食らわせてダウンさせた。
「二匹目……次!」
「ぶっ!?」
次に祐斗に踵落としを食らわせて床を貫通させた。
「三匹目……次!」
「なっ!?」
次に小猫に頭突きを食らわせて壁に激突させた。
「四匹目……次!」
「え……?」
最後にアーシアの背後に回り手刀で首トンで意識を奪った。残ったリアスは一瞬に放心状態になってしまった。
「さあ、始めようか。俺たちのレーティングゲームを!」
こうしてゲーム開始直後に眷属が全滅すると言う前代未聞の幕開けとなってしまった。