レーティングゲームの観戦室では誰もがスクリーンから目が離せなくなっていた。それはリアスの眷属に入った赤龍帝の双子の弟兵藤一誠の存在だ。
なんと一誠は白龍皇だったのだ。その事を事前知らなかった者たちは一誠への危機感を募らせていた。
『どうした!この程度か!?』
『ちょ、調子に乗るな!』
『遅いんだよ。まだカタツムリの方が早いんじゃないか?』
『な、何だと!?』
『ほら、隙だぞ』
『ぐはっ!?』
ゲームはライザーの防戦一方な展開になっていた。フェニックス眷属は誰も一誠にダメージらしきダメージを与えられないでいた。
そもそも一誠の速度が速く攻撃が回避され続けられるのだ。いくら強力な攻撃も当たらなくては意味がない。
サーゼクスは観戦室に居るある人物に顔を向けた。
「君は兵藤一誠君が白龍皇だと知っていたのではないかな?ソーナ君」
「それは……」
リアスの幼馴染で学園の生徒会長をしているソーナにサーゼクスは問い掛けた。しかしソーナはすぐに答えられなかった。
サーゼクスからの威圧に言葉を詰まらせてしまったからだ。
「も、申し訳ありません!リアスから自分で報告すると言っていたのでもう報告したものかと!」
「そうか……いや、君を責めている訳ではないんだ」
そう。責めていた訳ではない。これは自分への苛立ちだ。しっかりと一誠の調査をしなかった自分への怒りだ。
きちんと調査すれば分かったかもしれない。そもそも人間なのだから『神器』を持っていても不思議ではない。
それが『白龍皇の光翼』だったと言う事だ。人間だからと言って侮っていい理由にはならない。
(ゲームが終わったら彼から詳しい話を聞かなくては……)
サーゼクスはライザーをボコボコにしている一誠を見て、終わった後の事を考えていた。
▲▲▲
『ライザー・フェニックス様の女王一名リタイアです』
「これで後はお前だけだな」
「ば、バカな……!!」
フィールドにはもうライザーしか残っていなかった。先ほど最後の一人がやられた。ゲームで残っているのは一誠とリアス、ライザーの三人だけになった。
ライザーは少しずつ後ろに下がって、一誠との距離を取ろうとしていた。しかしそんな事は意味を成さなかった。
一誠にとって学園は狭いフィールドなのだ。どこに逃げようと一瞬にして距離をつめる事を簡単に出来てしまうのだ。
「逃げても無駄なのに。それじゃ次、行ってみるか」
「何?」
「お前の能力の弱点の検証だよ。例えばこんなのはどうだ?」
「ぎゃああぁぁ!!」
一誠はライザーの腕を掴んでそのまま関節技を決めて、腕を脱臼させた。ライザーの左腕は力もなくダラリと動かないでいた。
その事にライザーは驚きを隠せなかった。
「どうして回復しない!?」
「回復しないのは当たり前だろ」
「何!?どういう事だ!」
「お前の一族の回復は流血しないと発動しないんだよ」
ライザーの腕はただ脱臼しているだけで血は一滴も出ていない。ライザーがこれまでに脱臼した事はない。
そもそも炎を操るフェニックスに関節技を決める者など居るはずもない。
「思わず新たな弱点が見つかったな」
「ま、待て!お前は分かっているのか!俺とリアスの婚姻がどのような意味を持つのか!」
「いや、知らないけど?」
「じゅ、純潔の悪魔は年々数が減ってきている。純潔は後世に子孫を残さなくてはならないのだ!」
「だから政略結婚か」
「ああ、そうだ!」
近年、純潔の悪魔は確かに減っている。逆に転生悪魔は数を増やしていた。このままでは転生の方が純潔を越してしまうのも時間の問題だった。
だからこそ純潔は純潔同士での結婚が求められた。特に元ソロモン72柱の悪魔はなお更だった。
「分からないでもないよ」
「な、なら……」
「だからどうした?」
「はぁ?」
「俺はドラゴンなんだぞ?悪魔事情なんて知った事か!」
まさに一誠には関係ない事だ。悪魔が絶命しようと繁栄しようとも関係ない事なのだ。ライザーは話す内容と相手を間違えていた。
相手は人間なのだ。悪魔事情を話した所で負けてくれるとでも思ったのだろうか?その認識こそがライザーが敗北する一番の理由かもしれない。
「うあぁぁぁああぁぁぁ!!?」
「ここで逃げるか……逃げ場なんて無いのに……神剣」
「あがっ!?」
ライザーが逃げ出した瞬間、一誠は足を右から左へ振り抜いた。するとライザーの両足がスッパリと切れた。
ライザーは転げて、顔をグランドの土で汚した。ライザーは一誠の方を向いた。そこには一歩、また一歩と近づいてくる一誠の姿があった。
ライザーの目には近づいてくる死神にしか見えなかった事だろう。切れた足で必死に歩き、一誠との距離を取ろうとした。
「おいおい。最初の勢いはどうした?」
「く、来るな!いやだぁ!」
「まったく美学の無い奴は嫌いだぜ……」
「し、死にたくない!死にたくないんだぁ!!」
ライザーは無様にも叫んでいた。そこにはフェニックス家三男の姿などどこにもなかった。一誠はそんなライザーの頭に足を乗せた。
「そろそろ終わらせるか。俺ってさ、バトル漫画が好きなんだわ」
「ひぃ!?ひぃぃぃ……!!?」
「その中に肉弾戦をする主人公とか敵キャラが使う技なんかを再現するのが嵌まっていてさ。お前の頭を吹き飛ばした蹴りやさっき足を切ったのもその再現なんだわ」
「た、頼む!!見逃してくれぇ……!!」
「それでこれからお前に止めを刺すこれも再現業なんだわ。墜星……」
一誠はライザーの頭を思いっきり踏み抜いた。グランドには大きな窪みが出来た。砂煙が舞い、視界はゼロに近かった。
(手応えが……無い?)
一誠は足の裏の感触に違和感を覚えて、足の裏を確認してみた。そこには血の一滴も付いてはいなかった。
砂煙が晴れるとライザーのらの字もそこには無かった。ライザーが消えたのだ。
『ライザー・フェニックス様のこれ以上の戦闘続行が不可能と判断し、リアス・グレモリー様の勝利とします』
グレイフィアのアナウンスがフィールドに届いた。それを聞いているのはたった二人だけだ。
「勝ったの……?」
「遅かったな。グレモリー先輩」
「本当にライザーに勝ったと言うの……」
「だから最初に言っただろ?余裕で勝てるって」
「そんな……」
いつの間にかお腹を押さえてリアスが一誠の下にやって来ていた。その表情は信じられないと書いてあるようだった。
リアスとてそこまで馬鹿ではない。ライザーとの戦いはある程度の苦戦はすると予想していた。なのに一誠は余裕を残していたのが、気に入らなかった。
(私たちの評価を……よくも!!)
ライザーの眷属を誰一人として倒していないリアスたとの評価は最低だろう。だが、その結果を招いたのは他でもないリアス自身だ。
しかしその結果を受け入れられるほどリアスの器は大きくは無い。部室へ転移するまで一誠に睨みを利かせていたが、当の一誠はそれを軽く受け流していた。
「それじゃ1億、振込みよろしく」
一誠はそれだけ言った部室を後にした。それと入れ替わりで入ってきた兄サーゼクスにリアスは二時間以上、説教と一誠に対する説明を求めてきた。
リアスは終始、サーゼクスの威圧に涙目になりながら説明を始めるのだった。
(ひょ、兵藤一誠。覚えておきなさいよ~~!!)
リアスは一誠に対する嫌悪がさらに増すのであった。そんな事など一誠はもちろん知らないが。こうしてリアスVSライザーのレーティングゲームは幕を閉じるのであった。