少年一誠の朝は早い。朝5時には起きてジャージに着替えてから1時間のランニングを始める。終わったらシャワーを浴びてから朝食を食べて、制服に着替えてから学園へ向かう。
これが異世界アレイザードから戻ってからの一誠の日常だ。彼が身体を鍛えているのアレイザードから戻って来た時に鍛えた身体が行く前の状態に戻ってしまったからだ。あの時のショックは過去14年で一番のものだっただろう。
そこから3年掛けて全盛期の状態まで持ってくる事が出来た。本来ならもっと早くする事も出来たが、学生である一誠には難しかった。
一日中トレーニングしている訳にはいかないからだ。アレイザードでは1年間で鍛えたのが、ここまで掛かってしまった。
「「お~い!イッセー!」」
教室に到着すると悪友の松田と元浜がやってきた。彼らは中学生からの付き合いのある悪友だ。鼻息を荒げて一誠に詰め寄った。
「なんだ?変態メガネにハゲ」
「お前!後輩の愛理ちゃんと別れたってどういう事だ!?」
「お前!先輩の絵里さんと別れたってどういう事だ!?」
「近い近い!」
一誠は2人を押しのけた。落ち着かせようとしても落ち着く様子がまったくない。また面倒だなと思いながら一誠は質問に答える事にした。
「2人とも元々期間限定の彼氏をしていただけだ」
「ふざけんな!どうしてお前だけモテるんだ!?」
「そうだそうだ!俺たちとツルんでいるのに!?」
「日頃の行いの賜物だろ?」
「「なんだと!?」」
松田と元浜は度々女子更衣室を覗くなどの悪事をしてきている。もちろん近くには一誠が居るのだが、一誠は一年の時から女子からモテておりこれまで様々な女子と付き合って別れている。
それゆえに態々覗きをする訳が無いと女子全員は分かっているので、松田と元浜の2人だけが女子のターゲットにされている。
「お前らはもう少しその変態行動を抑えろ。そうすればモテるのに」
彼ら2人の能力は学園でも突出した才能の持ち主だ。しかし変態行動がその才能を台無しにしているのだが、それでも彼らは止める事は無かった。
その事とに一誠は呆れていた。過去にモテるためのアドバイスをしたが2人がそれを実践しても無駄に終わってしまったのだ。
「そう言えば、一樹の奴がオカ研に入部したらしいぞ」
「まったくあの野郎。ハーレムだのなんだの自慢しているんだぜ」
「あのアホは……」
一樹。兵藤一樹、一誠の双子の兄だ。一誠にとって嫌悪する兄だ。中学に上がってからはまともに会話もしてはいないし、高校に入学してからは一誠は1人暮らしをしているので学園以外で会う事は殆んどない。
そもそも互いに会おうとしていない。だから一樹が何をしようと一誠にとってはどうでも良かった。
「そんなに羨ましいなら入部しろよ」
「いやそれが入部出来なかったんだよ」
「そうなんだよ。定員オーバーとかでさ」
「文科系だよな?オカ研って……それなのに定員オーバーってはありえないだろ」
文科系の部活で定員オーバーなんて可笑しな話だ。定員オーバーの部活なんて聞いた事もない。そもそもそんな事をしていいのだろうか?
だが、一樹が入部したからにはオカ研には近づかないようにしないと一誠は思った。態々行く用事もあるとは思えなかった。
「さっさと席に着け」
「イッセー!頼む、紹介してくれ。出来ればロリっ子を」
「イッセー!頼む、紹介してくれ!出来れば素敵なお姉さんを」
「気が向いたらな……」
「「流石はイッセーだ!!」」
一誠は2人の言葉を心の片隅を置いて授業に集中する事にした。教科書を開き教師の文字をノートに写して行く。いつもと変わらない日々。
(退屈だ……)
しかし一誠はその日常に退屈していた。異世界アレイザードでの命を賭けた戦いの日々。そこには今は味わえない興奮があった。
血が沸騰するほど戦いがあった。退屈など遠い日々がそこにはあった。しかし今は無い。女の子にモテるのはいい。だけど、それだけでは満たされない何かが心にあった。
その日、一誠は珍しく授業に集中出来なかった。
▼▲▼
「せいっ!はっ!」
その日の授業を終えて一誠は廃工場で1人トレーニングをしていた。授業が終わりバイトをして、その帰りにこうして廃工場でトレーニングするのが日常化していた。
今日もいつもと変わらずトレーニングに励んでいると一誠は奇妙な気配を感じた。
(なんだ?この気配は……)
一誠はアレイザードで錬環勁氣功と言う操体術で周りの気配を感じる事が出来るのだ。氣を操るこの技のおかげで一誠はアレイザードで勇者のパーティメンバーで居られたのだ。
今日に限って廃工場から奇妙な氣を持った生き物が段々と一誠に近づいてきた。
(この氣はオカ研や生徒会と似ているな……)
一誠は氣の持ち主が学園のオカ研や生徒会の者たちと似ている事を警戒心を高めた。そして廃工場から出てきたのは異形な姿をした化け物だった。
「おやおや~美味そうな人間じゃないか……こんな所に1人とは運が悪かったな!がはははっ!」
「……お前は誰だ?」
「俺か?俺はザック!流血のザックだ!」
「……ださい二つ名だな」
「んだと!?もう決めた!てめぇはズタズタに引き裂いてやるよ!!」
「……っ!?」
ザックは凄まじい速度で一誠に切り掛かってきた。しかし一誠は紙一重で回避した。そして一誠はザックの顔面にパンチをお見舞いした。
ザックは一誠の強力な反撃に思わず吹き飛んでしまった。ザックの顔は一誠に殴られて事と弱い人間に反撃された事で真っ赤に染まっていた。
「き、貴様っ!!」
「どうした?化け物。その程度か?」
「調子に乗ってんじゃねぇ!!」
「単調的だな?」
「ぐはっ!?」
一誠はザックの攻撃を回避し的確に顔にダメージを与えていた。そして一誠は笑っていた。
(この感覚は久々だ……)
今、命を掛けた戦いをしている。目の前の化け物は自分の命を奪いにきている。それに応えるのが戦いの流儀だ。全力で相手の命を潰そう。
一誠は錬環勁氣功で身体を強化した。その時だった。
(な、なんだ!?背中が熱い!?)
背中にいきなり熱が発生した。身体の内側から何かが突き破ってきそうな感覚があった。そして熱が背中から突き出した。
熱の正体は白い翼だった。熱が背中から全身に流れている。そして背中の熱が冷えていつもの体温に戻った。
『ほぉ……今回の宿主は中々ですね』
「だ、誰!?どこから声が……」
『始めまして、私はアルビオン。白き龍にして白龍皇です』
「はぁ……」
一誠はいきなりの自己紹介に困惑してきた。背中から翼が生えたかと思えば、そこから声がしてくるのだ。驚かない方が可笑しい。
いくら異世界に行った事のある一誠でも理解するのに数秒時間が掛かってしまった。その時、ザックが一誠が動かないのを見て、反撃した。
しかし一誠はザックから視線を逸らしてはいなかったので簡単に反撃を回避した。
「まあ、お前の事は後からゆっくり聞かせてもらう。今は目の前のあいつを倒してからだ」
『いいでしょう。目覚めて初めての戦闘です。慣らしは必要ですね』
「それじゃ行くぞ!」
一誠は一瞬でザック近づき、殴り飛ばした。こうして白龍皇として目覚めた一誠の戦闘が始まるのだった。果たしてこの目覚めが何を意味しているのかは
誰にも分からない。それは神のみぞ知ると言った所だ。