とある国の空に一筋の白い流星が飛んでいた。戦闘機にも負けない速度で飛翔している白い存在。それは『白龍皇の鎧』を着込んだ一誠だった。
一誠は日本を離れて、ある場所に向かっていた。誰かに見つかっても大丈夫なように鎧を着ているのだ。
そして目的の場所が近づくと速度を落としてゆっくりと森の中に降り立った。そこは人の手が入っていない未開拓な土地だ。
一誠はしばらく周りを観察しながら歩いていた。
「アルビオン。この辺りか?」
『ええ、間違いなくこの森です』
「そうか。最低でも18年以上は経過しているかな。見つかるかな……』
『イッセー。聞いてもいいですか?どうしてヴァーリの遺骨を見つけようとしているのですか?』
そう。ここは先代白龍皇のヴァーリが命を落とす前に命からがらやってきた場所だ。一誠は精神世界でヴァーリに世話になっており、何か返す事は出来ないかと思っていた。その時にヴァーリがぽつりと漏らしたのだ。
『俺の死体はどうなっているのだろうか?』
『なら俺が回収して来ようか?』
そこで一誠は骨となったヴァーリの捜索を始めたのだった。アルビオンからある程度の場所を聞き、そこへ向かった。
しかしそこは日本ではなく海外だ。パスポートの発行に飛行機代、現地の言語など本来は準備するだけで長い時間が掛かるのだが、一誠はそれらをしなかった。
『白龍皇の光翼』を使えば、飛行機並みに飛行する事が出来る。だが、それは思いっきり密入国になってしまう。
(バレなければ犯罪ではない)
そもそも空を超高速で飛翔する人間をどう取り締まるのだ、と言った所だ。そして目的の先代白龍皇ヴァーリの遺骨を見つける事が出来た。
「18年くらい経っているのに残っているものだな」
一誠は持ってきた壺の中に残っている骨を丁寧に入れていった。その時だった、視界の端の方に建物らしきものを見つけた。
「村でもあるのか?」
一誠は少し立ち寄ってみる事にした。そこは廃村状態になって長い時間が経過しているのが見て分かるほどだった。
雑草は好き放題に伸びており、家は今にも崩れそうになっていた。その廃村の中で立派な建物を発見した。教会だ。
多少はボロボロになっていたが、周りの家などに比べたらまだマシな方だ。一誠は教会の中に入って行った。
「ここだけまだ原型を保っているな……あれは?」
教会の祭壇に何かが置かれていた。置かれていたのは棺桶だった。一誠は手を合わせて黙祷の後、ゆっくりと棺桶を開けた。
そこには白骨化した人間が居た。何か布で巻かれた物を大事そうに抱えていた。一誠はそれを取り上げた。
そして布を剥いだ。そこには剣があり、抜いてみると金色に光っていた。
「趣味の悪い剣だな……」
『イッセー。それは聖剣ですよ』
「え?これが聖剣!?」
『恐らくエクスカリバーですね』
一誠はアルビオンに言われて、マジマジと剣もとい聖剣を見て、軽く振ってみた。重さ長さ、どちらも一誠にとって問題なく振れた。
「ちょうど得物が欲しかったんだ。でもこれ、報告しないと不味いよな……」
魔王の部下である以上、この手の物は絶対に報告しなくてはならない。後で見つかって報告をしなかった事を追求されるのは目に見えていた。
どうしようかと悩んでいた一誠は入り口の方を見た。しかしそこには誰も居なかった。
「……気配を隠すのは上手いが、別の気配が出ているぞ。そっちの気配を隠すべきだったな」
「―――これは失念していましたね。次からは気をつけましょう」
入り口から一人の青年が現れた。腰には二振りの剣を携えていた。金髪で一誠より少し年上の青年は一誠と一定の距離を保っていた。
それは警戒している証拠だ。一誠もまた臨戦体勢で身構えていた。
「何者だ?お前……」
「申し遅れました。私はアーサー。騎士王アーサーペンドラゴンの末裔です」
「ほぉ……かの騎士王の子孫とは驚きだ」
「あなたのお名前を伺っても?」
「兵藤一誠だ」
「ひょうどう……もしや赤龍帝ですか?」
「いや、それは俺の双子の兄だ」
「そうでしたか。失礼、最近色々と噂を聞く赤龍帝と同じ名前でしたので」
兵藤。日本に居る魔王の妹が眷属にした赤龍帝と同じ名前にアーサーは先ほどかは警戒を緩めていた。噂は兄であって、弟の話はまったく聞かないからだ。
兄は悪魔のフェニックスをたった一人で倒したと裏の世界では有名だからだ。
「赤龍帝はカズキって名前だから覚えておいた方がいいぞ。ちなみに俺は白龍皇だ」
「なっ!?は、白龍皇ですか!?」
「ああ。いいリアクションだな」
アーサーは『白龍皇の光翼』を出した一誠に表情を崩した。一誠と対面した時から表情を崩さなかったのにだ。
それだけ一誠の言葉に衝撃を受けと言う事だ。
「双子の兄弟が二天龍ですか?また面白い星の下に産まれたものですね」
「そうだな。それもまた受け入れているさ」
「ですが、赤龍帝が倒されたとは聞きませんが?」
「倒していないからな」
「どうしてですか?」
「赤龍帝が弱いから。俺は倒すなら強いやつって決めているんだ」
それについてはアーサーも同じだった。弱い相手をいじめてそれで誇れるのか?いや強い相手を倒してこそ誇れるのだ。
それが騎士と言うものだ。主の敵を身一つと剣一本で打ち倒す。それにアーサーは幼少の頃からの憧れだ。
「あなたの考えには共感出来ますね」
「そうか。俺と似た考えの奴と出会えて、ここまで来た甲斐があった」
一誠とアーサーはお互いに笑っていて。似た者に出会えた事は喜ばしい事だ。自分の理解者は一人でも多いに越した事はない。
「あなたはどうしてここに?」
「先代白龍皇がこの近くで亡くなってな。遺骨を回収していたら偶然見つけたんだ」
「なるほど。もし聖剣に興味がないならあなたが持っている聖剣を譲ってはくれませんか?」
「これか?」
「ええ。それです」
一誠は渡すかどうか悩んでいた。このまま渡した所で困る事はない。得物に関しては何か別を探せばいいだけの事だ。
それにこのまま持って帰れば報告しなくてはならない。ならいっその事、目の前のアーサーに上げるのも手だ。
「譲るのは別に構わないさ」
「では……」
「だが、タダでやるのは俺としては面白くない」
「……生憎、私はあなたが欲しがる様な物は持っていませんよ?」
「いや、持っているさ。己の力ってものを!」
一誠は聖剣の先をアーサーへ向けて挑発的な笑みを浮かべていた。用は欲しければ力ずくで奪ってみろ、と言っているのだ。
この挑発にアーサーもまた笑みで返した。
「いいでしょう。聖王剣コールブランドの力を試したいと思っていた所です」
「いいね!やはりお前は俺と同類だ!」
「しかしあなたに聖剣が扱えますか?『核』が無ければ聖剣は力を発揮出来ませんよ?」
「それなら考えがある。先輩たち、ちょっと力を貸してくれ」
すると一誠が持っている聖剣が輝き出した。そして一誠はアーサーに斬りかかった。アーサーは一瞬、反応が遅れたがなんとか受け止めた。
「まさか『核』を持っていたとは驚きです!」
「残念!『俺』は持っていないんだよ!!」
「?ではどうやって……」
「俺の中……正確には『白龍皇の光翼』の中に多くの宿主が居るんだぜ」
「……まさか!?そのような方法で!!」
アーサーは一誠がどうやって聖剣を扱うための『核』が無いのに聖剣を使えたのか分かった。これはある意味、一誠ならではの方法だ。
「いくぞ!アーサー!!」
一誠はアーサーに聖剣を振り下ろした。