聖剣と聖剣がぶつかり火花を散らしていた。一方は『支配の聖剣』、教会が錬金術で砕けた欠片から七本にした内の行方不明だった剣。
もう一方は聖剣の中の聖剣の『聖王剣コールブランド』でそれを扱うのはかの騎士王アーサー・ペンドラゴンの末裔のアーサーだ。
そのアーサーの相手が今代の白龍皇の一誠だ。二人の剣術は同レベルと言えるほどで中々、決着が付かなかった。
(お兄様と互角!?)
そんな二人の戦いを上空で箒に跨った少女が見ていた。彼女はアーサーの妹でルフェイ・ペンドラゴンだ。
彼女はアーサーがある組織に入り、心配で着いて来たのだ。そして数日前にアーサーは行方不明だった『支配の聖剣』の場所を突き止めて、手に入れるはずだった。
(なのにどうして戦いに?お兄様……)
聖剣を見つけるだけだったはずなのに見知らぬ誰かと戦うのは聞かされていなかった。ルフェイは兄アーサーの勝利を願った。
「しかし驚きました。『白龍皇の光翼』を使って、聖剣を扱うための『核』を用意するとは……」
「凄いだろ?でも驚くのはまだ早いぜ!」
「ぐっ!?」
一誠が聖剣を扱えるのは『白龍皇光翼』の中に居る歴代の宿主のおかげでなのだ。一誠は彼らの中にある『核』の欠片を『白龍皇の光翼』を経由して一誠に集めたのだ。
歴代の宿主はかなりの数が居る。その中には『欠片』をもつ者が多く居た。一人が持つ欠片では聖剣は扱えない。
しかし持っている者が集まればどうだろうか?一誠一人が聖剣を扱うには十分な『核』になるのだ。
「驚きました。赤龍帝は一般家庭の元人間だと聞いていたのですが……貴方は違うのですか?どう見ても一般人には思えませんが?」
「色々あるんだよ。それが人生だ!何があるか分からないこそ、面白い!!」
「確かに……そうですね!」
「このっ!?」
徐々に一誠はアーサーに押されていた。実践経験は確かに一誠の方が上だろう。しかしアーサーにはこれまでに培ってきた時間がある。
例え経験で勝っていても修行してきた時間を凌駕する事は難しい。
「……このままやっても決着が付かないな」
「そうですね。そろそろ終わりにしますか」
「考える事は……同じか」
「そういう事です」
一誠とアーサーは距離を空けてから聖剣を構え直した。次の一撃で決着を決めるつもりなのだろう。お互いの集中力は極限まで高まっていた。
「エクスカリバァァァァ!!」
「コールブランドォォォォ!!」
お互いの聖剣から放たれた聖なるオーラはぶつかり辺り一面を光で包んだ。その光は目を開けられないほどだった。
(ど、どちらが!?)
衝撃が大きく砂煙を巻き上げていた。そして砂煙が晴れた時、立っていたのはアーサーだった。一誠は大の字になって倒れていた。
「負けたよ……」
「いえ、ギリギリでしたよ」
「ほら約束だ」
「確かに……」
一誠はアーサーに『支配の聖剣』をすんなり渡した。一誠は別に聖剣に対してそれほど拘りがある訳ではない。自分が扱える得物なら何でも良かっただけの事なのだ。
「それでアーサー。お前さえ良ければ俺の眷属にならないか?」
「眷属ですか?悪魔に転生しているのですか?」
「いや、俺は魔王から『悪魔の駒』って言うものを貰う予定なんだ。それで強い奴を勧誘しようと思ってな。もう一人確保しているんだけど、まだ空きがあるからアーサーが良ければだけど」
「それはいいですね。ですが、私はあるテロ組織に所属していましね」
「それって『禍の団』か?」
「ええ、ご存知でしたか」
アーサーが所属している組織の名を聞いて、一誠は思わず笑いそうになった。こんな偶然があるのか、と。
今、黒歌に調べさせている組織だからだ。しかし黒歌だけでは調べられる事にも限界がある。もしアーサーからの情報があれば、黒歌の過去にした事への清算としては十分だろう。
「ああ。それで俺の眷属になってくれるか?」
「ここで出会ったのも何か縁なのかもしれませんね。ドラゴンは力を引き寄せる。貴方と居る事で私は強くなれるかもしれませんね。ええ、これからよろしくお願いします」
「こちらこそ。しばらくは組織の情報を俺に流してくれ。危険が無い程度で構わない」
「分かりました」
一誠とアーサーが握手をしていると箒を持った尖がり帽子の女の子が近づいてきた。
(ずっと俺たちを見ていた子だな)
一誠は彼女の存在に気が付いていた。だが、特に何もして来なかったので無視していたのだ。
「お兄様!」
「ルフェイ。来ましたか」
「えっと……妹、魔女っ子?」
「ええ。優秀で将来を期待されています」
「初めまして、ルフェイ・ペンドラゴンです。兄共々よろしくお願いします」
「ああ。君も組織に?」
「はい。でも私の場合はお兄様が心配で付いてきた感じです」
アーサーの両親はルフェイにアーサーの監視役を頼んでいた。言って止まるような息子ではない事くらい熟知していたので、それなら監視した方がずっとマシだからだ。
それから一誠はアーサーたちと少し話してから日本へと帰って行った。
▲▲▲
異世界アレイザードから鳳沢暁月を追って、異世界に行ったはいいも暁月に返り討ちにあった機械帝国ディステアの勇者、フェル・バーネットは人間界にやって来ていた。
彼は冥界に居た悪魔を脅して、人間界に転移させたのだ。彼は悩んでいた。
(このまま帰還する訳にはいきませんね……)
彼はアレイザードにある死んだ勇者の墓を破壊していた。それを帳消しにするためにも魔王の娘を自分の世界に逃がした、はぐれ勇者の首を持ち帰るつもりだった。
しかしそれは無理だった。暁月は強かったのだ。
(この屈辱は必ず……)
フェルが暁月への復讐を考えていると後ろから大きな気配を感じて振り替えてみると黒い翼を十枚持つ男が飛んでいた。
「面白い魔力を感じてやってみれば転生悪魔か」
「……貴方は一体、何者ですか?」
「俺はコカビエルだ」
堕天使の『神の子を見張る者』の幹部の一人だ。側には神父風の中年の男性と白髪の少年が居た。
「ふん!主はどうした?」
「主?あの醜い女の事ですか?殺しました、私が」
「はははっ!主を殺したか!面白い。お前、名は?」
「答える必要を感じませんね」
フェルはどこかへ行こうとしていた。これと言って目的とは決めてはいなかった。
「コカビエル!早く聖剣を統合させろ!教会からの追っても気になる」
「黙っていろ。バルパー」
「それにあそこには悪魔のフェニックスを一人で倒した赤龍帝の兵藤とか言う者が居るのだろう?」
「ひょうどう……」
フィルは聞き覚えのある名前に反応した。忌々しい男の弟分の名前が確かそんな名前だったはずだ。フィルは先ほどまで居た場所に戻ってきた。
「コカビエルさんでしたか?」
「なんだ小僧、何の様だ?」
「協力させて貰っても?」
「協力だと?何が狙いだ」
「兵藤という餓鬼の首を頂きたい」
転移先が最悪かと思われたが、再起のチャンスが巡って来たとフィルは思った。ここで暁月の弟分の首だけでも持ち帰れば自分は英雄になる事だって出来る。
「ふん!いいだろう。付いて来い」
「分かりました」
「そう言えば、お前の名は?」
「フィル・バーネットと申します」
これが戦争を起こそうとする堕天使コカビエルと外道勇者フィル・バーネットの出会いであり、悪と悪が混ざった瞬間であった。
ここから物語りは次のステージへと進んでいく。聖剣を巡る戦いは始まる。かの地にて、様々な勢力を思惑が交差する。