リアスたちとイリナ、ゼノヴィアが対談している時、一誠は旧校舎の屋上で匙と『組み手』をしていた。匙の覚えが良かったのか、一誠は早い段階で実践形式に変更した。
それで初めに『組み手』だ。しかしその速度が異様に遅かった。ワンモーションするのに10秒は掛かっているのだ。
これには訳がある。いくら匙の覚えがいいとはいえ、まだまだ氣のコントロールが覚束ない。だから慣れるまでゆっくりとしている。
「ここ数日でいい感じになってきたな。匙」
「そ、そうか?自分じゃあんまり実感ないから……」
「ゆっくりとではあるが、俺とこうして組み手をしているんだ。自信を持てよ」
「お、おう!分かった」
匙は確実に氣をコントロールし始めていた。これも彼の根性で頑張ってきた結果だ。それから組み手は十数分続いた。
「一旦、休憩にするか」
「はぁ……キツい………」
「匙、こっちに来てみろよ。面白いものが見られるぞ」
「面白いもの?」
組み手を休憩していたら一誠に呼ばれた匙は一誠の下へと移動した。手すりから身を乗り出して、下を一誠は見ていた。
匙も身の乗り出してみて見るとそこでは見知らぬ二人の少女と一樹と木場が戦っていた。匙でも分かるくらい一樹と木場は追い込まれていた。
「何やっているんだ?あの二人は」
「まったくあの程度の相手に押されているなんて、情けない」
「あの二人が持っているのって、聖剣か?」
「ああ、それもエクスカリバーだぞ」
「エクスカリバー!?あれが!?」
匙は二人の少女が振り回しているが聖剣だと知ると身構えた。転生悪魔である匙にとって『聖』が付くものは全て弱点だ。
例え自分に向けられていなくても悪魔の本能が自然と避けてしまう。
「それにしてもあの聖剣使い何者だ?」
「あ、そう言えば会長がヴァチカンから使徒が来るとか言っていたな」
「使徒……ならあの二人がそうなのか?」
「木場とあっちの兵藤は大丈夫か?」
歳が同じようくらいの少女たちに圧倒されている木場と一樹。匙はそれほど彼らと交流がある訳ではないが、主同士が親友の間柄だ。
手助けはしないが、心配はしてしまう。ただそれだけだ。
「匙。今日の組み手はここまでにしょう」
「え?いいのか?まだ出来るけど……」
「元気があるなら悪魔の仕事に取っておけ。それに明日は2秒ほど早くするから」
「マジか!?」
「それじゃあな!」
一誠は屋上に匙を残して、屋上から下に向かって落ちた。四人の間に割って入った。
「楽しそうだな?俺も混ぜてくれ」
一誠は不適な笑みを浮かべるのであった。
▲▲▲
「な、なんだ!?」
「え、嘘……」
ゼノヴィアとイリナは上から降ってきた一誠に驚いていた。振動や爆音から人間が落ちてきて、無事な高さではないと予想出来る。
なのに目の前の人物は怪我一つ負っていなかった。
「イッセー君!」
「うん?お前は……」
「私だよイリナ!紫藤イリナだよ!昔、よく遊んだでしょ!」
イリナは一誠に近づきながら懐から一枚の写真を取り出した。昔から大事にしていた思い出の写真だ。
そこには幼い一誠と栗毛の子供が写っていた。一誠は目を写真に近づけた。
「イリナなのか?」
「そうだよ!」
「俺の知っているイリナは男だったと思うんだが?」
「わ、私は女の子だから!確かに昔はよく男の子と間違われたけど……」
髪が短く同い年の男の子より活発だったイリナはよく男の子と間違われた。だから髪を伸ばしてぱっと見で女の子だと分かるようにした。
「久しぶりだな。どうしてここに?」
「それはヴァチカンからの任務だからよ!」
「なるほど……しかし聖剣を持ち込んで来るとは穏やかではないな」
「イッセー君。どうして私たちが持っているのが聖剣だと思うの?」
「待てイリナ。この男、人間ではないぞ!」
「え?」
ゼノヴィアはイリナを一誠から遠ざけた。そして聖剣を構えた。
「ちょ、ちょっとゼノヴィア!イッセー君が人間じゃないってそんな訳ないじゃない!」
「いや、そっちの女の言うとおりだ。俺は人間を辞めている」
「え?……嘘だよね?」
「嘘じゃない。これ証拠だ」
「う、嘘!?それは『白龍皇の光翼』!?それにその白い鱗は……」
一誠は自分が人間じゃない証拠としてドラゴン化した白い鱗と『白龍皇の光翼』を見せた。イリナは信じられなかった。
思いを寄せていた人物が神をも殺せる『神器』を持っているとは。
「ああ、主よ!どうしてイッセー君が『神滅具』を持っているのですか!?これも試練だと言うのですね!」
「あの~イリナ?」
「だけど、この試練を乗り越えた時……私は使徒として更なる上に行けるわ!」
「お~い~俺の話を聞いて欲しいのだけど……」
イリナは完全に自分のだけ世界に入ってしまった。周りの声など聞こえてはいなかった。そしてイリナは一誠に聖剣を向けた。
「イッセー君!神を殺すなんて、大罪よ!ここで私が貴方を裁いてあげるわ!」
「協力するぞイリナ!白龍皇の実力を知るにはいい機会だ」
「お前ら人の話を聞けよ!」
イリナとゼノヴィアは一誠に切りかかった。しかし一誠からしたら直線的で避け易かった。避ける瞬間に二人の服に触れて、マーキングを仕掛けた。
「弾けろ『洋服破壊』!」
「な、なんだと!?」
「きゃあぁぁぁ!!」
一誠が指を鳴らすとゼノヴィアとイリナの戦闘服が綺麗にふっ飛んだ。二人は下着姿になってしまった。ゼノヴィアはそれほ気にしていなかったが、イリナは胸を抱えて座り込んでしまった。
「そっちの青髪の娘は気にしないのか?」
「下着が見られただけで死ぬ訳ではないからな!」
「なるほど」
ゼノヴィアは良く言えば豪胆、悪く言えば大雑把なのだ。戦闘中に服が破けるのは当たり前だ。だから昔は長かった髪を短くしたのだ。
しかしイリナは常識があるようで胸を抱えて立てないでいた。涙目になりながら一誠を睨んでいた。
「イッセー君!これはなんなの!?」
「これが俺昔から考えていた。魔法で名付けて『洋服破壊』、ドレスブレイクだ!一瞬にして女の『服だけ』を破壊する魔法だ」
「な、なんて破廉恥な!?」
「これで無用な戦いをしないで済む」
「…………」
イリナは一誠の魔法に言葉が出てこなかった。あまりにも破廉恥で教会で生活してきたイリナには耐えられるものではなかった。
「イリナの知り合いのようだな。そっちの顔が似ているのはお前の何だ?」
「双子の兄さ。と言っても俺たちはお互いに嫌っているからな」
「兄弟と言うのは仲がいいものではないのか?」
「そうとは限らないのさ」
一誠と一樹の仲の悪さは両親さえ認めるほどだった。中学校に上がるまで一誠は一樹と何とか仲良くしようと努力した。
しかしその努力を一樹は真っ向から否定した。そして中学から一誠は諦めて悪友二人とつるむ様になった。
「ここは俺に免じて引いてくれないか?俺としても女を殴るのは忍びないんだ」
「……いいだろう。イリナがこれ以上戦えないからな」
過去にリアスたちを殴ったり蹴ったりしたのが、リアスたちは触れなかった。それは一樹と祐斗を気遣ってだ。
これ以上戦えば、二人が再起不能になってしまう恐れがあったからだ。
「それとイリナ。これ代わりの服だ」
「ありがとう……って、元々イッセー君の所為でしょ!」
「そうだな。安心しろ。今度は下着もろ共消し飛ばすから!」
「安心出来ないわ!!」
ゼノヴィアとイリナの二人はそそくさとリアスたちの前か消えた。一誠は一樹たちの方を向いた。
「まったく情けなくて涙が出てくるぜ。一樹」