一誠はマンションの屋上から街を見下ろしていた。ここはサーゼクスが一誠に与えたマンションだ。部下兼リアスの監視役になったので、学園の近くの方が監視し易いと考えてだ。
一誠は数日前から流れの変わった地脈に違和感を感じていた。本来、ここまで大きく地脈の流れは変わらない。
(誰かが意図的にやっているな……例の堕天使か?)
一誠はイリナとゼノヴィアがこの街にやってきた理由を聞いた。聖剣を奪った堕天使がこの街で何か大きな事をしようとしているのではないかと一誠は睨んでいた。
どうして一誠が詳しい事を知っているかと言うと金銭的に宿泊施設に行く事が出来なかった、イリナとゼノヴィアから聞いたからだ。
なんでも空港近くの露店で誰かしら偉い人物の絵を購入した所為で軍資金が底についたのだ。
そこでイリナは一誠の母親から聞いて、一人暮らしをしている一誠の下を訪れて数日の寝泊りの許可を得た。
(それにしても絵を買ってホテルに行けないとか……)
一誠はイリナの行き当たりばったりの行動に思わず肩を落とした。昔はヤンチャだったが、月日が経つ事で大人になるかと思ったが、全然だった。
大人になったのは身体だけだった。一誠はスマホを取り出し、ある番号に掛けた。
『もしもしイッセー君。どうしたんだい?』
「どうもサーゼクスさん」
電話の相手はサーゼクスだった。サーゼクスは一誠からの電話に少し困惑していた。例のテロ組織の情報は昨日、聞いたばかりだからだ。
何かしらの追加情報でも入手したのだろうかとサーゼクスは思っていた。
「あなたの妹が管理している街にコカビエルが来ているようですよ」
『何!?コカビエルが?リアスからはそんな報告は……』
「自分たちでどうにかしようとしているんじゃないですか?それとも自殺志願者ですかね?」
『まったくリアスは……自分の実力くらい把握してもらいものだ……』
電話越しのサーゼクスは今にも大きく深いため息を出そうであった。リアスの事なら誰にも負けないほど可愛がってきたが、ここまで愚かな行動をするとは予想出来なかった。
『……それでコカビエルの目的は分かっているのかい?』
「恐らく複数の聖剣の統合じゃないか?地脈まで使っている所を見るとその線が濃厚だと思うが……」
『リアスもそうだが、コカビエルの行動も読めないな……』
「どうします?このままだとあいつら全員、死にますよ?」
『……リアスにはいい薬だろう。ギリギリまで君は手を出さないでくれ』
「了解しました」
一誠は電話を切った。そしてある方角を見ていた。この方角に堕天使コカビエルが居る。コガビエルほどの最上級の存在だと氣を抑えていないと簡単に一誠には見つけられる。
「イッセー君。電話は終わった?」
「ああ、待たせたな。イリナ」
一誠の電話が終わって後ろからイリナが声を掛けてきた。どうして彼女が一誠の下に居るかと言うと、資金がなくホテルに泊まる事が出来ないからだ。
「やはりくだらない絵なんぞ、買うから泊めれなくなったのだぞ!イリナ」
「くだならなくない!この絵はとっても素敵な方の絵なのよ!売っていたおじさんだってそう言っていたじゃない!」
「だったらそのありがたい方の名はなんなのだ!?」
「えっと……」
イリナたちの資金がないのは日本に来た際に露店で売っていた絵を購入する際に有り金全てを使い切ってしまったからだ。
ただえさえ少ない資金をドブに捨ててしまったのだ。だが、イリナは頑なにそれを認めたくなかったのだ。
しかしどこか泊まる場所を確保しなくてはコカビエルとの戦いもままならない。そこでイリナの提案で一人暮らしをしていると一誠の下に来たのだ。
「悪魔ではないとは言え、魔王の部下に頼るとは全てイリナの所為だぞ!異端者が!」
「何よ!なんでもかんでも私の所為にしないでよ!すぐに責任転嫁するんだから!ゼノヴィアは!これだから異端者は!」
「なんだと!?」
「なに?やる気?」
「止めんか!」
今にも喧嘩をしそうな二人を一誠は脳天チョップで止めた。一誠のチョップがあまりにも強かったのか、二人は頭を抱えながら涙目になっていた。
「痛いじゃない!イッセー君!」
「頭が割れそうだ……」
「しかしいいのか?俺は魔王の部下なんだぞ?」
「だが、転生していないだろ?我々は白龍皇個人と共闘しただけだ!」
「……ものは言いようだな」
確かにそれなら問題ないだろう。一誠は魔王サーゼクスの部下だが、転生悪魔と言う訳ではない。ならヴァチカンから詳細を聞かれても白龍皇が勝手に手助けしてきたと言い訳する事が出来る。
一誠としてもこの共同戦線を受け入れた。
(グレモリーとこいつらの監視が出来るのはかなりいい)
一誠としてはリアスの監視はもちろんイリナとゼノヴィアの監視もしたかった。味方でも敵でもない者たちの行動が一番厄介だ。
なら目の届く範囲に居れば、動きを制御しやすい。だから共同戦線を受け入れた。
「それで敵は堕天使コカビエルと皆殺しの大司教だっか?それとはぐれ退魔師だけか?」
「恐らくは……我々もまだこの街には来たばかりだ。まだ敵と接触していないのでな」
「でもこの三人が居るのは間違いないわ!」
「なるほど……アルビオン」
『何ですか?イッセー』
一誠はアルビオンを呼び出した。一誠はどうして聞きたい事があった。少し前にアルビオンから聞いた事を思い出したからだ。
「コカビエルは三大勢力の戦争を生き残ったんだよな?」
『ええ、そうですよ。それが?』
「ならコカビエルと俺、どっちが強い?」
『それはイッセーですよ。コカビエルの実力が変わっていなければの話ですが』
一誠はそれが聞きたかった。もしコカビエルの実力が一誠を超えていたらサーゼクスへの増援をすぐに要請しようと考えていた。
(うん?これは一樹と木場か?)
一誠は少し離れた場所に一樹と祐斗の氣を感じていた。一誠は何かあった事を考えて学校を休んでいた。そして今は平日の昼間だ。
本来なら一樹たちは学校に居るはずだ。なのに街を歩いていた。
(いや、戦っているのか?相手は誰だ!?)
氣の状態から戦闘をしている事を察した一誠は相手の氣を探ったが覚えがなかった。つまり初めて感じた氣だという事だ。
(待て!この氣はどこかで……?)
一樹たちと戦っている相手の氣にどこか覚えがあった。だが、どこで出会ったのかが思い出せないでいた。
氣は指紋のように個人で波長がまったく違う。だから同じ氣はないので探知すれば簡単に個人を特定出来るが、今回はそうはならなかった。
わずかに覚えのある氣。それを確かめようと一誠はマンションを出た。
「イッセー君!?」
「おい!どこに行く!?」
「悪いな二人ともちょっと用事が出来た。部屋は好きに使ってくれ!」
イリナとゼノヴィアをマンションに置いて、一誠は一樹たちの下へと急いだ。正体不明の氣の正体を確かめるために。
そして一誠はそこでアレイザードが送ってきた勇者と出会うのであった。その勇者は異世界より邪悪な龍を連れてきていた。
「さあ、絶望を噛み締めろ!外道勇者!堕天使!」
「その首を手土産としても持ち帰るのですよ」
「忌々しい白い鎧だ!」
白き龍の皇帝が今、内に秘めた怪物を解き放し目の前の敵に絶望を与えるのであった。物語は次のステージへとゆっくりと確実に進んでいるのであった。